され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜   作:ホイナン三兄弟

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 第六十四話 勝利の方程式

 第六十四話 勝利の方程式

 

 雷竜ガガギアラの体に、土壌竜ウロン・ウロンの長い胴体が巻き付く。

『はなせ! 穢らわしい!』

 ガガギアラがもがくが、ウロン・ウロンが締め付ける。

 

『おっと逃さんぞ。俺は咒式が苦手だが、力には自信があってな。力だけなら格上にも負けはせんぞ』

 ウロン・ウロンが、ガガギアラの胴体や手足に長い体を巻き付けてギリギリと締め上げる。

 

 ウロン・ウロンは〈原生粘体転活性法〉の咒式を常時使用しているため、膨大な咒力がそちらに取られている。そのため他の咒式をほぼ使えない。だがその分力が強いらしく、接近戦に限定すればニドヴォルクにもいい勝負ができるという。

 

『ミミズ如きが、このガガギアラに勝てるつもりか!』

 ガガギアラが憤怒と共に雷鳴を発する。金色の鱗から稲光が放たれ、ウロン・ウロンの体を紫電が駆け抜ける。

 

 全身から電撃を放ち、ウロン・ウロンの体を焼いているのだ。

 組みついているウロン・ウロンは、体から白煙をあげる。周囲には肉が焦げる匂いが充満する。

 例え全身が多能性幹細胞であっても、密着状態で電撃を受け続ければ、すべての細胞が破壊される。そうならば幾ら不死身でも死んでしまう。しかし窮地を前にして、ウロン・ウロンは笑っていた。この状況すら、すべて計算通りだからだ。

 

『おい黒龍派。お前は足元の俺にも気づかないし、よくよく視野の狭いやつだな。先ほどそこのヨギストラが言っていただろう。ここにいる四頭で挑むと。おい、もう治療は十分だろう?』

『ああ、もちろんだ』

 声を返したのは、影のような鱗を持つニドヴォルクだった。

 

 俺たちの中で、長命竜ガガギアラに匹敵する力を持つのはニドヴォルクただ一頭。止めの一撃は、彼女に放ってもらうしかない。そのためにずっとエニンギルゥドに治療してもらっていたのだ。

 

 起き上がったニドヴォルクが、口を開いて咒式を紡ぐ。その組成式を見てガガギアラが顔色を失う。

 当然だろう。ニドヴォルクが紡いでいるのは、重力力場系第七階位〈暴悪冥黒大海嘯〉の咒式だからだ。

 

 凄まじい重力の波濤を放つこの咒式を受ければ、いくら竜でもひとたまりもない。

 ガガギアラは避けるべく、ニドヴォルクから後退しようとした。しかし体から煙を上げるウロン・ウロンがガガギアラを締め上げ、後退を許さない。

 

『おっと、逃さんぞ』

『あれを受ければ、貴様も死ぬぞ!』

『はぁ? お前本当に俺が眼中にねーんだな。頭さえ無事なら俺は死なないってことを覚えろよ。つーことで、ここは外せよ』

 ウロン・ウロンは体をガガギアラに巻きつけたまま、首を限界まで伸ばす。

 

『ああ、心得ておる』

 ニドヴォルクが咒式を紡ぎながら頷く。

 

 ガガギアラがもがき逃げようとする。俺はエニンギルゥドとしめし合わせ、鋼の鎖を生み出し投げつける。俺はガガギアラの左腕を、エニンギルゥドは奴の右足を絡め取り引っ張る。

 いかに長命竜とはいえ、この状態では逃げられない。

 

『ガキ共が!』

 ガガギアラは悪態をつくが、もはや逃げることは叶わない。残された手段は防ぐことだが〈暴悪冥黒大海嘯〉の咒式は簡単には防げない。

 

 先ほどガガギアラはニドヴォルクが放った核融合の炎を、高圧高密度のプラズマの壁で防いで見せた。しかしどれほど高密度のプラズマでも重力は防げない。何故ならば重力は物質や次元を超えてすら作用するからだ。

 

 〈暴悪冥黒大海嘯〉を防ぐには同じく重力系をぶつけるか、超定理系、特異点系とされる咒式で対抗するしかない。だがこれらの咒式は特殊であり、例え長命竜でも簡単に使いこなせない。

 

 残された手はただ一つ。

 

『例え〈暴悪冥黒大海嘯〉であっても防いで見せる!』

 ガガギアラが〈反咒禍界絶陣〉を構築する。

 

 数法量子系第五階位にある〈反咒禍界絶陣〉は、万能の咒式防御手段と言えた。長命竜であるガガギアラの結界は、俺たちとは比較にならないほど高密度な結界であった。

 

 俺はガガギアラを鎖で引っ張りながら、口を開き電撃を吐き出して結界にぶつける。少しでも結界を阻害するためだ。反対側ではエニンギルゥドが数式の帯を放ち、結界を分解しようとしている。

 

『子供に潰されるほど、やわではないわ!』

 ガガギアラが吠える。だがその下から呆れた声が上る。

 

『だからお前、俺を忘れるなって』

 声を発したのは、ガガギアラに巻き付いているウロン・ウロンだった。長い胴体を持つ彼は、土色の尾を咒式干渉結界に向けて伸ばす。

 まるでカエルの舌のように伸びた尾が結界にぶつかると、量子散乱の青い光が飛び散る。

 

 咒式干渉結界は、物質にも作用する。さらに竜の体は咒力を帯びているため激しく反応する。

 爆発音と共に強い光が起こり、ウロン・ウロンの尾の先端が消し飛んだ。しかし同時にガガギアアラが構築していた〈反咒禍界絶陣〉も消え去る。

 

『ほい、詰みだ』

 ウロン・ウロンが短く呟く。雲散霧消した結界の奥では、ニドヴォルクの口腔がガガギアラに狙いを定めている。

 

 全てを貫く必殺の咒式が、ガガギアラの体を飲み込んだ。

 

 

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