猫の少女に拠り所を   作:ムカサキ

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はざまリサーチ

まず初めに言わせてもらおう。

 俺は別に羽川のように不良を更生させようなんて行ったこともなければ、考えたこともない。そもそも俺は誰でも彼でも助けようとは思えない。それこそ、呪い返しのことなど考慮する器ないってことだ。まぁ、羽川も阿良々木君を無理やり副委員長に据えるための嘘だと思うけど、そこが可愛い。

 

 爆豪にしても、緑谷との確執だとか頂点への執着心だとかそんなものは周りに迷惑をかけない範囲でやってもらいたい。こっちだって降りかかる火の粉ぐらいは払う権利だって持っているのだから。

 

 あのゴミクズ、言うに事を欠いて羽川にクソ眼鏡だと? 

 羽川のいる手前、殴るわけにはいかなかったが到底許される発言じゃねぇ。羽川の眼鏡の一体どこがクソなんだ、言ってみやがれこの野郎。

 あの溢れる知的さ、三つ編みメガネという昭和染みたスタイルからにじみ出る真面目さとそれに反して主張の強いバスト! 

 かといってユーモアがない、ただのマジメ少女かといえばそんなことはなく、幅広い知識から繰り出される知性溢れるジョーク。そんな彼女の持つ包容力の高さ、ちょっと異常なくらいに感じるけど彼女は常人の域など軽く超えているのだ、その愛が俺だけに向けば……失礼。

 さらに、味付けしないだとか段ボール教室机ベッド工作を楽しんだりだとか、ちょっとお茶目なところも含めて彼女の魅力なんだ。

 どれをとっても他の追随を許さぬ彼女に対してクソ眼鏡……

 

 蛙がマッコウクジラに真っ向から挑むようなものよ、愚か者め。

 ちなみに俺がこんなこと言うとちょっと困った顔してどう返してあげようかなと悩む羽川が見たくてこんなクソ寒い冗談を言うこともしばしばだ。

 

 もちろん、アイツが他人にあんな風にしか接することが出来ないカスなのは重々承知だが、だからと言って許すわけはない。

 

 それにアイツは緑谷が個性を得たことも多分知らないだろう。

 相澤が何をするのかは知らんが、グラウンドに集まるってことは何かしら体を使うのだろう。となれば、緑谷も個性を使わざるを得ないはず。

 今日はあいつがあんぐりと口を開け、仰天する姿を拝ませてもらうか。

 

 

 

 

 

 

 

「……20、揃ったな。これから個性把握テストを行う」

 

「ええ!? 入学式は!? ガイダンスは!?」

 

 そんな時間はないと言い切り、生徒の疑問をぶった切る相澤。

 うへー、いろいろカットするにもほどがあるだろ……

 

「ソフトボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ? 個性禁止の体力テスト……合理的じゃない。爆豪、中学の時、ソフトボール投げ何mだった?」

 

 ありゃ? ここは主席がやると思ったのだが……パワー優先の能力じゃないからか? 

 

 

 爆豪が『67m』とだけ簡潔に答えた。相澤は彼にボールを投げ渡す。

 

「じゃあ個性を使ってやってみろ。円からでなきゃ何しても良い。早はよ。思いっきりな」

 

 爆豪は腕のストレッチをした後、大きく振りかぶった。そして『死ねぇ!!』と叫んで投げる。投げた瞬間、大きな爆発音が轟いた。辺りを爆煙が舞い、ボールは見えなくなるほどの勢いで吹き飛んでいった。しばらくした後、相澤が持つ液晶に705mと記録が示される。

 

 あんな奴でも個性だけは優秀だからな……個性が強い分性格が歪んだとも思えるが。

 

 生徒たちからは歓声と共に楽しげな声が聞こえる。皆、個性を使用しても良い体力テストなど経験が無かった。個性を思いっきり使える事に『面白そう!』と声を上げた。

 

「……面白そう……か。ヒーローになる三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい? ……よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう……生徒の如何は教師の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 ……初日に早々除籍すか。どんな進学校も初日で追い出されるなんて聞いたことない。

 

 髪を掻き上げ、ニヤリと笑いながら相澤は凄む。生徒たちは慌てて反論するが、相澤は一切寄せ付けない。

 

「自然災害、大事故、身勝手な敵、いつどこからくるか分からない厄災、日本は理不尽にまみれている」

 

