自分に自信がない最強パーティーメンバーが辞めたがる件   作:白石基山

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追1-3.シル出会い後編

 シルさんに前情報無しにうちのパーティー『獅子』のスズとマジクが帰ってきたタイミングで会ってもらう事になった。

 前情報無しで。

 これは賭けである。シルさんは凄い。間違いなく凄い。能力をきちんと知ってもらえれば何処からでも引く手数多なのは間違いない。

 そしてうちのパーティーは問題だらけである。シーフとしては超一流だが戦闘能力がまったくないスズ。魔力があり過ぎて魔導がすぐ暴走するマジク。そして唯一の前衛が戦闘スキルがパリィのみの俺。んでもってあまり言いたくはないがマジクは人と魔族のハーフであり魔族の血が入っているというだけで嫌悪されたりする。めっちゃいい子なのに。

 なのでマジクに会ってどう反応するかというのが賭けなのだ。そしてその反応でマジクを傷付けないよう配慮しなければいけない。うん、スズに後で怒られるかも知れない。

 二人が帰ってくる日に合わせてうちのパーティーハウスにシルさんに来て貰った。居間の椅子に座って貰っている。

 

「「ただいまー」」

 

 二人が帰ってきたので、出迎えて会ってもらいたい人がいる事を伝え二人を居間に連れて行く。途中、スズに肘で突かれて「大丈夫なんやろな?」と小声で言われた。「フォロー宜しく」とスズに小声で返したら溜息を吐かれてしまった。

 

「あ、あの初めまして! シルと言います!」

 

 立ち上がりぺこりと頭を下げてシルさんが挨拶した。

 

「はー、また可愛い娘拾ってきたなーレオっち。うちはスズ。マジク?」

 

 俺とスズの後ろに隠れ頭だけひょっこり出して様子を見ていたマジクが、スズに促されて一言だけ小さな声で挨拶した。

 

「……マジクです」

「はい、スズさんとマジクちゃん、宜しくね」

 

 手を差し出されたマジクはビクリとしてしまい、被っていた外套のフードが落ちた。魔族と分かるマジクの長耳が晒された。マジクの顔が青褪めた。そんなマジクを見て、シルさんは笑顔で話し掛けた。

 

「マジクちゃんの髪、長くて綺麗だね!」

「え……」

 

 マジクがシルさんの反応に困惑している。正直、驚いた。シルさんが悪い人じゃ無い事は確信していた。それでもマジクの耳を見ても一瞬も動揺しなかったのには驚いた。スズもそれは同じみたいだった。

 

「あ、あの……」

「どうしたの?」

「私の耳……」

 

 驚いたマジクが自分から言った。どうして驚かないのか聞きたいみたいだ。

 

「耳? エルフ種の耳だよね? あれ、今は魔族って言うんだっけ?」

 

 驚いているマジクの代わりに俺が聞いた。

 

「シルさんは気にならないのか?」

「えー、だってマジクちゃんはマジクちゃんじゃないですか。可愛いですねー」

 

 その言葉を聞いてマジクの顔が不安顔から一気に笑顔になった。そして俺も決めた。これなら間違いなくスズも反対しない。

 

「シルさん、うちのパーティーに入らない?」

 

 これが俺達『白獅子』の始まり。この時はまだ、シルのヤバさを理解しきれていなかったと今なら言える。まさか国最強とか言われるまで付与魔導で強化されるなんて誰も思わないもんねぇ。

 

 

「じゃあシルの部屋はここな!」

 

 二階にある空き部屋の鍵をスズさんから貰った。家具は一通り既にあるとの事だった。安宿なんかより余程綺麗な部屋。

 

「ありがとう、スズさん」

「スズでええよ! 一緒にやってく仲間、というか一緒に住む家族みたいなもんやし」

「家族……ですか?」

「そ、色々あってマジクを引き取った際にレオっちがこのパーティーハウスを買ったんやけどな。ウチらみんな実の親おらんし。まあウチは育った孤児院はあるんやけど似たようなもん。なんでウチら家族感が強いっちゅーか」

「私も育ての親はいますけど、実の親はいません」

「なら尚更やな。うちのパーティーは家族。そういうもんやと思ったらええよ。これから宜しくな!」

「はい! じゃなくてうん、宜しく……ね! スズ!」

「そ、宜しく!」

 

 スズの第一印象はスラっとしてカッコよくて人当たりも凄く良い人。それは間違ってなかったし、常に誰かの事を考えている優しい人だった。スズはパーティーとは別の裏の顔があり、そのせいでパーティーから抜けたい、と時々漏らす。でもパーティーから抜けても多分パーティーハウスからは出て行かないと思う。だってここはスズにとっても自分の家だから。

 

「えっと……」

「マジクちゃん、シルでいいよ」

「うん、シル。宜しくね!」

「宜しく!」

 

 部屋に荷物を置いているとすぐにマジクちゃんが来てくれた。ソワソワしている。何か話したそうな雰囲気だったので聞いてみた。

 

「何か気になる?」

「うん、その……エルフ種ってなーに?」

 

 少し不安そうにマジクちゃんが聞いてきた。

 

「えっとねぇ……」

 

 何て言おうかな、と少し考える。今、魔族は亜人族の総称らしい。エルフ種が他の亜人族に戦争を仕掛け、亜人族を統一後、ヒト族と戦争をし魔族の王をヒトの勇者が倒し戦争は終わった。というのが百年程前の話。

 

「今は魔族って言われている亜人族の中で一番魔力が強かったのがエルフ種だって聞いたかな。魔族の王様もエルフ種だったって」

「……エルフ種は悪い種族?」

「うーん、エルフ種が悪いんじゃなくて、亜人族で一番好戦的で強かったエルフがたまたま、……たまたまなのかな? ともかく魔族の王になったっていうか……。ほら、別にヒトだって色々な人がいるでしょ? 良いヒトも悪いヒトも。どの種族もそれは一緒だと思うんだ。つまり魔王は魔王。マジクちゃんはマジクちゃんって事!」

「私は私……。うん、分かった。ありがと!」

 

 私の言葉を聞いてマジクちゃんの顔はまた笑顔に戻った。「またあとでねー!」と部屋から飛び出して行ったマジクちゃんを見ながら、私にも妹が出来たみたいだと嬉しく思えた。

 そして室内履きをパタパタと足音を立てながら小走りに出て行ったマジクちゃんを見送ったら、扉は空いているにも関わらず外から開いている扉をノックする音が聞こえた。

 

「はい?」

「あー、シルさん今大丈夫?」

「レオさん、大丈夫ですよ」

「じゃあお邪魔しますっと」

 

 私の声を確認してからレオさんが顔を出して部屋に入ってきた。

 

「扉開いてたのに。それにここレオさんの家でしょ?」

「いやいや、そこは礼儀っていうかなんつーかね。パーティーの家だから最低限のマナーはある訳じゃない? 嫌な思いは出来るだけさせないっつーか」

「お気遣いありがとうございます」

「気にしないで。それと俺もさん付けじゃなくてレオで良いよ」

「うん、レオ宜しくね。私もシルで」

「おう。……マジクの事ありがとな。魔族嫌いの人間が多くてマジクも苦労してるんだ」

「あんなに可愛いのに……」

「うん、今日からシルの妹でもある」

「えへへ、私妹欲しかったんですよねー」

「良かった。……うん、本当に良かった。シル、改めて宜しく」

「はい、こちらこそ宜しくお願いします」

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