▽たんさくしゃの あなたは クトゥグアを くりだした!   作:ネスター派

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3. 偉大な牙【分岐点1】

 

エリアゼロ第一観測ユニットと呼ばれる現在位置から最も近い観測所を目的地として歩き始め、今日で3日目。おそらくだが、あと数時間もすれば辿り着くだろう。

 

これを遅いと捉えるか早いと捉えるかは人それぞれだが、なにせ子供の足だ。その行程は遅々たる歩みだった。加えて、ペパー曰く――。

 

「エリアゼロだとどういうわけか知らねぇが、スマホロトムのマップ機能が使えねぇんだよ」

 

よくあるRPGのダンジョンみたいだ。ともかく、そのせいもあって俺たちはペパーの方向感覚を頼りに進んでおり、途中何度か迷ったりしたこともあって3日という時間が掛かっているわけだ。

 

「んー。スマホロトムかぁ……」

 

「なんだよレザン。オマエ、スマホロトムのことも知らねぇのか!?」

 

「いや、スマホロトムくらいは知ってるよ。……持ってないけど」

 

そう。現在の俺の持ち物は、何故か最初から持っている化け物の入ったモンスターボール4個と、ここに来てから拾った道具やきのみだけだ。残念ながらスマホロトムとかいう便利アイテムは持っていなかった。

 

それによく見るとペパーのスマホロトムは何やらデコレーションがされている。SVからの新要素なのか、それとも単純にゲームが現実になった影響かは定かではないが、俺も自分のを入手できたら試してみたいところだ。

 

「ところでペパー、ここって一般人立ち入り禁止なんだろ?強いポケモンがうじゃうじゃ居て危ないってのは分かったけど、それ以外にも何かあるのか?」

 

「それだけってオマエ、度胸ありすぎちゃんか?十分な理由じゃねぇか!?」

 

「いや、ワイルドエリアとかチャンピオンロードとか他にもいろいろあるだろ」

 

俺が当然のようにそう言うと、ペパーは疑問符を浮かべた顔でこちらを見てくる。おかしいな、これが地方ごとの差だろうか。

 

もしかすると、このエリアゼロという場所が過去作のそれにあたる場所なのかもしれない。そうすると、最初からホイホイとそんな危険地帯に行けたガラルの危機管理体制はどうなっていたんだ……。

 

「まぁ他にもって言うんだったら、ゲート団とかじゃねぇの?」

 

ゲート団――またしても知らない名前だ。だが名前から察するに、おそらくは今作における悪の組織だろうか。世代を追うごとにショボくなってく彼らだが、前作のローズ委員長はなかなかにやらかしていたため、気をつけるにこしたことはないだろう。

 

「オレもよく知らねぇけど、ゲート団っていうのは大昔にあったパルデア帝国の残党で、そこの王サマが信じてた財宝伝説を今でも追ってるらしいぜ。そんでもって、度々エリアゼロに勝手に侵入してはワルさしてるってわけだ!」

 

「勝手に侵入ってところは俺たちも変わらないけどな。ところでその財宝伝説っていうのは?」

 

「なんでもこの大穴の奥底には『この世の全てのものより価値がある財宝』が眠ってるっていう言い伝えがあるんだとよ。ま!見つけたヤツはだーれもいないんだけどな!」

 

へー、と相槌を打つが、なかなかに興味の惹かれる内容だ。もしかすると伝説のポケモンが眠っているのかもしれない。いつかは本物をこの目で見てみたいものだ。

 

「よし!それじゃあそろそろ休憩にしようぜ。観測所までも多分あと少しだ!最後にオレのとっておきを振る舞ってやるよ!」

 

そう言ってペパーは荷物をおろし、着々と昼食の準備を始める。なお、俺が食事の担当をしたのは最初に出会ったときの一回のみであり、料理好きのペパーには不評だった。

 

少なくともこちらの中身は、長い一人暮らし歴を誇る社会人だというのに、小学生に料理で負ける俺は一体……。

 

そんなことを考えているうちにペパーはテキパキと準備を済ませ、俺の前には美味しそうなサンドウィッチが並んでいる。3日間食べてきたわけだが、有り合わせのものでよくここまで作れるものだと感心する。

 

ただ料理の度に、うおおおおお!ずりゃ!おりゃー!とか言う癖はどうにかならないのだろうか。最初に聞いたときは、どんなゲテモノが出てくるか心配したものだ。

 

「お待ちどうさん!チイラのみたーっぷりペパーサンドウィッチの完成だ!」

 

出来上がったサンドウィッチにはペパーが持ってきたさまざまな香辛料がふんだんに使われており、間にサンドされたハンバーグやマトマのみのスライス、パイルのみの味を引き立ている。

 

なかでも、メインとした使われたチイラのみが持つ特有の甘みと辛味が絶妙であり、口のなかで調和し、不思議な味わいでありつつもしっかりとした旨味がある。きのみのなかでも貴重とされるものだが、味としても非常に美味しかった。

 

「名前をつけるなら、ハイパーあまからサンドってとこだな!我ながら上出来だぜ!」

 

そう言いながらペパーは相棒であるマフィティフを繰り出し、優しい手付きで頭を撫でながら彼の前にも同じものを差し出す。

 

初めは見たことのないポケモンだったが、ここ数日の付き合いですっかりお馴染みになってしまった。黒い毛並みに、マフィアのボスを彷彿とさせるオールバックのような頭部が特徴的な犬系のポケモンだ。

 

強面な顔とは対照的に人懐っこく、ペパーにじゃれている姿は見ていて微笑ましい。可愛げがないどころか、悍ましさすらある俺の手持ちとは大違いだ。

 

