「うむ!よくぞ戻った、ゲルトルート!ワー子よ!」
下界へ降りたのは良かったものの一時間もしない内に円環の理に戻ってきたワーちゃん達。戦いとも呼べない程に悪魔に一方的に打ちのめされてしまった彼女達はハコの魔女の電子空間を通って円環の理に戻ってきた。
緊張の糸が切れて思わず崩れ落ちる二人を出迎えてくれたのは
「…か、間一髪でしたわね…もう少し遅ければ確実にあの世行きでしたの」
「うがーっ!くそーっ!ボクまだ戦える!あいつぶっ倒すんだ…っわわ…」
帰ってこれた事に安堵し、ホッと一息つく
「ワー子さん!大丈夫ですか!?ここまで彼女を傷つけるだなんて…」
「敵がそれほど強大という事でしょう。おお、神よ…ワルプルギス様に癒しの祈りを与える事をお許しください…」
ワーちゃんを抱きかかえた
すると、力無くぐったりとしていたワーちゃんの傷がみるみる回復していく。ところどころ破けていた衣服もパトリシアが魔力を込めるとワーちゃんを縛っていた糸がその箇所を塞ぐように修繕されていた。
「ありがとう!いいんちょ〜!まりりん!」
やがて、回復したワーちゃんは抱えられていたパトリシアに降ろされ、自分の足で立ち上がって見せる。もう完全に元通りだ。
「ゲルトルートさんは如何しましょう?」
「私は怪我はしてませんしいいですわ。それよりエリーさんは?姿が見えませんが…」
「ま、まさか置き去りに!?大変だーーーっ!!」
「あいつならとっくの昔に部屋に帰ったぞ。私はもう戦わん…とか言ってたぜ」
「あやつの力が必要になった時には引きずってでも連れてくるわい。だが、今は休ませてやれ」
「…で、行ってわかった事はこうなった原因が悪魔?みたいなやつにあるって事だけですか?インキュベーター様のお姿はなかったのですか?」
「悪魔っ!そうだ…あいつ!!もう一回行って今度こそあの悪魔をボッコボコのギッタンギッタンにしてやる!!」
「待てっ!為す術なくやられた事を忘れたわけじゃねーだろ!行くなら作戦を決めねぇといけねえぞ」
「ええ、その通りです。ワー子さん!勝つ為にまず悪魔についての情報を整理していきましょう!」
ギーゼラとパトリシアの言葉にドアに向かって駆け出したワーちゃんはピタリと足が止まる。怒りで身体が震えていたし、次は絶対に倒すという闘志も十分にある。
しかし、ワーちゃんでも悪魔に圧倒的な力を前に対策なしでは勝てないという事は本能で理解していた為、グッと堪えて元の場所に戻った。
「さて、実際に対峙したお主達はどう感じた?なにか奴の事でわかる事はないかの?」
「…物凄く強かった。ボクの攻撃は避けられたり、弾かれたりして全部効かなくて…くっそ〜!ムカムカする〜!!」
「向かい合ったのは一瞬でしたが…あの圧倒的な威圧感!私達とは完全に別次元ですわ。正直、束になってかかっても倒せるビジョンが浮かびませんの…」
「というかワルプルギスをここまで痛めつけるなんて敵ヤバすぎでしょ…女神助けるのもう諦めません?」
「うつけが、そんなわけにはいかぬ。このまま放っておけばおそらくこの円環の理は緩やかに消滅していく。さらに今後、その敵とやらが攻めてくる可能性も無きにしも非ずだしの」
「…ん?あれは…」
この部屋に人形がモニターを抱えて入ってくる。
「エリーさんの使い魔ですね。神を穢した忌々しい悪魔めの姿を捉えたと言ってましたので見せに来てくれたのでしょう」
パッとモニターに何かが映る。画面の右上にはRECという文字と倒れたワーちゃんの姿と薔薇を投げるゲルトルートの姿。そして、空へ浮かぶ禍々しい翼の生えた悪魔の姿が映った。
「おー!すごーい!ハイテク〜」
「あの一瞬を録画してたのですね…素晴らしいですわ!エリーさん!」
ゲルトルートの賞賛の言葉にモニターを持つ二つの人形が同時にえへへ…と頭をかいていた。
モニターに映る悪魔の姿。彼女はギーゼラ以外の皆どこか見覚えがあった。
「どこかで見た覚えはあります…我々の魔女だった頃の記憶…でしょうか?」
「エリーも似たような事を言っていました。ですが、思い出せないと。私も同じです。おそらく女神様に近い人物なのでしょう」
「あっ!そういえばこいつ、女神様の力を奪ったって言ってた!それで偽物の幸せで騙してるって!」
「ふむ…ならば記憶を失った女神は奴の近い所にあると言ってもよいじゃろうな。となればやはりあやつとの衝突は避けられぬか…」
イザベルのその言葉に皆の顔が曇る。ワルプルギスの夜ですら敵わない相手にどう太刀打ちすればいいのかわからないでいた。
「ちっ…奴をどうにかしないと女神はおろか、さやかやなぎさとかいうヤツらも救えねーかもしれねえぞ」
「うーん。私達が下界に降りてからだいたい30分くらいで悪魔が駆けつけた事を考えると時間的猶予もありませんわ…」
「戦闘は避けられぬか…そして、ワー子以外は時間稼ぎもままならぬじゃろう。その僅かな時間で女神を見つけ出すのは至難の業じゃ」
「「「う〜ん…」」」
その時、不意に誰かが不気味に笑う声が響いた。それはキトリーのものだ。彼女は皆が頭を悩ませる中、一人身体をくねらせていた。
「フッフッフ…打つ手なしですね〜そこで名案が一つ!世界各地にいるインキュベーター様とコンタクトを取りましょう!そして、一緒に悪魔を討ち滅ぼすのです!」
「…馬鹿はほっとけ。このぶんだとインキュベーターもあの世界に存在してるかどうか怪しいしの」
