リコリコ×拓銀令嬢 ~実弾は日本を変える~   作:フェデラルジオグラフィック

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二日市先生のツイート以降UAとお気に入り登録数、感想が爆発していて効果を実感する今日この頃でございます。

お手紙の内容をまとめてお嬢様が方針を決める回になります。




選択肢(2)

 

 さて、四人の提案を読んだところで頭を整理しよう。

 

今のところ私の選択肢は五つである。

A :DAの存在をみなかったことにする

B :DAの組織を掌握し、

  ラジアータ・リリベル・リコリスすべてを解体する

C :DAの組織を掌握し、

  ラジアータを残しつつリリベル・リコリスは解体する

D :DAの組織に関わるが、

  その運営や方針には基本口出ししない

E :DAの組織を掌握し、

  ラジアータ・リリベル・リコリスすべてを手に入れる

 

 

この上で私にとってのステークホルダー(盟友)の意見をまとめるとこの通りである。

・桂華グループ、特にムーンライトファンドの主要メンバーは

 DAについて何らかの立場をとるべきであると考えている

・現在の桂華院家はDAの庇護者的立場である

 おそらく私がDAに関わることを良しとはしないだろう

・アメリカ、特に国防族はラジアータ計画を継続することを要求している

・日本警察はDAの組織を可能な限り、

 リコリスとリリベルを含めてそのままで残すことを望んでいる

 

 

 ここからまず導き出されるのは選択肢Aは論外だということ。つまり私は少なくともDAに関わる立場にはいなければならない。そうでなければ今の桂華グループ首脳部が分裂する。また「アメリカ政府が態度を変更しない」ということはアメリカからの政治的支援が今後縮小することを意味するからである。

 

 となるとDAとどこまでかかわるのかという話になるが、ここで最大のリスクになってくるのが「華族特権」である。桂華院家とDAのつながりは主に「不逮捕特権」による組織の保護に基づいている。恋住政権の注目政策のひとつとして「華族特権の見直し」が大っぴらに掲げられ、いつ梯子が外されるか分かったものではない。この状況で「不逮捕特権」を前提とした組織に関わること、ましてや維持し続けることは私の父よりもヤバいスキャンダルの原因になる可能性が非常に高い。二十年…いや三十年後のラジアータならば情報操作で何とかしのげるかもしれないが、それまでは自分自身の力で秘密を守り続けなければならない。そうでなければゲームでのエンディングにある関西空港にたどり着く前に一族郎党銃を突き付けられてジ・エンドである。

 

 これを回避する方法として選択肢Bはどうだろうか?「DAという組織が存在していました」ということを公表し、「桂華院家は真相究明と組織の再編に責任を持ちます」という体裁をとる。スキャンダルになる前に先に公開する一種の()()()()()()である。DAの責任については「真相究明」の過程で適当な…まあこちらと対立している勢力に擦り付けることができればなお良し、最悪自分が身を切る必要が出てくるが、秘密をばらされるよりは確実に傷は浅くて済むはずだ。この方針を取った場合に得られる便益は桂華グループの確実な支持である。自分で言うのもなんだが桂華グループは寄り合い所帯でまとまりに欠ける。その統制を強化できることは自分の立ち位置を強化することにも繋がる、という理屈だ。ただし自分の身体的安全という観点化から考えると最もリスクの高い選択肢である。要するにDAをほぼ確実に敵に回しかねないのである。グラスノスチを唱えた政治家(ハゲ)()()()()()を起こされた、という歴史を忘れてはならない。そして組織の急速な解体に舵を切った場合、桂華院本家・アメリカ・日本警察…つまるところ自分自身を支えてくれる盟友の意思に反することになるので、「クーデター」時にDA側に立つ可能性が非常に高い。というより結託して実行するに決まっている。そうなってしまえば父の二の舞になることは避けられない。

 

 付け加えればよしんば政治的ハードルをクリアしたとしても、男女合わせて五万人あまりの()()()()させようとした場合、その選択肢の政治的リスクもそうだが何よりも「就職斡旋」が問題になってくる。彼ら彼女らには戸籍がない、それがリリベルとリコリスの条件だからである。戸籍がなく、兵役の経験しかない若者達、出身が南日本であるだけの二級市民。復員事業が失敗すれば日本最悪のテロリスト集団としてこちらに牙をむく可能性は十分にある。スキャンダル回避も社内統治も政治的な課題であって、この件においては最優先すべきは自分の物理的な生命である。ゆえにこの選択肢は選ぶことも実践することも一番困難な道である。

