自分に自信がない最強パーティーメンバーが辞めたがる件   作:白石基山

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23.裏の話とリオンを待つ最恐の敵

「すまない。スズ、マジク。わざわざ出向いて貰った」

「ええよ。うちの調べたかった事と一致しとったし」

「……甘いもの食べたい」

「レオからマジクが好きだと聞いている甘味家のお菓子をたくさん用意させてあるよ。遠慮しなくていいからね」

「はーい」

 

 シルを攫った連中、敵は誰なのか。それを調べとった際、ロサリア様を通して王家から依頼を受けた。『翠玄武』の研究室の捜索依頼。そのうちやろうと思うとったけどこのタイミングで来たとなるとほぼ黒やと思って受けた。んで報告兼ねてロサリア様の邸宅にお邪魔させて貰ったけどやっぱデカいな。でも洗練されとる。無駄な飾り立てもなく貴族、いや王族の持ち家にしてはかなり質素といえるはずなのにそれを感じさせないのはロサリア様がそこにいる、というだけでどんな飾り立てよりも輝く本物がいるからなんやろうか、とポリポリとクッキーを食べるマジクの頭を撫でながら考える。

 

「単刀直入に言うと、国に報告しとった研究施設三ヶ所、他隠し持っとった研究施設や隠れ家……いや会合場所かな? ともかく五ヶ所、全てもぬけの殻やったわ」

「五ヶ所か。想定より多かったな。会合場所とは」

「複数名定期的に出入りしとったみたいやけどそれ以上は分からん。隠し部屋もあったけどなーんも残っとらんかったし。んで本人はどこなん?」

「消えたよ」

「ふーん。じゃあ王家の情報なんもかんもすっぱ抜かれた後なん?」

「兄は最初から信用していなかったからね。最低限の情報を渡しながら泳がせていた訳だが、向こうも泳がされている事に気付きながら立場を利用していたみたいだ」

「『五龍』の一角まで渡して?」

「そうだ。『翠玄武』は空位となる。王家の大スキャンダルだよ」

「笑顔で言わんといてくれる? うちらしか知らん大スキャンダルを情報として渡されても困るわ。聞かんかった事にしたいくらいやわ」

「どうせ君ならそのうち知る事になるだろうからね。ならこちらから開示してしまったほうがこちらとしても分かりやすいだろう? 分かっている事を話そう。やつらは『形天』と名乗っている。シルを狙ったのは彼女の付与魔導の特異性からだろう」

「……『四罪』は『形天』の一部やったん?」

「そうだ。この国での活動の一つの形だったようだ」

「藪を突いてもうたって事ね……。この国での?」

「どの国でも悩まされているんだよ。『形天』には」

「目的は?」

「混沌、らしい。それしか分かっていない」

「『形天』ねえ。……確かこの国の都市間の行商許可やら物流管理に最近噛んどる組織、関税やらで小銭、まあ額は大きいけど稼いどる、そんな組織の中に確かそんなワードがちらっと聞こえた話があったと思うとったわ。……なあ、もしかしてやけど下手するとこの国の物流、既に握られとらん?」

「……兄にすぐ確認しよう」

「これ貸しでええ?」

「ああ、勿論だ」

「ところで……」

 

 話しとる間ずーっと気になっとった事がある。ロサリア様の隣に座る青いドレスに身を包んだ金髪ショートの美女。同席させとるからにはロサリア様の腹心かなんかなんやろうけど。

 

「隣の美女いつ紹介してくれるん?」

「あら、スズの眼でも分からないかしら?」

「え、レイラ……様?」

「ええ、『蒼麒麟』としてではなく、王女レイラとして隣国の国葬に招待されたの。だから普段染めてる蒼髪から元の髪色に戻したのよ。ロサリア兄様と同じ髪色でしょう」

「いや、髪色っちゅーか……。所作が違い過ぎて分からんかったわ」

 

 レオっちなんて髪色変えてもなんも変わらんのになあ。

 

「ホスチェストナッツに行くんでしょう。私も行くから同じ馬車で行かない?」

「なーんか口調が違い過ぎて違和感あるわ」

「ふふ、この屋敷から出たらいつものレイラに戻るわよ」

「それはそれで勿体無い気もするわ」

 

 

 

 

 

 

「カミュ……カミュ!? その『陽牡丹』のカミュってまさか自称モンスター研究家のカミュ!?」

 

 『星三華』最後の一人、『陽牡丹』カミュの話をリオンさんとしようかと思ったのですが、名前を出した途端にリオンさんの様子がおかしくなりました。

 

「確か昔そう名乗っていたかと思います」

「あいつ……この国にいたのか。帰るか」

「え、あの、確かにカミュは強いですが、今までの闘いぶりから思えばリオンさんのほうが強いかと……」

「ランさんはあいつの恐ろしさを知らないんだ……」

 

 震えるリオンさんの肩にそっと触れるシルさん。

 

「リオンほんとに怖がってたもんね」

「あの、一体何が……」

「あいつ、いつもコート着てるだろう?」

「ええ、そうですね」

「コートの下知ってる?」

「いいえ……まさか……裸……とか?」

「裸ならまだいいんだけどな」

 

 リオンさんは遠い眼をしています。

 

「昔、あいつが挑んで来た時、あいつコートを脱ぎ捨てたんだけどさ。まあ全裸ではあったんだけど」

「あ、全裸だったんですね」

「身体中にウインナーを巻き付けててさ」

「え?」

「モンスターの肉で作った筋力養成ギブスだー! とか言ってさ、身体中にウインナー巻き付けてるの。意味分かんないだろ」

「ええ……」

「あ、こいつヤバいと思ってさ。全力で腹に蹴り入れたの。多分あいつの内臓破裂しただろうし骨もボッキボキになるくらい全力で。何なら殺す勢いで」

「は、はあ」

「そしたらアイツ、倒れながら気持ち良さそうな顔で射精したの……」

「ええ……」

 

 しゃ……。言葉の意味を理解し思わず赤面してしまいました。いえ確かに恐ろしい狂気なんですけど。全然言ってる事分からないんですけど。

 

「俺怖くて逃げちゃったんだよ。そしたら噂でさ。アイツ「次は俺が抱かれる番だ!」とか言ってるらしいって聞いてさ。抱かれるって何さ。マジで意味分からないんだよ。怖くない?」

「それは……」

「それでさ、たまにアイツの狂気な噂が聞こえてくる訳。ほら、毒持ちのモンスターでビックサーペントっているじゃんか。鍛える為にビックサーペントにわざと……まぁ大事なとこ噛ませて十日間もがき苦しんだんだと」

「解毒しなかったんですね」

「んで死んだんだって。ビックサーペント」

「苦しんだのビックサーペントほうなんですか!?」

「怖くない?」

「恐ろしいですね……。知りませんでした。あの方、普通に前『陽牡丹』を倒して今の地位で闘い続けてますが、そんな方には見えませんでした……」

「常人の振りしてる狂人とかホント勘弁だよな……」

「リオン、でも待ち合わせ場所ウツノミヤにしちゃってるし……」

「分かってる。分かってるんだけど……。アイツがいるってなると恐怖の都に思えてきたわ」

 

 『陽牡丹』カミュ。まさかリオンさんとそんな面識があっただなんて。世の中は広いです。ところで抱かれる、という事はリオカミュって事でいいんですよね。次はって事はカミュリオがあったという事でいいんでしょうか。大事な所ですね。私気になります。

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