リコリコ×拓銀令嬢 ~実弾は日本を変える~   作:フェデラルジオグラフィック

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ネタがある限り続けていきたいと思います。

…少なくとも銀幕ネタはやるつもりです。





正義の傀儡の彼岸花

 

Side 井ノ上たきな

 

 

 

 

 やんごとなき『四人組』の貸切から二日後、わたしと千束はDAの本部にいた。富士山の近傍にある巨大な国有地の真ん中にそびえる建物。その一角にある大きなブリーフィングルームは人でいっぱいだった。人、といっても大人はスクリーンの前と部屋の出入り口を固めるスタッフのみで、部屋の中央にある椅子を埋めるのはわたしたち「リコリス」のみである。

 

「全員、揃っているな?」

 

 特徴的な赤髪を短く切った女性、楠木司令がスクリーンにて少女たちに呼びかける。

 

「数か月前に複数の筋から日本における大規模テロ攻撃の情報をつかみ、DAで調査を行った結果これが事実であることが確認された。攻撃目標はここだ」

 

 楠木司令がスクリーンに表示したのは、世界一忙しい駅に隣接する巨大地下施設の完成イメージ画像。

 

「新宿ジオフロント、攻撃予定日は4月27日。この日はオーナー主催の完成式典で政財界の要人が勢ぞろいすることになっている。」

 

「『オーナー』つってもあーしらと歳変わらないじゃないすか」

 

「聞こえているぞ、乙女サクラ」

 

 軽口をたたいたリコリスを諫めつつ司令は淡々とスライドをめくりながら説明を続ける。

 

「さて、ここを攻撃されれば日本の大混乱は必至だ。何としても阻止しなければならない。だから今回は総力戦体制で臨む。東京各地からはもちろんのこと地方からも応援のリコリスを手配した。我々DAの任務は新宿・渋谷・中野の三区に展開し、攻撃を試みるであろうテロリストが新宿副都心に到達する前に排除することだ。テロリストが行動に移ったことが確認され次第、その付近に展開するチームが順次対処に当たることになる。各員は常に通信に注意を払うこと。なお今回我々には対象を全員抹殺することが上層部より指示されている。身柄確保が必要な対象については警察が対処する。ゆえに錦木千束、貴様にはこちらが用意した弾薬のみを使用することを厳命する」

 

 全員の視線がわたしの隣に集中する。視線の先にいる者は不機嫌な表情を取り繕う仕草すら微塵もすることなく気だるげに返答する。

 

「わ~っかりました、『実弾を使え』ということでしょ?楠木さん」

 

 その返答に少女達の中からひときわ大きい舌打ちの音が響く。

 

「チーム組成は現在配布している資料の通りだ。あとでチームごとに個別の任務のブリーフィングを行うので、各自一度自室に戻り放送に注意すること…解散」

 

 ぞろぞろと退出する少女達と大人。部屋にはファーストとセカンドのコンビが二つ残っている。

 

「あのな千束、今回ばかりは…」

 

「分かっているよ、フキ」

 

「いや分かってない。今回はチームで行動する。いつものようにお前とたきなだけじゃない。例えお前が一人で突っ込んで全員素手で叩きのめしても、連れてる他の要員が動かなくなった連中の頭をぶち抜くだけだ」

 

「『そうなるぐらいなら自分で始末しろ』って言ってるんでしょ?」

 

「それもあるが、あたしが言いたいのは今回の司令はマジだってことだ。この編成表を見ろ。お前のチームだけファーストがもう一人いる。これは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだ。さらにお前以外は地方からの増援で固められている。つまりあたしやサクラ、たきなを含めお前をよく知る人間は全て別チームだ。とっさの時にお前をかばえる奴はいない」

 

「…」

 

「司令は『全員射殺』とはっきりと言った。()()()()はお前が手加減していると判断したら『命令無視』として後ろから弾を浴びせる気だぞ。お前は前からの弾しか避けられないだろ。千束、今回ばかりはあきらめろ。死体袋にお前が入るかどうかの違いしかない」

 

「…でも」

 

「千束!今回は…」

 

 食い下がる千束と説得を試みるフキさんの間を館内放送が割って入る。

 

『各チームごとのブリーフィングを行う。アルファは101会議室、ブラボーは102会議室、…』

 

 千束は弱弱しい足取りでブリーフィングルームを出ていく。私達もそれに続き、会議室へと向かう。ご丁寧なことに千束とわたし達とでブリーフィングルームから出たときに曲がる方向まで正反対になっている。

 

「どうするんすか?いくら最強のリコリスでもあの調子じゃそこらのチンピラにすら負けますよ」

 

「…方法が無いわけじゃない」

 

「あるんですか!?」

 

 サクラとフキさんのやり取りにわたしは縋るように食い込む。わたしに対してやや引き気味の表情を浮かべながら投げやりな口調でフキさんが続ける。

 

「…あいつのチームが接敵して銃を撃つ前に、あたしらが目標を全員殺すことだ」

 

「わかりました…以前のようにすればいいんですね」

 

「ああ、必要なら機銃掃射でも何でもやってやれ。それしかない」

 

 フキさんの言葉にわたしは拳を握りしめた。

 

 しかし私達の覚悟とは裏腹にフキさんやわたしの担当は歌舞伎町や新宿御苑付近とされ、都庁周辺を担当する千束のチームと山手線で完全に分断されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千束ちゃんに何かあったのかい?数日店に出てこなかったようだし、出てきたと思ったら明らかに元気がないみたいだけど…」

 

「学校で色々あったんです。しばらくそっとしておいていただけますか、阿部さん」

 

 結果を言ってしまえば、新宿ジオフロントのテロはDAが介入することなく警察とオーナーの側近と施設の関係者によって未然に阻止することに成功した。あとでクルミから聞かされたが、どうやらテロの内容は「地下施設の防火設備を外部からのハッキングで暴走させて中の人間を丸ごと窒息死させる」というもので、クルミが自慢のハッキングで新宿ジオフロントと東京都庁のネットワークを遮断した時点で失敗することが確定していたらしい。つまり新宿周辺の地上を張っていたリコリスの出る幕は最初からなかったようだ。千束自身と彼女の『不殺の信念』は守られたのは幸いだったが、「リコリス(司令)にあからさまに銃を向けられていた」という事実は千束にとって重かったようで、任務終了後数日はお客さんに心配される程に元気を失ってしまっていた。

 

 

 





ドンパチパートを入れようかとも思ったんですが、ジオフロント事件(未遂)はその特性上外側で騒ぎが起きると計画が破綻する(対象が逃げる!)のでこういった形で落ち着きました。なお先手を打たれて失敗が約束されていた模様。

次回「怪しい覚書」
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