リコリコ×拓銀令嬢 ~実弾は日本を変える~ 作:フェデラルジオグラフィック
「現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変(漫画:大和田秀樹)」
が超読みたいと思う今日この頃。
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Side 桂華院瑠奈
楠木司令に導かれ、先ほどまで階層の移動に使っていたエレベータの前に立つと、楠木司令が鋭い目線をこちらに向けてくる。
「これより先に存在するすべてのモノについて、少しでも他言すればDAはいかなる手段を取ってでも貴方を消さなければならなくなることを予め警告させていただきます」
「CIAや警察庁公安、桂華院の当主に対しても?」
「無論」
「わかったわ。そのまま続けて頂戴」
エレベータに乗り込むと、楠木司令が身分証のカードをエレベータの操作盤のボタンのない箇所にかざす。すると操作盤の蓋が開いて追加のボタンが露わになる。なるほど、保守用の点検口に偽装した機密区画の階層へアクセスするボタンか。本当に偽装や隠蔽についての技術は一級品だなDA。
「これよりリコリスの戦闘訓練施設にご案内いたします。重ねて言いますがこの扉の先にで見たものについては絶対に他言しないようにお願いします」
楠木司令が再度忠告するとエレベータの扉が開く。彼女についてエレベータを出ると背中からわずかに風を受ける。どうやらこの階層は全体が陰圧されているらしい。エレベータシャフトが陽圧されている可能性もあるが。
「この階層がリコリスの戦闘訓練施設となります。安全のため、お嬢様にはこちらの保護眼鏡を着装ください」
そう言われて同行するリコリスから渡された眼鏡を着用する。このデザインの眼鏡はいつぞやアンジェラとグアムに行ったときに着けさせられた眼鏡に似ている。それとこの階層に入ってからかすかに鼻を刺激するこの匂いは私がオスカー取った時の映画の撮影でしこたま嗅いだ匂いに似ている。そんなことを考えていると楠木司令はある扉の前に立つ。先の匂いがやや強い。そしてこの匂いが火薬の匂いであることに今更ながら気づく。
「まさか、リコリスの武器って…」
「ご想像の通り、こちらがリコリスの主力武器である銃の射撃練習場になります」
そう言うと楠木司令は青服のリコリスの一人に指示して扉を開けさせ、私を中に案内する。訓練場は静かで、両手で数えきれないほどの衝立が横並びになっている。銃声がしないのは私が来ることに合わせて人払いをしたからだろう。訓練場の中は火薬のにおいがするが、どぎついというほどではない。またよく清掃されていて埃もほとんどない。私が武器区画に入ることはついさっき予定を変更するまで決まっていなかったことから考えて、常日頃からよく整備されているであろうことは想像に難くない。
「御覧の通りリコリスはお嬢様と同年代の少女によって構成されておりますから、警察官のように体術を用いて対象を制圧することは困難であります。またDAは『望ましからぬものの排除』を使命としていますので、対象の生存につきましては二の次とされております。ゆえにリコリスは銃による対象の無力化を基本戦術としており、ここはその訓練及び演習を行う区画となっております」
銃があれば、年端のいかない少女でも大人を殺し制圧することが出来る。そう考えれば銃はリコリスがテロリストを制圧する手段としては最も合理的な武器のひとつだ。だからこそ途上国では私と同じ年代の少年がAKを担いでいるわけである。銃を以って『イコライザー(平等にする者)』とはよく言ったものだ。
後田さんが言っていた『実包』とはこれのことかと今更ながらに納得する。要するにDAと敵対すれば帝都学習館の学生のなりをしたリコリスが隙を見て懐から銃を抜いて私を射殺しようとしていたというわけだ。私の周りには護衛を兼ねた側近団がいるわけだが、彼女たちは基本的に非武装である。唯一グラーシャ・マルシェヴァだけがナイフを持っているが、銃を持ったリコリスが十人とやってきて一斉射撃されればみんな仲良く蜂の巣である。
「試しに撃ってみますか?」
楠木司令が私に問いかけてくる。大方かつてアンジェラが私をグアムに連れて行った時と同じだろう。リコリスの武器である「銃」を実感することで私への忠告に代えるつもりだ。
「ではお言葉に甘えて」
「承知しました。…井ノ上たきなは桂華院瑠奈嬢に銃の初等教練を命ずる。蛇ノ目エリカはガンラックから銃と弾薬をここに持ってくるように」
了解しました、と二人のリコリスが応える。茶髪の一人が集団から離れ、井ノ上たきなが先に衝立の間に入り、衝立の脇にある操作盤をいじる。すると同心円の描かれた紙製の的が彼女の目の前に現れる。距離にして30mほどだろうか。それを確認すると、彼女は私を衝立の間に案内する。
