モブとテストと優等生   作:相川葵

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第六問 初戦を終えて

【物理】

 問 以下の文章の( )に正しい言葉を入れなさい。

『光は波であって、( )である』

 

 

 

 姫路瑞希の答え

『粒子』

 

 教師のコメント

 よくできました。

 

 

 

 谷村誠二の答え

『音より速いの』

 

 教師のコメント

 間違ってはいないので正解としますが、出題の意図とはズレています。問題の意図を読み取ってくれるとありがたいです。

 

 

 

 木下秀吉の答え

『止まない雨は無いの』

 

 教師のコメント

 名言っぽくしても不正解です。

 

 

 

 須川亮の答え

『漆黒の闇を照らすの』

 

 教師のコメント

 先生にも中二病の時代がありました。

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 Dクラス代表 平賀源二 討死(うちじに)

 

『うぉぉーーっ!』

 その知らせを聞いたFクラスの勝鬨とDクラスの悲鳴が混ざり、放課後の校舎中に響き渡った。

 

「凄ぇよ! 本当にDクラスに勝てるなんて!」

 

 そんな声を筆頭に、坂本を褒め称える声がいたるところからあがる。

 最後に平賀を討った姫路さんによる奇襲は、当然、坂本の発案だった。

 

 

■  ■  ■  ■  ■

 

 

 開戦前、坂本はミーティングで今回のメインとなる作戦を告げた。

 

「俺達Fクラスの作戦は、基本的に時間稼ぎが目的となる」

「時間稼ぎ?」

「ああ。戦争中にどう立ち回ろうが、最後には敵将や本隊を叩く火力が必要になる。今回の対Dクラス戦では、この役割を姫路にやってもらうんだが……」

「わ、私ですか?」

 

 突然の指名に、姫路さんは戸惑いを隠せないようだった。

 

「そうだ。Fクラスでその火力を持つのはムッツリーニと姫路の二人だけだが、今回の作戦ではすべての教科で戦える姫路が適役なんだ。ただ、姫路は現在の持ち点がゼロだから補充試験を終えるまでの時間を耐える必要がある。これが時間稼ぎをする一つ目の理由だ。とは言え、すべての試験を受けることはまず不可能だから、Dクラスが教師を確保した科目を受けてもらう」

「一つ目ってことは、他にも理由があるの?」

「もちろんだ。そもそも、莫大な火力があってもそれを敵将にぶつける方法が無ければ勝利にはつながらないからな」

 

 坂本は、わざわざ校内地図を黒板に貼り説明する。

 

「最終的には、下校する生徒に紛れて敵将を討つ形にしたい。時間稼ぎをする二つ目の目的はここにある」

 

 廊下で敵将を討つならば、相手は確実に自分の得意科目のフィールドを張っているに決まっている。保健体育でしか武器にならないムッツリーニではこの役割は無理だ。

 

「戦争が進むと自然と人数が減って来るだろうから、放課後になったらこちらの本隊が俺と共に廊下に出る。すると、相手もここが正念場だと思って、近衛部隊を多少減らしてでも俺を狙って来るはずだ。そこを姫路が狙うというわけだ」

「相手も、さすがに奇襲は警戒するんじゃないのか?」

「するだろうな。だから、一度適当な奴を仕向けて奇襲を失敗させる。そこで気が緩んだところを姫路に討ってもらうんだ。相手が情報収集をさぼっていれば、姫路がウチにいることも知らないはずだからな」

 

 そういう面でも姫路さんは適役なのだろう。

 

「何か質問はあるか?」

 

 質問か……あ、そういえば。

 

「坂本。どうしてDクラスと戦うんだ? 狙いはAクラスなんだろ?」

「ああ、そのことを説明していなかったか……理由は簡単だ。試召戦争に慣れるためと、打倒Aクラスに必要なプロセスだからだ」

「必要なプロセス?」

「そうだ。今はまだ話せないがな」

 

 ふむ、そういうことだったのか。

 

「他に質問は無いな? じゃあ、各自さっき連絡した班で分かれてくれ。細かい指示は隊長に出してある」

『了解』

 

