ようこそ科学至上主義の少年よ 作:54
なんとなしに自分が読みたいから書いただけですが、皆さんも同じ気持ちだったんですね
そこが嬉しいところ
始業を告げるチャイムと同時。スーツを着た男がAクラスの教室に入ってきた。
歳の頃は30代に乗ったくらいだろうか。しっかりとした印象を受ける男だ。
教室をざっと軽く見渡した後、その男は実に逞しい声音で言葉を紡ぎ始めた。
「初めまして、私はAクラスを担当することになった真嶋智也だ。
まず最初に、この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。もちろん担任も変わらないため、私が君たち全員と学ぶことになるだろうから、よろしく頼む。今から一時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配る」
配られたのは、この学校に入学する者であれば一度は見たであろう紙。千空は見覚えのあるそれを、ぱらぱらと軽く確認するべく目を通していく。
まぁ、一度読んだことある内容だ。特に変更点はない。
外部と断絶された寮生活。
Sポイントの導入。
敷地内にある施設などの紹介。
千空の隣に座っている坂柳も、同じ内容だと分かるや否や資料を閉じた。
少し待って、真嶋から再度説明が開始される。
「よし、今から学生証も配る。それを使って敷地内にあるすべての施設を利用したり、売店などで商品を購入することが出来る。電子マネーのようなものだな。当然、タダと言う訳ではなく、ポイント消費を対価とするので注意は必要だ。学校内においてこのポイントで買えないものはない。学校の敷地内にあるものなら、何でも購入可能だ」
一瞬、千空の耳がぴくりと跳ねた。何かに引っ掛かりを覚えたらしい。手元まで運ばれてきた学生証をまじまじと見つめている。
「施設では機械にこの学生証を通すか、提示すれば使用できる。それからポイントの支給日は毎月1日、自動的に振り込まれることになっている。今日は入学式に際し、みんな平等に10万ポイントが既に支給されているはずだ。念の為、各個人で確認してくれ……不備はないな。
なお、1ポイントにつき1円相当の価値がある」
一瞬、教室の中がざわついた。
普通の高校生からすれば、10万のお小遣いは大金と称しても過言じゃない。
小学生の頃の千空であれば、彼彼女らと同じく10万のお小遣いに驚嘆し、喜んでいたことだろう。
しかし、残念なことだ。白夜のクレカで科学用品を買い漁っていた彼からすれば、そこまで驚く額じゃなかった。それよりも、少ないもっと寄越せとすら思っている程だ。
「この学校は実力で生徒を測る。入学を無事果たした君たちには、そこに振り込まれているだけの価値があるということだ。このポイントは卒業後に全て学校側が回収する。現金化したりなんてことは出来ないので、ポイントを貯めても得は無いぞ。振り込まれた後、ポイントをどう使うかは君たち次第だ。任意の上なら、他者へ譲渡するのだって構わない。なので、無理やりカツアゲするのだけはしないでくれ。学校はいじめ問題に敏感なのでな」
と、ようやくそこで真嶋の説明が終わったらしい。ぐるりと生徒たちを見渡す。
合わせて千空は、なんの躊躇もなく手を挙げた。
「あ”ぁ〜、質問」
「石神か、なんだ?」
真嶋が千空にそう問えば、教卓へ釘付けとなっていた視線を掻っ攫ってしまう。
仕方ない。なんせ、こんな説明を一々聞いて、さらに律儀に質問する奴が、まさかダイコンのようなフォルムをしていたのだから。昔のパンクロッカーのように逆立った髪。なぜか羽織っている白衣。ひと目見ただけで異端だとわかる装いだ。
それは高校デビューとしては赤点を割る勢いだけど、ウケ狙いとしては良い線いっているし、10万ポイントを貰って興奮しているAクラスの人間からすれば満点に近い刺激物だった。
そんな人間がどのような質問を繰り出すのか。
不思議と、ほとんどのクラスメイトが千空の繰り出す言葉に集中する。
「あらゆるものが買えるってのは、つまり抽象的なものも買えるのか?」
だが、千空から発せられた質問を理解できた人間は限られた。
真嶋もあまりに具体性の欠ける質問に眉根を下げるほどだ。
「む、その質問はこちらも質問で返す必要があるな。その抽象的なものとは、どのようなものを指す?」
そう聞かれれば、千空は「あ〜」とお茶を濁した。
思いつかない。と表現するよりかは、言いたい事がありすぎて迷っている。と表現したほうがいいかもしれない。
数瞬待って、千空はどれを選択するか決めたらしく、開口する。
「私物を持ち込む権利」
ふふ、と教室内のどこかで吹き出す声が聞こえた。
「……原則としてスマホなど外部と連絡できるツールは認められない。が、その他は要相談と言ったところだ」
「ククク、それが聞けただけでおありがてぇ」
千空は聞きたいことを聞き終えたため口を閉じた。また、真嶋は生徒たちを見る。
「他に質問はないな。では、入学式には遅れないように」
そう言うと真嶋は退出した。静寂は崩れ、あちらこちらで会話が聞こえ出す。当然、話題は振り込まれた10万ポイントについて。あとは、入学式の終了後、敷地内を探索しに行かないかなどの約束を交わすものだった。
千空は入学式まで手持ち無沙汰になったため、自作ロケットについて思いを馳せようとする。
けれど、それを邪魔するように横から、さぞ楽しそうな声が掛けられた。
「石神くんは余程あの大荷物を取り戻したいみたいですね。敷地内で物も買えるでしょうし、こちらでも取り揃えられそうですが」
「なんポイント掛かると思ってんだ、テメーは。それよか権利買った方が安くて早い。んのが、合理的だ」
「ですが、権利の方が高いかも」
「んときは別の方法考える」
げっそりとした顔をしながら千空は言った。
坂柳有栖がいかに優秀なのかを千空は大体だが知っている。話して分かる相手の思慮深さ。彼女より知的な人間を探せと言われたら、千空の人脈ですら一握りしかヒットしないだろう。
そんな優秀すぎる少女が、千空の持ち込んだ荷物の価値を知らないわけがない。
故にこう導き出す。彼女は何らかの目的で千空をからかっているのだと。
「石神くん、あなたはど——」