「楠木司令より臨時で教官を仰せつかりました。銃が届くまでは簡単に銃を取り扱う上での基本的な注意事項をご説明いたします。まず安全面の注意事項として、銃は装填されているかに関わらず人に向けないでください。映画のテッポウではありませんから、万が一暴発した場合死者が発生する危険があります。銃口は常にこちらの標的が並んでいるシューティングレンジの方向を向けておいてください。ただしブザーが鳴って目の前のランプが赤く光った場合はシューティングレンジに人が立ち入っている可能性がありますから、銃を衝立に併設している安全ホルダーに入れてください。またこの射撃場では衝立で区切られたブースで分けられており、銃への弾丸の装填はこのブース内でのみ認められております。これも万一の際の安全を確保するためです」
ピストルの形にした自分の手を銃に見立てて、まるで安全規則をそらんずるかのように淡々とかつ的確に説明する井ノ上たきな。グアムの時は軍の半屋外射撃場だったので、彼女の説明はその時とは大きくは変わらないが少々差異があって興味深いところがある。説明を聞いていると蛇ノ目エリカと呼ばれた少女が樹脂製のケースと紙製の弾薬箱を持ってくる。ケースはまず井ノ上たきなが受け取り、中にある拳銃を取り出して入念に確認した後、弾倉が抜かれたままの状態で渡された。
「こちらがリコリス標準の拳銃のひとつであるFN ブローニング・ハイパワー拳銃です。先ほども述べましたが弾薬が入っているか否かに関わらず、練習場内では銃口は常にシューティングレンジに向けておいてください。使い方ですが、今回は体験ということですので発砲するために必要なモノに絞らせていただきます。まずは…」
井ノ上たきなから拳銃の『撃ち方』を一通り教わる。グアムでアンジェラからも教わったこともあってある程度は知っているが、黙っておく。下手に言っても相手を警戒させるだけであるし、何よりあの時とは違う銃であるため使い方を間違えると危ないからである。
「劇用銃で慣れていらっしゃるからでしょうか。
そう言うと彼女は慣れた手つきで弾薬箱から一発だけ銃弾を取り出し弾倉にいれ、私に手渡す。私は先に教えられたとおりに弾倉を拳銃のグリップの中に差し込み、スライドを引く。彼女の合図を待ってから安全装置を外す。安全装置を目視で確認するときに、少し視線を後ろに回してギャラリーの様子を確認。楠木司令とリコリス達は私が実弾入りの銃を撃ったことがないと思っているようだ。ならば
「きっと本物の反動にビビるっすよあのお嬢様」
前言撤回。真っ向から売られたならその喧嘩は買ってやる。意識を的に向け、正面に見据え、銃の照星を的の赤い点の中心に向ける。呼吸を止めて、的の中心、照星、照門が一直線に並んだ瞬間に引き金を
甲高い発砲音が一発。その瞬間に的の中心に9mmの穴が開く。
沈黙が射撃訓練場を支配する中、私は弾倉を銃から抜いて井ノ上たきなに渡す。
「10発入れなさい」
「は、はい」
自分で弾倉にいれることもできるが弾薬の管理は彼女の担当のため『お願い』をする。彼女は受け取った弾倉に弾を込めていくが、さっきと比べてぎこちなさが浮かんでいることを私の目は見逃さない。再び受け取った弾倉を銃に入れて発射準備。今回は彼女の指示を待つことはしない。
立て続けに十発。的の赤い円の中に大きな一つの穴が開く。それを確認してから銃をテーブルに置き、『公爵令嬢』の顔を捨て『決裁者』の顔に変えてからリコリス達に体を向ける。
「さっき『ビビる』って軽口叩いたのはだあれ?」
「わたしだ」
リコリスの集団から前に出てきたのは錦木千束と同じ赤い服。ただしかなり小柄で茶色がかった髪を短く整えている。さっきの声とは違う気もするが、そこを指摘するメリットも特にないのでそのまま彼女に向けて指をさす。
「あなたね。では今から決闘を申し込むわ」
前に出たリコリスと楠木司令の目がわずかに見開かれ、リコリス達が小声で何かを話し始める。少し耳が張っていて何を話しているのか聞き取れないのが悔やまれる。
「…それでは、リコリスの戦闘訓練用の施設をお貸しいたしましょうか?」
搾り出された楠木司令の提案に私は二つ返事で了承する。そうして案内されたのは模擬戦施設という名のキルハウス。上部が観戦スペースになっているようだ。そして実弾と同じ弾道をするというペイント弾を渡される。これを相手に直撃させれば勝利なのだという。見ていろリコリス、私のこの悪役令嬢チートボディと護身術やら映画撮影やらで鍛え上げられた技術でもって今からこの赤服を正面から叩き潰して、私がか弱い公爵令嬢でないと知らしめぎゃふんといわせてやろうじゃないの!
ぎゃふん。
当初のストックが完全に尽きつつあるので今後は更新頻度が落ちます。
ネタはあるのですがまだ書けてないという意味で。
この時点でのリコリス標準拳銃(独自設定)
7.65mm:FN M1910
9mm:FN ハイパワー
11.4mm:コルト M1911
ブローニング系列で統一することで整備や取り回しを効率化しているという設定。
2004年時点ではDAはグロックを配備していない(試験的に買った程度)という設定です。1982年にリリースされ、ダイハードで有名になった銃ではあるんですが。理由はおまけ回で述べます、多分。