「そういう理不尽ピンチを、覆していくのがヒーロー。プルスウルトラさ。全力で乗り越えて来い。さあ、本番だ」

 

 脱落者を決めるテストが始まった。

 

 

 第一種目 50m走

 

 俺の出席番号は9番、隣のレーンには10番の羽川がいる。

 羽川は既にブラック羽川に変化し、準備万端といった様子で手を地面につけ今にも走り出そうとうずうずしている。

 さっきまで凛とした雰囲気の羽川がいきなり「ニャハハハッ!」なんて叫び出すから何事かと若干ざわざわしたけどな。

 

『ヨーイ』と聞こえ、俺とブラック羽川は構える。スタートの合図と同時に2人は走り出した。

 

 結果、50m走  鬼人狭間 4.40秒  羽川翼 4.28秒。 

 

 身体能力には自身があったが、スピードじゃ一歩及ばずという結果になった。

 終わった後に皆が羽川の猫耳を触ろうと近寄ってきたが、事情を説明してSTOPをかけた。特にブドウ頭がしつこかったため、鉄拳制裁もやむを得ずという結果だ。

 

 

 

 第二種目 握力

 

 こいつは結構自信があった。

 200kgぐらいなら簡単に持ち上げることだって出来るからな。

 整地ローラーは片手じゃちょっときつかったが、それでも力はそれなりのものだ。

 

 結果、握力  鬼人狭間 400kg

 

 ちょっと筋肉繊維がちぎれたがまぁ問題ない。

 しかし、まさかゴリラを超えるヤツがいるとは思わなかった。1位いけると思ったんだけどなぁ……あと、万力は流石にずるいと思う。

 

 

 

 第三種目 立ち幅跳び

 

 流石にこの種目なら1位は確実だろう。だって飛べるんだもん。

 翼をはやし、多少の準備運動を終える。

 こちらもレーンは二つだが、出来るだけ羽川に砂が飛ばないように注意し飛び立つ。

 そのまま軽くグラウンドを一周すると、相澤先生から声がかかる。

 

「おい、鬼人。その状態は何分維持出来んだ」

 

「……2時間くらいなら余裕です。限界の具体的な数字はちょっと……」

 

 その言葉を聞いた相澤が手元の液晶に手入力で記録を打ち込み、ソレを生徒たちに見せる。

 

 結果、立ち幅跳び  鬼人狭間 無限(∞)

 

「無限!? スゲェ! 無限が出たぞー!!」

 

 皆が騒ぐ中、相澤から降りてもいい、と言われたので着陸し、翼を消滅させる。単純な移動には便利だが、基本的に邪魔なんだよなコレ。

 

 

 

 

 第四種目 反復横跳び

 

 こちらは普通に半吸血鬼の身体能力を生かし、ひたすら反復横跳びを行った。

 ちなみに羽川と八百万には男子の目線がほとんど行っていた。俺も見てた、最高ですね。

 

 結果、反復横跳び  鬼人狭間 80回

 

 男子の成績はちょっと振るわないものとなった。うーん、理由はなんなんだろうなぁ……

 ブドウが血の涙を流していたが、それが理由か? アイツ1位だったし。

 

 

 

 

 第五種目 ソフトボール投げ

 

 悲しいかな、俺に蝙蝠を作り出すような力や操作する能力があればこちらでもなかなかの記録を叩き出せると思ったのだが、俺に出来るのは武器を作り出すのがせいぜいだし、範囲も狭い。

 というわけで、鬼の膂力に任せてとにかく思い切りぶん投げることにした。

 本当は槍を作りだして、それにボールをぶっさして飛ばす、桃白白方式も考えたが、あんなのありえないと羽川に正された記憶があるのでな。一つ夢が潰えた瞬間だったよ。

 

 結果、ソフトボール投げ  鬼人狭間 414m

 

 流石に瞬間火力の個性には及ばずの成績となった。

 

 そして俺からだいぶ後の18番目に緑谷が投げる。

 

 現状、単純な身体能力でしかテストを受けていない緑谷は最下位ではないがパットした成績は出せていない。

 多分、ここで使うのだろう……さてはてどんな反応するのかね。

 

 思いっきり振りかぶり……

 

(SMASH!)