 開戦まで、数刻。

 

「勝つのは俺達Fクラスだ!」

『おう!!』

 

 

■  ■  ■  ■  ■

 

 

 とまあ、開戦前にこんなやり取りがあって、結果的に対Dクラス戦は坂本の想定通りに終結した。

 我らがFクラス代表の坂本は俺達が想像しているよりもすごいヤツなのかもしれない。

 そんなことを考えながら坂本の周りで騒いでいると、よたよたと平賀がこちらへ向かってきた。

 

「まさか姫路さんがFクラスだなんて……信じられん」

「あ、その、さっきはすいません……」

「いや、謝ることは無い。すべてはFクラスを甘く見ていた俺達が悪いんだ」

 

 平賀の言う事の方が正しくて、姫路さんが謝る理由はどこにも無い。

 

「谷村、お前の言っていた秘策ってのは姫路さんの事だったんだな」

「え? あ、ああ。そうだ」

 

 学食で話した時はハッタリだったし、この作戦を立案したのは俺ではなく坂本だったのだが……まあ黙っておこう。

 

「平賀、Fクラスを舐めるなよ」

「……ああ、肝に銘じたよ」

 

 軽く煽るように平賀に言い放つ。

 だが、うなだれる平賀が少しかわいそうに見えてしまった。勝負なのだから仕方のない事なのだが、必死に勉強して手に入れた教室を一日も経たずに手放すことになってしまったのだから。クラス代表は、経緯はどうあれ負ければ戦犯として扱われてしまうのだ。

 そんな平賀に、坂本が話しかける。

 

「それじゃあ平賀、戦後交渉を始めるぞ」

「ああ……ルールに則ってクラスを明け渡そう。ただ、今日はこんな時間だから、作業は明日で良いか?」

 

 確かに、もう太陽はかなり傾いている。今から手続きやらをしていたら、下校時刻を過ぎてしまうかもしれない。

 わざわざ今日中に処理する必要もないはずだから、坂本も承諾するだろう。

 

「いや、その必要はない」

 

 そう思っていたのだが。

 

「どういうことだ?」

「Dクラスを奪う気は無いからだ」

 

 平賀が聞き返すと、坂本はまるで当然だと言うかの様に答えた。

 わざわざここまでやってDクラスを奪う気は無い? 確かに俺達の目的はAクラスだが……。

 驚いた様子の平賀が、坂本に聞き返す。

 

「本当か? もしそうなら俺達にはありがたいが……」

「本当だ。 もちろん、あることをやってもらう代わりに、という条件でだがな」

「……なあ、それって、昼に言っていたAクラスを倒すのに必要なプロセスか?」

 

 たまらず、俺は口を挟む。

 

「そうだ」

「え? お前達、Aクラスを倒す気でいるのか?」

「もちろん。俺達が狙うのはシステムデスクだけだ」

「そうか……それで? 条件はなんだ?」

「なに、そんなに大したことじゃない。俺が指示を出したら、窓の外にあるアレを動かなくしてもらいたい。それだけだ」

 

 そう言って坂本が指したのは、スペースの都合でDクラスの窓の外に設置されている、Bクラスのエアコンの室外機だった。

 

「設備を壊すんだから、当然教師に睨まれる可能性もあると思うが……どうする?」

「……それが設備交換をしない条件だったら、こちらとしては願ってもない提案だが、何故そんなことを?」

「一つしかないだろう。俺達がこのDクラスを攻めたのと同じ――Aクラスを倒すためだ」

「……そうか。では、こちらはありがたくその提案を呑ませて貰おう」

「タイミングについては後日通達する。今日はもう行っていいぞ」

「……それじゃあな」

 

 戦後交渉が終わり、敗戦の将である平賀はその場を去ろうとした。

 あ、そうだ。

 

「なあ、平賀」

「……なんだ谷村。惨めに負けた俺に何か言う事でもあるのか?」

「ああいや、そうじゃなくてさ。お前、今日はコンビニでパン買っただろ? なのにどうしてお前はわざわざ学食に来たんだ? ただ混むだけなのに」

「そんなことか? 情報収集のためだよ」

「情報収集?」

「ああ。お前達がFクラスだってのは分かり切ってたからな。そんで、いつもお前達は学食を使うだろ? だから、何か話を聞けたら良かったんだが……」

 

