モブとテストと優等生   作:相川葵

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対Bクラス戦、開幕です。


第八問 渡り廊下は誰の手に

【化学】

 問 以下の問いに答えなさい。

『ベンゼンの化学式を書きなさい』

 

 

 

 姫路瑞希の答え

『C6H6

 

 教師のコメント

 簡単でしたかね。

 

 

 

 土屋康太の答え

『ベン+ゼン=ベンゼン』

 

 教師のコメント

 君は化学をなめていませんか。

 

 

 

 吉井明久の答え

『B-E-N-Z-E-N』

 

 教師のコメント

 なるほど、君達は化学をなめていますね?

 

 

 

 近藤吉宗の答え

『ヘンセン+゛×2=ベンゼン』

 

 教師のコメント

 あとで土屋君と吉井君と三人で職員室に来るように。

 

 

 

 谷村誠二の答え

『 C  CC  C  C   C  CC  C  C 

 C C       C  CCCC      C

    C     C    C       C

     C  CC     CCCC  CC  』

 

 教師のコメント

 谷村君も追加で。

 

 

 

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 

 対Bクラス戦を午後に控えた朝、俺はある箱を見つめていた。

 その箱は綺麗にラッピングされ、丁寧にリボンまで結んであるプレゼント用だった。

 

「ううむ……一応持っていくかな……」

 

 学校に持っていくか俺が悩んでるその箱の中身は、木下さんへ渡す予定のハンカチである。もちろん、あの日のお礼として。

 

「……よし、持っていこう」

 

 秀吉からの情報で、木下さんのストライクゾーンに入ることが相当厳しいことが判明したが、やはり諦めきれない。だからこそ、ハンカチという接点はいつまでも残しておきたいのだが……。

 

「いつまでも先送りにしてられないからな」

 

 そもそも、新学期が始まってすでに二日が経過している。この二日間色々な事があったためすっかり忘れていたが、渡そうと思えばいつでも渡せたはずだ。木下さんのクラスはまずAクラスで間違いないだろうし。

 意を決して、プレゼントを鞄の中に入れる。もちろん、ちょっとやそっとじゃ潰れないようにしっかりとしたつくりの箱を選んだ。

 時計を見るとそろそろ家を出ないと遅刻しそうな時間だった。

 ちゃんとプレゼントを持っていることを確認して、家を出る。

 今日も今日とて、快晴だった。

 

 

 

 

「さて皆、総合科目テストご苦労だった」

 

 教壇に立つ坂本が机に手を置いて俺達の方を向いている。

 午前中の補充試験が終わり、ついさっき昼飯を取ったところだ。

 

「午後はBクラスとの試召戦争に突入する予定だが、殺る気は充分か?」

『おおーっ!』

 

 Fクラスのモチベーションは全く下がっていない。誰よりも高い上位設備への欲求が、俺達の最大の武器であると言えるだろう。

 

「今回の戦闘は、相手を教室に押しこめなければならない。そのために、40人の前線部隊を姫路に指揮を取ってもらう。てめえら、きっちり死んで来い!」

「が、頑張ります」

『うおおーっ!』

 

 一緒に戦えるとあって、俺達前線部隊の士気は最高潮に達しようとしていた。

 

「やったるでーっ!」

 

 特に、工藤のテンションがかなりおかしなことになっていた。

 と、そこに昼休み終了のチャイムが鳴り響き、遂に対Bクラス戦が開戦した。

 

「よし、行ってこい! 目指すはシステムデスクだ!」

『サー、イエッサー!』

 

 その声とともに、俺達は教室を飛び出し全力疾走で渡り廊下へと向かう。

 

「いたぞ、Bクラスだ!」

「高橋先生を連れているぞ!」

 

 くっ、高橋先生ってことは総合科目か! もしもそうなれば、総合力に劣るFクラスでは勝ち目がない。

 しかし、Bクラスの前線部隊はゆっくりとした足取りで、さらにわずか10人程度しかいない。

 ここは先に数学で攻め込んで、一気に教室に押し込んでやる! 人数は四倍だ!

 ところで、俺が走っているのは前線部隊の先頭である。足が速いのと数学が得意なのがその理由だ。しかし、ふと横を見てみると、いるのは島田さんだけで前線部隊隊長の姫路さんは見当たらなかった。一瞬不思議に思ったが、単純に、俺達の全力疾走に追いつけなかったという事に気が付いた。

 姫路さんが到着するまで、耐えなければ……!

