やる夫達は並行世界と繋がった聖杯戦争に参加するようです。 作:しきん
今回はFateシリーズには欠かせないあの人がメインとなっております!
そして、登場するサーヴァントは一体・・・?
星々の世界が無限に広がっている。宇宙空間にいるのではないかと錯覚してしまいそうだ。
だが、重力はある。息も出来る。
その空間に、衛宮士郎はいた。
ここから遥か遠くの地、冬木市のて行われた第五次聖杯戦争の生還者である士郎は、端末のマップと自身の勘を頼りに、黄色い点で示されている目的地へと向かっている。
「ここか?」
士郎は歩みを止める。マップを見てみると、士郎を示す赤い点と目的地を示す黄色い点と重なっているのが分かる。
暫くすると、突如として黒い何者か・・・シャドウが現れた。
『それは英霊が真っ当に召喚され損ねた、銘を持たぬサーヴァント『シャドウ』だ。それを倒せば、見事、予選突破となる』
「倒す事が、か―――?」
何処からか聞こえてくる声が、この状況から脱する為の条件を語る。
サーヴァントとは、あらゆる時代、あらゆる世界、あらゆる次元に存在する英霊を使い魔として召喚された者。目の前にいるシャドウは、そのなり損ないらしい。
されど、例えなり損ないであろうが、サーヴァントには変わりない。普通の人間がサーヴァントを倒す事、それがどれ程困難なものなのかを士郎は知っている。
人間がサーヴァントと互角に渡り合うケース自体はある。実際、士郎はそのケースに当てはまる人物を何人か知っている。
だが、それは万全な策や相性差、時には相手側の慢心といった要因があっての事。恐らく、シャドウ相手にそれらは通じないだろう。
それに、先程の説明からしてこれは聖杯戦争の予選。具体的な事は何も聴かされてはいないが、単に実力云々を測る事ではなく、『マスターになる事が出来るか』という点そのものが予選突破の条件なのだろう。
故に、考えられる事はただ一つ。
「つまり、倒す為にはサーヴァントを召喚するしかないって事か」
士郎のこの推論には、ある理由があった。というのも、士郎には似たような経験があるからだ。嘗て、士郎は口封じの為に襲ってきたランサーから逃げていた。その果てに自宅の物置小屋に追い込まれたが、その際に自身のサーヴァントとなったセイバーが召喚されたのである。
もし、あの時にセイバーが召喚されていなければ、士郎は亡き者にされていただろう。
今回もそれと同じであるならば。仮に予選突破の条件がシャドウを倒す事にあるとすれば、戦闘中にサーヴァントを召喚する以外に生き残る術は無い。
『流石に察しが良いな。この予選には、サーヴァントを召喚する過程も含まれている。シャドウを倒せるのはサーヴァントに他ならない』
「そのサーヴァントはどう召喚すればいいんだ?正しい召喚方法が分からなきゃ、どうにもならないぞ」
『案ずるな。この聖杯戦争でのサーヴァントの召喚は、儀式を必要としない。セイントグラフを介して『英霊の座』に接続する事で可能となる』
そう言われ、士郎はポケットの中から1枚のカードを取り出す。
それは、この空間に入った時に、いつの間にか手にしていた謎のカード。
これまでの説明の内容から察するに、これはサーヴァント召喚に関する媒体であるようだ。
だが、召喚を試す間はない。それよりも先に、シャドウが士郎に攻撃を仕掛けようとしている。
シャドウが手にする得物は槍―――皮肉にも、それは聖杯戦争に初めて関与する事になった要因の一つであるランサーを思い起こさせるものだった。
「―――
士郎は、自分が得手とする双剣『干将・莫邪』を繰り出す。
投影魔術を駆使し、手慣れた陰陽二振りの短剣を手の下に出現させる。
士郎は気を引き締め、攻勢に出る。だが、士郎の予想に反して、シャドウの動きは鈍かった。
余りにも拍子抜けだ。シャドウのぎこちない動きは、まるで今にも崩れそうな朽ちたロボットのそれだ。
士郎は振り下ろされた槍を躱すと、双剣で胴と首を切り裂き、あっさり三分割した。
シャドウを撃破した―――かに思われたが、これで終わりとはいかない。
「・・・!再生か!」
分断され、崩れたシャドウは元に戻るように合体し、元の形に戻る。士郎は何度も斬り伏せるが、その度にバラバラになったシャドウの身体は復元される。
埒が明かない。その一言だけでこの状況を言い表せる事が出来る。
「ッ―――!」
何度か武器の衝突を重ねるうちに、シャドウの動きに変化が表れる。
スピードが、そして精度が上がってきているのだ。
今は士郎が技量で優位に立っているが、武器のリーチはシャドウの槍に劣る。形勢逆転も時間の問題だろう。
―――やるしかない!
