▽たんさくしゃの あなたは クトゥグアを くりだした!   作:ネスター派

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ペパー君の過去の捏造回です。それと今回はクトゥルフ神話要素はお休みになります。


2. 叶わぬ願い

 

何だこいつ。率直な感想がそれだった。

 

目の前に突然現れた少年は、顔立ちから察するに凡そ小学校高学年程度の年齢だ。特徴と言えば、片目を完全に覆い、肩くらいまでに伸ばされた亜麻色の髪だろうか。よく見れば、背中に大きなリュックを背負っている。

 

正直言って拍子抜けだった。いや、今日一日で散々な目に遭ったことから警戒し過ぎていたのかもしれない。とは言え、話しかけられた以上は応えるべきか。

 

「不慮の事故で迷子になったんだよ。そっちは?」

 

「不慮の事故……ねぇ?まぁいいか。オレはペパーって男だ。オレがここに居んのは、観測所まで母ちゃ……オーリム博士の忘れ物を届けに来たからだ!」

 

ペパーは俺の発言の一部に疑問を覚えたようだが、簡単な理由を話してくれた。だが、彼の言葉を借りる形になるが、ここは子供一人がお使いに来るような場所なのだろうか。どうにもきな臭い。

 

それにペパーという名前には聞き覚えがある。確か事前公開されたPV映像にちらっと名前が出ていた気がする。それに博士の関係者というのだから、おそらくはただのモブではないはずだ。

 

「そうか。まぁ、立ち話もなんだ。今から食事をするところだったんだが、よかったら一緒にどうだ?」

 

「へへっ、そうか?じゃあ、よろしく頼むぜ!オレも今日はどこで寝ようか悩んでたんだよな」

 

打算込みの申し出だったが、ペパーは快活に了承してくれた。主要キャラかどうかはともかく、こいつは俺にとっての第一発見村人で大事な情報源だ。ここで逃がすには惜しい。

 

そんなことを考えているうちに、ペパーはこちらへと歩み寄ってくる。だが、それも数歩近づいたところで、盛大に顔をしかめながら立ち止まってしまった。

 

どうしたんだろうか、と首を傾げていると、ペパーは苦々しく告げる。

 

「ちょっと待て!なんだこの臭い!?オマエ臭いクサ過ぎちゃんかよ!」

 

あぁ、と思わず納得が言った。分かるぞペパー、その気持ち。半日ほどの付き合いで俺は慣れてしまったが、未だにあの犬モドキの残り香が取れないのだ。これは川で洗っても取れなかったため、俺は力を借りる代償として諦めてしまった。

 

「うげぇ、今まで嗅いだことない匂いだ……。でもクセェ」

 

「……やっぱさっきの話は、なしにしようか?」

 

「いや、大丈夫だ!以外かもしれねーけど、オレは料理とかすんのが好きだから、腐った肉の匂いとかにも慣れてるぜ!」

 

俺、腐った肉の匂いすんの?分かってはいたが、少し傷付く。だがペパーは我慢してくれるようで、俺たちは一緒に焚き火を囲うようにして腰を据える。

 

「そういや聞きそびれてたけど、オマエの名前はなんていうんだ?」

 

「あー……俺の名前は…………レザンだ。レザンって呼んでくれ」

 

ペパーの最もな質問に俺は直ぐに答えることができなかった。前世の名前を名乗るべきだっただろうか。でもそれは違うような気がした。

 

レザンと名乗ったのはなんとなくだった。名前と聞いて徐ろに浮かんできたのが、この名前だった。

 

「レザンな!分かったぜ。ところでオマエ、さっき迷子になったって言ってたけど、帰り道とか分かんのか?」

 

「いや、飛行タイプのポケモンとかを適当に捕獲して、それに乗って帰ろうかな……って」

 

「いや、行動力ヤバすぎちゃんかよ!危ねぇからやめとけって!それならさ、オマエに一個頼みがあんだけど、オレと一緒に観測所まで行かないか?」

 

観測所か……。今作の博士に会えるということは、頼んだらテラスタルオーブとか貰えたりするんだろうか。現金だと思われるかもしれないが、それならば行かない理由はない。

 

それに道中の安全は、癪ではあるが、残り香である程度確保できる上に切り札が4枚もある。分の悪い賭けではないだろう。

 

「うん。いいよ」

 

「まだ全然説明してねぇだろ!オマエなんでもイエスちゃんか!?」

 