無視して対策についての話し合いを続けようとしたが、キトリーは強引に話に割り込み、口を開く。
「いえ、間違いなくインキュベーター様はいますよ。いいですか?世界には負の感情が渦巻いています。それらを糧に具現化しているのが、いわば魔女なり魔獣なりの化け物です!そして、その化け物を倒しているのが我々魔法少女!世界が悪魔に改変されようと私たちの頭にこう記憶が残っている以上、インキュベーター様がやってきた事は変わりないという事です!!ならば間違いなくインキュベーター様はこれまで通り存在しているでしょう!!ですから、一刻も早くインキュベーター様に会うべきなのです!!!さあ、さあ!さあ!!」
「…その熱意と思考をもっと別のものに向ける事は出来ないのでしょうか?」
「ともかくインキュベーターを頼るのは論外ですわ。利用されるだけされてポイされる未来しか見えません。なしよりのなしですわ」
ちぇっ、と露骨に残念そうにするキトリー。だが、このままでは本当に打つ手なしである。そのまま時間が過ぎていくかと思われたその時。
「あらあら…面白い話になっているみたいねぇ。ワタシも混ぜて貰えないかしらぁ?」
水のように綺麗で澄んだ水色髪の少女が裸足でペタペタと音をさせてこの部屋に入ってきた。
エメラルドグリーンのドレスと夜空に輝く星々をイメージさせるスカートを揺らす彼女からはこの世のものではない幻想的な美しさと同時に不気味さも感じさせられる。
「げぇっ!?…あ、あなたは…!?」
「あっ!!イッちゃんだーっ!おひさ〜」
「…一番知られたくない人に気づかれてしまいましたね…」
「てめえがうるさくするからだぜ…キトリー」
彼女の顔を見たワーちゃんを除く一同の反応は焦りや驚きといったもの。そう、彼女こそがワルプルギスの夜と並ぶ円環の理の問題児でこの出来事を最も知られたくない人物。
《忘却の魔女(真名Itzli)》
その性質は復讐。元は銀河の先よりやって来た魔法少女だったといわれる魔女。この宇宙から全ての魔法少女たちを忘れ去るために今、姿を現す。
《今作のいつとり》
物腰柔らかで話しやすいものの、ワーちゃんとは違うベクトルで何を考えているかわからない狂人でワーちゃんに匹敵する程の力を秘めている強人。
触れる事でクローバーをマーキングする事ができ、マーキングされた者の能力を使用する事が出来る。さらにマーキングされた者の居場所やその思考を読み取る事が可能な強力な能力である。だが、マーキングは水で洗い流せばすぐに消える。
「止まれ!これ以上こっちに来るでない!!そして、そっちに行こうとするなワー子よ!」
両手を広げて不気味に笑うイツトリの元へ駆け出そうとするワーちゃんをイザベルが呼び止める。皆が恐ろしく警戒するのを見てちんぷんかんぷんの様子なワーちゃん。
「ウフフ、そう邪険にする必要ないじゃない…同じ円環の理の仲間でしょう?仲良くしましょうよぉ」
「…そう思ってくださってるのなら少しは殺気を抑えたらどうですか?触手が出てますわよ」
ひたひたと近づく音に混じって微かにぐちゅぐちゅと何かが這いずるようなそんな音が聞こえる。それは彼女の服の中からでよく見れば至る所で赤い触手が蠢いているのがわかった。
「失礼…あまり辛抱がきかない子達でねぇ。食べたい、食べたいって堪えられないみたいなの。ウフフ、ウフフフフ…」
「気色悪い奴だぜ…テメエと話す事なんかねえし、テメエの出る幕もねぇ。さっさと元の場所へ帰れ!」
「そうかしら?ワタシが持つ固有の力…【暁美ほむら】に対抗する為に欲しくないのかしらぁ」
「暁美ほむら…?悪魔の事ですか?なぜ名前を知っているのですか!?」
「色々知っているわよぉ?女神様、いえ【鹿目まどか】の事とかもね…」
「イッちゃん女神様の事を覚えてるの!?」
暁美ほむらや鹿目まどかといった今の円環の理にいる住人には知り得る筈のない情報に驚く一同。彼女は間違いなく改変前の記憶を保有している。
「ウフフ…この星の魔女として規格外のあなたも改変を免れたんだったわね。そう、ワタシも断片的にだけど覚えているわぁ」
「そうなんだ…じゃあやっぱりイッちゃんも一緒に!」
「たとえ女神の事を覚えていたとしても、能力が有用だったとしても、お前だけはダメですよ。イツトリ」
ワーちゃんの言葉を遮り、そう言い放つキトリー。キュゥべえの被り物ごしであるが、真剣な顔で言っているのが伝わってくる。
「珍しく同意見じゃ、キトリー。イツトリよ!何を企んでおるのかは知らんが、お主は信用出来ん!確実にこの先どこかで裏切ってくるのが目に見えておる!」
「あら、心外ね…ワタシ、あなた達に何かしたかしら?」
「………いろいろされましたね。ですが、それがなくとも私達はあなたを信用する事はないでしょう」
「ふ〜ん…ねえ、ワーちゃん。怒りんぼの皆が信じてくれないわぁ…あなたは信じてくれるわよね?」
「…ボクが来るずっと前になんかあったっていうのはなぎちゃんから聞いた事あるよ。すごい事やったって…」
「…どれの事かしら?心当たりがありすぎてわからないわ。この子達が皆に悪戯した事かしらぁ?」
胸元やスカート、マント等から触手が顔を覗かせる。それにキッと睨みつける者、身体を震わせ赤くなる者、お嫁に行けないと泣き出す者、皆の反応は様々だ。だが、ワーちゃんは首を横に振った。
