紫色の曼珠沙華をあなた達に   作:猫又提督

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キャラ崩壊させてる張本人が言うのもなんですけど、暁ちゃんが暁ちゃんしてなさすぎて大丈夫かなぁとおもう今日この頃です。
キャラクターをバランスよく会話させるのは本当に難しいですね


自分たちの立場

 偵察作戦が始まって一週間が経ったが、報告は初日から変わらない。依然として変容のない状況に彼はいよいよ一度報告をしなければならないかと思案していていた。グラーフ達からの報告をもとに制作した大本営向けの報告書を片手に空を仰ぐ。事実今の現状は非常に都合がいいと言える。ノーマル艦の湧きはエリートの湧きに加えたものではなく割合、つまり数はそのまま半分以上のエリート級がノーマルに格下げになっている。姫級も確認できない現状、奪還にはこれ以上ない好機だ。唯一の脅威である潜水艦は駆逐艦や海防艦を専攻させて掃海させればいい。そう考えた彼は、偵察時の写真ファイルを同梱させて大本営に報告書と称したメールを送った。

 

 本日のグラーフの護衛であった夕立と初雪は片方は実にぐったりと、もう片方は何事もなかったかのような顔をしている。夕立はそのままソファに横たわり、初雪はそのままゲームを起動した。

「つ、疲れたー」

「あら、護衛中に敵とでも出会ったの?」

「いや、ただ報告の多さに参ったらしい」

「それだけ?もう、強くなりたいんなら情報だけでへばらないの。初雪だって大丈夫なんだから」

「な、なんで初雪さんは大丈夫なんですかぁ」

「…ゲームに比べたらあれぐらい余裕…」

「いや絶対そっちの方が楽でしょー」

 初雪の手が止まった。タイトル画面のまま動かない。

「…ゲームの侮辱は許さない。お前も一緒にやれ…」

「え、えぇ!ちょっと、私疲れてるんですけど!」

「いいからやれ」

 初雪はダレる夕立をひっぱりコントローラを握らせる。無理矢理にでも夕立にゲームをやらせるが疲れ切ってる彼女がまともにゲームをプレイできるはずがなく、最序盤ですらまともに進む事ができていない。その様子に初雪はますますヒートアップし夕立にクリアさせようとする。

「あいつってあんなアグレッシブな部分あるんだな」

 少し遠くから眺めていた摩耶がそう呟いた。

「初雪さんはゲームのことなら結構ああなりますよ」

「昔下手にちょっかい出したら『ゲームの楽しさを分からせる』って徹夜でやらされたわ。あれはただきつかったわ…」

 暁は頬杖をついて苦笑いを浮かべた。

「あ、夕立ちゃん帰ってたんだ」

 散歩をしていた睦月が戻ってきた。

「ゲームしてるの?睦月もやるにゃしい」

「む…いい心がけ。さあ、やるといい」

 初雪は自身が持っていたコントローラを睦月に譲った。その後初雪によるゲーム講座は夜中まで続き、睦月の助けでようやくステージを一つクリアしたところでなんとか許してもらった

 

 翌日、司令官はリビングで全員に向けて話をしていた。

「現在行なっている偵察作戦だが、大本営の意向で作戦を繰り上げて明日から奪還作戦に移行することになった」

「予定じゃ今週まで偵察を行う予定だったのでは?」

「ああ、だがお前らもわかっての通り現在ソロモン諸島は敵戦力が大幅に減少している。一週間戦力が増強する様子もないので、今のうちにたたこうってことだ。明日から大本営の艦隊もやってくる」

「私たちだけじゃないんですか。あれぐらいなら自分たちでも対処可能だと思いますけど」

「潜水艦については全く分からない。お前らだけだと、潜水艦を警戒しながら攻略するのは時間がかかる。そもそも現状はイレギュラーな事態だからな。姫級がまた湧いてくるかもしれん。だから短期決戦で奪還する必要がある。そういうことだ」

「なるほどね」

「あと、思ったより広範囲にそれこそソロモン諸島全体に敵戦力の減少がみられるから今回でソロモン諸島全体、ブーゲンビルまで奪還する予定だ。つまりその分大本営から多くの戦力が来るんだ。で、家が足りん。だからお前らは外な」

「は?なんで」

「はいはい。分かったわ」

 摩耶が疑問をぶつけようとすると暁はそれを遮るようにして話を終わらせてしまった。彼はそのまま二階に戻っていった。

「……なんであたしたちが外なんだよ」

「あなたも分かってるでしょう。私たちは犯罪者よ。社会的地位は圧倒的低いの。あっちは圧倒的上。待遇がはあっちが優先されるのよ」

 暁の言葉に摩耶は何も言えなかった。新人組はなんだか腑に落ちない顔をしているが前々からいた組は全然疑問には思っていないようだった。摩耶は暁の方を見つめていた。暁はその視線に気づき笑みを浮かべながら言った。