 

「長谷川先生! 召喚許可を!」

 

 走りながら、あらかじめ渡り廊下に待機させておいた長谷川先生にフィールドを展開させる。

 長谷川先生はなぜか展開するフィールドが他の先生よりも広いのだ。

 

「なんの! 高橋先生、お願いします!」

 

 Bクラスから、そんな声が聞こえた。フィールド同士が重なると干渉して消えてしまうので、先に展開させてしまえばこっちのものだったのだが……まあ仕方あるまい。

 現在、渡り廊下には二つのフィールドがあり、こちら側は数学、向こう側は総合科目である。

 そして、遂にBクラスと激突した。

 

試獣召喚(サモン)

 

 いくつも重なる試獣召喚(サモン)の声。フィールドは……くそ、ギリギリで総合科目に入ってしまった! これじゃ何のための数学部隊だか分からない。

 ただし、こちらは数の利がある。まだ勝負は分からない。

 そして何体もの召喚獣達が召喚され、少し遅れて点差が表示される。

 

 

『【総合科目】

 Bクラス  野中長男  

        1943点  

            VS

 Fクラス  谷村誠二 & Fクラス  近藤吉宗

        698点          764点

 Fクラス  君島 博 & Fクラス  武藤啓太

        823点          792点』

 

 

 んなっ!? なんて強さだ! 文字通り桁違いじゃないか!

 

「ちょっと待て谷村」

「なんだ近藤」

「お前、その点数はなんだ……? お前数学でかなり稼いでるんじゃなかったのか?」

 

 答えは簡単。他が酷いからだ。

 

「そんなことは関係ない! ここまで来たら100点そこらの差なんか関係ないだろ!」

「それはそうだが」

 

 強引に話を切り上げて、Bクラスと対峙する。

 別にここで相手を討ち取る必要はない。後退さえしなければ、あとは姫路さんが何とかしてくれるはずだ。

 

「いくら人数が居ても点数が無ければゴミ同然だ! ぶっ倒してやる!」

 

 すると、野中が罵倒してきた。何を言っているのやら。

 

「それは違うな、野中。これは戦争なんだ。個人の戦力よりも、人数の差がより大きな差と――」

 

 俺の言葉が言い終わるか否か、野中の召喚獣がレイピアでこちらに襲いかかってきた。躱しきれなかった近藤の召喚獣に、レイピアが突き刺さる。

 

 

『【総合科目】

 Fクラス  近藤吉宗

        260点』

 

 

 急所は躱したものの、刺さったレイピアは大幅に近藤の戦力を減らしていた。

 

「人数の差がなんだって?」

 

 勝ち誇ったような顔で煽ってくる野中。

 

「ふっ……」

 

 それに対し、俺は髪をかき上げながら、

 

「総員、回避に専念しろ! 圧倒的点差の前ではこれっぽっちの人数差なんて何の役にも立ちゃしない!」

 

 ある意味での、敗北宣言を言い放った。

 

「よく何のためらいもなく真逆の事を言えるな……」

 

 しかし、これで俺達が負けたわけじゃない。俺達にだって、圧倒的な点数の保持者がいる。

 俺達が野中の攻撃を必死に凌いでいると(こちらから攻撃することは無かった)、

 

「来たぞ! 姫路瑞希だ!」

 

 Bクラスの誰かの声が上がる。

 

「やっときたか……さあ野中! お前の天下もここで終わりだ!」

「はん、何を言っている。いくら姫路さんと言えども、この点数なら負けるわけがない!」

 

 その自信はおそらく自分がBクラスであることから来ているのだろう。

 その時、どこかから炎が上がった気配がした。おそらく姫路さんの物だ。

 点数を確認してみる。

 

 

『【数学】

 Fクラス  姫路瑞希  

        412点

            VS

 Bクラス  岩下律子 & Bクラス  菊入真由美

        189点           151点』

 

 

 わあ、すっげ。

 

「なっ!」

 

 今度は野中がその点数差に(おのの)く番だった。

 

「くそ、なんて強さだ!」

 

 野中は、全くためらうことなく、

 

「中堅部隊と入れ替わりながら後退! 戦死だけはするな!」

 

 そんな指示を飛ばした。

 あ、野中は部隊長だったのか。

 

