され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜   作:ホイナン三兄弟

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 第三十三話 狩り勝負

 第三十三話 狩り勝負

 

 紆余曲折会ったが、俺たちは巨大な川を渡り終えることができた。空を見上げれば太陽は地平線に落ちようとしている。

『日も暮れてきたし、そろそろ野営としよう』

 ニドヴォルクが促す。確かに今日の旅はこれで終わりにすべきだろう。

 

『そうだな、休むとするか』

 俺が頷くと、エニンギルゥドも異議はないらしく頷いた。

 

『寝床はその辺りでいいとして、問題は食事だな』

 ニドヴォルクが周囲を見回した。

 竜は鱗もあり、体温調節機能も優れている。そのため寝床はどこでもいい。極寒の雪原でもない限り、暖を取る必要もない。食事に関してもある程度食い溜めはできるのだが、これからも旅は続く。しっかりと食べて英気を養っておくことは重要だった。

 

『なぁヨギ。ここはひとつ狩り勝負をしてみないか?』

 エニンギルゥドが持ちかけてくる。

『君よりきっとでかい獲物を仕留めてみせるよ』

『ほぉ、言ってくれるじゃねーか』

 煽るエニンギルゥドを俺は見返す。

 

 力試しや咒式ではエニンギルゥドに負けているが、狩りとなると話は別だ。こう見えても、若い頃から狩りの腕は鍛えられている。

 火花を散らす俺とエニンギルゥドを見て、ニドヴォルクも頷く。

 

『面白そうだな。私も参加していいか? 制限時間は今から月が昇るまでの間。勝敗はとった獲物の重さで決める。そして一位の者が、二位から獲物を一つ、三位から獲物を二つ貰う。これでどうだ?』

 ニドヴォルクの提案に、俺たちは頷いた。

 

 試練の旅の間、自分たちの面倒は自分たちで見ることが条件だった。ニドヴォルクが俺たちの食事を用意するのは規則違反といえるだろう。しかし勝負となれば話は別だ。損をする可能性があるので、ニドヴォルクが手を貸したということにはならない。

 

 計らずしも狩り勝負となったが、これはなかなか厳しい戦いになりそうだった。今から月が昇るまでの間となれば、小一時間ほどしかない。初めての場所だし、短時間で獲物を取ることは難しい。この条件では、せいぜい一匹か二匹の獲物をとれたらいい方だろう。三位となれば、今日の晩飯抜きは確定と言えた。

 

『よし。じゃぁ、よーいドンで開始だ。いいな?』

 俺が確認を取ると、エニンギルゥドが頷く。その隣で、ニドヴォルクの体が一瞬だけ青く光った。

 

 咒式を使用した?

 

『ん、開始してくれて構わんぞ?』

 俺はニドヴォルクを見ると、彼女は何食わぬ顔で俺に促す。そしておもむに尾を掲げた。

 

『ん? わかった。じゃぁ、よーい、ドン!」』

 俺が開始を告げたその時、ニドヴォルクが掲げた尾を勢いよく振り下ろした。尾は鞭のようにしなり、地面を打ち据える。

 

 大きな音が鳴り響いた。地面を見れば大事にひびが入っている。

 

 突然の行動に、俺とエニンギルゥドは驚きニドヴォルクを見る。対するニドヴォルクは澄ました笑顔を見せている。

 何なのかわからなかったが、次の瞬間地面より振動が響いてきた。

 

『なんだ!』

『何かが地中を移動し、上がってきている?』

 身構えた俺とエニンギルゥドのすぐそばで、地面に亀裂が走ったかと思うと土が盛り上がった。そして巨大な何かが噴出するように飛び出てくる。

 

 モグラだ! 巨大なモグラが飛び出てきた。

 

 驚く俺たちをよそに、ニドヴォルクは余裕の笑みを浮かべながら尾を操り、飛び出てきたモグラの左足に巻きつけた。そして尾を勢いよく引っ張り、掴んだモグラを地面に叩きつける。

 モグラは口から血を吐いて絶命した。

 

『まず一匹』

 静かな声で宣言するニドヴォルクに、俺とエニンギルゥドは戦慄した。

 

