自分に自信がない最強パーティーメンバーが辞めたがる件   作:白石基山

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3.自分に自信がない最強黒魔導師がパーティーを辞めたがる件

「レオ、やっぱり私パーティー辞める……」

 

 

 今目の前に広がる惨状。

 ギルドの依頼で盗賊団のアジトに行って全員捕縛して欲しいとかいう、それ冒険者の仕事じゃなくない? っていうものである。

 スズが探索じゃないなら近くまで行ったら待機してるわと離れ、私がやると張り切ったマジクが初期魔導を詠唱。山が吹き飛んだという事態である。初期魔導とは一体……。うん、そうだね。プロテインだね(現実逃避)

 

 

「……前より手加減出来るようになって偉い!」

「でも……その……」

「相手はゴミなので問題無し! 盗賊がネグラにしていたせいで他に人間が近寄らなかったので問題無し! マジクは可愛いからヨシ!」

 現場猫並みの判断力によって今日もうちのパーティーは平和である。尚、吹き飛んだ山はマジクが再び成型したので元通りである。捕縛に関してはマジクが魔導で発掘した盗賊だったものを一応ギルドに提出した。

 

 

 ヒトと魔族のハーフ。

 ヒトからも魔族からも嫌われ、捨てられた所を竜神王に拾われ育てられた。恐らくこの世の中のキングオブチート。耳がピンっと立っていて俗に言うエルフ耳可愛い。それがマジクである。

 ……竜神王って何者かと思って他力本願で調べた所、神みたいな存在と王立図書館で記載されている文献を見た事があると、いつもの奇跡の『聖女』様から聞いた。博識で助かる。

 もう組みたくは無いけど。

 定期的に接触してくるのやめて怖いから。

 

 まあそんな育ちだから、常識は欠落しがちだし「私また何かやっちゃった……?」的な事も多々あるが、小首を傾げる仕草が可愛いのでよし(現実逃避二度目)

 マジクは定期的に竜神王の所に帰って近況報告をしたりしている。

 だから神の使いとも言えると思うし、単にお爺ちゃん大好きっ娘とも言う。そして竜神王も彼女の事を溺愛している。

 

 ……正直、マジクの報告次第では人類が滅びそうな気がしないでもないが、マジクが本気で魔導ぶっぱすれば国を滅ぼすなんて余裕そうなので、どのみち結果は一緒だからいいよね(現実逃避三度目)

 

 実は一度マジクに連れられて竜神王に会った事がある。

 ……ヤバかったなあ。

 見ただけで「あ、神様やん」って認識しちゃったというか。

 竜神王からも「この世界の者ではないな?」とか言われたし。

 魂の色が違うとかなんとか。

 知らんがな。

 わい神様転生とかじゃないねん。チートも貰った記憶ないねん。気付いたらなんか前世の記憶あったくらいやねん。

 

 マジクはそれを知って「……レオも一人ぼっちなの?」と俺に親近感湧いたみたい。まあ十歳の時に両親死んで兄弟もいないから仕方なく冒険者になった身なので、マジもんのぼっちではあったんですけどね!

 スラムに身を寄せるかマジで迷ったけど、どうせなら冒険者やるかって苦行を選択したが、それが今に繋がってるなら良い選択だったんだと思う。多分。きっと。メイビー。

 

 マジクとの出会いはギルドの依頼。

 東の砂漠に城が現れたから調査して欲しいと、ギルドの室長室に呼ばれて内密に依頼された案件だ。城が現れたって何? って聞いたけど状況が分からない上に調査に出した人間が軒並み行方不明になっているとか言われたので、やりませんとハッキリ断ったのに無理矢理行かされた。なんで?

 

 まだ固定パーティーも無かった時だ。奇跡の『聖女』クルスさんも街に滞在していたので彼女にも頼んでくれとギルド長に頼み、何故か向こう側からの依頼で俺とは既に何度か組んでいたのでかは分からないが、快く引き受けてくれた。

 やっと頼ってくれましたねとか言われたけどなんで君は俺と組みたがるの? 貴女教会所属なのに問題にならないの? そんなにゾンビアタックやりたいの?

 

 

「久しぶりですね、レオさんと組むの」

 

 

 いやだってクルスさん、ぶっちゃけ胸がデカ過ぎて見ないようにするの大変なんだもん。俺クルスさんと会話する時、胸見ないように必死に眼だけを見てるの分かってくれよ。服装が性的過ぎるねん貴女ほんと。

 

 まあそんなこんなで砂漠にやってきた俺とクルスさんは本当に砂漠の真ん中に城が建っていて驚いた。

 中に入って調査するべきか。いや調査しなきゃ駄目なんだろうけどみんな行方不明になっている場所に入りたくない。

 