 平賀は、一旦言葉を切ってちらりと坂本を見る。

 

「情報統制はしっかりしていたみたいだな」

「……」

 

 驚いた。平賀がそんなことまで考えていたなんて。

 

「……まるで俺が情報収集していたこと心底驚いているような顔だな」

「! なんで分かった!? 俺、口に出してたか?」

「バーカ、分かるに決まってんだろ。これでも俺はお前の友達だぜ?」

「フッ、何こっぱずかしい事言ってんだ」

「ハハ、これくらい冗談言わなきゃやってられないさ。俺はこの戦争の戦犯だからな」

「……それもそうだな」

「じゃあな、そろそろ俺は行くぜ。お前達がAクラスに勝てるように祈っといてやるよ」

「うるせ、社交辞令ならいらねーよ」

「ばれたか?」

 

 そんな言葉を残して、俺の元級友であり今もなお俺の友人である平賀は、軽く手を挙げて去って行った。

 

「さて、皆! 今日はご苦労だった! 明日は消費した点数を含めて補充試験を行うから、今日のところは帰ってゆっくりと休んでくれ! 解散!」

 

 坂本の号令で、皆ぞろぞろとFクラスへと向かい始めた。

 さて、俺も帰るとしますかね。

 

 

 

 

 Fクラスで帰り支度をする。

 とは言っても、今日はずっと試召戦争だったから筆箱を仕舞うくらいしかすることは無いのだが。

 それにしても、筆箱か……。

 俺の召喚獣の武器が筆箱――文房具だという事を知った時は驚いたが、改めて考えてみると、文房具には文房具にしかない利点があるかもしれない。今度の戦いではそのあたりも考えて戦ってみよう。

 

「よう、無事に勝ったみたいだな」

「良かった良かった」

 

 そんなことを言いながら教室に入ってきたのは、途中で戦死したらしい須川と工藤だった。

 そうか、戦争が終わったから解放されたのか。

 

「おかげさまでな。そういえば、補習室ってどんな感じなんだ?」

「どんな感じもくそもないぜ。窓には鉄格子がはまってるし」

「何してた?」

「自分が戦死した科目の課題を延々やらされたんだよ。少しでも手を休めれば鉄人が飛んでくるし、やってられん」

「それは……ご愁傷様だったな」

 

 意地でも戦死しないようにしなければ。

 

「それで、Fクラス勝利の一報が入って、ようやく解放されたってわけだ」

「そうか……お疲れ」

「これで負けてたらどうしてやろうかと思ってたがな」

 

 ……勝てて良かった。

 

「こんなところで話しててもしょうがねえ、帰るぞ」

「おう」

 

 鞄を持って教室を出ようとしたが、ちょうどその時教室にまだ残ってる秀吉が目に入った。

 そういえば、聞きたいことがあったんだっけ。

 

「あー……お前達、先に行っててくれないか」

「あ? なんでだよ」

「ちょっと忘れ物してな。玄関で待ち合わせってことで」

「まあいいけどよ……早く来いよ」

「分かってる」

 

 須川達の前で木下さんについて話すのは少し恥ずかしいので、先に行かせてから秀吉の元へ向かう。

 

「…………今日は出番が無かった」

「お主は保健体育での隠し玉じゃからの。次の対Bクラス戦で活躍できるのではないかの?」

「…………そうだと嬉しい」

 

 秀吉は、なにやらムッツリーニと話し込んでいた。

 

「よう、お疲れ」

「お疲れじゃ。えーと……」

「谷村だ。秀吉とムッツリーニ、これから一年間よろしくな」

「よろしくじゃ、谷村」

「…………せめて土屋と呼んで欲しい」

 

 そういえば、そんな名字だった。

 

「なあ、確か土屋って、友達作りが趣味で投網が得意なんだっけ?」

「…………そんな事実は無い…………本当に」

「お主は何の話をしてるのじゃ……?」

 