決断する。この状況を切り抜ける為の一手を、ここで打つ。
今の衛宮士郎ではやってみせた経験は無いが、理論なら戦いで取り入れている。
ならば、後はそれを実践するまで。
士郎は槍の打突を躱して懐に入り込むと、渾身の体当たりでシャドウを突き飛ばす。
足元を掬われたシャドウがその場に倒れると、士郎は追撃せずに後退。同時にシャドウを目掛けて干将・莫邪を投げる。
起き上がったシャドウには判断が出来ず、木偶の坊の様に立ち尽くしており、干将・莫邪を躱したり弾いたりする様子は見せない。このままいけば、間違い無く直撃して切り裂かれるだろう。
だが、士郎の狙いは別にあった。
「―――壊れた幻想!」
干将・莫邪がシャドウの身に触れる。
その瞬間、干将・莫邪が爆ぜた。
士郎は干将・莫邪に過剰なまでに魔力を送り込み、爆破させたのだ。
壊れた幻想。
それは、魔力の詰まった宝具を相手にぶつけ、爆発させる技能。
本来、この技の使用は『僅かしかない切り札の破壊』を意味し、打つ手が無いという状況下でもなければまず使用される事が無い、謂わばある種の裏技である。
換えの利く刀剣を爆弾代わりにする―――投影魔術という宝具の複製を可能とする技術を持つ衛宮士郎だからこそ出来た奇策である。
現状、手数が少なく、時間稼ぎで咄嗟に使っただけだが、いざと言う時には使えるだろう。
尤も、使ったのは今回が初めてで、今後、使う事は無いだろうが。
「・・・上手くいったみたいだな」
この行動が功を奏した。
先程までの斬撃とは違い、Cランクに達する程の威力を持つ爆発をまともに喰らわせた為、シャドウの全身は跡形も無く吹き飛んでいた。恐らく、再生には多少の時間を要するだろう。
依然、召喚方法を知らないままだが、やるなら今しかない。
「しかし、召喚って・・・一体、どうすればいいんだ?起動する為には何かが必要なのは分かるけど、肝心のそれが分からない・・・!」
士郎はポケットから取り出したセイントグラフを手に、声の主に問うように疑問を投げかける。
当初から、セイントグラフに魔力を通すべく、構造把握を行っていたが、通る為の隙間が魔力に合わない性質を持っていたのである。
魔力とは別の何かが原動力であるという事は分かったが、それが何を指すのかは未だに分からないままだった。
『簡単な事だ。己の意志を示すだけで良い。さすれば、答えは得られるだろう』
「俺の意志―――」
その返答を頼りに、呼吸を整え、精神を集中させる。
今のイメージはまだ暗闇。目を瞑っているからではない。無の状態であるが故の闇。
「―――
士郎は自己暗示として、言い慣れた呪文を呟く。
意志・・・それは、『ある事を行いたい、あるいは行いたくない』とする自発的な考えである。
自分は、何の為に戦うのか。
自分は、何を必要としているのか。
自分は、何を成す事が出来るのか。
―――俺は―――
すると、様々なイメージが浮かび上がっていく。
『多くの屍が散る血に濡れた戦場の丘』、『一人の英雄によって倒された悪竜の骸がある洞窟』、『生きた人の気を感じさせないほど火の海と化した地獄』―――
駆け巡る幾つものイメージから、そのうちの一つを選び取る。
―――接続完了。
意志が一点に収束し、エネルギーとしてセイントグラフに入っていく。