「それもあると思うけど…女神様の力を奪おうと全面戦争?ってやつを仕掛けたってなぎちゃんが言ってたよ」
「ああ〜あれね…あれを覚えてるんだったら納得よぉ。でも、女神様の事を忘れた皆が覚えているはずないわよね?」
「そういうのって身体で覚えてるんだと思う!女神様が消えちゃってもイッちゃんが嫌な事をしたって言うのが残っちゃってるんだよ」
「…じゃあどうしようもないわねぇ」
「ううん、どうしようもなくなんかないよ!悪い事をしたらごめんなさいだよ?イタズラとか知らない内にみんなに嫌な事しちゃってボクもみんなを怒らせた事ある…」
「でも、心を込めてごめんなさいしたらみんな許してくれた。優しいみんなならきっとイッちゃんだって許してくれるよ!だから…」
「フッ…ウフフ、ウフフフフ…アーハッハハハッ!」
ワーちゃんの言葉を聞いて堪えられない様子で笑ったイツトリはひとしきり笑った後に…
《イツトリちゃんの歴史(捏造)》
その昔、宇宙の遥か彼方には一つの星があった。平和で争いなどなかったその星は文明こそ発達していったものの、いつしかエネルギーが枯渇していく問題に突き当たる事となっていた。
そんな時に神の導きか、運命のイタズラか、彼らはインキュベーターと出会う。彼がもたらす魔法少女システムでそのエネルギー問題は解決したかに思われた。だが、それは同時にこの星に魔女が生み出される原因となる。
幸福の感情しかなく、負の感情を持たなかったその星の住民は瞬く間に魔女の餌となり、あっという間に絶滅してしまう。
彼女、いや彼女らはその星に生きた者の嘆き、絶望を喰らった魔女の集合体でその目的はひとえにインキュベーターへの復讐のみ。
エントロピー増大による宇宙の崩壊を防ぐ為に活動しているインキュベーターが知的生命体に対して干渉し、魔法少女システムを活用している事を受け、その知的生命体を全て滅ぼす事で復讐を成す…そう決めていくつかの星々を滅ぼし、次は地球へと狙いをつけていたのがイツトリである。
多分こんな感じの忘却の魔女
【挿絵表示】
自身の星の幸福と希望の為に魔法少女となった筈なのに不幸と絶望を撒き散らす魔女となりかけている一人の魔法少女。いちばん強力な力を持っていた彼女を元にその星の魔女達は一つとなって忘却の魔女が産まれた。触手は魔女の集合体というのを表している。
まど2ではありがとうございました!!イツトリちゃん
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忘却の魔女ってスロットオリジナルかと思ってたけど初出はまどポだった。まどスロは演出がマジヤバなのでまどマギファンは一見の価値ありですよ♪
魔女は誰が好き?
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舞台装置の魔女
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薔薇園の魔女 Gertrud
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お菓子の魔女 Charlotte
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ハコの魔女 H.N.Elly...
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銀の魔女 Gisela
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人魚の魔女 Oktavia...
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芸術家の魔女 Isabel
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委員長の魔女 Patricia
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救済の魔女 Kriemhild...
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絶望の魔女
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くるみ割りの魔女 Homulilly
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針の魔女 Quitterie
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忘却の魔女 Itzli
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おめかしの魔女 Candeloro
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武旦の魔女 Ophelia
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その他 ...