【英語】
問 以下の問いに答えなさい。
『 good および bad の比較級と最上級をそれぞれ書きなさい』
根本恭二の答え
『 good - better - best
bad - worse - worst 』
教師のコメント
正解です。
吉井明久の答え
『 good - gooder - goodest
bad - bader - badest 』
教師のコメント
まともな間違え方で先生は驚いています。
goodやbadの比較級と最上級は語尾に-erや-estをつけるだけではダメです。覚えておきましょう。
須川亮の答え
『 good - more good - most good
bad - more bad - most bad 』
教師のコメント
吉井君に続いてこれまたまともな間違え方ですね。
長い単語の時にはmoreやmostが使えますが、goodやbadに関しては個別の単語があるのでしっかりと覚えましょう。
谷村誠二の答え
『 good - goood! - gooood!!
bad - baad! - baaad!! 』
教師のコメント
勢いで誤魔化そうとしてもダメです。
現在の時刻は、早朝の7時。
開戦予定時刻は9時だが、俺は誰もいない教室で教科書を読み込んでいた。
こんなに早く学校に来たのはやる気がありあまっているからで、その理由は一つしかない。
と、その時、教室のドアがガラリと音を立てて開き、坂本が入ってきた。
「……驚いたな。まさかこんなに早く登校してるなんて」
「まあな。坂本こそ早いじゃないか」
「俺は代表だし、戦況の把握だのなんだのと色々とやることがあるからな。お前はどうしたんだ? いつもこんなに早く来てるわけじゃないだろ?」
「坂本、それに関してなんだけど……」
坂本には、ある頼みごとがある。
「なんだ?」
「俺に、根本を討ち取らせてほしい」
昨日から、根本への恨みが消えることが無い。
是非この手で恨みを晴らさねば、俺の気が済まないのだ。
だが。
「ダメだ。お前に根本は討たせない」
「どうして! ここまで生き残れるだけの実力はあるし、足の速さにも自信がある!」
「そういう問題じゃない。お前じゃ根本を討ち取るだけの火力が無いんだ」
「俺には数学が――」
「
「ぐっ!」
正論すぎるほど、正論だ。
「別に嫌がらせで反対してるわけじゃない。昨日の放課後にBクラスの連中を倒してくれたのは助かったし、その分の実力はあることは知っている。だからこそ、お前はウチの大事な戦力なんだ。残りの人数も20人を切っている今、わざわざ根本討伐という任務に就けて失う必要はない」
「で、でも!」
「安心しろ。直接根本討伐には参加させないが、Bクラスの攻略には参加させるし、お前は既に十分役に立っている」
そんなことを言われては、反論することなんて出来やしない。
それでも、理解は出来ても納得は出来ない自分がいる。
「急にそんなことを言うなんて、何かあったのか?」
さすがに怪訝に思ったのか、坂本が訊いてくる。
「……詳しくは話したくないが、昨日の襲撃の件で個人的な恨みが出来た」
ハンカチがどうの、プレゼントがどうのという話をわざわざ話したくない。
「……そうか」
そんな俺の事情を察してくれたのかどうか、坂本はそれ以上訊いてくることは無かった。
そんな坂本に声をかける。
「坂本。この戦争、絶対に勝つぞ」
「もちろんだ」
今日、対Bクラス戦は二日目に突入する。
「あれ? お前達、なにしてるんだ?」
殆どの生徒が登校してきた8時半ごろ、坂本達が集まって何かをしていた。
見てみると、なぜか坂本は女子用の制服を手にしていた。
「コイツでCクラスをハメる。上手くいけばCクラスの意識をAクラスに向けられるはずだ」
そういえば、昨日Cクラスに行ったのは不可侵条約を結ぶためだったか。
その交渉が決裂してしまったのだから、何か対策が必要だろう。思い返せば、策は考えてあると坂本は言っていた気がする。
「具体的にはどうするんだ?」
「秀吉が木下優子に変装して、Aクラスの使者としてCクラスを煽ってもらう」
「……なるほど」
