され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜   作:ホイナン三兄弟

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 第六十三話 三つ目の咒式

 第六十三話 三つ目の咒式

 

 ガガギアラの胸に爪とプラズマの刃を当てた俺は、空中で身を翻して着地と同時に跳躍。ガガギアラから距離を取る。

 俺は離脱しながら、攻撃が浅かったことを悟った。

 

 胸を抑えるガガギアラを見れば、金色の鱗は何枚か剥がれているものの、内臓にまでは届いておらず出血は少ない。プラズマの尾が激突した箇所も、鱗は若干溶けているが皮膚で止まっている。

 

 さすがに千年を生きた〈長命竜〉の鱗は、俺たちとは段違いに硬い。さらに俺と同じ雷竜であるため、プラズマや電撃に対する耐性も高い。爪で引っ掻いた場所に尾を当てられていれば、それなりの傷になっただろう。だが攻撃が微妙にずれてしまった。

 

 俺が悔恨に牙を噛んでいると、体の黒い鱗がボロボロと剥がれていった。

 一見するとまるで病気のようだが問題ない。剥がれた鱗の下から黄色い鱗が出てくる。

 

 負傷したニドヴォルクに目を向けると、彼女の前で治療を続ける竜の姿があった。黄色い鱗を持つその竜は、俺と同じ姿をしていた。しかしその竜も黄色い鱗がボロボロと剥がれ落ち、下から艶のある黒い鱗が出てくる。

 相棒であり友でもある黒銀竜エニンギルゥドだ。

 

『不覚、入れ替わりに気づかぬとは!』

 ガガギアラが胸を抑えながら唸る。胸の怪我よりも、単純な入れ替わりに気づかなかったことが悔しいようであった。

 

 俺は鱗の隙間にしまってある、一つの宝珠を思い浮かべた。

 五指山の青竜ゴウゼンは、もしもの時のためにと、三つの咒式を込めた宝珠を俺に託した。

 

 一つ目は霧を生む咒式。

 二つ目は電磁波や音波、熱源を錯乱する咒式。

 三つ目が自在に姿形を変えることができる〈変幻自在竜咒法〉の咒式だ。俺とエニンギルゥドはこの咒式で互いの姿を入れ替え、ガガギアラに挑んだのだ。

 

 〈変幻自在竜咒法〉の咒式が解除されていく。俺は胸に目を落とすと、そこには大きな穴が空いていた。

 ガガギアラに貫かれた胸だ。しかしそこに心臓はない。傷の内部を見ると、ゆっくりと心臓が競り上がり、元の位置へと戻っていく。

 

 〈変幻自在竜咒法〉の咒式は姿を変えるだけでなく、内臓の位置も少しずらすことができた。

 俺は心臓を攻撃された時の備えとして、心臓の位置をずらしていたのだ。

 これのおかげで助かった。だが体をいじったためにバランスが崩れ、尾の攻撃を外してしまった。

 

『なんということだ! このような幼竜に手傷を負わされるとは! 黒龍派の名に恥じる不始末だ!』

 ガガギアラが顔を歪めて唸る。奴にとっては自らの体面を汚されたことだけが悔いなのだろう。

 

『安心しろ、ガガギアラ。お前が体面を気にする必要はない。なぜなら、お前はここで死ぬからだ』

 俺の言葉にガガギアラが目を細める。

 

『何を言うかと思えば、この程度の傷を付けて勝ったつもりか?』

 ガガギアラは胸の傷に目を落とす。

 金色の鱗はすでに元に戻り、傷もすでになくなっている。

 

『確かに一瞬の不覚を取ったが、それだけだ。そもそもお前が今生きているのは、ただの偶然だ。我が心臓ではなく首か頭を狙っていれば、お前は反撃すらできず死んでいた』

 ガガギアラの指摘は正しかった。俺は〈変幻自在竜咒法〉の咒式により、心臓の位置をずらすことで致命傷を避けた。だがこれは三分の一の幸運が来たに過ぎない。

 

『しかも命懸けの反撃すらお前は外した。お前はただの間抜けだ』

 ガガギアラが爪で俺を指し示す。だがその言葉を聞き、俺は口の端を釣り上げた。

 

 確かに攻撃を外したのは失敗だった。だがそもそも運頼みの反撃などに賭けたりはしない。俺の仕事はガガギアラに接近した時に、もうすでに終わっている。

 

『例えお前たちが三頭でかかろうと、我が敵ではない。それがわかっていたから、先ほど逃げたのではなかったのか?』

 ガガギアラは呆れた声で話す。

 確かに三頭で挑んでも、ガガギアラには勝てないだろう。俺もエニンギルゥドも弱く、ニドヴォルクを補助することもできない。

 

『三頭ではお前に勝てない。だから四頭で挑む』

『四頭?』

 ガガギアラが顔を訝しめたその時だった。

 突如ガガギアラの足元から黒い物体が跳ね、太く長い縄状のものが金色の鱗に巻き付いた。

 

『なんだ! これは!』

 ガガギアラが振り解こうともがくが、解けるどころかさらに絡みつき締め上げる。

 ガガギアラの体に巻き付いているのは、土色をしておりブヨブヨとした長い胴体。土壌竜ウロン・ウロンの体だった。

 

 ウロン・ウロンは四つ目の緑竜ジャザベジドに首を切断されていた。しかし今、その首と体は繋がっていた。

 

 

『よぉ、黒龍派。初めまして。土壌竜ウロン・ウロンだ』

『バカな、お前は首を切られたはず。なぜ生きている!』

『俺ら一族の体はちと特殊でな、首を切られた程度では死なんのだよ』

『ぬぅ、はなせ!』

 答えるウロン・ウロンの体を、ガガギアラの爪がかきむしる。

 

 ウロン・ウロンの体はミミズのようであり、鱗に覆われてはいない。爪のひと掻きにより皮膚が破け、中から土色の体液が溢れる。だがこぼれ出た半透明の体液は、体の傷をすぐに塞いでいく。例え竜であったとしても、あり得ぬ再生速度だった。

 

『この体! 〈原生粘体転活性法〉の咒式か!』

 ガガギアラがウロン・ウロンの体の秘密に気づく。

 

 土壌竜の体は特殊で、全身の細胞を多能性幹細胞に変化させているのだ。そのため首が切られた程度で死ぬことはなく、多少の傷ならば瞬時に修復が可能。ほぼ不死身を体現している種族なのだ。

 

 ウロン・ウロンはジャザベジドに襲われてから、逆転の機会を狙うためにずっと死んだふりをしていたのだ。そして俺はエニンギルゥドを連れて一時この場から離れた時、ウロン・ウロンの頭も持ち去り作戦を伝えたのだ。

 

 その後俺は霧に紛れてガガギアラに接近し、ウロン・ウロンの首と体を奴の前に置いた。ここまでが俺の仕事だ。ガガギアラは先程、運が悪ければ俺は死んでいたと言っていた。だがもしそうであったとしても、すでに反撃の準備は終わっていたのだ。

 




どっこい生きてたウロン・ウロン

〈変幻自在竜咒法〉はオリジナル咒式です

それではまた来週
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