猫の少女に拠り所を   作:ムカサキ

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はざまトレーニング 上

個性把握テストを終えて、今日の自分の行動について思い直す。

 爆豪に対して悪いなんて気持ちは1ミリたりとも湧いては来ないが、少々大人げないというかやりすぎたように感じた。短絡的だった。

 もし爆豪が俺に手を出したら、相澤が間に合わなかったら、間違いなく退学処分となるだろう。いくら優秀でも、天下の雄英に入れる能力を持っていても半ば(ヴィラン)のような奴を在籍させるわけにはいかないだろう。雄英にも守らなければいけないメンツくらいはあるだろうしな。

 本当に爆豪が退学になっていたら、間違いなく羽川は引きずってしまうだろう。

 羽川に汚点など1ナノもないが、それでも彼女は責任を感じてしまう。そのことを考えずに感情で動いてしまった俺もまた、爆豪と同じ穴の貉なのだろうか。

 

 俺がやるべき行動はいかに羽川にストレスをかけず、彼女を守ることなんだ。自分の感情を優先してしまったことが恥ずかしくてしょうがない。

 今後はもう少し冷静に行動できないといけないな……

 

 話は変わるが、明日は雄英新入生待望のヒーロー基礎学だ。

 今日のテストじゃ羽川の力量を量るには不十分だったしな。実戦やんのか座学やんのかはわからないが、実戦ならば羽川の真骨頂が見られるだろう。俺でさえも羽川が知識も含めたフルで戦うとこなんて見たことないんだ。明日が待ち遠しいぜ。

 

 

 

 雄英高校、2日目

 

 午前中は必修科目である普通の授業が行われる。教師はなんとプロヒーローなのだ。ヒーローやって教師もやって、彼らの仕事量には本当に頭が下がるね。

 プレゼント・マイクの普通な英語の授業を終えて、お昼休みに入る。

 学食へ行き昼食を楽しむものや談笑する者も多いが、彼らの会話の内容はもっぱら次の授業だ。

 プロヒーロー養成学科の最高峰の場所で行われる教育は一体どんなものなのか、期待とドキドキで胸を膨らませていた。

 

 

 本鈴と共に教室のドアが力強く開いた。

 

「わーたーしーがー!! 普通にドアから来た!!」

 

 ドアから現れたのはオールマイト。ドラマツルギーのような筋骨隆々な逞しい身体、力強く跳ね上がった二つの前髪、威風堂々とした佇まい、そして鳥肌がたってしまう程の異なった画風。

 この肉体から繰り出されるパンチ一つで天候を変えるほどの力を持つらしい、噂程度だけどな。 

 

「オールマイトだ! すげぇや、本当に先生やっているんだな!」

 

 意気揚々と教壇に立ったオールマイトは、今日の課題が書かれたプレートを力強く突き出す。そこには『BATTLE』と書いてあった。

 

「早速だが、今日はコレ! 戦闘訓練!! そしてそいつに伴って……こちら! 入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた……戦闘服(コスチューム)!!」

 

 教室の壁が迫り出して、コスチュームが入ったロッカーが現れる。これには全員のテンションが上がる。中には立ち上がって喜ぶクラスメイトもいる。

 

「着替えたら、順次グラウンドβに集まるんだ!」 

 

「はーい!!」

 

 

 

 男子更衣室でコスチュームに着替える。

 コスチュームについては相当悩んだ。憧れのヒーローが学ラン姿なせいで、それをコスチュームにするのはいかがなものかと感じる。

 だからといって、アロハ姿じゃ夏のヒーローだと勘違いされそうだし、何より自分が着てて気持ち悪く感じる。

 

「鬼人君……それほんとにコスチューム?」

 

 完成品を見ていると緑谷が横から声をかける。

 確かにヒーローともあろうものが、詐欺師の服装を真似たと知られちゃ色々と申し訳なさが出るが、それでも結構様にはなってると思うぜ。いざとなりゃ囮にも使えるしな。

 

「ん、まぁ派手なのは受け付けないからよ」

 

「『漆黒』を纏いし者か……」

 

 烏のような風貌をした全身マントが呟く。そんな厨二チックな趣味はないのだが……

 

「結構着込むけど、スプリンターぐらいなら軽く抜けるくらいには動きやすいし、活動に支障は出ないよ」

 

「吸血鬼にその恰好じゃ不吉すぎるけど……」

 

 大丈夫大丈夫、マフラー巻いただけの浮浪者のような恰好が担任やれる世の中なんだ。このくらい平気平気。

 

 それに、吸血鬼とコートのような服装は結構相性いいと思うぜ。

 

「オィィィ……鬼人よぉ……オイラ、昨日から聞きたいと思ってたけどよぉ」

 