 なんか二人にすごい怪訝な顔をされてしまった。あれ、違ったっけ。

 勘違いだったか……まあいいや。

 

「二人は仲良いのか?」

「仲良いと言えばそう言えるのう」

「…………一年の時同じクラスだった」

「なるほどな」

 

 だったら、仲の良さそうに見えた坂本たちもそうだったのだろう。

 ……そろそろ本題に入るか。

 

「ところで、秀吉に聞きたいことがあるんだが……土屋はちょっと席を外してくれないか?」

「聞きたいことかのう?」

「…………抜け駆けは許さない」

 

 抜け駆け……って、まさか木下さんに惚れたことがばれたのか!?

 

「…………秀吉は皆のもの」

「じゃからワシは男じゃと!」

 

 あ、大丈夫みたい。

 

「違う違う。別に秀吉には惚れてないから」

「…………秀吉『には』?」

「あっ」

「「「…………」」」

 

 沈黙が三つ。

 

「さらばだっ!」

「ま、待つのじゃ!」

 

 俺は恥ずかしさに耐え切れず、鞄を引っ掴み教室を飛び出した。

 

 

 

 

「あれ、早かったな」

「あはは……」

「?」

 

 ろくに話が出来なかったために、階段で須川達に追いついてしまった。

 

「まあいいや、今工藤と話してたんだけどよ」

「どうした?」

「今回の対Dクラス戦は戦死者が……確か、30人以上出たらしいな」

「ん? そんなもんだったか?」

 

 最後の特攻前に20人は切ってた筈だから、最後の戦死者を合わせればもっと多い気もするが。

 

「補習室に来たのがってことだよ。補習は終戦までだから、最後に戦死したヤツは補習室に来てないだろうし」

「そういう事か。んで、それがどうしたんだ?」

「次に攻め込むのは……少なくとも今回よりはかなり強いはずだろ?」

「そりゃそうだろ」

 

 坂本の話を聞く限りは、次に戦うのはBクラスのようだ。

 

「今度は戦死者もこんなもんじゃないだろうし……全滅するんじゃないか?」

「んー……」

 

 どうだろうか。

 

「こう言っちゃ元も子もないけどさ、戦い方に依るだろうな。今回は渡り廊下を守るために前線部隊に大量に投入したから戦死も多かったけど、うまく教室の入り口を使えば一対一に持ち込めるし」

 

 まあそんなことしたら地の力のないFクラスの負けは避けられないが。

 

「坂本次第だな。今回の作戦も見事だったし、どうにかなるんじゃないか?」

「……かもな」

 

 俺達にできることは、坂本を信頼してその指示に完璧に従う事だ。

 それで負けたら容赦しないが。

 

「明日は補充試験だろ?」

「ああ、戦争の翌日だし、坂本もそんなことを言っていたからな」

「俺、総合科目でやられたんだよ……全部受けねえと」

 

 工藤が明日からの試験に嘆いていた。

 

「まあくよくよすんな。どうせ俺も振り分け試験の点が低すぎたから、全部受けさせられるから」

「お前よくそんなんで戦死しなかったな」

 

 須川が心底不思議そうな顔で訊いてくる。

 

「そんなんでって言うよりは、そんなんだったから生き残ったって感じだな」

「どういうことだ?」

「ほら、振り分け試験でそこそこの点を取れたヤツは前線にまわされただろ? その点俺は戦力にならなかったから補充試験を受けてからの援軍部隊にまわされたんだ。そりゃあ戦死しづらくもなるわ」

「なるほどな」

「あれ? そういえば、工藤は俺が試験を受けてる間に戦死したって聞いたけど、お前はいつ戦死したんだ?」

「俺か? 俺は放課後に入ってからだな」

「……補充無しでそこまで生き残ったお前の方がすげえよ」

「あー……俺は、放送室に行ってたりしてたからな」

「そういえばそんなこともあったな」

 

 そんな会話をしながら、俺達は家へと向かう。

 

 

 

 

 入学して二か月ごろしてからようやく判明したのだが、俺達三人は同じ家族向けのマンションに住んでいる。さすがに階や場所はバラバラだったが……もしかしたらFクラスにもこのマンションに住んでいるヤツがいるかもしれない。