「決してお前達を恐れたわけじゃないからな! 勘違いするなよ!」

「はいはい、分かってますよ」

 

 まあ、ツンデレなんかではなく、実際にそうなのだろう。総合科目のフィールドで、回避に専念していた俺達はそれでも半分近くの点数を削られたのだから。

 

「このまま一気に押し込むぞ!」

 

 Bクラスが高橋先生を回収して後退する為、こちらも長谷川先生を引き連れてBクラスへと前進する。

 ここで、忘れがちな試召戦争の細かいルールを説明しておこう。

 本来、敵を倒したわけでもないのにフィールドを出ることは、敵前逃亡に当たり補習室送りとなる。ただし、実際にそのルールが適用されるのは、最後の一人となった場合だけ。つまり、クラス間という大きなくくりで見て、その場所での戦いが続行可能であれば敵前逃亡とはみなされない。

 総合科目のフィールドには近藤達を残して、俺は数学のフィールドへと移動する。

 数学は得意科目だから充分戦力になれるはずだ。

 改めて試獣召喚(サモン)と唱えて召喚獣を喚び出す。

 

 

『【数学】

 Fクラス  谷村誠二

         63点』

 

 

 ……そりゃあ、総合科目で半分以上も減らされたらこうもなるわな。

 

「これだと押し込みきれない……くそっ!」

「みなさん、大丈夫ですか?」

 

 すると、攻めあぐねている俺に、後ろから声をかけられた。

 

「姫路さん!」

「坂本君に言われたんですけど、別に勝たなくてもいいんです。相手を押し込むのが目的なんですから」

 

 なるほど、そう考えれば、うまく姫路さんを立ち回らせることで作戦を実行できるかもしれない。

 

「みなさん! 頑張りましょう!」

『おおーっ!』

 

 姫路さんらしからぬ大声に、否が応でも俺達の士気は上がる。

 負ける気がしねえ!

 

「ところで、姫路さんがそんなに張り切ってるのには理由があるんですか?」

「はい。私、皆さんと一緒に頑張るって決めたんです。私、昔からいつもどんくさくて、みんなの足を引っ張ってばかりでしたから……」

「……」

 

 姫路さんには、苦い思い出があるらしい。彼女なりにトラウマになっているかもしれない話だ。到底俺に話してもらえるとは思えないし、それには適役がいるだろう。

 ただ、昔のことなんか関係ない。

 今、この瞬間、姫路さんはFクラス(俺 達)の仲間だ。

 

「姫路さん」

「何でしょうか?」

「……勝ちましょうね、このBクラス戦」

「当然です!」

 

 そう言って笑う姫路さん。

 彼女の笑顔は、人を幸せにする力がある。

 

 

 

 

「よし、とりあえずはこんなところか」

 

 俺が立っているのは、渡り廊下側のBクラス入り口である。

 俺や吉井、島田さんといった部隊長達で姫路さんをうまく立ち回らせて、どうにかここまで進軍してきた。

 ただ……そろそろ持ち点が限界だ。

 

 

『【数学】

 Fクラス  谷村誠二

         23点』

 

 

「工藤! 代わってくれ!」

「了解!」

 

 俺は、工藤の召喚獣が出てくるのをきちんと待ってから、背後のFクラスの人垣を超える。

 

「ふう……これで役割は果たしたかな」

 

 Bクラスを教室に押しこめるという俺に託された指令は完遂した。……まあ、ほとんど姫路さんのおかげではあったが。

 数学の点を補給するために一旦戻ろうかと思った時、なにやらDクラスの方が騒がしいことに気が付いた。

 視線をそちらの方へ向けると、なにやら喧嘩をしているような様子だった。

 Bクラスの入り口の封鎖には成功しているし、一体何が……と思って近づいてみると、

 

「……うん?」

 

 島田さんが半狂乱で吉井に襲いかかっていた。

 

「ちょ、ちょっと、どうしたんだ?」

 

 二人を取り囲む人垣の中にいた須川に話を聞いてみる。

 

「あー……なんていうか、自業自得っていうか……」

「自業自得?」

 

 須川はどうしたもんかと頭をかきながら答えてくれた。

 

「まずな、島田が人質になってたんだよ」

「人質?」

 

 物騒な単語だ。まさか試召戦争で耳にするとは。

 

