▽たんさくしゃの あなたは クトゥグアを くりだした! 作:ネスター派
アンケートのご回答ありがとうございました。結果として4番目の『誘うような夢の気配がするボール』が選ばれました。
▽あなたには4つの選択肢がある。どのモンスターボールを選びますか?
1.クトゥグアの入ったボール。
2.ティンダロスの猟犬の入ったボール。
3.心霊波の漏れる偉大さ溢れるボール。
▶4.誘うような夢の気配がするボール。
はい いいえ
▽あなたは4つ目の選択肢を選んだ
俺は未だ繰り出したことのない、新たなポケモンに賭けることにした。炎の化け物は破壊力があり過ぎて話にならず、犬モドキはどこまでやれるか未知数だったからだ。
俺は誘われるようにして、新たなモンスターボールへと手を伸ばした。ボールへと手を掛けた瞬間、まるで身体が宙へと浮かんでいるかのような不可思議な感覚が俺を襲った。
だがそれも一瞬のことであり、俺はボールを手のひらで転がしながら一度深く深呼吸をする。息を吐き出すのと同時に、迫りくる猛獣のようなポケモンに向かって、勢いよくボールを投げる。
モンスターボールが開閉し、赤い光線が迸る。そして、その中から現れたのは巨大なナメクジにも似た超常の存在だった。カビの繁茂した下水道のような体色をした皮膚は、ヌラヌラと怪しく光る粘液を分泌し、身じろぎに合わせて胎動していた。
盛りがった胴体は山脈の如き威容を誇っておりながらも、通常の山々には決して存在しないものがあった。かの存在の背に形成させていたものを一言で表すならば、それは針山地獄であった。
ウニのように綿密に生え揃った棘は、その一本一本が人間を頭から股まで串刺しにしてもなお余る程に大きい。そして、腹部全体を覆うようにして無数のピラミッド状の鋼殻が存在し、さながら城塞のようですらある。
開かれた口には、ヤスリ状に並んだ卸し金のような歯が何段にも連なる形で無数に並んでいる。加えて、その上に伸びる3本の形状組織の先端には、ギョロギロと動きまわる腐った果実のようか目があった。
特筆すべき点として、その化け物には手足がなかった。当然と言えば当然だが、その代替となるようにして身体の各所からは、人間大もの大きさの触手が複数本生えている。先端は恐ろしいまでに尖っており、毒々しい色をした液体が滴らせては、落下した先の地面をシューっと音を立てて溶かしている。
そして気がつけば、足元には水が広がっていた。それはかの大いなる存在を中心として発生しており、不可思議な波紋を浮かべている。強い催眠性をそれは夢と現実をも曖昧にし、かの存在の支配する夢の世界へと誘う。
ただそこに存在するだけで、それはすべてを呑み込む厄災のようであった。だが、その常識の埒外にある存在は、正しく神であると、そうとしか矮小な人の身では形容することを許されない。あぁ、なんと神々しく、されど悍ましいことか。
崇め奉れ。其れこそ、いと懸けまくも畏き旧き支配者――不死を授け夢引くもの、或いは隕石より来る
▽
これがポケモンだとでも言うのだろうか。この迸る神気は、伝説のポケモンのそれではないのだろうか――断じて違う。俺はそう言わざるを得ない。
何故なら、あまりにも悍まし過ぎるのだ。最初に炎を体現したかのような邪神を見たときと、これではまるで変わらない。いや、それ以上の恐怖すら感じる。
自身の根底からひっくり返すような、既存の常識に当てはめることのできない超越したその存在。それは、俺が今までの人生で見てきたもの全てを否定するかのようだった。
常識が根底から塗り替えられることへの恐怖。正気を根こそぎ抉り取られるかのような不快感。理解してはならないものを受容してしまったことによる苦痛。
そのどれもが、俺という存在を狂気へ突き落とすに足るものだった。気が触れた。間違いなくそうだ。
だが、今まで生きてきた時間に比べ、短期間であまりに多くの
狂気に呑まれる。そして、ある種の強迫観念が俺を襲った。即ち、何故こうなってしまったのかと。原因は火を見るよりも明らかだ。
そう。目の前に蔓延る獣共がいなければよかったのだと。ならば、為さなければならないことは唯一つ。それ即ち、敵の殲滅だ。
「……やれ、蹂躙しろ」