その瞬間、士郎達がいる以外に何もないこの空間に魔力の奔流が起こり始める。
これは召喚だ。今まさに、誰かがこの場に召喚されようとしている。
セイントグラフは士郎の手元を離れると1人でに動き始め、所在も無く宙を舞うと光を発し、やがて無地の面に絵が浮かび上がる。
それは、騎兵を模した絵。これが意味するのは―――
しかし、この瞬間を邪魔しようとする無粋な輩が現れる。
シャドウである。誰が召喚されようが無銘の残骸には関係ない。その役割を果たすだけだ。
シャドウは、士郎目掛けて槍を突き刺そうとする。いつもなら、士郎はその攻撃には対応できただろう。
だが、この時の士郎は意識が召喚に向けられていた。それが災いし、反応が遅れてしまったのだ。
穂先が心臓へと吸い込まれるように進んでいく。何の抵抗も出来ぬまま、数秒後には絶命してしまうであろう。
あの時のように。
刹那―――
「ッ―――!!」
槍は士郎に突き刺さらなかった。代わりに、セイントグラフが光を発したのだ。
余りの眩しさに、士郎も身動きが取れない。
ただ、槍が弾かれた音が、今がどのような状況を示していた。
つまり、この場に召喚されたサーヴァントがシャドウと打ち合ったという事。
数秒が経ち、士郎の視界も徐々に晴れていく。
目の前にいたのは、騎兵。
桜のようなピンク色の髪に、星々の世界を照らすような白いマント。
その姿は、士郎のイメージの中に入ってきた守護者。間違いなくその人だった。
「え~っと・・・一応、決まりだから言っておくね」
召喚されたサーヴァントこそ、セイバーではなかったが、士郎も再び味わった衝撃に、思わず思考が一時停止する。
「サーヴァント、ライダー。召喚に応じ参上した。これより我がたづ―――っと!」
ライダーの言葉を遮るように、シャドウが襲い掛かる。これにより、一旦止まっていた戦いが再開する。
ライダーは身を翻し、背後に迫っていたシャドウの槍を持っていた剣で弾く。
ライダーの攻撃は終わらない。
常人の目では追えない速さの華麗な剣舞を以て、シャドウを一方的に追い詰めていく。ライダーの猛攻はシャドウに反撃の余地すら与えず、遂にはシャドウの槍を圧し折った。
そして、ライダーは飛び上がり、こう叫ぶ。
「君の真の力を見せてみろ!」
その声に呼応するように、何かが姿を現した。
それは、上半身は鷲、下半身は馬の幻獣。
幻獣の名は―――
「
ライダーは幻獣に跨ると、そのまま高速でシャドウに突進した。
その衝撃は凄まじく、士郎は吹き飛ばされないように身を伏せた。
衝撃波が通り過ぎる。
士郎は爆風が止んだ事を確認すると、立ち上がる。
どうやら、勝負は付いたようだ。シャドウの姿が無いのが、何よりの証拠だ。
「終わったよ~。大丈夫?」
「あ―――ああ、何とかな」
ライダーは士郎の元に駆け寄り、無邪気な笑顔を見せながら安否を問う。
士郎は自分の無事を伝えた。
そういえば、まだ名前を言ってなかったな。
「俺は士郎。衛宮士郎って言うんだ」
士郎は自分の名を名乗る。これにライダーは―――
「士郎?じゃあ、士郎君で良いかな?」
満面の笑みでそう言った。
士郎は思う。
流石に以前ほど抵抗感は薄くなったけど、なんか距離感が近いな。セイバーといい、何故にこうも初対面で苗字ではなく名前で呼ぼうとするんだろう?