 普通の冒険者ならとりあえず中に入る選択をするのに慎重ですよねとクルスさんに言われるが無視。そういうところ良いと思いますとか言われてるけど無視。

 とりあえず近づいて外周の確認をする了承をクルスさんに得て、城の外壁に触れる。違和感。

 この外壁、岩じゃなくて砂、いや土? 色は付いてはいるけど質感がなんかおかしいとペタペタ触っていると外壁から突然無数のドリル状の突起が現れて俺を貫いた。

 いや比喩じゃなく貫いた。でもクルスさんと一緒だから回復が間に合うから死なないんだなコレが。死ぬほど痛いけど。クルスさん痛覚もどうにかしてくれません? 服は穴だらけでボロボロになった。だけど死ななかっただけマシか。

 

 

「なんで死んでないの?」

 

 

 これまた突然城の外壁の上に現れた、裸の少女は無機質な視線をこちらに向けた。「魔族!?」と臨戦態勢に入るクルスさん。魔族は近年激レアな存在としてヒト側からは認識されて、そして悪であると認識されている。百年程前、一方的に戦争を仕掛けられ蹂躙された過去があるのでその認識はどうしようもない。

 

 とにかく俺氏は考える。仮にこの城が彼女の手によるものだとして。さっきのドリル状の突起も彼女によるものだとして。

 ……城を精製出来て形状の部分変更も思いのままとかヤバくない?

 まあ俺を殺しかけたのは、超常の存在の土俵に不用意に入り込んだのが悪い気がしないでもないし、死んでないから勉強代みたいなもんかといっそのこと開き直って俺は持っていた剣を投げ捨てた。我ながら判断が早いね。

 

 

「レオさん!?」

 

 

 そんな俺を見て驚くクルスさん。まあそれはそう。クルスさんのほうがこの場では完全に常識人。普段の格好は常識外れだけどね。

 

 

「おーい、砂漠で裸だと暑くないか? 服着ないのか?」

 

 

 とりあえず呼び掛けてみる。さっき言葉を発していたからきっと通じる筈。意思の疎通をする気があるかはまた別だけど。

 

 

「……服って何?」

「服っていうのは……そうだな、俺や隣の美人さんが纏ってる布の事かな」

 

 

 着ている服の裾を持ってヒラヒラと揺らしてアピールしてみる。まあ穴だらけでボロボロになんですけどね! そういや何もしてないのに穴空いてて何故かお揃いだねクルスさん(やけくそ)

 

 

「……こんな感じ?」

 

 

 そう言うと彼女の周りに砂が吹き、クルスさんと同じ服を身に纏った。

 え、今の何?

 魔導なの?

 無詠唱で?

 ……俺の仮説、もしかしなくても当たってないこれ? 横のクルスさんも驚愕してるがな。

 

 

「……それで、なんで死んでないの?」

 

 

 俺の言葉に答えたから、こちらの問いにも答えろとの意思が伝わってくる。

 なんでって言われても隣の人とんでもないからなあ。

 

 

「白魔導とは、ヒトを救う為にあるのです」

 

 

 俺が答えに迷っていると、代わりにクルスさんが答えた。

 

 

「いやクルスさんの場合は加虐も入ってると思うわ俺」

「……レオさん?」

「しまったつい本音が」

「……私にそういう事を言うの、レオさんだけですよ?」

「いやほんとごめんなさい」

 

 

 ニッコリ笑うクルスさんに恐怖する俺。その様子を見て外壁上の少女はクスリと笑った。

 

 

「なんだ笑えるんじゃん。こっち来なよ。飴ちゃんをあげよう」

 

 意外と可愛い顔をすると思った。

 

「……飴ちゃんって何?」

「甘くて美味しい舐めて楽しむ食べ物だ。……クルスさん、こっそり白魔導最高攻撃魔導の詠唱するのやめてくれる?」

「気付いていましたか……。しかし相手は」

「ぶっちゃけるけど、多分効かないよ。レベルがっていうか、世界が違うでしょ。分かって抵抗しようとしてるんだろうけど」

「……白魔導師というのは魔族とは相容れないものです」

「教会の教えでしょ? 聞いてるけどここは任せて。失敗して死んだら宜しく」

「……分かってます。レオさんは死なせません」

 

 

 クルスさんは一切警戒を解かない。白魔導師がって言うより教会がって感じなんだろうな。そういう教えを受けて育ってきたんだろうからその対応は当然だろうし、この辺りはむしろ無知な俺がおかしいんだろう。

 でも不思議そうにこちらを眺めている少女がどうしても敵には見えなかった。ただそれだけなんだ。

 

「少し話さない?」

 

 そう少女に問い掛けた俺に、クルスさんは複雑な顔をしていた。

 

 俺を殺しかけた少女の名はマジク。

 膨大な魔力で砂漠に城を建てた少女。何故そこにいたのか聞いたら「育ての親に人の世界を見てくるよう言われたが、暑かったので涼む場所が欲しかった」と。本当にそれだけだったようだ。自動迎撃システムみたいなのまで備わっていたんだけどと聞けば、砂漠のモンスターが襲ってくるので迎撃用との事。おそらくマジクの凄まじい魔力に当てられて活性化したモンスターが暴れ、それを餌にする為に砂漠最大のモンスター地獄蟻がこの近辺に移動してきていたようだ。