確かに、木下さんと秀吉は一卵性双生児かと思うほどによく似ている。そこに秀吉の演技力だ、まず変装自体は上手くいくだろう。
ただ、不安に思う事はある。
木下さんは他人を煽るようなことはしないだろうし、それに何より、
「CクラスはそんなことでAクラスに敵意を向けるのか?」
「間違いなく成功する。ああいうヤツは総じてプライドが高い奴だからな。誰が相手だろうと馬鹿にされたらリスクを考えずに突撃するはずだ」
そういうものなのかねえ。
まあ坂本の策だ。まず問題ないだろう。
「よし、着替え終わったぞい。ん? 皆どうした?」
いつの間にか着替えを終えた秀吉がこちらにやってきた。
……それにしても本当にそっくりだな。確かに、秀吉だって言われなかったら木下さんと勘違いしてしまいそうになる。
「さあな。んじゃ、Cクラスに行くぞ」
「うむ」
坂本が秀吉を連れて教室を出て行った。
「あ、僕も行くよ!」
「ちょ、俺もつれてけ!」
吉井がその後に続いていき、俺も気になったので付いていった。
そのままCクラス前まで歩き、立ち止まる俺達。
「さて、ここからはすまないが一人で頼むぞ、秀吉」
「気が進まんのう……」
Aクラスである木下さんに変装している以上、俺達が近くにいるのはまずいためここから先は秀吉単騎になる。
乗り気ではない様子の秀吉。それはそうだろう。
「そこを何とか頼む」
「はあ……あまり期待はせんでくれよ……」
溜息と共にCクラスへ向かう秀吉。
「雄二、秀吉は大丈夫なの? 別の作戦を考えておいた方が……」
「多分大丈夫だろう」
心配そうな吉井と、それと対称的な態度を取る坂本。
そういえば、秀吉の演技力がどれほどのものなのか俺はまだ知らないな。
ガラガラガラ、と秀吉がCクラスの扉を開ける音が聞こえてくる。
『静かになさい、この薄汚い豚ども!』
言わない! 木下さんはそんなこと絶対に言わない!
しかし、その効果は絶大だったようで、Cクラスから金切り声が聞こえてくる。これは代表の声だろうか。
『ちょっと、なんなのよ急に!』
『話しかけないで! 豚臭いわ!』
『アンタ、Aクラスの木下ね? ちょっと点数良いからっていい気になってるんじゃないわよ! 何の用よ!』
『私はね、こんな、臭くて醜い教室が同じ校内にあるなんて我慢ならないの! 貴女達なんて豚小屋で十分だわ!』
『言うに事欠いて私達にはFクラスがお似合いですって!?』
もはや会話のすべてが支離滅裂でどこから突っ込めばいいのか分からないレベルである。
ま、まあ俺達の目的は果たせそうだから良いのかな……?
『手が穢れてしまうから本当は嫌だけど、丁度試召戦争の準備もしているようだし、近いうちに私たちが貴女達を始末してあげるから覚悟しておきなさい!』
そう言い残し、過剰な靴音と共に秀吉は教室から出てきた。
「これで良かったかのう?」
むしろ良すぎるくらいかと。
『Fクラスなんて相手にしてられないわ! 対Aクラス戦の準備を始めるわよ!』
またしても、聞こえてくるのはヒステリックな叫び声。罪悪感すら生まれてくる。
「作戦もうまくいったことだし、俺達も対Bクラス戦の準備を始めるぞ」
「あ、うん」
それでも、余計な事に気を取られてなんかいられない。
俺達は早足でFクラスへと向かった。
対Bクラス戦再開直前。
各自、昨日の4時の時点で自分のいた場所に待機していた。
休戦協定を破った時に人や先生の移動はあったが、それはあくまでもアクシデントとして処理したためにこのようになった。もちろん放課後の点数の移動はそのまま受け継ぐが。
そのため、俺は今数学の補給試験の準備をしている。立ち会うのは昨日と同じく木内先生だ。
昨日は上手く出題範囲が俺の得意分野だったためにかなりの点数を取ることが出来たが、二回続けてそうなるとは思えない。噂通り厳しい採点での順当な点数となるだろう。
ちなみに、昨日の4時に前線にいた須川は放課後に戦死したため補習室に待機している。
放課後に数学の点数を大きく失った島田さんの方はというと、島田さんの担当場所に数学の教師がいないため補給試験は受けずに続けるそうだ。当初は数学のフィールドで戦っていたが、いつの間にかフィールドが英語に切り替わっていたらしい。