そう考えていると、ライダーは落ちていたカードを拾う。
「これ、士郎君のだよね?」
ライダーがカードを差し出してきたので、士郎は素直にカードを受け取った。
「それで、ライダー―――」
その時、周りの光が消えた。
士郎は突然の暗転に動揺したが、ライダーが手を握ると、それは別のものへと変わっていく。
暗闇が徐々に晴れていく。
そして、先程までの空間とは打って変わり、空気や足で感じ取れる地面の感覚も現実のものになっていた。
2人が気が付くと、そこは教会の礼拝堂だった。
それも、士郎にとっては見覚えのあるもの。
地元、冬木市の郊外にある『冬木教会』。第五次聖杯戦争において、主に監督役を務める人物の拠点として機能していたのがこの教会である。
士郎としても、ここは苦手であった。冬木市に起こった10年前の火事。孤児となった子供達を引き取る事になったこの教会は、あの出来事を嫌でも思い出させてしまうからだ。
だが、同時に違和感も感じる。空気感が違う上、長い時を感じさせる趣きも、本物としての概念構造も感じられない。
少なくとも、この教会は本物ではない、張りぼてのようなものである事だけは理解出来た。
そして、士郎が聖壇の方を見ると―――
「こ―――言峰、綺礼!?」
その方向にいたのは、言峰綺礼だった。
言峰は第五次聖杯戦争における監督役であり、同時にランサーのマスターとして暗躍していた。
その末に、言峰は柳洞寺で士郎に討たれたのだ。
「ほう―――その様子だと、私が知り得る衛宮士郎に近い存在のようだな。そうだとも。私の名前は言峰綺礼。第五次聖杯戦争の監督役だった者だ。尤も、正確にはお前の世界における言峰綺礼ではないのだがな」
言峰は相変わらず、空気が重くなるような威圧感を出している。
しかし、士郎は今の言峰の発言の一部―――『言峰綺礼ではない』という言葉に妙なものを感じた。
「言峰であって、言峰じゃない―――?」
「ああ、そうだ。この私は第五次聖杯戦争の言峰綺礼を再現したものだ。お前が言うように、本来の言峰綺礼は既に死している」
自らの存在についてそう答える言峰。それに対し、士郎は頭を抱えたくなっていた。
なんでこんな奴なんかを再現したんだ、この聖杯戦争の主催者は―――。
「では、改めて告げるとしよう。ようこそ、見事、試練を乗り越えたマスターよ。私は此度の聖杯戦争において、監督役を務めている者だ。そして、ここもまた冬木教会ではない。聖杯により創り上げられた都市『モダンファンタジアシティ』、その一角にある言峰教会がここに当たる。予選を勝ち残った者はこの場へ自動的に転移される仕組みとなっているのだ」
都市?つまり、ここは人が住んでいる所なのか?
士郎は苦々しい表情になる。
冬木で行われた無関係の人々が巻き込まれる戦いが、見知らぬこの世界でも行われるという事、そしてそれにより、人の命が次々と奪われていく事に憤りを覚えたのだ。
「さて、衛宮士郎。お前はこの戦いをどうするべきか、明言してもらおう。お前は既に聖杯戦争を終えた身。まして、ここは冬木市ではない。権利を放棄し、元ある平和を謳歌したいというのであれば、その判断も仕方があるまい。奥にある扉を開き、そこを潜れば、元の世界に帰還出来るだろう」
言峰のその問いからは行動を促す意図が感じられる。まるで士郎を試すかのようだ。
帰りたければ帰ればいい。その程度の期待外れであるなら、残念だがもう用は無い。
言峰が言わんとしているのは、まさにそれなのだ。
言峰綺礼にとって、衛宮士郎がどういう人物であるのかは知っている。だが、目の前にいる衛宮士郎がその通りとは限らない。