俺はその思考に至ると同時に、かの超常の存在――否、
幸か不幸か、俺は揺れ動く狂気の狭間で一つの真理へと辿り着いていた。それは、決して理解してはならない邪悪なる神話の断片であった。
星辰正しき時に目覚める旧き支配者の存在。人の理を超えた法則の数々。何れ終わる泡沫の世界。俺が理解したのは、その極々一部に過ぎない。
精々分かったのは、宇宙には人の理解を超えたものがあり、目の前の存在はその一柱であるということと、それを指し示す異名くらいだ。
だが、今はそれで充分だ。俺の命令を聞き届けた
だがそれは、攻撃の手を休める理由にはならない。追撃するようにして、率いられた子分達も突進してきたためだ。
「まだだ、もっとやれる……。まとめて吹きとばせ!」
果たして本当に俺の言うことを聞いているのかは定かではないが、俺が命令を出したのと同時に
『Spell Casting : The Reversed Angles of Tagh Clatur : Coordinate designation-Asteroid located within 677083stadion』
吼えるように、咳き込むようにして精神を蝕むような邪悪な言語を告げたのだ。それが何を表す言葉だったのかは皆目検討もつかなかったが、変化は直ぐに訪れた。
天が割れた。そうとしか言いようがなかった。空を、空間を切り裂くようにして"門"が開いた。
それも一つや二つではない。無数に開いた穴が突如として上空を埋め尽くした。ウルトラホールにも似たそれは、覗けばもはや戻ることはできないであろう宇宙の真理へと繋がっているのだろうと、俺は直感的に理解した。
「ペパーッ!"門"の奥は見るな!」
わずかに残っていた理性が俺にそう告げさせた。ペパーの様子を窺い知ることはできなかったが、俺の胸中は歓喜で満ちていた。あぁ、これで敵を全て屠れると。
何故だか滲んできた涙を拭い、再び空を見遣る。開かれた"門"からは、何か途轍もない質量が迫ってくるのを感じる。
その予感は当たっており、刹那の後に空を巨大な影が覆い尽くした。否、そうではない。瞬く間にそれは形を変え、まるで花火のような閃光が空を満たした。
大地が空へと落ちる。そんな矛盾を孕んだ光景が目の前にはあった。だが、紛うことなき現実だった。
――星が墜ちる。幾重にも重なるようにして、甚雨となって星々が降ってくる。煌めきを放ちながら流星となったそれは、どこまでも綺麗だった。
▽グラーキの タフ
その光景を、俺は両手をいっぱいに広げて抱きしめるようにして眺めていた。降り注ぐ岩が俺に直撃しそうになったとき、誰かが横薙ぎに俺を吹き飛ばした
「おい!何やってんだよ!」
それはペパーだった。彼は俺へと声を掛けてくるが、俺にとっては些細な問題でしかなかった。ただその時に思ったのは、なんで邪魔するんだろう?という純粋な疑問だけだった。
そして――。
その場に残っていたのは、倒壊した木々と攻撃の余波で変わり果てた大地、息も絶え絶えになった無数のポケモンたちの姿だった。降り注いだ星々は地上に幾多ものクレーターを生み、めらめらと燃える炎が大地を明るく彩っている。
そして僅かながらも攻撃から逃れたれたポケモンたちは、みな恐慌状態に陥りわけも分からず暴れているだけである。
平時であれば、それだけで脅威以外のなにものでもないが、どうすることもできない圧倒的な格差の前にはあまりにも無力だった。そして、最後の始末をしようと再び俺が命令を出そうとすると――。
「おいレザン!もういいだろ、もう充分倒した!これ以上やらなくていい!」
ペパーの叫ぶ声が聞こえた。だが、逃げる?何を言っているんだ。そんな言葉が脳裏に浮かぶ。目の前の敵を殲滅しなくてはならないという強迫観念に取り憑かれた俺に、何度声を掛けられようともペパーの言葉は届かなかった。
今の俺のなかにあるのは狂気だけだ。間違いなく狂っていると言っていい。わずかに残っていた理性が警鐘を鳴らすが、俺はもう止まれない。
だって俺は今、とっても愉しいんだ。バトルとはこんなにも爽快で、心躍るものだったというのか!画面越しに見ていただけとはまるで違うじゃないか!
……ああ、楽しい。愉しい!
