自分に自信がない最強パーティーメンバーが辞めたがる件 作:白石基山
1.自分に自信がない最強付与魔導師がパーティーを辞めたがる件
この世界のパーティーメンバーといえば、基本構成は前衛が二人、タンクとアタッカー。そして後衛として回復役の白魔導師や探索役を兼ねアイテムを使いこなすシーフ、後衛攻撃役として黒魔導師かアーチャーの五人で構成する事が多い。パーティーメンバーが増え過ぎるとコストが高過ぎて任務で手に入る金では赤字になる場合が多いからだ。世知辛い。
付与魔導は確かに不人気である。
そりゃあパーティーにとって回復出来る白魔導がありがたいのは分かる。
奇跡の『聖女』と言われている人がいる。組んだ事もあるが、彼女なんて死んで無ければ、いや首がちょん切れても死ぬ前にくっついて全快に出来る。
魂が消滅する前に元の状態に復元して回復させるのだ。ダメージくらう前提で回復魔導を予め飛ばしてきて攻撃を喰らいながら全快、こいつ死ぬなと判断したら死ぬ前提で回復魔導飛ばして死んだ瞬間復活みたいな事を平然とやる。ネトゲのチートプレイヤーみたいな存在である。
なんなんあの人。超人気の『聖女』様が、そんなチート白魔導師だから、付与魔導しか使えない人間となれば相対的に価値が下がると思われるのだ。
ちなみに『聖女』様の一番ヤバい所はどうあっても周りは死なないから、永遠と味方がゾンビアタックを行える事である。尚、そのゾンビアタックを行った前衛の精神はだいたい壊れるからやる事はほとんど無いと言っていた。
ほとんどって事は何度かやったんですよね分かります。俺何回もやったなそういえば。おい何が『聖女』様だ。
ただ、そんな奇跡な聖女様と比べてもシルはやばい。その辺の木の枝に『破壊』を付与し、その枝でオークを叩けばオークが粉微塵に粉砕するのである。そりゃあもうパーンと弾けるのである。なんで? とまじでビックリしたのを凄く覚えている。
『防御』を付加してくれれば多分砲弾を撃ち込まれても蚊が止まったレベルである。モンスターの打撃でダメージを受けた覚えが数回しかない。
『対異常』も完璧。
しかも普通は一人に一つしか付与出来ないのにこの前なんか十個くらいバフ掛けられてた。チートである。回復魔導? ダメージも異常も入らなきゃいらなくない? ほんと俺なんかと一緒で申し訳ない。この娘凄すぎるんだよ。
「私……パーティーから抜けようと思うの。私がいるせいでパーティーの評判も悪いし、白魔導が使えない付与専門の魔導師なんて荷物でしかないから……」
「いつも言ってるだろう? シルはパーティーの要だって。シルの付与魔導は最高だ。一回で複数の付与を、しかも無詠唱だぜ? 他の誰がそんな事出来るっていうのさ。評判? うち『白獅子』だぜ? ギルドランクだって最高のSランクだぜ? ただのやっかみだよ」
「でも……付与魔導が不人気でみんな極めようとしないからってだけで、私はこれしか出来ないから仕方なくこうなったっていうか……」
「シルが居なかったら俺なんてこの前のドラゴン討伐でも死んでるんだぞ? まず一撃目のブレスで吹き飛ばされながら丸焦げだった。シルが『対ブレス』と『対熱』の付与魔導を掛けてくれていたお陰だ。その後の一撃でドラゴンを真っ二つに出来たのだって『力』と『斬撃』の付与魔導を掛けてくれていたからだ。そうじゃなかったら分厚いドラゴンの皮膚なんか俺程度が斬り裂けるもんか」
しかもドラゴン討伐の時、他のメンバーが留守だったアンド緊急依頼で街にSランクが他に居なかったから、まあSランクなんてほとんどいないんだが、ともかく二人だけでの任務だった。回復役? シルが居れば要らない。だって大した怪我しないもん。自分で道具袋から取り出した薬草むしゃむしゃするだけだわ。
「ち、違うよ! レオならあんなブレス一振りで薙ぎ払えるしドラゴンだってレオの剣技なら切り裂けたもん!」
「出来るか! 俺のスキルがゴミなのは知ってるだろ」
断言する。絶対無理である。ドラゴンの皮膚は分厚いし堅い。スキル無しでは絶対斬れない。
「シル、いつも言ってるだろ。俺お前が付与魔導掛けてた状況だったから勝てただけなんだよ。なぁ頼むよ。辞めないでくれよ。……もしかして引き抜きか? 確かにうちはパーティーメンバーに平等に分けてるから取り分少なく不満かも知れない。……他のメンバーの取り分は減らせないが、俺の取り分からなら、分けれるぞ。流石に全部はちょっと無理だけど」
黒魔導師やシーフは装備に消耗品も多く、少し取り分多めにはしてあるが、それは消耗品分としてシルにも了承は得ている。が、時間が経ち、やっぱり納得がいかないというのであれば、ここは俺の財布から出すしか無い。