「なに?意外だった?私なら抵抗すると思ったの?ごめんなさいね。私ってそんなにプライドとかそういうのないの。私はただ今を安全に生きたいの。ああでも安心して。生への執着はあるから死にはしないわよ」

 全員口を閉ざしてしまった。誰も動けないような重い空気が漂う。どうすればいいのか、グラーフはそんな空気を破って声を上げた。

「ほ、ほら、もう決まってしまったことにウダウダいうもんじゃない。明日からしばらく家に入れないんだ。早く準備しよう」

「そうですね。前にも似たような事があったのでこんなこともあろうかとガレージにキャンピング用具があるんですよ」

 秋月も同調してみんなを動かそうとした。その言葉にゆっくりと動き出した。とりあえず秋月についてガレージに行くと端っこの方に何か纏められていた。以前からあったものの誰も興味を示していなかった。どうやらこれがキャンピング用品らしい。覆っているブルーシートを取るとそこには畳まれたテントらしきものがいくつか置いてあった。

「これがテント…ですか」

「ええ、そうですよ。あ、でも人増えちゃったから足りるか分かりませんね。ちょっと外で広げてみましょうか」

 秋月はテントを持ち出し外に出た。試しに広げてみると一人では十分な大きさであった。そのテントが三人分。明らかに足りない。

「足りない、ですね」

「そうね。じゃあ取りにいきましょうか」

「え、取りに行くって」

「そのまんまだけど?ここってね、前まで観光地だったのよ。キャンプができる場所があったらしくてね。そのツアーをやってた会社にテントが置いてるの」

「それを盗むのか?」

「盗むなんて人聞きの悪い。ちょっと拝借するだけよ」

「そ、それほんとにいいんですかぁ?」

「銀蝿してたやつが何言ってんの」

「う、そ、それはー、まあ」

「でも本当にいいんですか?ここの人たちって避難してるからいずれ戻ってくるんじゃ」

 夕立は訪ねる。暁も秋月も別に大丈夫と言ってくる。グラーフまでも「まあ、うん。最後に返しておけばいいだろう」と賛成していた。仕方なくテントを回収しに行く一行だがその前に例の会社は鎮守府の敷地外にある。外に出るには司令官の許可が必要だ。代表して暁が司令官の元へ出向き許可を申請しに行った。

「…というわけで外に出るわ」

「あぁ、はいよ。全員で行くのか」

「ええ、そうね」

「じゃ、これ持ってけ」

 彼は小型の無線機を彼女に手渡した。

「呼んだらすぐに出ろよ。じゃないと脱走したとみなすからな」

「はいはい。分かってるわよ」

 手っ取り早く許可を得て彼女達は鎮守府の敷地外へと出た。敷地とは言っても特別壁があるものではないので設定した時につけた標識をまたげばそこが敷地外だ。この島はとても小さい。一周するのに一時間もかからないほどだ。目的地は海岸沿いに数十分歩いたところにある建物。ドアに日本語ではない言語で色々書かれていた。

「ここか?」

「そうよここ。ここの奥にテントが置いてあるの。それ以外にも取るものがあるんだけどね」

 開かなくなって久しい自動ドアをこじ開ける。中は随分と埃っぽく床には足跡が薄く残っていた。これはきっと以前暁達がやってきたものなのだろう。それに沿うように奥へ進んでいく。立ち入り禁止とでも言いたげなマークが貼ってある部屋に入ると、多くのキャンプ用品が置いてあった。テントはもちろんグリルや木炭も置いてある。

「好きなのをとって行きなさい。私たちはこっちを運ぶから」

 そう言って暁は小道具へと手を伸ばした。秋月も同じく小道具を物色する。グラーフは木炭の入った段ボールを手にした。それをみて摩耶もテントを選び出し、睦月もノリノリで選んでいる。夕立も渋々積み上げられたテントに手を出した。