「なんで人質になったんだ? フィールドは数学だったし、島田さんがそう簡単に捕まるようには思えないけど」

「向こうから、吉井が倒れて保健室で寝てるってガセネタが来てな。持ち場を離れた島田がまんまとBクラスに捕まったというわけだ。その時は一気に駆け抜けようとして教科は英語だったしな」

「ふむ」

「で、その状態で吉井が出した指示が総員突撃だったわけだ」

「まあ……島田さんにはかわいそうだけど、仕方のない指示ではあったんじゃないか?」

 

 持ち場を離れて勝手に捕まって人質になったのだ。まとめて倒されても仕方ないとは言える。

 相手の人数はかなり少なかったようだし、この戦場の有利を取ることが今回の絶対条件なのだから。

 ただ、一概に人質になった島田さんを責めることは出来ない。

 確かに戦争中に持ち場を離れたのは重罪であるが、俺達は兵士である前に一高校生である。クラスメイトが倒れたとなればそれを心配するのは当然とも言えるし、もしそれが身内や想い人であれば、島田さんでなくとも持ち場を離れてしまう事はあるかもしれない。

 俺なら、木下さんが倒れたという噂を流されたら戦場を放棄してすっ飛んで行く自信がある。

 

「そうなんだけどな、普通に突撃すればいいものを、『島田さんが僕の事を心配するはずがない! 偽物だ!』って騒いでな」

「……」

「結果的には相手の不意を突けて島田も無傷で救出できたんだけど、最後の『ホントは最初から気づいてたんだよ?』とかいう吉井の発言に島田がプツンと来ちゃったってわけだ」

「……ああ、それはキレるかもしれない」

「まああれだ、大ごとにならないうちに適当なところで俺達がとめるから、こっちは心配しなくてもいいぞ」

「分かった」

 

 須川がそう言うんなら何とかなるんだろう。

 吉井達の方を見てみると、島田さんは関節技に移行していた。

 

『すいませんでした! もう勘弁してください!』

『ん~どうしよっかな~?』

 

 関節技を極めながらの笑顔が実に恐ろしい。

 

『し、島田さん! 何が望みなの!?』

『望み? うーん、それじゃ、今後ウチはアンタの事をアキって呼ぶから、アンタはウチの事を美波様って呼ぶように』

『美波様! これでいい!?』

『今度の休み、駅前のクレープ屋さんに行きたいな~』

『おのれ! 僕の食費事情を知ってるくせにいだだだっ! おごります! おごりますから!』

 

 ああ、あれはじゃれ合ってるだけだ。心配しなくてもいいかな。

 とにかく、今現在の俺の心配要素はごくわずかになってしまった数学……だけじゃないな、全体の持ち点が半減しているわけだから、俺は補給試験の為にとりあえず教室へ戻ることにした。

 

 

 

 

「なっ! なんだこれ!」

 

 教室に返った俺の目に飛び込んできたのは、ボロボロになった筆記用具や卓袱台だった。よく見ると、何人かの鞄は踏まれた跡がある。わざわざ踏みつけた感じじゃないから、急いで妨害工作をしているときに踏んでしまったんだろう。

 ……うわ、俺の鞄もやられてる。

 

「襲撃を受けたんだ」

 

 そんな俺に、坂本は一言で説明する。

 

「襲撃って……どういう」

「戦況の情報を聞く限り、お前は補給試験を受けに来たんだろ? 時間がぎりぎりだから、先に補給試験を終わらせてくれ。幸い補給試験に必要な分は無事な筆記用具や卓袱台を用意出来たからな」

「時間?」

 

 まだ完全下校時刻まではかなり時間があるはずだが。

 

「Bクラスと、4時以降は試召戦争に関する一切の行為を禁止するという協定を結んだ。だから、補給試験を受けるなら今しかないんだ」

「協定か……なるほど、了解した」

 

 現在の時刻は2時50分。

 補給試験は一時間だから、採点の時間も合わせると確かにぎりぎりだろう。

 教室にいたのは、採点の速い事で有名な木内先生だった。

 

「木内先生、数学の補給試験をお願いします」

「分かりました」

 

 先生の立ち会いの下、補給試験が始まった。

 今日はもう俺の出番は無いだろうが、明日の勝利のために、集中して臨む。

 

 

 

 

