結果だけとりあえず言おうか。
雄英受かりました。
まぁ、自分でも手ごたえはそこそこあったし、考えてはいなかったが救助活動Pなる採点基準もあり、最後にあの女の子を助けたのが功を奏して、総合では75Pの3位のようだった。
筆記試験も羽川の猛指導で合格ラインは超えることができ、晴れて雄英生へのチケットをゲットしたってことだ。
基本的には満足のいく試験となったのだが、一つだけ悔しいところがある。
それは3位という順位ではなく、羽川に負けてしまったということだ。あれだけ格好つけて別れたというのにこの有様、辛いぜ。
正面からの勝負じゃ能力の違いから負けないが、頭や実践的な面が関わってくるとまるで話にならないからな……
その正面勝負も、血製と飛行してでの勝利なため、単純な肉弾戦じゃ勝てたためしはないしよ。
緑谷も最後の最後で例のリスキーな個性を使用したらしく、試験終了後にはボロボロにはなっていたが、どうにかPは稼ぐことが出来て、ギリギリではあったが合格できたようだ。
ズタボロの肉体に老婆のキスで癒されたアイツの姿はちょっと不気味だったけどな……
兎にも角にも、3人で合格してひとまずは肩の荷もおりた。
良かった良かった、これで誰か落ちていたら地獄の春休み状態になってお通夜の雰囲気で過ごさないといけなかったしな。
楽しみでしょうがないぜ。あのオールマイトも教師に赴任してくるらしいからな、緑谷の腰抜かす顔が楽しみだぜ。
雄英初日
広い校内を見学半分に自分のクラスへ向かう。
流石に毎朝6時起床の羽川とは時間を合わせることが出来ず、一人での登校だ。
およそ5分歩き、お目当ての扉へたどり着く。
バリアフリーの利いた巨大な扉を開け、意気揚々と入る。
「む、新入生かい? ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ。よろしく頼む。席は出席番号順になっているぞ」
お、そいつはどうも。聡明中学といえば進学校のとこだったかな?委員長気質の飯田君とやらに手引きしてもらうが、あいにく俺の朝の会話相手は羽川と決まっているのだ。邪魔をしないでくれい。
「あぁ、ありがと。……いたいた」
せっかくの助言も無視して三つ編みメガネっ子めがけ直進する女好きのろくでなしみたいなやつがいた。というか俺だ。
「よっ羽川! 相変わらず早いな」
「おはよう、鬼人君。相変わらず元気だね」
良いことあったからな。
「緑谷のヤツまだみたいだな、入試の時もそうだったけど昔っから慌てる癖にトロいとこあったからなぁ」
「まぁ遅刻しない分にはね」
三人で集まって話せないことにちょっぴり不満を漏らすオレとそれを宥める羽川。これがお決まりの会話だ。
そのまま雑談をしていると、ひときわ荒々しくドアが開けられ、金髪に制服を崩した、いかにもな不良が入ってくる。
まぁ、一応は顔見知りなのだがアイツとは仲良くできなかったしな。
俺に説明してくれた飯田とやらも面を食らったように硬直している。
ガンつけるように自分の席を探し、お目当ての場所にたどり着くと、ドカッとカバンを乱雑に置き、誰かを探すように周りを見渡す。
その荒々しい行動にフリーズしていた飯田も我に返り、爆豪に近づく。
「机を乱雑に扱うな! 雄英の先輩方や机の制作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「あぁ?思わねーよ、てめー! どこ中だよ端役が! つーかてめぇに用なんざねぇよ!」
飯田を押しのけ何やらこっちへ向かってる爆豪。そして羽川の目の前で立ち止まる。
「オイ、クソ眼鏡。テメーといい、デクといいことごとく俺の人生設計をぶち壊しにしやがる。史上初の雄英進学者!! その箔をよぉ!!!!」
恨めしそうに挙げられる名前には同じ中学出身のはずの俺はいない。どうやら眼中にないようです。悲しいなぁ…
「それに主席だぁ? ふざけんじゃねぇ、どんな手ぇ使いやがった!あぁ!?」
不良の訴えなどどこ吹く風といった様子でどうやって宥めようか考える羽川。
ふーむ、ここまでされるとちょっと看過できないな。
「羽川、ちょっとでいいから耳塞いで」
「え、でも……」
いいからいいから。耳をふさぐようジェスチャーし、後ろへ体を向けさせる。
よし、準備万端!