それ故に、『衛宮士郎が戦いを降りる』という事も有り得る訳だ。
「言われるまでもない。俺は、犠牲者を出さないように戦い続けるだけだ。それが、俺の選んだ道だから」
士郎がそう答える。既に腹は決まっているようだ。出会った当初とは違った自信に満ちた返答が気に入ったのか、言峰は満足そうな笑みを浮かべた。
「話はそれで終わりか?他に用が無いなら、このまま行かせてもらうぞ」
「ああ、話はこれで終わりだ。その身をこの世に尽くす為に、聖杯戦争の地へと進むがいい」
言峰がそう告げると、素っ気無い対応で士郎達はその場を後にする事にした。
士郎としても、どの言峰であれ根本的に相容れそうになく、やはり近寄りたくはないと心から思った。出来る事なら、もう会いたくないとも。
教会の扉を開き、新たな聖杯戦争の地へと降り立っていった。
その時、背後から―――
「喜べ、少年。君の願いは、再び叶う」
―――言峰の声が聞こえた。何時ぞやと似た、まるで神託を下すかのような言葉が聞こえた。
士郎がその言葉に立ち止まる事はない。士郎とライダーは、早々とした足取りで教会を後にした。
なお、教会に転移してからここに至るまで、ライダーは会話について行けず、頭に幾つもの?マークが浮かんでいたのだとか。
聖暦2110年 11月26日 午前 言峰教会前
「―――凄いな」
「うわ~~~っ!
教会の敷地から離れ、通りで見た光景に士郎とライダーは思わず驚嘆する。特に、ライダーの方は目を輝かせており、テンションが高まっているのが良く分かる。
そこは自分達の世界よりも遥か先を行くハイテク社会。周辺は、発達した科学技術の産物で溢れ返っている。
というのも、士郎がいた時代は2004年。空中ディスプレイや立体映像等の実用化の目途すら未だに立っていない段階であり、一般的にはSFの領域にある代物という認識だった時期である。
それが今、自分達の目の前にあるのだ。
ふと空を見上げる。
そこにあったのは、空中を浮遊し、頭上を通っていく航空機―――いや、船と言っても過言ではないだろうか。形状からしても、本当にSFの世界に出て来そうだ。
サイズは旅客、若しくは輸送用のジェット機よりも大きく、スピードもそれらに勝るとも劣らない。
よく見ると、ジェットエンジンと思しきものが何処にも見当たらない。いや、ロケットエンジンのノズルが後ろに付いてはいるのだが、まるで重力に逆らうかのように垂直に離陸していく様はどう説明すればいいのか分からない。
周囲を見ると、周囲の人々から興味深げに見られている事に気付いた。
その対象は士郎ではなく、傍らに立つライダー。
無理も無い。これ程の美人であれば、確かに注目されやすいだろう。
とりあえず、ここから離れるべきか。
「えっと・・・行こうか、ライダー」
「うん、分かった!」
2人はその場を後にした。
午前 ダウンタウン
しばらく歩いて街の風景を見ていたが、通常の世界と様子が違う事が分かった。
街で生活する人々を見てみると、普通の人間だけでなく、多種多様な亜人達も存在しており、互いに共存して暮らしている。
そして、近未来的と思われた都市にも、時代錯誤な建物も幾つか混じっており、然程、統一性は感じられなかった。
土地勘も無く彷徨っていたが、ようやくバス停まで辿り着いた。
ここでも最先端の科学技術は導入されているが、全体的に士郎のよく知る時代のそれと大差無いようだ。
今、士郎達は端末に記載されてある自宅に向かっている。マップによると、そこは『ミラージュヒルズ』という地区にあるらしい。
ミラージュヒルズ。