俺がそんな内面を表したような微妙そうなを顔をしていると、マフィティフの毛づくろいをしていたペパーがこちらへ振り返り、声を掛けてくる。

 

「もう3日目だが、本当にいいのかよ?オマエのポケモン。そろそろお腹も空いてくるだろ」

 

「いや、俺のポケモンは飲食とか本当に大丈夫だから。むしろ外に出すことが問題というか……うん」

 

「そうかよ。まぁでも!なんかあったら言ってくれよ!料理だけなら力になれるぜ!」

 

ペパーの申し出は嬉しいところだが、おそらくお世話になることはないだろう。まず、飲食は必要――というより可能なのか?最終破壊兵器の方は論外としても、犬モドキですらどうか分からない。

 

そもそも犬モドキと言いつつも、便宜上そう言ってるだけで、実際はそれっぽい形をした不定形の靄だ。飲食の必要があるようには到底思えない。残りの二匹は……取り敢えず今は置いておこう。

 

そんな益もないことを考えつつ、俺たちは談笑を交えながら食事を進めていく。あらためて料理の味に舌鼓を打ち、今度ペパーに料理を習ってみようかな、と俺は密かに決意したのだった。

 

 

 

▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 

 

 

昼食を食べ終え、そろそろ移動しようかとなったところで突如、遠くの方から地響きの音が聞こえた。それに続くようにしてドシドシという音が連鎖的に鳴り始める。

 

「おい、レザン!なんの音だ……これ!?」

 

ペパーがハッと顔を上げ、こちらを見遣るが俺としても分からない。落石でもあったのか、それともポケモン同士の縄張り争いでも起こったのだろうか。

 

「分からない。取り敢えず、観測所まで急ごう。そこまで行けば何かしらの手立てがあるはずだ」

 

そう言って俺は立ち上がろうとするが、ここで嫌な予感がした。この音……徐々に近づいてきてないか?そんな疑問を抱くや否や、音の距離からして発信源が急速にこちらへと接近して来るのが分かる。

 

「おい、ペパー!ここにいると危ない。早く逃げよう」

 

俺が下した判断はいささか遅すぎた。俺がそう告げると間もなくして、木々を薙ぎ倒し、砂埃を上げながらこちらへと向かってくる巨大な影が見えた。

 

「なんだよアレ!デカすぎちゃんだろ!?」

 

ペパーがそう叫ぶのも無理はない。

それは赤い棘のようなものを無数に生やした漆黒の鱗を持っていた。恐竜とマンモスを掛け合わせたような荒々しい形状の胴体は、生い茂る木々の高さを優に超え、その体長は数十メートルにも及ぶことだろう。

 

傍若無人なまでにあらゆるものを薙ぎ倒し、地を震わせるそれは、この大穴を統べる主のようですらあった。そして何より特徴的なのは、口元から覗かせ、泰然と存在する捻じ曲がった白亜の如き代物――偉大な牙だった。

 

「クソッ、逃げてる暇はなさそうだな。ペパー!どうする?ここで迎え撃つか?」

 

俺がそう告げるも、事態はそれだけでは収まらなかった。猪突猛進の勢いで進行するそれに続くようにして、奴は背後に無数の同胞を率いていた。無論サイズは比べるまでもなく小さいが、それでも確かな脅威である。

 

「迎え撃つって言ったって、できるのかよ!?オレとマフィティフじゃあ、流石にどうにもできねぇぜ?」

 

「やるしかないだろ。どいうわけか俺たちを追ってるみたいだ。逃げるにしても、俺たちの足じゃ追いつかれて終わりだ」

 

ペパーは苦い顔をしているが、なにも彼らだけに任せるわけではない。俺も覚悟を決めるべきだろう。

 

「秘策がある。俺のポケモンが前線であいつらを迎え撃つから、ペパーは抜けてきたやつの対処を頼む」

 

「そうは言ったって、オレはポケモン勝負は苦手で……ッ!」

 

「勝たなくてもいい。数秒だけ持ち堪えてくれ!――それに、マフィティフはやる気みたいだぞ?」

 

マフィティフの方を見遣れば、彼は前足で地面を掻き、闘志の籠もった目でペパーを見つめている。

 

「しょーがねーな!オレも戦ってやる!コイツ、勝負大好きだもんな。オレたちの味わい、たーんとご賞味あれだぜ!」

 

ペパーも覚悟を決めたようで、パンッと自らの頬を両手で叩き、迫りくる脅威へと顔を向ける。

 

さて、これが俺にとっての始めてのポケモンバトルだ。敵はレイドボス級だが、こちらも使うポケモンがポケモンだ。相手にとって不足はない。

 

俺はそう決意し、腰に装着されたモンスターボールへと手を伸ばす。おそらくここが俺にとっての分岐点だ。さて、どれを選ぼうか――?

 

 

 

 




ハイパーあまからサンド
そうぐう:じめんLv2

紛らわしいですが、このイダイナキバはストーリー上で主人公達が倒した個体とは別個体です。
スカーレット/バイオレットブックによると、ひでんスパイスはもともエリアゼロに自生していたものらしいので、それを偶然食べた個体になります。

あと、アンケートを採ってみたのでよろしけばお答えください。結果の如何によって今後の展開に変化があります

あなたには4つの選択肢がある。どのモンスターボールを選びますか?

  • 1.クトゥグアの入ったボール。
  • 2.ティンダロスの猟犬の入ったボール。
  • 3.心霊波の漏れる偉大さ溢れるボール。
  • 4.誘うような夢の気配がするボール。
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