「――はい、採点が終了しました」

「ありがとうございます。さすがに速いですね」

「これが私の特技みたいなものですからね。教師なのでどちらかを贔屓することは出来ませんが、この後も頑張ってください」

「はい!」

 

 補給試験の採点が終了し、時刻は3時58分。

 どうにかぎりぎりで終えることが出来た。木内先生でなければ間に合わなかっただろう。

 ところで、木内先生の採点は厳しい事でも有名だが、出題の分野が俺の得意分野に偏ったのか、それでも良い点数であると確信できる。もしかしたら、試召戦争中だという事で集中力が増したのかもしれないが、とりあえず運が良かった。

 なんにせよ、これで明日も存分に戦うことが出来そうだ。

 

 

 そして、時計の針が4時を指した。

 

 

 

 

 休戦協定の事は両軍きちんと前線部隊にも話が伝わっていたようで、暫くするとFクラスの皆が教室に帰ってきた。

 随分と少ないが……あくまでも休戦協定だからか、戦死した奴らはまだ補習室に監禁中のようだ。

 それと、気絶した吉井は須川達の手によってきちんと運ばれてきていた。

 

「さて、対Bクラス戦、初日の戦闘ご苦労だった。皆気づいていると思うが、我がFクラスは襲撃を受けた」

「なあ……その襲撃ってのはどういう事なんだ?」

「実はな、知っている奴もいるだろうが、Bクラスの代表があの根本だったんだ」

「根本って……根本恭二?」

「その根本だ」

 

 根本恭二。

 確か、目的のためにはどんな手段厭わないヤツだったか。カンニングは当たり前、喧嘩に刃物は標準(デフォルト)装備、なんて噂もある。

 もしかすると、島田さんを人質に取ったのも根本の指示だったのかもしれない。

 

「続けるぞ。試召戦争が始まってしばらくして、Bクラスから協定の申し出があった。協定の内容については皆知っての通りだ」

 

 確か、『4時以降は試召戦争に関する一切の行為を禁止する』だったか。

 

「罠の可能性もあったから、本隊を連れて協定の場へ向かったんだが……その場では何も無かったが、その間に教室が襲撃に遭った、というわけだ。これは根本の作戦を読めなかった俺のミスだ、すまなかった」

 

 そう言って、坂本は俺達に頭を下げた。

 そんなことをされてしまっては、俺達は一概に坂本を責めることが出来なくなる。

 

「いや、仕方ないさ。協定にメリットはあったんだろ?」

「ああ。俺達の最大戦力である姫路の体調を気遣ったものだ」

「す、すいません皆さん……」

 

 姫路さんも、俺達に頭を下げるが……彼女には謝る理由が無い。それどころか、俺達の方が感謝しなくてはならないくらいだ。

 

『姫路さんのせいじゃないさ!』

『姫路さんのおかげで戦えてるんだから!』

『姫路さんサイコー!』

 

 当然のように、Fクラス各地から姫路さんをたたえる声が上がる。

 

「ありがとうございます……!」

「……この件に関して、そう思ってもらえるなら助かる。さて、現在の戦力を報告するが……」

「ちょっと待った。今こうして集まっていることは協定に反しているんじゃないか?」

「心配ない。4時きっかりに解散という事も出来ないから、15分まではミーティングのみ互いに黙認することになっている」

「そうか。話の腰を折って悪かった。進めてくれ」

「いや、大丈夫だ。それで、現在の戦力だが正直あまりよろしくはない」

「そうなのか?」

「ああ。前線部隊のうち28人がやられた。とは言え、Bクラスを教室に押しこめたのは上出来だから、プラスマイナスゼロとも言えるがな」

 

 戦力としてはマイナスだが、想定以上に攻め込めたのなら順当な被害で攻め込むことが出来たと判断しても良い。

 

「援軍としてやられた奴が3人がやられたから、今残ってるのはここにいる19人だ」

 

 簡単な算数だ。

 その中には、総大将の坂本や、主戦力の姫路さん、単一教科最大火力の土屋もいる。

 

「明日は、姫路に前線の指揮を執ってもらって、機を見て突撃させる。だから、姫路は前線の後ろに待機させて温存する。それまでは、各自例え死んでも入り口を守るんだ。いいな?」

『おう』

「それじゃ、今日は解散だ。お疲れだったな」

 

 時刻はきっかり4時15分だった。




実は、谷村君の総合科目の点数は明久に負けてたりします。
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