 ゆらゆらとブドウを揺らしながら近寄る不審者がいた。

 その目は怒りに満ちていた。

 

「あのゴックンボディの猫耳巨乳眼鏡とどういう関係なんだぁ!!!」

 

 なんて下品な言葉の羅列なんだ、確かに羽川の特徴しか言っていないが。

 その怒りに満ちた言葉に緑谷を含めた男子全員が耳を傾け、俺の返答を待っている。

 どう返そうかな……とりあえずニヤッってしとくか。

 

「!!! テメーやっぱりそうか!!! チクショー、数少ない女子がもう予約済みかよ!!!」

 

 ちょ、バカ! あんまし騒ぐな! 隣に羽川いんだぞ。

 無理やり口を塞ぎ黙らせるが時すでに遅しだ。

 

「へー、鬼人って羽川と付き合ってんのか! 爆豪に絡まれたときもかばってたしな」

 

「不、不純異性交遊ではないのか!」

 

 ま、まずい。これ以上騒がれると流石にバレかねん。俺のアホ! ちょっとした冗談のつもりが……願望のつもりががが。

 

「あ、いや、そのー……もう時間だ! 早く行かないと!!!」

 

 そう言い逃げるように訓練場であるグラウンドβへと向かった。

 

 

◆◆◆

 

「えーっ!羽川さんって鬼人君と付き合ってるのー!?」

 

芦戸さんの大きな声が更衣室に響く。

 

「い、いや……その、付き合ってはいませんよ」

 

どこか強く否定できず、やんわりとした返答をしてしまう自分がいます。

 

「その言い方!やっぱし気はあるの?」

 

その問いを彼に聞かれたかどうか心配になりますが、どうやら向こうの喧騒の声によって届く前にかき消されたようです。

 

「進んでるわね、羽川ちゃん」

 

「ハ、ハレンチですわ!」

 

蛙吹さんや八百万さんも興味深そうにそう言っており、収拾がつかなくなってきています。

もぉ…鬼人君はホントに…

 

◆◆◆

 

 

 会場では気まずそうな顔をした俺と羽川二人が周りから浮くようにポツンとしていた。最悪だ、どうやら女子側にも聞かれていたようだ。

 

「その……ゴメン。峰田が煩くてちょっと揶揄ったつもりが……」

 

「……女の子にあんまり恥かかしちゃいけないんだよ」

 

 はい。重々承知しています。

 

「もう……鬼人君の冗談は今に始まったことじゃないけど……あんまりおふざけが過ぎると怒っちゃうぞ」

 

 傍から見れば可愛さだけを享受できるが俺としてはちょっと震えが止まらない。

 エネルギー吸いつくされて枯れ木になる未来が見える。

 

「ンー……どうして羽川少女と鬼人少年が気まずそうなんだい?」

 

 状況がつかめないオールマイトも気まずそうにしている。というかクラス全員が若干気まずそうだ。おのれ峰田め……

 

 

 それより! と空気を一新させるようにオールマイトが訓練の詳細を話す。

 

 オールマイトの初めてのヒーロー基礎学は、屋内での対人戦闘訓練であった。生徒は『ヴィラン組』と『ヒーロー組』の2対2のコンビに分かれて屋内戦を行う。

 

 状況設定は『ヴィランがアジトに核兵器を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている。ヒーローは制限時間内にヴィランを捕まえるか核兵器を回収する事。ヴィランは制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえる事』である。

 

 核兵器の回収はタッチする事。捕まえるには捕縛テープを相手に巻き付ける必要がある、との事だ。

 

 コンビおよび対戦相手はクジで選ぶ流れとなった。俺が引いたクジには峰田と書かれていた。

 最悪だ。くだらない冗談は運命を狂わせる、今回俺が得た教訓だ。

 

 ちなみにだが、羽川のパートナーは八百万だそうです。目も当てられないことになりそうだ。

 

 

 第1戦、ヒーロー側、緑谷出久・麗日お茶子 対 ヴィラン側、爆豪勝己・飯田天哉。

 

 私怨に満ちた爆豪と見返したい緑谷の応酬で非常に激しい戦闘となった。

 細かい個性の制御や動きなど悔しいが、爆豪の才能は本物だった。

 しかし、爆豪の動きやパターンを読み動ける緑谷と油断と慢心だらけの爆豪とでは、緑谷に分配が上がり麗日とのコンビネーションもあいまって核兵器の回収による勝利となった。

 しかし、個性の使用と爆豪の攻撃のダメージから訓練終了時にはもう立ち上がることも出来ないようだった。

 

 そして4戦目でようやく俺に順番が回ってきた。

 せめてここでいいとこ見せないとな・・・相手は青山・芦戸ペア。峰田の個性も聞いたし、狙うは完封勝ちってとこかな。

 

 

 

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