いや黒魔導師が消耗品が多いは一般的な話で、うちの娘は消耗品とか必要無さそうだけど、お菓子とか服とか買って欲しいと思っているから、なんやかんや理由付けてお小遣い渡してるだけなんだけど。
正直シルはいつか魔王なんて存在が現れて、勇者なんて人間が魔王討伐とかするのであれば、俺なんかより勇者の所に居たほうが世界の為には絶対良いんだろうけど。そうでもないならうちに居て欲しい。マジで。
「ち、違うよ! お金が欲しいんじゃなくて! っていうかもっと少なくても全然大丈夫だよ!? それに付与魔導しか使えない白魔導師に引き抜きなんてある訳ないよ!? シーフのスズさんや黒魔導師のマジクちゃんじゃないんだから引き抜きなんて……」
「え、あの二人引き抜きの話来てんの?」
シーフのスズ。戦闘は出来ないが探索系のスペシャリストである。恐らくこの世の探索系スキル全てを極めてるんじゃないかと思えるくらい凄い。例を言うとダンジョン探索の時に、彼女が先頭に入れば罠は百%回避出来る上に一度も戦闘にならずに最下層まで辿り着き、お宝をゲット出来るレベルである。
パーティーメンバーに入る前は悪党貴族から貴金属を盗んで恵まれない平民に金を配るなどしていた正義の怪盗としての裏の顔を持つイケメン系美人さんである。尚、胸が平らでシルエットだけ見た警備の人達から男と断定されていたので、俺も任務で会うまでは男だと思っていた。色々あってパーティーに入ってくれた。
マイナススキルの影響で戦闘関係がからっきし、どころか完全に出来ないというコンプレックスを持つ。彼女もたまに辞めようとする。困る。
黒魔導師のマジク。メガネっ娘である。じゃない、超が付く程の高火力黒魔導が使える。多分人類側最高火力を持つ。その代わり、その辺の人間でも属性は二つ三つ持つにも関わらず、単一属性の黒魔導しか扱えない。ちなみに俺は一つも無い。
そしてその属性が六属性の中で一番不人気の土属性というのが彼女のコンプレックスである。しかも火力が高すぎて、初期魔導ですら宮廷魔導師の最高火力を超えるので迂闊に使えない始末であり、魔導のコントロールをうっかり誤ったりするドジっ娘でもある。出会ったときは超精密にコントロールしていた気もするが……。
なので彼女が魔導を披露する場面はほとんど無い。が黒魔導を使ったらどんな相手でもオーバーキルである。彼女もたまに辞めようとする。困る。
「……分かった。シルが辞めるなら俺も辞める」
「ええ!? 駄目だよ!? レオが『白獅子』のリーダーなんだよ!? せっかく国から認められて『白獅子』を名乗る事を許される所まで来たんだよ!? やっと王国に『五龍』の一角として認められたんだよ!?」
「いやそんなのシルと比べたらどうでもいいし」
「ふえ!?」
元々冒険者としてソロだった時に俺の名前、レオから前世の知識からの連想で『獅子』というパーティー名でギルドに登録していた。んでコツコツ、生きるのに困らない程度に任務をこなしながらスキルを磨き、いや磨かれなかったんだけど、パリィだけでなんとかやってきた訳なのだが、パーティーメンバーが一人加入するにつれて、『獅子』の名は知られるようになり、またメンバーが全員強すぎたせいでホスグルブ王国の最高の称号である『五龍』の一角に数えられるまでになっている。『五龍』なんて、『白獅子』なんて望んでない。めっちゃ断ったのに無理矢理押し付けられた。
ちなみに現『五龍』唯一の平民出身であり、民間ギルド所属としても唯一である。割と憧れの的らしいがぶっちゃけ自分の力では無いのでかなりどうでも良い話である。
ていうか正直、うちのパーティーに来る依頼が、『白獅子』とかいう称号のせいで難易度ヤバくなり過ぎて誰か一人でも欠けるとすぐ無理ゲーになるので誰か辞めるのであればマジで辞めたい。
「……そんなにレオにとって私が必要?」
シルがようやく顔を上げた。上目遣いで不安そうにこちらを見ている。俺は出来るだけ力強く答える。
「当たり前だろ」
「……分かった。もう少し頑張る」
「本当!? ありがとうシル!」
なんとかシルはまだ辞めないでくれるらしい。思わず立ち上がりシルの手を取り上下にぶんぶんと振り回してしまった。しかしスズとマジクに引き抜きの話があるとかいうのが気になる。いま二人ともパーティーを離れてるのが不安を煽る話である。
……どうしよう。
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