「教室に残っている皆はしばらく待機だが、いつでも出撃できるように準備しておけ」
坂本の指示に、返事をするクラスメイト達。
現在のFクラスの戦力は、19人から須川を引いて18人である。その内、前線に姫路さんを筆頭に10人。教室には坂本を含めて7人。そして、屋上には土屋がいる。
改めて、昨日の俺達の被害の大きさが分かる。
それでも、俺達は負けるわけにはいかない。
そして、試召戦争の再開を告げる9時のチャイムが鳴り響いた。
再開してから、1時間半が経過した。
前線で点数を消費した者が教室に戻り、点数に余裕のあるものが前線へと飛び出していく。
とっくに補給試験を終わらせた俺は、しかし未だ戦場に向かうことは無く教室での待機となっていた。
なぜならば、現在の前線のフィールドが英語と現国だからだ。数学担当の長谷川先生は教室内に拉致られたらしく、とりあえず旧校舎に近い方の側の壁にある黒板の側に待機させられているらしい。
昨日総合科目で半分以上点を失った俺は、そのどちらもゴミみたいな点数だ。今朝坂本が言っていた通り、俺の戦力としての価値は数学にしかないため、教室で温存、と相成っている。
そろそろ俺も参戦したいのだが……ろくに戦えないことは自分もわかっているため我慢せざるを得ない。
すると、またしても生徒が一人教室に戻ってきた。吉井だ。
「雄二!」
「うん? どうした明久。脱走だったらチョキでシバくぞ」
坂本は、ノートに戦況を整理しながら吉井の声を受け流す。
だが、
「話があるんだ」
「……とりあえず、聞こうか」
吉井は坂本の冗談に反応せず、真面目な顔で言葉を繋いだ。その表情に影響されたか、坂本も真面目な顔になる。
「根本君の着ている制服が欲しいんだ」
……はたして吉井に何があったのだろうか。
当然坂本も同じことを思ったようで、その追求に吉井はしどろもどろになっていた。
「まあいい。勝利の暁にはそれくらいなんとかしてやる」
吉井の要求をすんなり受ける坂本。太っ腹だな。
「で、それだけか?」
坂本は呆れ顔で吉井を見る。
「それと、姫路さんを今回の戦闘から外して欲しい」
「理由は?」
「理由は……言えない」
言葉を濁す吉井。
「どうしても外さないとダメなのか?」
「うん。どうしても」
坂本は顎に手を当てて考え込む。
吉井の要望は、はっきり言って無茶苦茶だ。姫路さんは根本を討つのに――実際は近衛部隊を根本から引き離すのに――必要なのだ。その代りを務めるヤツなんて、このクラスにいるはずがない。
だから、てっきり坂本はこの要望を断ると思っていたのだが……。
「頼む、雄二!」
「……条件がある」
条件付きで承諾した。
「姫路が担う予定だった役割をお前がやるんだ。どうやってもいい。必ず成功させろ」
「もちろんやって見せる! 絶対に成功させるさ!」
「良い返事だ」
ふっと口の端を上げる坂本。
姫路さんの代わりを吉井が? あの《観察処分者》がか?
「役割については前に話したな? 機を見て根本に攻撃を仕掛けるんだ。周りのフォローは無しで、当然Bクラス教室の出入り口は今の戦闘中のままだ」
「随分難しいことを言ってくれるね……もし失敗したら?」
「失敗するな。絶対に成功させろ」
「……わかった。何とかして見せる」
そう言うと吉井は少し考え込んでから、何かひらめいたような表情になった。作戦を思いついたのだろう。
頬を叩いて自らを奮い立たせると、吉井は補給試験の為に教室に戻って来ていた島田さん達3人に声をかけていた。
「さて……横田。平賀に例の物を壊すよう伝えてこい」
「了解」
伝令係として活躍を続ける横田が、教室を飛び出して行った。おそらく、エアコンの室外機の件だろう。
ただ、俺はそんなことよりも、さっきの坂本の言っていたことの方がずっと気になっていた。
「皆、もうしばらくしたら全員でBクラス前に移動する。準備しておけ」
「なあ坂本」
「どうした谷村」
「さっき、姫路さんの代わりを吉井が務めるように言っていたけど……そんなことできるのか? アイツは俺と対して点数は変わらないだろうし、何よりアイツは《観察処分者》なんだろ?」
