猫の少女に拠り所を   作:ムカサキ

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はざまイントロダクション

 ヒーローになる。今までの大きな目標の一つとしてこれを掲げていたが、いかがなものだろうか。羽川を守るという意思は一度もぶれたことはないし、阿良々木のように泣いている誰かを助けたいという憧れもある。

 

 今の俺は明確なプランなど立てず、とりあえずヒーローになるには体が資本だ。ということで訓練は欠かさず行ってきた。それは羽川と知り合い、関係が深くなっても変わらず多少なりとも緑谷との特訓の時間は作ってきた。

 

 しかし、今一度よく考えるがどうも効率が悪い気がするのだ。今の俺達にできることといえば体力づくりと柔道とか少しでも実践に役立ちそうな武術を学ぶだけだ。

 しかしだ、この数少ない特訓内容でさえ問題を抱えている。

 

 まず、武術が通じる(ヴィラン)など滅多にはいないだろうというものだ。こいつは阿良々木君もしていたミスの一つだ。この世界には炎を操ったり巨大化出来るようなバケモノが平気でいるようなところだ。ただの武術でどうこうなるものではないことくらい承知の上で現状、緑谷と出来る特訓の一つとして取り上げて行ってはいるがたまに時間の浪費ではないかと思ってしまう。

 

 というわけで、新たな特訓のスタイルを確立せねばいけない。

 ヒーローというものを触れることが出来るようになる高校まであと2年と10か月ほど。長いように思えるが俺なんかよりも年下で強い奴がいるような世界だ、時間は無駄にできない。

 となるとどうするかだが、まぁこちらには世界トップクラスの頭脳の持ち主がいる。最悪彼女に手助けを願おうじゃないか。

 

 なに? 結局他力本願だと? 馬鹿言うな、目の前にテストの解答があるのに自力で解こうとするほど人間出来ちゃいないのさ。

 それにこの世界じゃどうもヒーローという進路はほぼメインだと言っていいほど中心にある。なんせクラスのほとんどがヒーローになるのを夢見ている奴しかないんだ。

 多分、そっからあぶれた奴が普通のサラリーマンとかになるのだろう。それほどまでにヒーローになると思うのは当然の世界だ。

 

 となると、羽川も一応はヒーローを目指す……のか? 

 まったく想像がつかん。ただでさえ常識が通用しない彼女が周りと同じような進路に進むのだろうか。

 ……深く考えてもしょうがない。ここはひとまず羽川もヒーロー科を目指すと考えて訓練を手伝ってもらおう。

 

 ブラック羽川という存在が明確なものとなり、個性の制御や詳細が分かったんだ。協力してもらえるならとてもありがたい。

 それに、あの家庭から少しでも引き離せるならなんだってしたい。羽川がどう考えているのかはわからないが、とてもじゃないがもうあの家庭は直せない。羽川だって家が無くなり、振られることでケジメをつけ、保護者に部屋をくださいと自己主張し歩み寄ることが出来たんだ。自身の根幹をぶち壊すほどの相当な出来事がないとあの家庭と向き合おうなんて考えようとすらしないだろう。

 

 だからこそ、今できることは少しでも羽川にかかるストレスを軽減することぐらいだ。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

「そういや羽川、クラスに緑谷っているだろ」

 

「うん、よく鬼人君が話してる人だよね」

 

 思い出そうとするそぶりもなく当然のように答える。最初にクラスメイト全員の顔と名前を覚えさせられたが、今でもぶっちゃけ半々くらいの俺とは大違いだ。

 

「あぁ、実はあいつとは小学校からの付き合いなんだけどさ、放課後いつもアイツと訓練してんだよ。ヒーローになるためにさ」

 

 ……いまだに自分の夢はヒーローですというのはちょっと抵抗がある。ここじゃ普通のことだが、いかんせん子供が「僕、悟空になりたい」って言っているのを想像してしまうな。

 

「へぇ、緑谷君といつも何の話しているのかは気になってたけど、そのことを話してたんだ」

 

「場所は前に羽川と一緒に行った空き地なんだけどさ……実はマンネリになってんだよな、内容が」

 

 というわけで、助けてくれい。最悪土下座とかするから、見たくないだろうけど。

 