スクールタウンと隣接する高級住宅街であり、屋敷が建ち並んでいるというケースもあるらしい。
実際、ここからミラージュヒルズまでは相当の距離があり、加えて土地勘の無いこの都市の中を徒歩で移動しようものなら、自宅に着く前に日が暮れてしまうだろう。その為、今回はバスを利用する事にしたのである。
士郎は時刻表を見る。
「あと15分くらいか」
端末で調べたところ、どうやら、ここからバスでミラージュヒルズへ行くにはセントラルロード駅前のバスターミナルで乗り換える必要があるらしく、そこへ行くバスはここに着くまでまだ時間がかかるようだ。
しょうがない。ベンチに座って待つか―――
すると、ライダーがあるものを見つけ、士郎に話しかけた。
「士郎君、士郎君!あそこで何か売ってあるみたいだよ!」
ライダーが指差す方向を見ると、少し離れた位置にキッチンカーがあるのが見えた。
それはアイスクリーム屋で、見たところ、それなりに繁盛しているようだ。
士郎はライダーの為にアイスクリームを買うと、近くの広場で休憩する事にした。
広場では、子供達がそれぞれ和気藹々と遊んでいる。
フリスビーやサッカーのような定番のスポーツを楽しんでいる子達もいれば、携帯用ゲームやカードゲーム等の遊戯を興じている子達、一生懸命に自転車を漕ぐ練習に励んでいる子の姿も見える。
その光景は、この都市の平和を象徴しているようだった。
だが、この地で聖杯戦争が行われる以上、やがて、この平和も脅かされるのだ。
聖杯戦争が五度も行われた冬木市のように。
「―――ふう」
2人は、バス停が見える位置にあるベンチに腰掛ける。
なお、今のライダーの服装は現代風のコーデとなっている。
これには理由がある。幾らライダーがサーヴァントとはいえ、あの服装のままでは流石に目立つ。『これはコスプレです』と言えば、何とか押し通す事は出来るだろうが、何時までもそんな言い訳が通用する程、現実は甘くない。
なので、途中でブティックに寄り道して服を買ったのである。
「いや~、このイチゴのアイスクリーム美味しいな~」
ライダーはイチゴ味のアイスクリームを気に入った様子で、速いペースで食べている。
「ライダー、頬にクリームが付いてるぞ」
無邪気な食べ方をするライダーに、士郎は見かねてライダーの頬を紙ナプキンで拭き取る。
ふと、ライダーが口を開く。
「あっ、そうだ。そういえば、まだ自己紹介してないんだった」
言われてみれば確かにそうだった。今までライダーって呼んでい―――え?自己紹介?
瞬間、士郎は胸騒ぎを覚える。そして、同時にライダーは自己紹介を始めた。
「ボクの名前はアストルフォ!シャルルマーニュ十二勇士の1人、クラスはライダー!」
なんと、ライダー・・・アストルフォは、自ら真名を名乗るというサーヴァントにあるまじき行為に走ったのだ。
サーヴァントは弱点となる真名を隠す為、基本的にクラス名で呼び合うのが聖杯戦争における常識となっている。
その事もあり、士郎も敢えて彼女の事について触れようとはしなかった。
そもそも、対策の為に真名を知ったところで、戦力を上手く扱える訳も無いし、相手を深く知りたいと思う程、好奇心旺盛でもないというのもあった。
だが・・・何を思ったのか、アストルフォはそのセオリーを破ったのである。
当然、士郎は焦る。
「え、えっと・・・それじゃ、何て呼べば良いんだ?おいそれと、人前で名前を明かすのは良くないと思うぞ。そういうのは、いつか自分が不利になっていくだけだ」
―――渾名か何かで誤魔化さないと、自分の身を危険に晒す事になりかねないぞ!?
