自分に自信がない最強パーティーメンバーが辞めたがる件   作:白石基山

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22.マジク母、謎ばかりばら撒く

 仮面ライダー、本郷猛は対魔忍である。

 

「ええ!? ……夢か。とんでもない夢を見た」

 

 まだ前世の知識の夢も見たりするんだなと思いながら一人部屋のベッドから降りて着替え剣を取り、水を飲んでから宿の中庭へ向かった。

 陽も登らぬ早朝からひたすらに剣を振る。日課となるコレをやらなければむしろ調子が悪くなる。

 

「……ああ、集中出来てねえ。今日は辞めるか。あんな夢見るからだな」

 

 ひたすら剣を振ってみたものの雑念が混じる。

 

「はい、タオル」

「ああ、ありが……ッ!」

 

 差し出されたタオルを受け取ろうとして、差し出した人物、いや魔族を見て距離を取り剣を構える。魔力が見える左眼を無理矢理ぶち込まれて以来、気配も何も感じずに近付かれたのは初めてかも知れない。いやスズならその気になれば余裕で近付かれると思うけどそんな事やらないし。

 

「私の左眼、気に入った?」

 

 マジクの母親がやってきた。

 

「そんなに睨まないで。せっかく遠見でマジクが近くにいないの確認出来たからきたのに失礼しちゃうわ」

 

 マジクの母親、名は知らない。教えてくれないし、なんならマジクも知らない。マジクと同じ薄青色のロングヘアに右眼は赤眼、左眼は俺の眼だから黒眼。生まれたてのマジクを捨てたクズである。本人曰く、人間との合いの子を育てていると他の魔族から狙われるから仕方なかったとか言ってるが、やりようはいくらでもありそうだからクズなのは間違いない。マジクが唯一、本気で出会った瞬間から殺そうとする程怒りを向けるやつなのは仕方ない。

 

「あは、左眼良く馴染んでるみたいじゃない。なんなら右眼も交換しちゃう?」

「その前に殺すが?」

「無理ね。さすがに付与魔導抜きじゃ私には勝てないでしょ?」

 

 図星である。目の前のコイツ、全力のブチギレマジクをいなして逃げる事が出来るくらいの化け物である。全力マジクなんて都市数秒で滅ぼしそうな火力持ちなのに。……シルの付与魔導込みでも身体面では上回れるけど、攻撃当てる自信がないんだよなぁ。負けはしないが勝てもしない気がする。

 

「だいたいなんで俺の眼なんて欲しがるんだよ。良く見える、それくらいだろう」

「ま、良く見えるくらいしか使えないでしょうね。アナタじゃ。その良く見える、も他からすれば異常な見え方でしょうけど。私だってアナタを魔診眼通して診なきゃ気付かなかった。他の魔族だってアナタの眼に気付いていればとっくに狙っていたでしょうし」

 

 魔診眼っていうのかこの眼。マシンガン……響きはかっこいいな。魔力見えたりスキルの予兆把握出来たりすっげえ便利なんだよなこれ。魔力だって人によって波長みたいなもんが違うとか知らなかったし。……これ相手が変装してても即行見破れるよね。そんな眼より欲しいとかどういう事?

 

「アナタがまったく才能の無かった人間だから宝の持ち腐れなのよ。この眼」

 

 はっきり言う。気に入らんな。

 

「まったくじゃねえし。パリィくらい使えるし」

「アナタのそれ、パリィじゃないわよ?」

「……は?」

「アナタがパリィと言って使ってるからパリィだと周りも思ってるんでしょう。でもね? パリィが同スキル帯以上の攻撃スキル弾ける訳無いじゃない。スキルが変異するとかいう希少事例もあるからそれと勘違いされたとか? まあそれはそれで例がほとんど無いから勘違いされても仕方ないんでしょうけど」

「え、パリィ……じゃない?」

「そうよ。聖剣技最上位なんて百年に一人くらいしか使えないスキルをパリィ如きで防げる訳ないでしょ。世界統一とか魔王討伐とか、歴史に名を残す人間が覚えるスキルなのに」

「防げたけど……?」

「身体能力でゴリ押ししただけでしょ。ゴリ押せるからおかしいんだけど」

「いやいやいや、付与魔導無しでも聖剣技下位くらいまでギリギリいけるが?」

「そうね。パリィじゃないもの」

「え、じゃあコレ何なの?」

「うーん、秘密♡」

「うっぜえマジでぶっ殺すぞババア」

「あら、見た目はヒトで言うと18くらいなんだけど? 老けないし」

「中身はいくつだこらあ!」

「秘密♡ じゃーね♡」

 

 急に現れて謎だけばら撒いて去っていきやがった。俺の眼の話は? 俺のパリィの話は? ……いや落ち着け、アイツの話を真に受けちゃ駄目だ。本当の事を言ってるとは限らん。マジクがいない時に来たって事は一応話をしに来たんだろうけどこの眼を狙ってかも知れ……いや今のタイミングなら間違いなく奪われてたからそれは無いか。ほんと何しに来たんだアイツ。

 

 

 

「リオン、あれ……」

「シル、見ちゃダメだ」

 

 今日も今日とて目指せウツノミヤ。背後に五十人程赤いタオルを首に掛けた集団がいるが気にしちゃいけない。タオルの端持ちながら「ファイッ!」とか言ってるが無視無視。赤いマフラーもいるな。まさかライダーで対魔……いやないか。闘魂神イーノキとか言って適当に喋り過ぎたかな。あの後も適当に喋ってたらみんな妙に真剣な顔で聞いてたから引くに引けなくなっちゃったし。

 

「元気ですかー! 元気があればなんでも出来る!」

 

 ランさんまで赤いタオル首に掛けてやってるんだよなあ。今後ろの人達に向けて叫んでるし。闘いが娯楽の国との親和性あり過ぎて草生える。マジで後で誰かに怒られないかな俺。クルスさんとかクルスさんとかクルスさんとか。

 

「そういやシル、この左眼さ、魔診眼っていうらしいよ」

「魔診眼……あれ、魔診眼って昔の魔王が持ってた瞳とか言われるやつじゃなかったかな……。確かリィナ師匠がそんな事言ってたような……」

「そうなの? でもあの人、俺の眼安定させてくれた時なんにも言わなかったけど」

「うーん、リィナ師匠なら気付いてそうだけどなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

「レオさんは今何処にいるか把握していますか?」

「隣国ホスチェストナッツでウツノミヤに向かって徒歩で旅をしているようです。その……」

「その、なんですか?」

「いえ、王と王妃が亡くなったばかりの王都へ向かい、王女と赤い布を巻いた集団を連れて一緒に向かっているとの事です。王女の護衛をしているようだとか……」

「……私宛の国葬の招待状が先程届いていましたよね?」

「はっ……」

「すぐに発ちます。いいですね?」

「はっ!」

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