「監督的存在が欲しいってこと? それならいいけど」

 

「ほんとか! 助かるよ、羽川の知恵があればは百人力だ」

 

 冗談ではなく百人力だ。三人寄らばとは言うが、羽川じゃ何人分になるか分かりゃしない。

 

「私も放課後の予定は基本的にあいてるから、ブラック羽川さんも参加できるし私は全然いいよ」

 

「本当に助かるよ。じゃあ、早速で悪いんだけど今日はどうだ? まぁ流石に緑谷との顔合わせぐらいだけど……」

 

 いきなりで申し訳ないが本当にすることがないんだ。出来ることなら何をやるのかは早めに決めておきたい。

 

「それじゃ早く終わらさないとね」

 

 机に置かれた資料を指さし、現実に引き戻す。

 

「お、おう……一応仕事だしな」

 

 そうして結局帰れるようになったのは30分後となった。

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、羽川翼さんだ。親しみを込めてバサ姐と呼びなさい」

 

「何がというわけなの!? そんなアグレッシブに呼べないよ!」

 

 ふむ、スピードよしキレよしのなかなかのツッコミだ。

 緑谷には驚いた顔が似合うなぁ。

 

「せ、説明しなかったんだ……それにバサ姐って何? まぁ、鬼人君はいつも突発的だからね。改めまして羽川翼です。今日からよろしくね緑谷君」

 

「は、はいっ! よ、よろしくお願いします」

 

 若干あきれた様子の羽川とガチガチの緑谷のツーショット、レアだな。

 あまり緊張しなくてもいいんだけどな。そう考えてると、小声で寄ってくる緑谷。

 

(ねぇ、どうして羽川さんが来てるの? いやっ、悪い意味じゃなくて……)

 

 目の前でヒソヒソ話はもはや失礼に値するぞ。

 

「マンネリ感じてな、最近の俺たちの特訓ってどうだ? ただ走ったり筋トレしたりとかばっかりで物足りなく感じるだろ」

 

「た、確かにね……もともとは僕の肉体づくりで始めたものだしね」

 

 緑谷も薄々感じてたようで、新しい何かが必要だとは思っていたらしい。

 

「というわけでっつーことだ。単純に人増えれば出来ることは増えるし、なんでも知ってる羽川さんならいい案も出してくれるだろうからっていう算段だ」

 

「もぅ……何でもは知らないわよ。知ってることだけ」

 

 頂きました!!! ありがたや、ありがたや。

 どうにも聞く機会ってなかなか稀なのよな。

 

「いいか緑谷、こういう謙遜する相手ほど一番警戒しなきゃいけねぇぞ」

 

「う、うん」

 

 とある騎士の教えだ。見た目に騙されちゃいけないぜ。

 

「まったく……女の子をそんな大魔導士みたいにいっちゃいけないんだよ」

 

 いや、どっちかというと大魔王だけどな。俺が知ってる終着地点的に考えて。

 comicまで幅広くカバーしているのにはもう驚かなくなったぜ。羽川なら知ってるだろって言ったことだし。

 

「とにかくっ、今日は緑谷君との顔合わせと現状の把握だったよね」

 

「あぁ、今後のことも考えてまずは互いのことを知ることが重要だからな」

 

 俺の戦闘スタイルとかもあの時見せた一種類だけだし、緑谷に至っては緑谷に至ってはサポートアイテムもない完全な身一つだから、バサ姐のご意見がたくさん聞けるとありがたい。

 

「羽川の頭と緑谷のヒーローの情報もあるんだ。少なくとも今よりは良くなるはずさ」

 

 ちなみに俺は供給を受けるだけの穀潰しだ、よよよ。

 

「それじゃ、鬼人君は実験体として労働してもらわないとね」

 

「実験体……意外と羽川さんって冗談とか好きなんだね」

 

 ……なるほど、基本的に羽川に対して前情報とかがあるからネタとか好きだしシャレも良く言うのは知ってるが、あまり話さない人たちからすると羽川って厳格でマジメな奴に見えるのか。

 

 それなら尚更緑谷との関わりを作ってよかった。

 

 その後はブラック羽川の紹介に腰を抜かす緑谷を楽しみつつ、今後の特訓について話に花を咲かせた。

 

 

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