 

 指先のみに小さく稲光が走り、ボールをブッ飛ばした緑谷は指の痛みに涙を浮かべるが、変色して腫れ上がった人差し指すらも握り込み、力強い拳を作り痛みに耐える。

 

 結果、ソフトボール投げ  緑谷出久 705.3m

 

 一度、個性で骨折して俺たちがとったのがこれだ。

 未だに個性が制御不能な個性ならば、ダメージを出来るだけ小さくしようというものだ。元が超パワーなんだ、指先だけでもとんでもない威力を出せる。

 それに、雄英ならリカバリーガールもいるし、指先だけの怪我なら後遺症もなく治せると踏んでの苦肉の策。

 本来なら使うべきではない諸刃の剣だが、何もできないでは話にならないため急ごしらえの技だ。

 

「どーいうことだ! ワケを言え! デクてめぇ!」

 

 そこに一人ブチ切れた爆豪が右手を爆破させながら緑谷に襲いかかる。だが彼は、一瞬で相澤に捕縛された。

 

「炭素繊維に特殊合金を混ぜ込んだ捕縛武器だ。ったく、何度も個性使わすなよ……俺はドライアイなんだ。時間がもったいない、次、準備しろ」

 

 うーむ、彼は本当に頭がいいのだろうか。怒りに支配されすぎるヤツはヒーローには向かないと思うのだが……

 

 あと、大砲って……それに勝てる無重力って……

 

 

 

 

 第6種目 持久走(5km)

 

 飛んだ、以上。

 わざわざ走る意味がないのでな。残念だがみんなと同じ条件で戦うつもりはありません。

 

 バイク作ってるヤツとかいるんだから、飛ぶくらいなんてことはないだろう。

 

 結果、持久走  1位 飯田天哉  2位 鬼人狭間  3位 八百万百

 

 流石にスピードはそこまでないので飯田には勝てなかった。

 八百万には作成時間があり、そこで差をつけ何とか勝てた。それにしても生徒が普通に走っている中バイクって危なくないのか? というかなんで運転できるの? とかは聞いてはいけないのだろう。

 

 

 第7種目 上体起こし

 

 反復横跳びと同じでひたすら頑張るしかない。

 多分これが一番苦行だった。唯一の安らぎは上下運動を繰り返すと羽川がどうなるか・・・これ以上は野暮だろう。

 

 結果、上体起こし  鬼人狭間 51回

 

 俺もさらに個性を別の方向にも生かす考えとか持たないといけないな。

 

 

 

 

 最終種目 長座体前屈

 

 伸ばしきった後に腕から血製で棒を作り出し、それで長さ稼ぎをしようとしたがそれは流石にダメらしい。ベロはオッケーって……基準がよくわからない。そういう趣味なのか?

 植物化して伸ばせばOKだと思うのだが、肉体の変化が本当に想像できない。これは個性の特訓を初めて8年くらいたった今でも出来る気がしない。物質創造能力に力を入れていたというのもあるがな。

 

 結果、長座体前屈  鬼人狭間 50cm 

 

 カエルの個性の少女がぶっちぎりで1位という結果になった。八百万は同じ俺と理由で個性を使えず、ここでは普通の成績だった。

 

 

 

 

 これをもって全種目を終了──。トータル最下位が除籍となる。20名全員が集められ、その前に相澤が立つ。峰田の顔は暗い。彼は2種目で好記録をとっていたが、他の単純な身体能力のテストでは女子であり個性的に不利な葉隠にも負けほぼ最下位だった。可愛そうだが恐らく……彼が最下位だろう。

 

「んじゃ、パパッと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので一括表示する……ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」

 

 相澤はハッと鼻で笑いながら結果を表示する。その言葉に多くが『は──!!?』と叫ぶ。だが、八百万など一部の生徒はソレに気付いていたようだ。

 

「あんなのウソに決まっているじゃない……ちょっと考えればわかりますわ……」

 

「そゆこと。これにて終わりだ。教室にカリキュラムなどの書類あるから目ぇ通しとけ」

 

 えー……峰田なんて絶望のあまり自殺しそうな顔してたぞ。

 今はとてもじゃないが映せないような顔してるけど。

 つーかあんなマジな目して言えるなら俳優の才能あると思うぜ。

 

 

 個性把握テスト 最終結果

 

 

 1位 八百万 百

 

 2位 爆豪 勝己

 

 3位 鬼人 狭間 

 

 

 うーむ、やはり推薦組は強しといった成績に終わった。

 不思議なのは俺とか羽川に勝ったからなんか仕掛けてくると思ったら、妙に大人しかったのが気になる。

 しかし、俺としては悔しい結果になった。せめてタンクローリーぐらいは運べるようにならなければ……

 

 

 

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