流石に普段から真名を名乗る訳にもいかない。何か良い案は無いものかと士郎が考えようとすると、アストルフォはこう答えた。
「うん?ボクは『ライダー』でも構わないよ?」
あっさり返ってきたアストルフォの返答に、士郎は胸を撫で下ろす。取り敢えず、真名の問題は如何にかなりそうだ。
つくづく思っていたけど、かなり能天気なところがあるみたいだ。
士郎は、僅かな付き合いの中でアストルフォについてそう悟る事となった。
「―――よし。いいかな、ライダー」
士郎は自分なりの旨を伝える為、真剣な表情で話を切り出す。
アイスクリームを食べ終えたアストルフォは、話を始める士郎の方を向いた。
「直接言うのは初めてかもしれないけど、聖杯戦争が街の平和を脅かすのなら、俺は全力で止めたい。戦いの所為で平和に暮らしている人達が犠牲になってほしくはないんだ。ライダーが聖杯に何を願うのかは分からないけど、出来る事なら協力してほしい」
自らのサーヴァントに、聖杯戦争に掛ける自らの意志を示す。第五次聖杯戦争でその道を選んだように、この都市で行われる聖杯戦争においても皆の為に戦いたい。少なくとも、士郎はそう思っている。
聖杯を手に入れて叶えたい願いがあるかどうかは分からない。それでも、力を貸してほしいと、未知のサーヴァントであるアストルフォに仰いでみる。
果たして、その返答は―――
「この都市の平和を守りたいんだね?分かった!」
―――『YES』だった。
「いいのか?その、ライダーには叶えたい願いとか、そういうものは無いのか?」
「無いかな~。そもそも、ボクは聖杯に興味無いし。聖杯戦争に参加する目的自体、二度目の生を謳歌したいって事ぐらいだよ」
何はともあれ、士郎はアストルフォは信頼出来る相手だと確信した。セイバーとは違う意味で危なげなところがあるが、純真無垢で悪いヤツではないようだ。
「それじゃあ、これからよろしく頼むぞ。ライダー」
「よろしく、士郎君~!」
士郎とアストルフォは握手を交わす。
召喚から間が空いたものの、主従は改めて互いに信頼し合う事となった。
「そういえば士郎君、何か大きいのがこっちに来てるけど、あれがバスっていう乗り物?」
アストルフォは急に車道の方を指差し、士郎に問う。
士郎が車道の方を見てみると、丁度、バスがやって来たところだった。到着時刻から、それは2人が乗る予定のバスだ。
「やべっ!?」
2人は慌てて走り出し、何とかバスに乗り込んだ。
その後、2人は何事も無く、ミラージュヒルズ、そして自分達の自宅に辿り着いたのだった。
夜間 ミラージュヒルズ 士郎の自宅
その日の夜、士郎とアストルフォは、この世界で初めてのお風呂に入る事にした。
だが―――
「士郎君~、上がったよ~!」
「おっ、分かった、ライ―――ッ!?」
その際に、アストルフォが男である事が判明。
「「ええええええええええッ!?」」
男2人の叫び声が、ミラージュヒルズに木霊した。
その日を境に、ミラージュヒルズで『土曜日の夜になると奇妙な悲鳴が聞こえてくる』という噂が広まっていく事になるのだが、それはまた別の話である。
斯くして、都市の平和を願う未熟な守護者は、聖杯戦争に加わっていく。
この先、彼らがどうなるか。
その結末は、神のみぞ知る―――。
[マスター 衛宮士郎]
能力:魔術(魔術師としての標準的なスキル。士郎は1代目の魔術師としては比較的多い27本の魔術回路を持つが、魔術の素質は壊滅的で極限られた種類の魔術しか使用出来ない。当初は師を亡くした為に完全な独学で、知識・技量共に半人前以前の状態だった。後に遠坂凛に弟子入りし、経験を経た事で本質を掴んだ為、現在においては半人前のレベルにある)
投影魔術(道具をイメージで数分だけ複製する魔術。『何度も贋作を用意できる』特性から、彼は投影した宝具を破壊、爆発させる『壊れた幻想』を用いる事で瞬間的な威力向上を行う事さえも可能とする。なお、士郎本人は本作の聖杯戦争における予選で壊れた幻想を初めて使った)
構造解析の魔術(器物の構造を読み取り、内部を視覚映像として捉える魔術。構造把握こそ天才的であるが、重要な点だけ読み取り。如何に速く変化させるかが魔術師の肝であるのに対して、設計図を丸ごと制作する事から、非効率的と評されている)