 

 そうなると選択肢のC、D、Eが出てくる。共通項としては私がDAを掌握し、その組織を曲がりなりにも維持し、ラジアータだけは維持ないし拡大していくという点だ。これらの選択肢を選ぶならば、少なくともアメリカからの支援は得られる。またリリベルとリコリスを維持するDとEの場合に限れば日本警察からの支援も得られる。DAの実権を奪われる格好になる桂華院本家についてはおそらくはいい顔はしないだろうが、推薦状をちらつかせながらDAという組織を残すことを説明すれば納得は引き出せるだろう。それでこれらの選択肢の違いについて考えていくと、つまるところリリベルとリコリスをどう取り扱うかという点である。

 

 アメリカからすればソ連が消滅した以上「反共部隊」を維持する理由はなくなったので解体しても構わないということだろう。アメリカについては主たる関心はラジアータであって「反共部隊」の存廃はあまり興味がなさそうともとれる。ならばCを選ぶとすればリリベルとリコリスをどうしても解体したい場合に限られるが、日本警察を敵に回してまで実践する価値のあることかと言われると、少しばかり二の足を踏んでしまう。理由は先に述べたとおりである。

 

 日本警察の目下の関心事は「対テロ部隊」の維持である。世界中でクルアーンを掲げて暴れてる連中がいるこの状況下で「対テロ部隊」は少しでも多いことに越したことはない。ゆえに最も穏健な選択肢としてはDとなる。桂華院本家との交渉を考えた場合でも、この路線でいくならば交渉はうまく進められるだろう。

 

 一方私個人の身体の安全だけを考えるならば、裏から実力行使できる組織を自前で持つ選択肢Eも悪い選択ではない。現状でも警察、各種情報機関、PMC等々でガチガチに固められた身の上ではあるが、そこにDAという新たなレイヤーを加えるだけの話である。従来の組織とは異なる法に縛られない組織であれば露見のリスクを考慮しなければなんでもできるため新たな選択肢を(日本国内であれば、という条件付きではあるが)与えてくれる。例えば私の政治的立場を脅かす人間に対して「先制的自衛権を行使」するといった具合である。言葉にするとものすごく危険であることは承知の上だが、同時に少しだけ魅力を感じてしまうのもまた事実。カリンを含め桂華のビジネスマンから最大級の反発を食らうことを覚悟しなければならないが、それに対しては『親切な言葉』を掛ければよい。その時の私の懐には『銃』があるのだから。

 

 そこまで考えたところでふと()()小学生だった時にアンジェラとグアム行きの機内で話したことを思い浮かべる。

 

 

「大人になるという事は、『可能性を切り捨てる』事でもあります。何にでもなりかねないお嬢様は、それこそ化物にもなりかねません。合衆国が多くの国の要人を受け入れて、文化交流をしている理由の一つに『独裁者の出現の阻止』というのがあります」

 

「今のままだったら、私がそれになりかねないと?」

 

「すでにお嬢様は巨万の富を得ており、日本有数の企業グループを支配下におき、学力が高いことはこのアンジェラ存じ上げております。これで軍隊格闘術まで習得されて一人で何でも出来るようになったら、どうして人の意見を聞きましょうか?」

 

*1

 

 

 うん、アメリカからするとリリベルとリコリスは邪魔だ。厳密には「()()()()()()リリベルとリコリス」が。だからこのテロ全盛の時代にもかかわらず「解体しろ」と要求してきたのだ。これまでに引き続き()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私が『独裁者』として日本に君臨しないようにするために。この推測が正しければアメリカはEはもちろんDの選択肢にもいい顔をしない。現在は日米の政治経済を表から堂々と握っている『護衛対象兼監視対象』であるが、リリベルとリコリスが合わされば、『排除対象』に組み込まれる可能性が高い。

 

 

