され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜 作:ホイナン三兄弟
第六十二話 ガガギアラの誤算
五指にプラズマを宿したガガギアラの抜き手が、黒銀竜エニンギルゥドの胸を貫いた。
艶のある黒い鱗を持つ竜が、ガガギアラの前で倒れる。
正確に心臓の位置を貫いたガガギアラは、自分が使命を全うした感慨に打ち震えた。
『エニンギルゥド様……』
嘆きの声を漏らしたのは、黒竜ニドヴォルクだった。最大の障害であった竜は、守るべき対象の死に茫然自失となっていた。
ニドヴォルクの隣では幼い雷竜が、仲間が死んでなお治療咒式をニドヴォルクに向けていた。
少しでもニドヴォルクを癒し、状況を打破しようと考えているのだろう。だが全ては無駄だ、全て終わったのだ。
『嗚呼……』
ニドヴォルクが俯く、その顔にはもはや戦意はない。守るべき対象をむざむざと殺され、戦う気力すら無くしているのだ。
護衛対象を、それも白銀龍直系の子孫を殺されたとあっては、ニドヴォルクは処罰されるだろう。極刑も免れない。ニドヴォルクはここで死ぬか、後で死ぬかしか道はないのだ。
もっともそれはガガギアラも同じであった。賢龍派の縄張りに深く入り込んだ以上、自分も生きては出られない。あとはどれだけ多くの竜を殺し、賢龍派に打撃を与えられるかという話だった。
ガガギアラは足元に目を落とした。大地には艶のある黒い鱗の竜が倒れている。標的であった黒銀竜エニンギルゥドだ。
愚かではあったが、勇敢でもあった。すでに死んだ以上、その勇敢さだけを讃えるべきであろう。
死せるエニンギルゥドを見下ろすと、その死体の横に奇妙な物体が並んで倒れていた。土色の肌に蛇のように長い体。一見すると巨大なミミズにしか見えない。だが体の横に揃って転がっている首には、竜に似た顔をしており角らしきものも生えている。
確かジャザベジドが殺した、土壌竜とかいう種族だ。何故こいつの体と頭が、ここに転がっているのか疑問だった。しかし嫌悪感が疑問を塗りつぶした。
どう見てもミミズにしか見えない。こんなやつを同じ竜として迎え入れるなど、賢龍派はどうかしている。やはり我が黒龍派こそが、正しく竜を導けるのだとガガギアラは確信する。
あとは道を間違えた竜達を始末するだけだと、ガガギアラはニドヴォルクと幼竜を見る。
百歳の雷竜は、まだニドヴォルクの治療を続けていた。もはや無意味であるのにと、ガガギアラは内心笑った。しかし次の瞬間、愕然とする。
『何故だ、何故お前から座標の信号が発せられている!』
ガガギアラは目を剥いて雷竜を見た。
ガガギアラは賢龍派の縄張りに入り込むために、四つ目の緑竜ジャザベジドを利用した。だが奴の役目は、縄張りに入る手引きだけではない。
ジャザベジドが囮としてニドヴォルクやエニンギルゥドの注意を引いている隙に、ガガギアラは信号を発する座標咒式を、エニンギルゥドに打ち込んだのだ。
一連の行為は静寂にして神速、ニドヴォルクはおろか、座標を撃ち込まれたエニンギルゥドすら気付かなかった。しかし今、その座標咒式から放たれる信号が、ニドヴォルクを治療する雷竜から発せられていた。
座標咒式を使用したことは、エニンギルゥド達には気付かれていなかった。また、特殊な信号を放つ座標咒式を、瞬時に模倣することも不可能。つまり目の前にいる雷竜が、エニンギルゥドと言うことになる
『お前達、入れ替わっていたのか!』
ガガギアラは自らの失策を悟った。エニンギルゥドと雷竜が一緒にいたため、わずかな位置の誤差に気づけなかったのだ。
『もうバレちまったか』
ガガギアラの足元から声が上る。見下ろせば胸を貫かれたはずのエニンギルゥドの死体が動いた。
飛びあがった竜の爪が、ガガギアラの胸に当たり鱗を削る。さらに追撃の尾が放たれる。尾の先には短いながらプラズマの刃が宿り、ガガギアラの胸を切り裂いた。
この戦いが終わると、第一部完として一度更新を止めます
ちょっとリアルが忙しくなってきまして
ある程度書き溜まったら続けようかと思っておりますので、その時はまたお付き合いのほどを