『な、なぁ、今のって』

『多分重力系だ』

 俺の問いにエニンギルゥドが答える。

 

 おそらく先ほどニドヴォルクが使用したのは、重力力場系第二階位〈重偏覚〉の咒式だろう。僅かな重力偏差から、地中で眠っていたモグラの存在を感知したのだ。そして彼女はモグラの頭上を尾で強打した。モグラは混乱して地上に飛び出したというわけだ。

 

『エニン。これって……』

『ああ、まずいぞ』

 俺とエニンギルゥドは、分の悪い勝負を挑んだことに今だが更気づいてしまった。

 

 竜は強く咒式も使えるため、獲物を倒すことに苦労はない。問題はいかに獲物を見つけるかであり、発見までの行程が狩りの九割と言えた。

 そのことは獲物の方も理解しており、俺たちに見つからないようにあの手この手の隠蔽を行ってくる。そのため獲物は簡単には見つからず、小一時間では一匹か二匹の獲物を見つけるのが精一杯なのだ。だがニドヴォルクにはその問題が存在しない。

 

 どんな隠蔽や隠密の達人であっても、自分の重力までは消せない。ニドヴォルクの前ではどんなに隠れていても意味がないのだ。

 

『ほれ、獲物を探しに行かなくていいのか? まさか、一匹も取れないなど、情けないことはないよな?』

 ニドヴォルクが嘲笑の笑みを見せる。

 

『行くぞ、エニン! 急げ!』

『わかってるよ! ヨギ!』

 俺とエニンギルゥドは獲物を求めて走り出した。この勝負確実にニドヴォルクが一位となる。それはもう決まったようなものだった。

 あとは二位争い。三位となり晩飯抜きは誰になるか。

 

 そして小一時間後、月が登った頃に俺は巨大蛇を仕留めて戻った。一方エニンギルゥドは巨大な熊を仕留めて戻る。

 どちらも立派な獲物だった。しかし俺たちは自分の獲物を誇る気にはなれなかった。なぜならばニドヴォルクが巨大モグラだけでなく、巨大蛙に巨大蟹までを仕留めていたからだ。ニドヴォルクの勝利は、重さをはかるまでもなく明らかだった。

 問題は二位争い。俺とエニンのどちらの獲物が大きいか。

 

『俺の方が、若干大きいかな?』

 俺はエニンギルゥドとの獲物を見比べ、僅かに俺の方が重いことを告げた。だがエニンギルゥドが笑う。

『勝ちを誇るのは、これを見てからにしろ』

 エニンギルゥドが背後に回していた尾を前に差し出す。尾には死んだ雄鹿の死骸が引っかかっていた。

 

『この熊が鹿を倒したところに、ちょうど遭遇してな。ついでに持って帰ってきた』

『ずるい』

『そんなことはない。運も実力のうちだ』

 エニンギルゥドがニドヴォルクに視線を送る。彼女が一位であるため、審判は彼女が下すべきだろう。

 

『確かにそうだな。自分で獲物を取る必要はない。これも獲物の一つとか数えるべきだ。そしてこの分も含めれば、エニンギルゥド様の勝利だ』

 ニドヴォルクの一声で、勝敗が決した。

 

『仕方ない』

 俺は蛇を、エニンギルゥドは熊をニドヴォルクに差し出す。

 ニドヴォルクは遠慮することなく、俺たちの前で蛇や熊を食べた。

 

 獲物を全て奪われた俺は、指を咥えてニドヴォルクの食事を見るしかない。空腹はエニンギルゥドも同じだった。彼は鹿を食べることができたが、大きな竜の体に鹿だけでは腹を満たすことができない。むしろ空腹が余計に刺激され、腹を鳴らしていた。

 

『ふむ、こんなに食べると太ってしまうな』

 ニドヴォルクは自分がとったモグラや蛙、蟹を残し、翌朝に朝食として食べた。俺とエニンギルゥドは彼女が食事をしている間に、狩りに行きようやく腹を満たすことができた。

 




年下相手でも、勝負には一切手を抜かないニド姐
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