「あ、あったあった。よかったちゃんと人数分ありそうですよ」

 秋月が手にしたのは飯盒。手に三つ持っている。

「燃料はどれぐらい持っていこうか」

「そうね。作戦がいつ終わるのかわからないから多めがいいかしら」

「足りなかったらまた取りに行けばいいですよね」

「また許可申請するのが面倒だわ。作戦が始まったら許可が下りるかわからないし出来るだけ持って行きましょう」

「…そうですね。そうしましょうか」

「ほら初雪も持て」

「…そっちがいい」

 初雪は秋月の飯盒を指差す。重い木炭を持ちたくないらしい。

「それぐらい持ちなさいよ」

「コントローラより重いものは持てない」

「嘘つけ、あなた昔ゲーム機本体にソフトをたくさん一度にかっぱらったでしょうが」

「あれは昔の話。今は違う」

「屁理屈言わないの。はいこれ持って」

 暁は木炭の入った段ボールを一つ寄越した。自身は二つ持っているので多少は軽くしてあげたようだ。二人が言い合っているうちに三人もテントを選び終わったようだ。全員何かしら持って建物を出る。

「作戦いつまであると思います?」

「数週間はあるんじゃないか?」

「なら5箱でも十分ですかね」

「うーん、多分?でも足らなかったら面倒だしもう一往復しましょうか。というかあそこの段ボール全部持ってってもいいんじゃない」

「え”」

 初雪があからさまな声と顔をした。

「またいつこんな事が起こるかわからないし、それなら今やっておくほうが丁度いいでしょ」

「ならあっちの三人にやって貰えばいい」

 そう言って初雪は後ろをついてくる摩耶、睦月、夕立を見た。後ろの三人には話が聞こえていなかったようで首を傾げている。

「勿論あの三人にもやって貰うわよーまだまだありそうだから台車持っていって全員で運び出すわ」

「えぇ〜」

「えーじゃない。やるの」

 結局その後、六人で台車を転がしながら二往復ほどしたのであった。

 

 時間は順調に流れて、夜になった。暁は司令官の部屋へ一人入っていった。なかでは司令官が一人PC相手に格闘しているのが見えた。

「ノックをしろ」

 彼は彼女を見ずに言った。声に多少の焦りが見える。

「はいはい」

 そう言って彼女はすでに開ききったドアにノックをした。

「入る前にしろよ。で、なんだ。俺は今見ての通り忙しいんだが」

「最近全然遊びにこなかったからちょっと来ただけよ。司令官に用はないわ」

「そうかい。気が済んだら帰れよ」

 彼女は本棚の一角から一冊漫画を引き抜きソファに座った。そのまま寝転がり漫画を開く。

「…おいお前それ今どこから出した」

「んー?そこの本棚から」

「は?てめえいつの間に。俺の本棚はお前のじゃねえんだよ。自分の部屋に収めてろや。なんで俺んとこに置いてんだ」

「別にいいじゃない。私の部屋に本棚ないの」

「お得意の空き巣で本棚ぐらい掻っ払ってきたらどうだ」

「はいはい。忙しいんでしょ?私に構ってないでやる事やったら?」

「こんの……はぁ」

 彼は溢れる気持ちを抑えて諦めた様子で座り込んだ。再び格闘が始まり、部屋にはキーボードを叩く音とページを捲る音だけが広がる。時折暁があくびをする声や、司令官が背伸びをする。まるで動きがない時間がゆっくりと進んでいった。やがて彼は仕事が終わったのかPCの電源を落とし立ち上がった。暁の元まで歩み寄り漫画を取り上げた。

「あ、ちょっと。まだ読んでる途中なんだけど」

「俺はもう寝るからお前も出て行け。これもお前んところにしまっとけ」

 彼は取り上げた漫画を再び渡した。そのまま本棚へ向かい、ほかに余計なものが収められていないか見てみると、隅っこの方にまだ何冊かあった。全て抜き、暁に押し付ける。

「本日の営業は終了しましたんでさっさと出てけください」

「もうせっかちね」

「俺の部屋は俺だけのもんだ。そもそも特別な事情でもない限りお前らは入ってこれないんだよ」

「あら、なら私を入れてくれるのは司令官が私のことを好きだからなのかしら」

「どこをどう解釈したらそんな言葉が出てくるんだ。お前が何言っても入ってくるからもう諦めてるんだ」

 それだけいうと彼は暁の背中を押して、室外へと追いやった。ドアを閉めようとしたその時、一つの疑問が思い浮かんだ。

「おい、お前どうやって漫画を持ってきたんだ。嗜好品の欄に漫画なんて書いてなかったはずだぞ」

「それはねー…秘密」

「は、おい!ちょ、待て!」

 彼が追い詰めるよりも先に暁は逃げるように自分の部屋に入ってしまった。追おうとしたがすでに疲れていてその気も失せていった。仕方なくため息をつき彼は扉を閉めた。




嗜好品はちゃんと申し出れば考慮してくれます。ただ彼女達は彼に対する偏見からちゃんとした申請はしようとはしません。まあ彼も許可を出す気も全然ありませんけど
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