弓道の腕前(嘗て弓道部に属していたことで身に付いた弓道の腕。魔術鍛錬の応用により、百発百中どころか高速移動するサーヴァントのこめかみに命中させられる程の腕前を持つ)
出典:Fate/stay night(Fateルート)
性別:男
武器:投影品
役割:穂群原学園に通う高校2年生。アーネンエルベでアルバイトをしている
願い:正義の味方になってみせる
方針:戦争やテロによって無関係な人々が巻き込まれるなら、それを防ぐ為に戦う。聖杯はいらないが、悪いヤツの手に渡るならそれを止める。
令呪の位置:右手の甲
養父である衛宮切嗣の影響で『正義の味方』になる事を本気で志している見習いの魔術師。
第四次聖杯戦争で起きた冬木大火災の唯一の生存者であり、その折に切嗣に助けられ、歪みを抱えたまま育っていく。
第四次聖杯戦争の10年後に幕を開けた第五次聖杯戦争の最中にサーヴァントの戦いを目撃し、その事故の中でセイバーことアルトリア・ペンドラゴンを召喚させた出来事が転機となり、聖杯による争いを防ぐ為に戦う事になった。精神的な成長を経て、セイバーと共に第五次聖杯戦争を終わらせた。
[サーヴァント アストルフォ]
クラス:ライダー
出典:Fate/Apocrypha
性別:男
ステータス:筋力D、耐久D、敏捷B、魔力C、幸運A+、宝具C
属性:混沌・善
スキル:対魔力A(魔術に対する抵抗力。事実上、現代の魔術師では魔術で傷を付ける事は出来ない。本来であれば、Dランクの対魔力しかないのだが、常時発動している宝具『魔術万能攻略書』の効果により、このランクの対魔力を所有している)
騎乗A+(乗り物を乗りこなす能力。『乗り物』という概念に対して発揮されるスキルである為、生物・非生物を問わず、全ての乗り物を乗りこなすことが出来る)
単独行動B(マスター不在・魔力供給無しでも長時間現界出来る能力。マスターを失っても約2日は現界可能)
怪力C-(筋力を1ランクアップさせる事が可能。ただし、このスキルが発動している場合は1分毎にダメージを負う)
理性蒸発D(理性が蒸発しており、秘密を守る事が出来ず、機密情報を簡単に喋ってしまう。その一方で、戦闘では『直感』に近しい能力として作用する他、恐れ知らずになり、過酷な戦場にも果敢に飛び込んで行けるようになる)
宝具:『この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)』(上半身は鷲、下半身は馬の幻獣。空を高速で駆けることができ、その突進はAランクの物理攻撃に相当する)
『触れれば転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)』(その名の通り、触れた相手を転倒させる効果を持つ。サーヴァントが相手の場合は、相手の足だけを強制的に霊体化させ、実体化も封じる。これを受けた者は暫く起き上がれなくなる上、鎧等による防御も無視して作用する)
『魔術万能攻略書(ルナ・ブレイクマニュアル)』(とある魔女から譲り受けた、全ての魔術を打ち破る手段が記載されている書物。持っているだけでAランク相当の対魔力が得られる優れものであり、ステータス覧の塗り隠しや令呪に対する抵抗力を備えている。なお、この宝具の名前はアストルフォ自身が適当に付けたもの)
願い:無い☆強いて言うなら、この都市の平和を守る事。
方針:士郎君が頑張るなら、僕も頑張る!
イングランド王の息子にして、シャルルマーニュ十二勇士の1人。原典においても騎士としては『弱い』とされているが、『魔法の槍』『魔法の本』『魔法の角笛』『幻馬ヒポグリフ』等の様々なアイテムを駆使して巨人を捕まえたり、月に行ったりと冒険を繰り広げた。また、伝承に名高い色男でもある。その考えなしだが向こう見ずで勇敢な性格により、戦場を引っ掻き回して自陣を何度も勝利に導いた。
士郎とアストルフォのカップリングをやってみたかった。後悔はしていない。
言峰綺礼と組むサーヴァントは・・・
-
このままブロリーで
-
やっぱ英雄王で
-
ランサーが死んだ!(先行入力)
-
うp主に一任する