俺は、当然とも言える疑問を坂本にぶつける。個人的な感情としては、朝の俺の要求が蹴られて吉井の要望が受け入れられたことが気に食わないが……そんなことを言っても今更どうしようもないし、この疑問の答えの方が気になる。
「ああ、それなら大丈夫だ。アイツなら、間違いなく姫路の代わりを全うできる」
「どうして……?」
「アイツが《観察処分者》だからだ」
「……はあ?」
まるで答えになっていない。
「確かに、《観察処分者》はフィードバックがあるから積極的に召喚獣を喚び出すことはしない。しかし、《観察処分者》には戦力となり得るメリットがある」
「メリット?」
「ああ。《観察処分者》は、召喚獣で教師の雑用を手伝う事が義務付けられてる事は知ってるよな?」
「もちろんだ。だから《観察処分者》の召喚獣は物理干渉が出来て、暴走されないようにフィードバックという形で枷を付けて――」
そこまで言って、ふと気が付いた。
「まさか……その物理干渉か?」
「それもある。唯一物理干渉出来る明久の召喚獣は、姫路やムッツリーニと同じく俺達の
「そういうことか……」
「加えて、試召戦争以外じゃ滅多に召喚する事の無い俺達と違って、《観察処分者》である明久は教師を手伝うために度々召喚獣を操作している。アイツの操作能力は段違いだ」
だから、吉井は姫路さんの代わりを務めることが出来る、というわけか。
「なるほど……だから、点数が低くても姫路さんの代わりになる、と……」
「そういう事だ」
「つまり、吉井の作戦は……」
「おそらく、壁を破壊して突っ込む作戦だろうな」
「……分かった。時間を取らせてすまなかった」
「いや、構わないさ」
坂本から離れ、適当に腰を降ろす。
出番が無いのはつらいが、根本を討ち取ることが最優先だ。俺が勝手に行動してFクラスが負けたら、それこそ浮かばれない。
ふと気が付くと、すでに吉井達は教室からいなくなっていた。
少しして、坂本の声が教室に響いた。
「皆、今からBクラス前まで移動する! ここが正念場だ! 行くぞ!」
『おおーっ!』
遂に、二日間に及ぶ対Bクラス戦もクライマックスに突入する。
「坂本、今の戦力はどんなもんだ?」
「単純な人数で言えば、ウチが16人で相手が21人だから少し負けているぐらいだ。点数で言えばもっと差は開いてる。ただし、今の戦場はBクラス教室の出入り口だけだから大きな問題は無い」
現在俺達がいるのは、渡り廊下のBクラス側だ。どちらかと言えば、入り口の後ろで待機、と言う方が近いか。
この付近からBクラスの真ん中辺りにかけては現国のフィールドが張ってある。
坂本や俺を含めた本隊は4人。こちら側の入り口を張っているのは4人で、向こう側の入り口には姫路さんを含めて5人ほどいる。ただ、吉井の頼みの結果姫路さんは前線からは退いているため、囮にすらなりえない。
ちなみに、俺達本隊はBクラス内部からは見えないから、まだ意識は向こう側に寄っているだろう。
「そろそろか……」
時刻は、もうしばらくすれば午前11時になる、というところだった。
坂本の呟きと同時に、Bクラスの方からドンドンと何かを叩くような音がし始めた。
「行くぞ、お前ら。あえて、本隊の俺達が囮になる。いいな?」
『おう』
小さな声で声をそろえて、俺達はBクラス生徒の前に姿を現す。
暑苦しい熱気が教室から漏れてきた。
「お? やっと代表のお出ましか。お前ら、昨日から鬱陶しいんだよ、人の教室の入り口に集まりやがって」
聞こえて来るのは、教室の窓際ほぼ中央に立っているBクラス代表、根本恭二の声。
「どうした? 軟弱なBクラス代表サマはそろそろギブアップ……か……」
その声に軽快な調子で返していた坂本の声は途中から小さくなっていき、最後には坂本は言葉を失っていた。
何が起こったのかと思い、坂本の視線を追う。
朝から入り口で戦闘が続いているため、熱気がこもって暑苦しいBクラス教室。
頼みの綱のエアコンも、坂本の策によって止められてしまっている。
だが、それでも――
――Bクラス教室の窓は、ぴったりと閉まり鍵がかけられていた。
『そう何度も自分の思い通りになると思わない方が良いよ』
三日前に聞いた姉貴の言葉が、俺の頭の中で何度も繰り返されていた。
作戦を先に話すのは負けフラグってヤツです。