わらしべ長者で宇宙海賊 【旧版】   作:岸若まみず

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第20話 釣り餌と猫とパワードスーツ

迷歴二十二年、四月。

 

学校には眩しいぐらいに爽やかな新入生達が入学し、教室や学食で初々しく騒々しく、新たな人間関係を育んでいる。

 

だが学校という環境に新しく入ってくる人間がいるという事は、同時に出ていく人間、社会という新しい環境に入っていく人間もいるという事だ。

 

俺とマーズが久しぶりにやってきたダンジョンという社会にも、そういう人間が溢れていた。

 

 

「いいか、言うまでもなくダンジョンは危険な場所だ! それはこの比較的安全な東四(とうよん)ダンジョンも同じ事! わからなければ、いつでも! どんな事でも! 最強クラン『荒川アンダー・ザ・グラウンド』の主席(・・)ィ! 教導官のこの玉城(たまき)に聞け!」

 

「はいっ! 玉城さん!」

 

「玉城さん! 武器、ほんとにこの槍で大丈夫ですか? 玉城さん!」

 

「いける!」

 

「今日って定時帰りいけますか? 友達と飲みがあって」

 

「知るか!」

 

「玉城さん! クロスボウって弦引いたまま持ち歩いちゃいけないんですか?」

 

「教本読め!」

 

「あのぉ玉城さん、この支給のブーツ靴擦れがあってぇ」

 

「そのブーツ、ちょっと癖あるからね。後で柔らかくする方法教えてあげようか? てかメッセやってる? なんでも相談していいから」

 

「あのっ! 玉城さん!」

 

「なんだ!」

 

「あれ、なんですか……?」

 

「あれは……あれは……なんだろなぁ……」

 

 

新人冒険者達が指を差す先には、俺がいた。

 

体の前には怪しげな猫のマーズを抱き、背中には怪しく発光するバックパックを背負い、額には怪しすぎるサークレットを付け、その上で怪しいを通り越して意味不明な鈍色に光る外骨格に搭乗した、普通の冒険者とはかけ離れた姿。

 

新人達はあまりにも異質な俺に恐れ慄き、混雑したダンジョン前広場も俺が歩けば自然と道ができる有様だ。

 

歩くたびにギッチョンギッチョンと面白おかしい音を立てながら、俺は顔を真っ赤にしながらうろうろと歩いていた。

 

正直言って、少々……いや、かなり恥ずかしい。

 

 

「やっぱ、目立ってるよな……」

 

「目立つのが目的でしょ、自衛隊を釣らなきゃいけないんだから」

 

 

マーズは赤面する俺の腹の前でそんな事を言いながら、知らん顔でスマホでタワーディフェンスのアプリをやっていた。

 

 

「このパワードスーツって必要だったの?」

 

強化外骨格(レイバーユニット)ね。トンボがなんか乗り物欲しいって言ったから姫が作ってくれたんじゃん」

 

「それにしたって、自転車とかさぁ……」

 

「あんな原始的なブレーキしかない乗り物でバリア状態で人轢いたら、しばらくお肉食べられなくなるよ」

 

「うへぇ」

 

「それなら衝突防止用の姿勢制御システムも搭載されてるから安心だよ。自衛隊との交渉材料にもなるし」

 

 

そう言われれば、自転車よりもこっちのがいいかも。

 

男の子の夢そのものなデザインだしな、人目さえなければだけど。

 

 

『ボーイズ、もう入っていいよ。鼠は餌に食いついた』

 

 

姫からスマホにそう連絡があったので、俺はふらふら歩くのをやめた。

 

そしてバックパックから二メートル近い金てこバールをゆっくりと見せつけるように抜き、東四ダンジョンの入り口へと向かう。

 

 

「じゃ、行こうか」

 

「下に誰か知り合いいるといいなぁ」

 

「トンボさぁ。別に知り合いなんかいなくたって、適当に誰かに話しかけて世間話でもすりゃあいいじゃん」

 

「それ、強化外骨格着てうろつく事よりハードル高いかも」

 

 

俺は武器代わりの金てこバールをぐっと握り、冒険者のふりをしてついてくる自衛隊の調査班を引き連れてダンジョンのダイブを開始した。

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