 

 地獄蟻は、まあ言ってしまえば体長三メートル程あるアリジゴクのようなモンスターで人もモンスターも呑み込んで食べる超肉食獣である。

 城の調査に来ていた冒険者はこれにやられたらしい。

 マジクの城の迎撃システムのようなものにやられたのは俺だけのようだ。その地獄蟻はマジクも狙ってきたらしく、「もういないよ。消したから」との事。消した、か。

 

 

「じゃあ俺と一緒に街に行く?」

「……いいの?」

「レオさん!」

 

 

 クルスさんから非難される。

 うん、分かってた。でもこんな所に一人置いていけないじゃない。彼女に罪は無いとクルスさんも納得しながらも、この後、教会育ちの『聖女』様とは少し疎遠になる。いやむしろそんな育ちなのに納得してくれただけクルスさんの懐の深さは凄いと思う。

 

 一度街に戻りマジクに服を買い、街で食事をし、宿を取り、マジクが人並みの生活というものを初めて体験し、その全てに驚き、その反応を可愛いと思いながら眺め、再び砂漠に戻った。

 もう城はいらないやとマジクが手をかざすと城が一瞬で消滅した。その後歩きづらいからここもいいやと地面に手をかざすと、砂漠が消え草原が広がった。

 広大な砂漠が一瞬で消えたのである。いやマジかよと思いマジクを見るが涼しい顔をしている。まさか今ので消耗ゼロなん?

 起きた事が超常過ぎて、考えても分からないからいいかと思考を放棄し、ギルドには城と砂漠が消えて草原になりました。なんでかは分かりませんと報告。ギルドも超常現象過ぎて頭を悩ませていたが、理解の範疇を遥かに超えているので事実のみを受け入れるしかないという事になった。

 

 その後は色々あった。

 俺の認識が甘かった。

 魔族が忌み嫌われているという事。それは教養のない田舎であれば、変わった耳の少女だなくらいで済んだ。

 だけど、その特徴的な耳は都市部では迫害の対象となる。

 マジクには申し訳ないが街中では外套のフードを被ってもらう事になった。

 それはマジクがヒトの生活に慣れ、ヒト並みという事を覚える度にマジクの中で疑問が拡がっていった。

 

 

「なんで嫌われるの?」

 

 

 そう言われた時、ごめんと謝る事しか出来なかった。自分の無知と力の無さがこの時ばかりは恨めしかった。

 

 

「私のせいでごめんなさい」

 

 

 マジクからそう言われた事もある。

 マジクのせいじゃない。

 それはもう言わないでくれと言われる度に言った気がする。

 

 

 白魔導師の変わり者、山の中で伝説の魔導師とかいうヒトに育てられた人間で世間知らずだったシルは、白魔導師でありながらマジクと初めから仲良くなった。

 俺達の中で一番の常識人シーフのスズも、孤児院育ちでたくさんの子供達の面倒を見ているだけあってマジクの事を妹のように可愛がった。

 時間が経ち、マジクが言った。

 

 

「ヒトとはどういうものか。どういう世界なのか。体験してきなさいとお爺ちゃんに言われたの。だから報告しなきゃいけないの」

 

 

 ほえー。魔族のお爺ちゃんかな?

 いやマジク一人を放り出すとか最低やな説教してやるから付いていくわと意気揚々と付いて行った結果、神様に出会うとか誰が思うだろうか。

 いや説教はしたけど。

 神の気配にちょっと気圧されたけど「一人で砂漠にいるとか可哀想だろうが! マジクの気持ち考えろや!」とか言った気がする。その後、マジクと竜神王だけで話をして、またマジクが戻ってくる事になった。

 正直もう戻ってこないかもと思っていた。

 まあでも定期的に問題を起こしながらパーティー辞めたがるのはいつもの事なんだけどね!

 

 

「レオ、やっぱり私パーティー辞める……」

 

 

 今目の前に広がる惨状。ギルドの依頼で盗賊団のアジトに行って全員捕縛して欲しいとかいう、それ冒険者の仕事じゃなくない? っていうものである。

 スズが探索じゃないなら近くまで行ったら待機してるわと離れ、私がやると張り切ったマジクが初期魔導を詠唱。山が吹き飛んだという事態である。初期魔導とは一体……。うん、そうだね。プロテインだね(現実逃避三度目)

 

 

「……前より手加減出来るようになって偉い!」

「でも……その……」

「相手はゴミなので問題無し! 盗賊がネグラにしていたせいで他に人間が近寄らなかったので問題無し! マジクは可愛いからヨシ!」

 

 

 現場猫並みの判断力によって今日もうちのパーティーは平和である。尚、吹き飛んだ山はマジクが再び成型したので元通りである。捕縛に関してはマジクが魔導で発掘した盗賊を一応ギルドに提出した。うん、まあヨシ!

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