リコリコ×拓銀令嬢 ~実弾は日本を変える~   作:フェデラルジオグラフィック

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転生王女と天才令嬢の魔法革命、いいですよね。
個人的にアニス様見てるとヴェルナー・フォン・ブラウンをイメージするんですよね。



After Action Report

 

 Side 春川フキ

 

 

 

 桂華院瑠奈嬢が千束(ゴム女)と共に帰路についた後の司令室で、わたしとサクラ、楠木司令は先の模擬戦の映像を見る。録画テープを止めた楠木司令がわたしたちに向き直る。

 

「それで、どうだった?」

 

「一応確認ですが個人的な所感でよろしいでしょうか?」

 

「勿論だ。ここに呼んだのはそのためだと考えてくれ。直接戦った者の証言も大事な情報だ」

 

「司令もお気づきでしょうが簡単にまとめますと『練度の浅さを自らの身体能力で補って戦っていた』といったところでしょう。身体能力はリコリスを基準としても極めて高いレベルであり、要所要所の判断も少なくとも間違ってはおりません。わたしが勝てたのは長い間リコリスとして銃を握って戦っていたことによる経験の差に基づくものであります。銃がなく素手で、となれば体格差もあってわたしは返り討ちに遭っていたことでしょう」

 

「続けろ」

 

「先の模擬戦のように同じ装備で相対して確実に勝てると断言できるリコリスはそう多くはありません。ファーストならば余裕をもって勝てますが、セカンドは経験の浅いものなら負けるでしょう。サードは四名以上、可能ならば六名は必要になるかと。付け加えておきますが、これは()()()()()、が前提となります」

 

「含みのある言い方だな」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ということっすね」

 

「サクラ、司令は私と…まあいい。サクラの言ったことが含みです。彼女の弱みはただ訓練不足であるだけです。もし彼女がリコリスとして一年、いや三カ月ほど訓練を受けていれば、結果は違っていたでしょう」

 

「短期間の訓練でファーストに匹敵するとは、少し買いかぶりすぎでは…ないかもしれんな」

 

 そう言って司令は録画テープを巻き戻す。再生ボタンが押されたのはわたしが本気で潰しにかかる数分前。お嬢様の青色のペイント弾とわたしの赤色のペイント弾がキルハウスに模様を刻んでいた時である。わたしは少しお嬢様を試してやろうと気配を消して彼女の側面に回る。彼女はかなり勘が鋭く私が移動したことを察して周囲を警戒し私の存在を素早く把握した。だが私はすでに銃の照準を済ませていた。引き金を三回引きこれで終わりだと思ったが、そうはいかなかった。彼女はとっさに私に銃を向け三回撃ってきた。そしてわたしと彼女のちょうど中間地点で()()()()()()()()()()のである。わたしはその様に一瞬あっけにとられたが、そのあとは本気の足で距離を詰めお嬢様が目で追い切れていないうちにペイント弾を接射して状況終了。もともと彼女が模擬戦の準備をしている間、わたしは楠木司令から模擬戦の中で彼女の戦闘能力を測るように指示を受けていた。だからわたしはセカンドやサードと模擬戦をするときのように最初から全力を出さず相手に合わせて徐々に動きのペースを上げていったのだが、これを見て手加減する必要なしと判断したからである。

 

「三回立て続けに起こったということ、きっかり三発しか撃っていないことからこれは偶然ではないでしょう」

 

「まさか銃撃を見切る人間がこの世に()()も存在したとはな」

 

「千束は避けますがお嬢様は撃ち落としました。これは射線を見切り、相手の射線と自分の射線を交錯するように狙いをつけ、相手の動きを見て自らの発射のタイミングを合わせる、という三つの動作が成立する必要があります」

 

 そう言ってわたしはいったん言葉を切る。今から話すことは自分としても信じがたい事柄だからだ。正面の楠木司令も脇のサクラも渋い表情をしている。

 

「…あまり考えたくはありませんが、お嬢様は千束の目とたきなの銃の腕が両立しているものと思われます。つまりリコリコの二人を足して二で割ったようなものです。もし彼女が最低限でも訓練を受けていればわたしでも容易には勝てなかったでしょうし、サードは物の数ではなくなります」

 