再度。ステークホルダー(盟友)の意見を()()()まとめるとこうなる。

・桂華グループ、特にムーンライトファンドの主要メンバーは

 DAについて何らかの立場をとるべきであると考えている

・現在の桂華院家はDAの庇護者的立場である

 おそらく私がDAに関わることを良しとはしないだろう

・アメリカ、特に国防族はラジアータ計画を継続することを要求している

 ただし私がリコリスとリリベルを手に入れるのをCIAは望まない

・日本警察はDAの組織を可能な限り、

 リコリスとリリベルを含めてそのままで残すことを望んでいる

 

 

 これはとてもややこしいことになっている。お互いの利害が複雑に絡み合った案件は何度も相手にしてきたつもりだった。しかし私がこれまで相手にしてきた案件は突き詰めれば『誰がカネ(負債)を払うのか』であった。そして私には常に札束(じつだん)という道具があったし、それを何度も使ってきた。まあ何度か『私の身柄』を求める輩がいたことは否定はしないが…。しかし今回はわけが違う。問題になっているのはいわば暴力装置(国家)そのものなのである。

 

 近代国家の本質は国内の暴力の独占である。これが確立されていない国家は近代的で機能的な国家であるとはみなされない。ソマリアが良い例である。どうも日本警察はDAを持った私を『警備会社社長』という立ち位置で見ているので、国の紐づきは十分に取れていると解釈している節がある。しかしアメリカは違う。DAに関わる私を、リリベルとリコリスを『黒シャツ』に見立てて『非常に強固な経済的裏付けのある統帥(ドゥーチェ)』と見るのである。その目線に立つならば、アメリカがとるべき行動は『ローマ進軍』の阻止である。そのためには私自身を排除するか『黒シャツ』を骨抜きにするしかない。結果、日本国内でCIAとDAの暗闘に日本警察の取り締まりで誰も得しない三つ巴の戦争が勃発する。なんということだ。ただの半導体の流通履歴と怪しげな契約書が『日米戦争』にまで発展しかねない爆弾になるとは。本気になったCIA(アメリカ)を前にすれば、DA(日本)はいずれ負ける。どれだけ長引かせるかはDAがどれだけ強固な組織を持っているかによる。

 

 ん?そういえば私はDAについては聞かされているが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()について詳細を全く聞かされていないではないか。知っていることと言えば、明治より前からあったこと、祖父と父親が深くかかわっていること、実力部隊たるリリベルとリコリスは少なくとも五万人である、の三点のみである。トップが誰なのかすら聞かされていない。こんな状況下で私は組織の改編について悩んでいたのかと思うとばからしくなる。どのみち関わることが決まっているのならば、『先にかかわりを持ったうえで詳細を知ってから決断する』という方法が使えるではないか。選択肢として今はDを選んでおけば、将来的にC、EまたはBにシフトすることも不可能ではない。玉虫色の解決…というより決断の先送りに近いことは私もあまり気の進むことではないが、今のところは後でどうとでもなる決断を今はしておくことにする。桂華院本家には私がDAに関わらざるを得なくなってしまったことを、アンジェラ(場合によっては大使館)にはDAの内情を把握するための暫定措置であることをそれぞれ懇切丁寧に説明し、少なくとも了承を得ておく必要がある。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、いつもはこれで散々恋住総理に煮え湯を飲まされているのだが、この立場を今よりもありがたいと思ったことはない。ただ()()()への布石として自分が関係者の一人であることをDAに刻み付ける必要はある。そのための札束(じつだん)ならいくらでも用意できる。そう考えた私は封筒四通と印璽を持ってくるように頼む。それと金庫番である一条に急ぎではないがアポイントメントをとることを命ずる。メイド数名が恭しく退出するのを見送りつつ、手紙を個人の引き出しの奥にしまうことにした。

 

 

 

 方針を決めたら根回しの時間だ。

 

 

 

*1
現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変 web版 『力なき正義は無能であり正義なき力は圧制である』より抜粋






お嬢様、珍しく決断を先送りされる。判断材料が少なすぎるからね、仕方ないね。

根回し話のダイジェストを上げたらDAにお嬢様が乗り込む回を書きます。
ダイジェスト回単独で1,000文字いけるかな…?

この作品書くときに参考にしてる作品の需要とかあったら文字数稼ぎも兼ねて併記しましょうかね?



あともともと書いていた根回し話をダイジェスト化するので次の投稿は遅れる予定です。ご了承ください。
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