元気なやつだな。いいって言ったんだから、そこで頷いておいた方が都合が良いだろうに。もしかすると、こいつは結構いいやつなのかもしれない。

 

「観測所まで行ければ、オマエはワープ機能を使ってゼロゲートまで帰れるはずだ。本当は自分だけで向かいたかったんだが、オレはポケモン勝負は苦手でさ」

 

お前、本当になんでここに一人でいるんだ。思わず内心でそうツッコまずにはいられなかった。なにか事情でもあるのだろうか。

 

「レザンは一人でここに来れるだけの実力があるんだろ?そこで!ぜひともオマエの力を貸してほしいんだ!」

 

お前も一人でここに来れてんじゃん。それに俺もゲーム上でのバトルは得意だったが、実際はどうか分からない。だがまぁ、俺の実力に関係なく全てを焼き尽くす破壊兵器がいる以上、暴力で解決できる問題はたいていなんとかなるだろう。問題は身の安全が保証されないことだが。

 

とは言え、ペパー自身もある程度はやってくれるだろう。俺が戦うのはあくまでも最終手段、その認識で行こう。そう考えをまとめつつ、俺が返事をしようとすると――。

 

「あー!あー!まだ答えなくていい!今日はもう遅いんだ。明日の朝にでも答えを聞くぜ!」

 

ペパーは俺の言葉を遮った。さてはこいつ、話を聞かないタイプのキャラだな?俺はそう確信した。

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

程なくしてお互いに就寝し、この世界に転生してからの最初の一日を終えた。結局、次の日の朝に俺はペパーについて行く旨を伝え、二人でエリアゼロ観測所を目指してキャンプ地をあとにした。

 

道中の旅路では、これといった危険もなく、二人で談笑をしながら進んでいた。そして、ある程度打ち解けてきた頃、俺はずっと疑問に思っていたことをペパーに聞いてみることにした。

 

「なぁペパー。お前、本当は何でこの大穴に来たんだよー?」

 

「あぁ?だから博士に忘れ物を届けに来たんだって……まぁ、オマエならいいか。話してみて悪いやつじゃなさそうだって分かったしな!」

 

そう言いながらペパーはぽつりぽつりと語り始める。

曰く、ペパーはオーリム博士と親子で、少し前まではコサジの灯台というところで彼の相棒のマフィティフや、母親が連れて来たというコライドンというポケモンと共に暮らしていたという話を。

 

そして、ある日突然コライドンが野生のポケモンを相手に暴れ出し、その日を境にして母親はコライドンを連れてパルデアの大穴――正式名称はエリアゼロというらしい――に行ってしまい、帰って来ないという。

 

「それで母親に会いたくて、わざわざここまで来たってことか?」

 

「……あぁ、ちょっと恥ずかしいけどな!そうだよ!」

 

なんか、今の話を聞いていて思ったんだが、SVのストーリーの核心のネタバレを喰らってしまった気がしないこともない。それにコライドンっていうのは、スカーレットに登場する伝説のポケモンだよな?主人公が持ってるんじゃないんだろうか。

 

何はともあれ、俺個人の気持ちとしてもペパーは母親に会わせてあげたいところだ。だが、こんな年頃の少年を放置するオーリム博士は大丈夫なんだろうか。パキラのように、実は悪の組織の幹部でした~!とかでも俺は驚かないぞ。

 

「まぁ、なんだ。会えるといいな」

 

「ふん!ありがとよ!」

 

やはり年頃の少年としては恥ずかしかったのか、ペパーはそっぽを向きながら答える。だが、それでもちゃんとお礼を言える辺り、彼は相当善良な人物なのだろう。

 

そんなやり取りをしながら、俺たちは観測所を目指して歩いて行く。この時の俺は、最初は打算的な目的で近づいたものの、この世界で最初に出会った友人として、ペパーとはこれからも仲良くやっていけるだろうと信じて疑わなかった。

 

だが、俺が告げた言葉が現実となることはなかった。それを知るのは、もう少し先の未来。俺たちは最悪な形で袂を分かつこととなる。

 




チーゴのみ
煎じれば火傷を治療する薬にもなる果実。
ポケモンに食べさせれば、やけど状態を回復する。
その実は苦く、葉が長く丸くなるほど苦味を増すという。大いなる成果はそれに伴う苦痛によってのみ保証される。
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