「皆、少し聞いてくれ」
坂柳が何かを言おうとした時だ。Aクラスの教室、その教卓のところにスキンヘッドの男が立ち発言した。
全員の意識が男へと注がれる。坂柳だけは、少々目を細めているように見えなくもない。
だが、スキンヘッドの男は気づくこともなく、もしくは、気付いた上で無視をしているのか、何ともない表情でこう続けた。
「今日からAクラスとして共に切磋琢磨していく学友同士。未だお互いに名前も知らない者も多いと思う。どうせなのだからアイスブレイクも兼ねて自己紹介をしていかないか」
特に反対する声は上がらない。Aクラス内でも一部だけが盛り上がっているので、それを危惧しての行動だろう。
友好関係広げるイコール学生生活を豊かにする。そのような式が成り立っても可笑しくないのが高校生だ。ひそひそと早速できた友達間で密談する者もいれば、いいね! と賛同する声も方々から上がっている。
「ありがとう。では、提案した俺からだ。葛木康平と言う。今年度の抱負としては『皆を支える一助となること』。先ほども言った通り、これからAクラスとして切磋琢磨していく仲だ。何か困ったことがあれば遠慮せず頼ってほしい」
葛城の愚直すぎる自己紹介を皮切りに次々と自己紹介がおこなわれていく。
しかも、先発である葛城が今年の抱負とかいう単語を使ったものだから、他の者もそれとなく今年度の目標を口にしている状態だ。終いには「高校では彼女を作りたい」「部活で全国優勝したい」「友達が欲しい」などとどうでもいい情報まで織り交ぜられていた。
やがて、千空の番になる。さっきの質問の時、一気に注目を浴びていた人物だ。
千空は心底めんどくさそうな表情を浮かべ立ち上がった。
「あ”ー、石神千空。趣味はロケット作りつうか、科学全般だ。今年の抱負は、そうだな————」
そして、少年は何の躊躇いも飾りもなく————
「宇宙に行く」
————夢のようなことを言い放った。
どよめきすら、起こらない。
宇宙行き。ロケット。NASA。動画の中の夢物語。そこらへんの高校生を逆さに振ってもこんな大それた発言は出てこないだろう。
「すぐ行く。ソッコーで行く。この学校は大抵のもんポイントで買えんだろ? 以上、これが俺の抱負だ」
それだけ言うと、千空はさっさと席に座ってしまった。
あまりに異質すぎたせいか、一瞬沈黙が場を支配する。これほど投げっぱなしで終わる「抱負」もない。少しして千空の隣……坂柳の笑い声が漏れたことで、慌てたように拍手が起こったのもやむを得ないだろう。
それこそ宇宙空間に放り込まれたようなに、漠然とそこらを漂っていたAクラスの意識は、おざなりな拍手の振動に合わせて次第にハッキリしてきた。
(なるほど、高校生ともなると面白い人が出てきますね)
Aクラスの連中は少しの間、石神千空という人間に対する所感を漏らしたとか、なんとか。
***
以下、高度育成高等学校学生データベースより参照
氏 名:石神千空
クラス:1年A組
誕生日:1月4日
以下、学校の評価:
=========
学力・・・・A +
知性・・・・A +
判断力・・・A +
身体能力・・D
協調性・・・B +
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面接官からのコメント:
学力のみならず、高い知性と判断力が窺える。中学時代は自作ロケットの製造や、100点満点中の理科のテストで度々150点を取っていたこと。さらに、単身でアフリカにエボラの調査をしに行くなど、世界各地にて見識を深めている。
身体能力は男子中学生の平均値を下回るものの、余りある才覚を伸ばすためAクラス配属とする。
評価値はざっくりしたものを掲載
100点満点中150点を取ったのはDr.STONE公式ノベライズから参照
下記は私の率直な意見です。
正直、学力か知性どっちかはAで、どっちかだけA +が妥当な気がするんです。
ただ、どっちがAなん? って聞かれたら難しかったので、どっちもA +になった。
この評価項目に、もし精神力があったら「S」とか「Ex」とかが付くんだろうな。
アンケート用意していると思いますが、正直、この初めの段階なら誰を絡ませてもいいというのが作者の本音で
皆さんの見たいと思う人に投票してください
※100%反映されるかは約束できませんが
誰と絡んでいこうか
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綾小路
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堀北
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須藤
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龍園(作者がむずい)
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アルベルトしか勝たん
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椎名ひより(作者がむずい)
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一ノ瀬
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神崎
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坂柳
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神室
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橋本
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葛城
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おい、まさか戸塚……?