 自分で話をしていても軽く頭が痛くなってくる。ただでさえ取扱いに困る最強のリコリスを抱えていたのに、いきなりやってきたお嬢様がそれと並びかねないポテンシャルを抱えているのだ。それもリコリスでもリリベルでも、さらには正規の警官や軍人でもない民間人が。いや、ただの民間人であればどれほどよかっただろう。そういった民間人がいればDAは警察と共に監視してテロリストや活動家が彼に接触しないように取り計らうか、脅威になると判断されれば訓練を受ける前に排除するだろう。だが彼女の名は『桂華院瑠奈』。今の日本で最も力を持つ人間の一人である。監視は元から行われているから彼女がテロリストになるとは考えにくいが、万一の時に排除する場合のリスクが高すぎる。さらに言えば『桂華院』である。司令とお嬢様の供回りの前に、担当するファーストのみに内々で知らされたことなのだが、『桂華院』家はDAの政治的後ろ盾なのだそうだ。司令の心痛の前には私の頭痛など吹けば飛ぶような代物だろう。

 

「…それ以外に言うことはあるか?」

 

「自分からは以上になります」

 

「乙女サクラ、お前は何か言いたいことは?」

 

「すこ~し短気なところがある気がするっすね。それ以外には特にないっす」

 

「そうか。録画した映像は情報部にて更なる解析にかける。春川フキおよび乙女サクラ、以上で君たちの『模擬戦による桂華院瑠奈嬢の戦力評価任務』を終了する。退室後、本日は自由にしてよろしい。解散」

 

 それを聞いたわたしとサクラは姿勢を正す。

 

「了解しました。失礼いたします」

 

 

 

 

 

 

「しっかしちょろいお嬢様でしたね。あんな軽口一つで乗ってくるんすから」

 

 司令室を出て数十歩ほど歩いたところでサクラがつぶやく。

 

「言ってる場合か。『任務としての行動』だったから司令は大目に見てくださったものの、実際なら謹慎モノだぞ」

 

「うえっ、それは堪忍してつかぁさい」

 

 何も知らない人間からすれば、サクラの軽口がお嬢様の機嫌を損ねてしまい、わたしが相棒をかばって前に出た格好になっている。それはあの時点では間違いではなかったが、お嬢様が『決闘』と言い出したことで軽口のトラブルを『模擬戦による戦力評価』にその場で繕ってくださったのである。結果的に『お嬢様は戦闘員として見ても油断ならない相手になりうる』という情報を引き出せたし、お嬢様にもそれなりに満足いただけたので怪我の功名というか塞翁が馬というか、DAにとっても悪くは転ばなかったからいいものの、政治的後ろ盾になる相手(サクラ自身は聞かされていなかったが)への不敬は本来重大な懲罰の対象になるべき事案である。正直わたしの頭痛は多少引いてきているとはいえ収まっているわけではない。こいつは戦闘員としては優秀だし忠誠心は十分なのだがいかんせん余計な一言が多いのだ。何度かしごきの一環で模擬戦やら自主練やらに連れ出したがそれでも治らなかったのでもはや半ば諦めている。この悪い癖こそコイツがセカンドに留まっている最大の要因な気がしてならない。下手に機密を伝えればふとした拍子に周りに漏らしかねないのだ。今のところそういった素振りを見せたことすらないが…。

 

「ところで本日の予定は入っておりませんがセンパイはどうするおつもりですか?」

 

「とってつけたように丁寧な口調で話すんじゃない。とりあえず今から食堂に行って軽食を摂ってくる。いい運動になったからな」

 

 桂華院瑠奈嬢の来訪時刻の都合上応対した要員は昼食が省かれている。一応来訪直前に昼食代わりのサンドイッチが用意されたが、模擬戦をすることなんて想定していなかったのでそれでは足りなくなってしまった。それにお嬢様相手の模擬戦はいろいろと気を遣うところが多く、ある意味千束(最強)とのそれより疲れたので一休みしたいというのもある。ただそれだけのはずなのに目の前のセカンドはややバツの悪い顔をしている。

 

「どうした、サクラ?」

 

「今は食堂に行かないほうがいいと思うっすよ」

 

「なぜ?」

 

「センパイ、今の自分の立場を考えてみてください、『お嬢様と戦ったリコリス』っすよ?下手に人の多いところに行けばその場のリコリス達が押し寄せてきて質問攻めにあうに決まってます。心を落ち着かせたいのであれば自室にいるべきっす。飲み物や食べ物はあーしが持っていきますから」

 

「あー…」

 

 サクラのいうことももっともである。食堂で軽く済ませたくても大勢から詰め寄られては食べたいものも食べられない。

 