思わず笑みが溢れる。最高に気分がいい。胸中を高揚感が埋め尽くしているのを感じる。敵を倒すのは――圧倒的な力で他者を踏みにじるのは、こうも俺に快感を与えてくれるというのか。
超常的な力に酔いしれ、狂気に陥った俺を見て、ペパーは一体何を思ったのだろうか。……分からない。ただ俺は酩酊状態にも似た意識のなかで、今も変わらずに狂乱の限りを尽くしている。これは、破滅の道だ。
そんな道を猛進していた俺の前に、突如として立ち塞がる人物がいた。それはやはりというべきか、ペパーだった。混濁した意識のなかでかろうじて見えた彼の顔は、とても悲しそうな顔をしているような気がした。
「おい、どうしたんだよ……今のオマエ、最高におかしいちゃんだぜ?頼むからさ、もうやめようぜ」
ペパーのこぼした――雑踏の中なら消えてしまうような小さな呼びかけは、不思議と俺の耳によく響いた。消えかけの理性が俺を正気へと戻そうとする。
震える手を彼の方へと伸ばそうとする。だが気づいてしまった。ペパーの背後で、荒々しい気概を隠そうともせずに、血走った眼で彼へと襲い掛かろうとする
「悪かったよ。オマエに一緒に来てくれ!だなんて言ってさ。オレが悪かった!だからもうやめようぜ……」
違う。ちがうんだ、ペパー。今はそんなこと言ってる場合じゃない!俺は背後に迫る脅威を伝えようと、言葉を絞り出す。
「……そこを、退いてくれ。ペパー……ッ!」
俺の言葉をどう捉えたのか、ペパーは一度顔を伏せ、キッとした表情で顔を上げる。そして――。
「ぜってぇに退かねぇ!友達が道を踏み外そうとしてるのを、黙って見てられねぇ。オレは行かせねぇぞ!」
最悪のすれ違いだった。俺の言葉も、ペパーの言葉も互いへと届くことはなかった。そんななかで俺が下した決断は、数ある選択肢のなかで、これまた最悪なものだった。
「――そいつを黙らせろ」
俺は
結果として指示を出した途端、やつは寸分の時も置かずにペパーへと触腕を振り下ろした。言うべき言葉を間違えたと気づいたときには、もう遅かった。だがその瞬間、彼を庇うようにして一つの影が踊り出た。
それは、彼の相棒――マフィティフだった。
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俺が最後に見たのは、
そして、カランカランという音を立てて、それは俺の足元まで転がってきていた。空虚な音が俺のなかで響いてた。
ははは、と乾いた笑いが漏れる。遠くの方では崩れ落ちた相棒を抱え、何度もその名を叫ぶペパーの声がする。俺はそれを何処か他人事のように聞きながら、呆然とその場に突っ立っていた。
すべてを押し流す津波の如く、俺の繰り出したポケモンは災厄となってその場を呑んだ。そして一頻り暴れて気が済んだのか、やつはいつの間にかボールへと戻っていた。
もはやこの場に残っているのは、壊れた人形のように嗤い続ける俺と、相棒を救おうと健気にも手を尽くそうとしているペパーだけだった。
「なんで……!なんでこんなことしたんだよッ!」
泣き腫らした顔でペパーが俺へと訊ねてくる。そんなつもりじゃなかった――だとか、少し退いてもらいたかった――だとか、言い訳の言葉はいくつも浮かんだが、俺はついぞ言葉を返すことができなかった。
ペパーはぐったりとしたマフィティフを自身のボールへと戻すと、俺に背を向けて立ち上がり、一度だけ振り返ってこちらを睥睨した。そして、再び背を向け今度こそ何処かへと走り去ってしまった。
俺はそんな状況で何もすることができなかった。こうなることは分かっていたはずなのに、どうしてだろうか。
そんなことを考えながら何分が過ぎただろうか。いや、何時間、何日が過ぎたのだろう。俺は何をするにしてもやる気が起こらず、ただその場で蹲っていた。
やがて――パチパチと、何処からか拍手をする音が聞こえた。それは一人だけのものではない。二人、三人、いや十人だろうか。いつの間にか十数人もの人影が円を描くようにして俺を囲み、ただ繰り返し拍手をしていた。
一頻り拍手が鳴り止んだ後、その円の中から一人の人物が、こちらへと一歩一歩と歩み寄って来る。俺はそんな様子を感情の籠らない瞳で一瞥した。
全員が黒色に染め上げたであろう純黒の祭服のような衣装に見を包み、魔術師然とした杖のようなものを手に持っている。そして顔には、不可思議かつ邪悪な紋様の浮かぶ仮面のようなものをつけており、その表情を窺い知ることはできない。
そして、こちらへと歩み寄って来る人物の頭には、俺を取り囲む他の者たちとは異なり、植物を編んで作ったような形状の銅色に輝く冠を被っていた。
草冠を被った人物は俺の目の前まで辿り着くと、恭しく礼をし言葉を紡ぐ。
「お迎えに上がりました。我らが王よ――いえ、皇帝陛下。1000年前より貴方をお待ちしておりました」
『どうのくさかんむり』
ゲート団の幹部のみが被ることが許されるという栄誉ある冠。オレンの実の葉を模して作られたという。
ポケモンに持たせると混乱状態になるが、攻撃してダメージを与えたときに相手を怯ませやすくする。
銅を素材としたそれは、始まりを意味するものであり、古くから伝統の象徴であった。だが、伝統とは時代の流れと共に廃れ、いつかは消えゆくものである。
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グラーキ
HP(SIZ):450 こうげき(STR):200 ぼうぎょ(CON):300 とくこう(INT):150 とくぼう(POW):140 すばやさ(DEX):50
合計種族値:1290
タイプ:あく、くさ
とくせい:コズミックホラー
うちゅうてき きょうふで じぶんいがいの とくぼうが よわくなる。1D3 または 1D20の しょうきど そうしつ。
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というわけで、3匹目の神話生物はグラーキでした!
アンケート結果によって『ものすごい最悪な結末』と『とっても最悪な結末』と『ふつうに最悪な結末』の3ルートに分岐することになっていたんですが、今回は『ものすごい最悪な結末』になりました。各ルートの最後の方でまたアンケートを行おうと思うので、ご参加いただけると嬉しいです。
次回はスター大作戦編に入る前に、レジェンドルートのエピローグを一旦挟もうと思っています。