ちなみに緑谷はもうすでに来ているようだが、教室の入り口前で固まっている。
「えっと、爆豪だっけ? 同じ中学の」
「あ? 雑魚と話す気はねぇ」
うーん、ダメだこりゃ。俺一応3位なんだけどなぁ。
テッペン取りたい気持ちもわからんではないが、それとこれとは別だ。
ヒーローらしくはないが、しょうがない。嫌いな奴を良い奴に変えるより目の前から消し去り、追放する方が容易い。
俺が皆に教えたい教訓だ。
「まぁまぁ、落ち着けよ。お前の頭が足りずに負けたのは事実なんだからさ、それともなにかい?天下の雄英の教師陣たちが下した結果が自分は納得できねぇってか?」
明るくそういい返すが、相手のボルテージはみるみる上がる。
「……ぶっ殺す!!!」
悪いね、誰にでもいい顔できるほど優しくないんだ俺。
中学じゃ内申のために派手にやりすぎることはなかったようだし、緑谷にしてもあいつが真面目に特訓して無視できるようなっちゃ、あまり相手にしなかったようだからこっちもアクションは起こさなかったけどさ、また誰かに手を出すなら話は変わるぜ?
「はっはー、まるで仮想敵だな。ヒーローなんかよりもチンピラがよっぽどお似合いだぜ?君には」
こちらの返答にさらに怒りに顔を歪ませ、胸倉を掴み個性まで使おうとする始末だ。
ふん、手ぇ出すがイイさ。そうなっちゃ怪我はするが代わりにお前は退学だ。
俺の腕や顔面ぐらいなら多分だけど10日もあれば再生可能だ。リカバリーガールが居ればもっと早いだろう。しかし、羽川のストレスはそうはいかないんだ。そのためなら腕ぐらい差し出してやる。
「喧嘩したいなら余所へ行け。入学早々に何やってんだ、ここは……ヒーロー科だぞ」
寝袋に入ったままの浮浪者のような人間がゼリー飲料を一瞬で飲み干しながら、そう言い切った。モゾモゾとうごめきながら寝袋ごと立ち上がり、教室に入ってくる。
「爆豪、それ以上やったら退学だ……それと鬼人、無意味に煽るな」
俺たちの名前を把握していることに若干驚く。
「はい、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね……担任の相澤消太だ。よろしくね」
もっと驚いた。こんな人が担任なのか……
「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」
そう言って教室を出る相澤。
クラスメイトは初日にいきなり喧嘩おっぱじめる2人とよくわからない担任のダブルパンチで少々意識が飛んでいたが、彼の言ったことが頭に入り慌てて更衣室へ向かう。
じっと動かず耳をふさぐ羽川ってかわいいな……邪なことを考えるがすぐに考えを戻す。
「あー、羽川。もういいぞ」
そう言って肩をたたき、耳をふさぐのをやめさせる。
「ごめんね、鬼人君に任せちゃって」
「良い良い、別に解決もしてないし。それに、ああいう奴にはガツンと言わないと。中学の頃からだけど、自尊心の塊みたいなやつだからな」
「そういえば、イレイザーヘッドが来ていたけどどうしたの?」
誰だそいつ……あぁさっきのおっさんか。へぇーそういうヒーロー名なのかと毎度のごとく羽川に感心するがもう皆移動している。
「あ、体操服に着替えて、グラウンドに集まれってさ。忘れてたわ」
「えっ? い、いきなり?ガイダンスは?」
うん、いきなりだ。そんなものはない。
そのまま俺達も慌てて更衣室へと向かった。