「わかった、サクラの言うとおりにさせてもらう。先に部屋に戻るからサンドイッチかおにぎりあたりを持ってきてくれ。あとお茶も頼めるか?」

 

「りょーかいっす、この乙女サクラ、これより物資調達任務に就きます!」

 

「あまり大声を出すんじゃない…じゃあ頼んだぞ」

 

 それを聞くなりサクラは駆け足でわたしから離れていった。たまに思うのだが、こいつの思考回路は千束(アイツ)のそれに近いのではなかろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 サクラの持ってきたおにぎりを頬張り、お茶で軽く流して両手を合わせる。

 

「ごちそうさまでした」

 

「落ち着きましたか?センパイ」

 

「ああ、ありがとう。…しかし外の気配はなんとかならねえのか」

 

「少なくとも今日中は無理っすねえ」

 

 千束(無神経)でもない限りわたし達の部屋に堂々と入ってくるリコリスはいない。しかし寮生活の彼女達は話の種を何とか見つけようと扉の外で躍起になっている。その物音やら気配の移り変わりやらが気になって仕方がない。

 

「あれ、センパイ?」

 

「ちょっと追い払ってくる」

 

 サクラを言葉で引き留めてわたしは自分の部屋の扉を勢いよく開ける。メンツをよく見るとエリカとヒバナが混ざっている。驚いた表情の面々をよそにわたしは声を上げる。

 

「おいてめえら!黙ってりゃこそこそ勝手にやりやがって!」

 

 それだけ叫ぶと野次馬共は逃げ散っていった。彼女達に聞こえるように音を立てて扉を閉め鍵をかける。30分ほどはこの状態が続くだろう。

 

「さて、野次馬はいなくなったか。サクラ、ここだけの話だがどうだった?」

 

 椅子に腰を下ろしてからサクラに向き合う。司令を前にしていろいろ言いたいことがある雰囲気を出し続けていたから、この場で一度吐き出させてやろう。

 

「上から見てましたけどありゃ『映画のスターがそのまま出てきた』って感じっすね。動きには派手さというか無駄なのが多かった気がします。それでリコリスとして通用するだけのパフォーマンスをたたき出したのは正直驚きましたけど」

 

「まあそれは戦闘訓練を始めたばかりの訓練生によくあることだ。だからあれは『戦闘員としての練度不足』でしかない。一カ月もあれば直せるだろうよ。そうなればお前じゃ歯が立たねえだろうな」

 

「悔しいけど否定はできないっすねえ…()()は本当に公爵家のお嬢様なんすか?」

 

「そのはずだ。たぶんな」

 

「正直正々堂々とやって確実に勝てるのって()()しかいないんじゃないんすか?」

 

「わたしもそう思う。内心腹が立つんだがな…」

 

 確実に勝てる一人、千束(ちさと)はわたしからすれば一番気に食わないが一番頼りになる奴だ。あんなふざけた性格と思考だがわたしの知る中で一番腕が立つし経験も豊富。それでいて相手の動きを先読みして銃撃を避けるのだから始末に負えない。

 

 真正面から銃撃を見切る人間が二人も三人もいるわけがない、いやいてたまるか。桂華院瑠奈嬢と戦うまではそう思っていた。しかし彼女はわたしが()()()()撃った三発を全て撃ち落とした。司令にも話した通りきっかり三発で撃ち落としていたこと、わたしが小手調べで撃っていた銃撃には対処しなかったことを踏まえると彼女も千束の同類である可能性が高い。

 

 …これからのリコリス(わたし達)は『銃撃を避ける奴がいる』ことを前提として訓練をしなければならないのだろうか?そうなれば訓練メニューは今以上に厳しくなるだろう。それに加えて何より定期的に千束(教官)を呼ばなければならなくなるが、千束(彼女)はそんなことを承知するだろうか。

 




After Action Report (AAR)
もとは軍隊の演習や作戦を事後的に分析する手法やそれによって作成されたドキュメントのこと。日本のネット界隈では「ゲームのプレイレポ」の言い換えになっていることもある。(CivilizationやHearts of Ironなどの海外製歴史系戦略ゲームの攻略記事に着けられることが多い)

ちなみに有名なCivilization 4は2005年の発売である。
拓銀令嬢二次を描くときにはこういうものの時系列をしっかり考証する必要があってそれが大変なことのひとつだったり。ぶっちゃけ無視してもいいんだけど。
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