され竜転生 〜竜に転生して勝ち組と思ったら、され竜の世界だった〜   作:ホイナン三兄弟

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 第七話 慢心の末路

 第七話 慢心の末路

 

 巣穴へと近づいていくと、〈蟻人〉が俺の接近に気づく。俺は歩む速度を上げて、巣穴へと疾走した。

 向かいくる俺に対し、〈蟻人〉たちが槍や武器を掲げて迎え撃つ。だが竜の鱗を持つ俺に対し、石や骨で出来た武器では相手になるはずもない。

 俺はそのまま体当たりをして〈蟻人〉達を蹴散らした。

 

 〈蟻人〉は面白いように吹き飛んでいく。俺は〈蟻人〉を踏み潰し噛み砕き、文字通り蹴散らした。

 俺に蹴散らされる〈蟻人〉だが、踏み潰し損ねた一体が、俺に左足にしがみつく。健気な行動だと無視していたが、左足にしがみつく〈蟻人〉が二体三体と数が増えていく。

 四体を超えた時少々鬱陶しく思い俺は足をとめて顔を左に向けた。そして口を広げて吐息を吐く。俺の口腔から百万ボルトルの電撃の奔流が生まれる。

 

 電磁電撃系第二階位〈雷霆箭〉の咒式だ。

 あまり使用していないため、精度が甘く威力も低い。しかし体にへばりついた虫ケラ数体を、吹き飛ばすには十分だった。

 

 電撃は俺の体にも当たるが、雷竜である俺の鱗は絶縁性を持っているので感電しない。

 〈蟻人〉を蹴散らした俺は、意気揚々と首を返した。すると右の視界に黒い何かが見えた。

 俺は右へと首を返し、体の右側を見た。するとそこには大量の〈蟻人〉がびっしりとしがみついていた。

 

 俺の背筋に恐怖が駆け抜けた。いつの間にか〈蟻人〉が俺の右半身にしがみつき、今もその数を増やしている。

 恐怖に駆られた俺はその場を離れようとした。しかしそれがいけなあかった。〈蟻人〉にしがみつかれた右半身は予想以上に重く、逃げようとした足が絡まり転倒してしまう。

 

 倒れた俺に〈蟻人〉が一斉に群がる。俺は頭を下に向けて両腕で多い、亀の姿勢となって体を守った。だがこうなればもはや抵抗することもできなくなる。

 体に群がる〈蟻人〉たちが、次々に石や骨でできた武具を俺の体に突き立てる。

 簡単に竜の鱗は貫通されないが〈蟻人〉たちは執拗に武具を突き立て、いくつかが鱗を突き破り、血が噴き出る。

 

 もう俺にはどうすることもできず、鳴き声をあげ父上様に助けを求めた。だが助けは来ない。腕の隙間から父上様を見れば、父上様は〈蟻人〉にたかられている俺をじっと見ていた。

 

 なぜ……。

 俺の疑問は群がる〈蟻人〉たちに押し潰された。

 虫にたかられながら、俺は自分の死を認識した。

 こんな虫に殺されるなど信じられなかった。だが同時に俺は自分の慢心していたことに気付いた。

 ここは残酷無慈悲な《され竜》の世界だ。いつ死と直面してもおかしくはなかったのだ。

 

 自分の慢心を後悔したその時、轟音と共に炎が吹き荒れ俺の体を撫でた。

 猛火に俺の体を焦がす。だが死ぬほどではなかった。竜の鱗は耐熱性があり、体表が焦げる程度で済んだのだ。しかし小さな〈蟻人〉にとっては致命傷であった。

 

 体に群がっていた蟻人がバラバラと落ちていく。俺は痛みと火傷に喘ぎながら顔を上げると、父上様がゆっくりと歩みながら俺を見下ろす。

 父上様は俺を一瞥するも声はかけず、首を高く王のように歩みながら〈蟻人〉の巣穴を目指す。〈蟻人〉は父上様に襲い掛かろうとするも、父上様は口から火炎を吐き焼き尽くしていく。

 

 父上様が数度火を吐くと、生きている〈蟻人〉はほとんどいなくなった。父上様は生き残りを尻尾や足で丁寧に潰したあと、巣穴に向かい穴に火炎の吐息を流しこむ。そして巣穴に残っている生き残りを焼き尽くしたあと、爪で〈蟻人〉の巣穴を掘り返していく。

 

 〈蟻人〉は蜂のように巣を作るらしく、六角形に区切られた巣が見えた。巣の中には幼虫や蛹がびっしりと詰まっており、まだ生きているらしくうねうねと動いていた。

 父上様はハニカム構造の巣を、壊さないように取り出して地面におく。

 

 俺は一連の作業を、呆然と見ていた。

 体は〈蟻人〉の攻撃に加え、父上様の火炎で炙られ焼け焦げている。しかし治療しよういう発想すら起きなかった。ただつい先ほど、自分が死にかけたという事実が衝撃すぎた。

 父上様は巣を大小の二つに割り、小さい方を咥えて俺の前に置く。

 

『母さんにお土産だ。こっちはお前が持て』

 父上様はそれがお前の仕事だと有無を言わせず、自分は大きな方を咥えて巣に帰ろうと歩み始める。俺は立ち上がり、巣の一部を咥えてついていくしかなかった。

 

 自分たちの巣穴に戻る途中、父上様は終始無言だった。口に〈蟻人〉の巣を咥えているので話しようもないが、こちらを見ることもなく、気遣うそぶりも見せなかった。

 自分たちの巣穴へと戻ると、母上様が俺たちを出迎えてくれた。

 

 母上様は大きな瞳で俺を見つめる。さすがに怪我や火傷は、帰る途中に治療して治っていた。しかし体についた血や煤、土汚れなどは払う気にもなれず、俺は見窄らしい姿となっていた。

 母上様は俺の体の汚れに気づいているはずだが、そのことには何も言及しなかった。

 

『良い獲物が取れたわね、早速食事にしましょう』

 母上様は食事を促したが、俺は食べる気にならなかった。

 体が鉛のように重く、ただ眠かった。

 俺は食べないと伝えると、そのまま寝床に行き、身を横たえた。そして自分の体を抱きしめるように丸くなり眠った。

 

 

 




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