第4戦、ヒーロー側、鬼人狭間・峰田実 対 ヴィラン側、青山優雅・芦戸三奈
個性把握テストじゃ特に目立った記録はなく、個性を使うタイミングの無かった二人が相手。パワータイプではないことは確定しているが、個性が分からないというのは結構面倒だな……
しかし、問題はない。峰田の個性だけ聞けば基本的には罠やフィールドづくりが得意な個性だと感じたが、こいつは相当化けるぜ。
峰田自身はあまり個性を良いものだと感じてはいないようだが、俺みたいなパートナーがつけば超絶的に害悪な個性へと変化する。それも、相手に一切傷をつけないヒーローにもってこいの技になる。
訓練場所となる建物の前で訓練スタートまで待つ。
「おい、峰田。お前のせいで羽川に恥かかせちまったんだ、完璧に勝つぞ」
「裏切者に加担するのは癪だけど、オイラも良いとこ見せないとな」
その意気だぜ、峰田。羽川の件は永遠に恨むがな。
「でもよ、オイラの個性じゃくっつけるだけだぜ? 突入する側じゃ待ち伏せも罠も置けないしよ……」
「お前は勘違いしてるぜ、本来もぎもぎは単体じゃなくコンビでこそ真価を発揮する。物体操作系の個性と組めば最強クラスの害悪個性になるんだ。それを皆に見せつけてやるんだよ」
パートナーが弱気じゃ困る、それにお前は心強い
「それで一応確認しておくけど、どんくらい出せるんだ? それ」
「んー、取りすぎると頭皮から血が出るけど……数はわかんねぇな」
具体的な数字は不明……でもデメリットは血が出るくらいか。よし、思い切って20個は貰おうかな。
「じゃあとりあえずは20個くれ、限界超えてもそのくらいは最低限必要だ」
「そ、それは良いけどよ、出してもそんな数持てないぞ。それにもぎもぎはオイラしか触れねぇよ」
その懸念なら問題ない、と自分の掌を傷つける。
峰田が何してんだと慌てるが、「まぁ見てな」と抑える。
「血製『群体』」
流れ出る血は空中に留まり、20個の槍先へと変化する。
もし峰田の個性知ってるなら、羽川とか緑谷ぐらいなら流石にこの時点で俺の勝利を確信しててほしいね。
「これ全部にもぎもぎを刺してくれ、槍先全体が隠れるくらいに」
「い、いいけどよ、こんなもん相手にぶつけたら串刺しにならねぇか?」
ごもっともな不安をぶつける峰田。要は雪玉に石入れてるようなものだ。槍がもし突き抜けたら一大事、ほんとに串刺しだろう。
「問題ねぇよ。もぎもぎつけた後に変形させて球体にすれば飛び回り絶対離れない
しかもくっつけても飛び回るから、大体5個ほどつければ普通の大人くらいなら引っ張れる。世界一強いトリモチってとこだな。
時間を確認するともうすぐ訓練スタートだ。説明に時間が掛かったため、急いで峰田にもぎもぎをつけてもらう。
準備は完了した。それじゃ正義執行と行きますか。
ここから先は彼らの名誉のため、ダイジェストで送らせていただくが本当にボロ勝ち出来るとは思わなかった。
そもそもこの雄英に入れるだけでも超エリートなんだからこのくらいの策は簡単につぶしてくると思ったのだが……
俺達が建物に突入し、どうやら待ち伏せで不意を突いて先手を取ろうとしたようだが、俺達は基本的にまず操作したもぎもぎを前に行かせクリアリングをしていたため、不意打ちを喰らわずにそのまま6個ほどもぎもぎを消費したが芦戸を拘束し確保テープを巻いた。