 太陽も沈みかけている中、俺は須川達と別れて家へ帰った。

 

「ただいまー」

「おかえり。遅かったじゃん、何やってたの?」

 

 リビングのドアを開けた俺を出迎えたのは、谷村家の長女であり俺の姉貴でもある谷村(まこと)だった。今日は春とは思えない陽気だったためか、姉貴は黒いショートヘアを揺らして扇風機の風を浴びていた。天気予報でしばらくはこの天気が続くようで、本当に嫌になる。というかもう扇風機だしたのか。

 長男なのに俺の名前が『誠一』ではなく『誠二』なのは、この姉貴がいるせいだ。だからなんだという話ではあるが、ウチの両親はどれだけ誠の字を使いたかったのだろうか。

 

「あー……ちょっと、試召戦争を……」

「試召戦争? ってことは、アンタFクラスかDクラスってこと?」

 

 ちなみに、姉貴も文月学園に通っていて、今年三年生になった。

 初日の試召戦争の噂は、三年生の方にも広まっていたらしい……って、他のクラスは自習になるんだから当然か。

 

「はい……恥ずかしながらFクラスです……」

 

 普段、親しくない女子相手に話すときは敬語になるとはいえ、さすがに姉貴にはタメ口を使っているが、成績が最底辺であることを自白させられてついつい敬語を使ってしまう。

 

「ああ、やっぱり?」

「やっぱりって……姉貴……」

「だってそうでしょ? アンタあの日傷だらけだったじゃん。あんな状態でいい点がとれるほど成績よくないくせに」

「……そうだけど」

「まあ、あの怪我が無くてもアンタはFクラスだっただろうけどね」

「あ、その(くだり)はもう須川とやったんで勘弁してください」

 

 同じ話を二回やっても仕方がない。

 喉が渇いたので、鞄を適当に置いて冷蔵庫を漁る。

 

「そういえば、姉貴のクラスは? あれ、買っておいたジュースが無いな」

「アタシはBクラスよ。それとジュースは母さんが飲んでた」

「Bか、すごいね」

 

 また母さんか……こういうのって普通姉貴とかじゃないの……? いや、姉貴だったら許すとかいう訳でもないけど。後で母さんにはおやつ作ってもらおう。

 

「……あれ? 姉貴、そんな成績良かったっけ?」

「頑張ったのよ。それで? 試召戦争はどっちが勝ったの? アタシさっさと帰ったから知らないんだけど」

Fクラス(ウ チ)が勝ったよ」

「へえ、アンタ達もやるじゃん」

「……も?」

 

 何故か姉貴は妙な言い方をする。

 

「あれ、知らない? アタシ、去年はFクラスで一回だけCクラスに勝ったことがあるのよ」

 

 知らなかった。

 あ、でも去年、須川がそんな話をしていたようなそうでないような……?

 

「まあこっちは二学期の話だったから、初日で下剋上したのは初めてなんじゃない?」

「そうかもね。Fクラスが勝てたのは色々要因があるんだろうけど、坂本のおかげかな」

「坂本?」

「Fクラスの代表だよ。今日の試召戦争は坂本の作戦がぴったりはまったおかげで勝てたんだ」

「ふうん」

「なんの因縁があるか知らないけどさ、打倒Aクラスを宣言してた」

 

 そう伝えると、姉貴は驚いた表情をした。

 

「打倒Aクラス? ってことはアンタ達、この後もまだ試召戦争するつもりなの?」

「らしいよ」

 

 すると、姉貴は少し考える素振りをして、

 

「……まあ自由だけどさ、一応忠告しておいてあげる」

「忠告? 何を?」

 

 俺に不吉なことを言い放つ。

 

「そう何度も自分の思い通りになると思わない方が良いよって事」

 

 姉貴自身の実体験がこもったようなその言葉は、俺達の不吉な未来を暗示しているような気がした。

 嫌な汗が背中を伝った。




 姉貴登場。
 と言っても、まだそこまで出番があるわけじゃないです。
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