その際に峰田が役得だろとかなんとか言ってセクハラ行為に及ぼうしたが、オールマイトからの注意を受け断念した。というかヒーロー志望が堂々と犯罪行為をするな。何がリトルミネタはバンザイだ、コイツはアララギズムを受け継ぎしものなのだろうか。
こうして一人確保したのちに、同じように核兵器部屋で潜伏していた青山も簡単に制圧した。彼の個性は1直線にしか打てず、おまけに自分が向いた方向のみで腹痛になるという欠陥を抱えていたため、ホントに完封勝ちになってしまった。
俺達の戦闘訓練はこれといった見どころも派手さもない戦闘訓練となった。そもそも互いに発動型でおいそれと人間に打ち込めるものでもないのだろう、その点は同情した。
まぁ、次はもっと悲惨な目にあうだろうからこんなの序の口だろう。
考えないでも分かる、たぶんあのコンビがこのクラスじゃ最強だろう。個性だけなら轟とかは最強クラスだが、『ナイスオッパイコンビ 著 峰田実』のナイスコンビネーションを受けなきゃいけないなんて、前世何しでかしたんだっていうレベルに可哀想だ。
クラスの皆は八百万の個性にのみフォーカスを当てているようだったけどな。
第5戦、ヒーロー側、上鳴電気・耳郎響香 対 ヴィラン側、羽川翼・八百万百
こうして哀れな対戦がスタートした。
◆◆◆
私の個性である「創造」は体内の脂質からあらゆる無生物を創り出す事が出来る個性ですわ。作成するには対象物の分子構造まで理解する必要が有り、作成することが出来るまでには時間は必要ですが、武器や罠、救助道具も作成可能なサポート向けの個性だと考えております。
欠点は生成・構築するまでタイムラグがあるため初動の機動性に欠く事や、脂質を用いる為使用しすぎると動けなくなる事、動揺や緊迫感で思考がまとまらないとうまく発動できない事等がありますが、この戦闘訓練のルールでは準備時間もありますので、問題はありません。
そのためこの訓練でヴィラン側に付けたのはヒーローを志すものとしては少々違和感はありますが、分はこちらにありますわ。
「以上が、私の個性についてですわ。くじ引きの結果ですけれども、ヴィラン側につけたのは幸運だと思います」
「そうですね、そうなるとまずはヒーロー側の個性を少しでも無力化出来るようなものを作りましょう」
え? 罠などはよろしいのですか? 私の個性ならば相手をこちらまで来させないほうが得意だと思うのですが。
「理由はいくつかありますが、一番は耳郎さんの索敵能力を消すことですね。彼女は音で状況を把握する能力を持っているから、まずはこの建物の数か所に巨大な音を出す道具を設置しましょう。そうすれば彼女の索敵能力も多少は軽減できると思いますし、聴覚の良い個性の方は雑音を好まない方が多いので集中力を欠くことも出来ます。耳郎さんは訓練開始直後は必ずそのサーチをするでしょう、訓練開始から数秒後にタイマーで時間をセットして音を出せるものがあればいいのですが」
な、なるほど……
「スピーカーなら作成可能ですわ」
「それでは、10台ほど設置しましょう。それぞれの部屋にも軽く捕獲テープを配置してあわよくばも狙いつつですね。それと、閃光弾のようなものも作成可能ですか? 時間はかかりますが説明も可能ですが……」
……対戦相手が決定してそれほど時間も経っていないのにこうも対策が出てくるのでしょうか。
それに私のような個性でもないのにどうして閃光弾の分子構造を知っているのですか?
「りょ、両方とも作成可能ですわ」
「分かりました。窓などの外部からの対策も必要ありませんし、ひとまずはこれらの設置から行いましょう」
そうして私たちは訓練場となるビルに入り、罠のセットを行いました。
ドアを開けたときにピンを抜くような設置方法などもレクチャーしてもらいましたが……なぜあれほどの知識量を持っているのでしょう。
流石は雄英、一流の者が集まる場ですわ。
そして訓練がスタートしました。
セットしたスピーカーが一斉に鳴り出し、これでは音による索敵は不可能でしょう。
「耳郎さんの対策は完了しましたが、問題は上鳴君ですね。罠も配置はしますが、そこまで期待はしないようにしましょう」
「それではゴムのマントなどでシャットアウトし、接近戦を挑みますか?」
顔を狙うような殿方ではないと思いますし、正確な放電が出来るとは想像できません。
「それは私が受け持ちます、接近戦ならば私の方が分はありますので。閃光弾も5個ほどいただければ十分に時間は稼げます。八百万さんはこの部屋に大量の閃光弾とゴムマットを敷いてください」
地面からの電流を防ぐにはそれだけで十分だと語る彼女。
ひとまず人一人が包まれるマントを作成し渡す。
「それでは、ここからはブラック羽川さんが連携を行いますのでよろしくお願いします」
そう言って彼女の姿が変わる。個性把握テストで見たブラック羽川という人物へ変化する。
「ンニャ──ー! ようやくオレの出番か」
先ほどとは雰囲気が一変し、荒い口調を使うブラック羽川さん。
「ニャッハハハ! ご主人はどうも弱気にゃようだが、オレに掛かればあんにゃ連中一人で捕獲できるのによぉ」
「な、単独で挑むのは流石に無理があるのでは」
「いや、今回はひとまずはご主人の要望を飲むにゃ。しっかし、うるさいにゃあ…イヤホンあってよかったにゃ」
立派な猫耳をひくひくさせる彼女に疑問をぶつける。
「その…失礼なのですが、上のお耳は大丈夫なのですか?」
「ん?あぁ、こっちはオンオフ効くから問題にゃいにゃ、こっちは設定的要素にゃのかにゃ?あんまり考えたことにゃかったけど」
少々疑問を残す答えではあったが、その返答にほっと胸をなでおろし、マントを着終えた彼女に閃光弾を渡す。
閃光弾が起動する音が下層から聞こえてくるため、まだここからは遠いだろう。
「それじゃあ揶揄ってやるかにゃ、んじゃ連中が近づいてきたら早めに教えろよ」
「え、ええ! それではこちらはお任せください」
そうして彼女が出ていき、彼らを探し始めた。
モニター前のオールマイトとクラスメイト達は彼女たちの行動に若干引き気味で感心していた。
「うへー、八百万達と当たらなくてよかったー。上鳴達、閃光弾とスピーカーでだいぶ参っちゃてるよ」
「たどり着けんのか、アレ?」
「あ、羽川さんが変身して部屋から出た」
「接近戦は彼女だけか……」
「俺達の場合にはどんな罠が置かれていたのだろうか……」
それぞれが訓練について感想を言ったり、自分達が当たった場合のシミュレーションをするものもいる中、一人だけは当然だなという顔をしていた。
(やっぱし、核を見つけるのも無理そうだな……相手の肉体的・精神的疲労を負った後に接敵か……当たらなくて良かった)
画面ではブラック羽川がヒーローたちを探し周り、ビル中を駆け巡っている。
「お、見たまえ! 羽川少女がヒーロー組を発見したぞ!」
オールマイトの声に羽川のカメラに目線が集まる。
閃光弾を投げたブラック羽川は耳郎に急接近し障る。
モニタールームは先程までの雰囲気から打って変わって、戦闘が始まって盛り上がり始める。
「特に攻撃とかしないですぐに逃げてったぞ」
「でも、耳郎さんがへたり込んでる!」
上鳴と耳郎ペアは今の状況に慌てふためき隙だらけだが、追撃を仕掛けない。
(アイツ、遊んでんな……気分屋なのは仕方ないが、あとで羽川に叱られるぞ)
このままヒーロー組は耳郎のダウンと罠による時間稼ぎにより、核兵器までたどり着くことが出来ず、時間切れとなった。
『ヴィランチーム、WIN!』
オールマイトの声が建物全体に響き渡り……羽川・八百万チームは勝利した。