ヤンデレな女の子に愛されるだけの話   作:ストレア=リネレイト

23 / 24
お久しぶりぶりです(小声)前回から2ヶ月経ってます。早く出せる筈だったんだけどな……
誤字脱字あったら報告ください。

7/7 白井あおいさん 誤字報告ありがとうございます。


天才という 物 2

 

 

 

 

 

 

 

「………んぅ……」

 

 目が覚める。すごいぐっすり寝れた気がする。

 人間ってほんとにぐっすり寝ると夢すら見ないんだな。

 

「んん〜〜〜〜ぁあ……………。あれ?」

 思い切り背伸びをして目を擦る。そして目の前に映るは……病…室?

 白一色とでも言べきか少し広めの部屋にベッドと病院でよく見るような機器が頭の横に置いてある。

 よくわからない状況下にあることだけは自覚した。ぽふんと枕に頭を落とした。そして呟く。

 

「知らない天井だ……………」

 

 これが言いたかった。と言うかなんで俺はここにいるんだっけ。

 ‥……あ。

 

「っ!!………ハぁ、はあ。そうだ俺、事故に遭って………」

 

 ある事を思い出して布団を勢いよく捲る。確認するのは己の脚。

 目だけでなく手でも触れて確かめる。

 

「ついてる。俺、まだ生きてる。………よかったぁぁ」

 

 勝手に涙が溢れてくる。安堵とあの時の恐怖が止まらなく湧き出てくる。

 思い切り泣いた。情けないだとか男のプライドだとかそんな物今はどうでもいい。

 ただ生きていることに感謝した。

 

◆◆◆

 

「あ゛ー。にしてもよく生きてたな、ほんとに」

 

 ひとしきり泣いた後、俺はベッドに腰かけていた。

 俺の記憶ではどう見ても助からなそうだったんだが……

 あれか、人間の体は案外強いとかなんかで見た気がするな。本当だったんだ。

 足だって失っていてもおかしくないのに傷跡一つ見えない。

 相当腕の良い医者だったのだろう。正直、腕がいいどころではないが。

 

 辺りを見渡してもナースコールの様な物はない。

 一応目覚めたなら呼ぶべきなのだろうが……………。

 

「ん?」

 

 何かないかと部屋を見渡してみるが何も無かった。そう()()()()のだ。

 窓もなければ棚やテレビなども無い。上を見れば換気扇もないしドアすら見えない。

 漠然とした不安を覚えた。

 やけに静かだ。ここは本当に病院なのか?

「………、……!」

 

 ウィーーーン。

 

 突然何処からともなく機械音が鳴り始めた。

 ベッドから反対側にある壁に切り込みが入る。

 

「っ…!?」

 

 何事かと思わず布団に身を隠してしまう。数秒しても何もないので恐る恐る目だけ出して見た。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「ううっ、ヒックうわ〜〜〜〜ん」

 

 なんか目の前で蹲って泣いている女性が居た。白衣を纏っているのを見るにここの医者だろうか。

 だけどボサボサで伸びきった髪や荒れている肌には医者にあるべき清潔感があまりない。

 誰だかわからないが取り敢えず泣き止んで貰わないとどうにもできない。

 一旦、頭だけ撫でておこう。妹で鍛えられた俺のテクを見せてやろう。

 

 優しく手で触ると最初はビクッと体を震わせたが手を動かし始めると

 すぐに身を委ねてくれた。

 

〜数分後〜

 

「うぅ、ごめんなさい。」

 

「えっと、あなたはこの病院の関係者ですか?」

 

「...私が誰かわからないんですか?」

 

「えっと、すみません。自分には女性の知り合いで思い当たる人は一人しかいなくて…

 何処かでお会いしたことありました?」

 

「......ぇ?いや、...がぅ。そんなわけ…どこ……あいが?いや.......

 かんぺ...せい.......」

 

 そのまま女性はぶつぶつと自分の世界に入ってしまった。

 あと、微かに聞こえる「実験」とか「脳に…」とかマジで怖いんだけど。俺改造とかされてないよね?

 う〜ん。まるでこの人と俺が知り合いかのような言い方だったな。

 だが残念ながら俺に女性の知り合いは一人しかいないし、ましてやこんな雰囲気の女ではなかった。

 う〜んやっぱりこの人とは面識ないよな……

 

 

「あ、あの!!思い当たる人ってこの人だったりしま、せんか?

 

 突然、女性が白衣のポケットからいそいそとスマホを取り出し、画面を見せてきた。

 そこに居たのは親の顔より見た忌々しい顔。ここで後輩が出てくるとは。あいつに知り合いとか居たっけ。

 俺が寝ている間に訪ねて来たのだろうか。顔を覚えられたり写真を入手する程に通っていたという事か?

 だったら俺はどれだけの期間寝ていたのだ?あの怪我だ。1〜2週間なんて短さではない。下手すれば数ヶ月、年単位も?

 彼女は黙っている俺に何を思ったのか焦った様な縋る様な表情でこちらを見てくる。

 

「え!?あ、いやその人で合ってますけど、色々とわかんない事が多くて…...」

 

 俺がそう言うと途端に彼女は目を輝かした。

 

「じゃあ!私が誰か分かりますよね!!」

 

「いや全然」

 

「なんでですか!?私ですよ私、貴方の大好きな後輩ですよ!

 見てわからないんですか!」

 

「……分かる訳無くね」

 

 そう言ってスマホと自身を交互に見せてくる後輩(仮)。

 確かに声は似てる気がするけど正直分からん。大好きでもない。

 あまりにも突拍子もない話だったので取り敢えず恒例の本人しか答えられない質問をした。

 勿論、全問正解。途中俺についての質問もしたのだが怖いくらいにスラスラ答えてた。

 

「はぁはぁ。どうですか私だと分かってくれましたか?」

 

「ああ、見た目はかなり違うが後輩に違いないな」

 

「そんなに見た目でわかりませんか?」

 

 なんとこの女気付いていないらしい。

 どんな生活してたらクール系天才美女が根暗研究者に無意識にクラスチェンジ出来るのだろうか。

 

「……その顔やめてください。分かりましたよ、ちょっと待ってください」

 

 後輩はそう言って怪訝な顔をしながら出ていった。

 ……え〜〜いや、え〜マジか。あの後輩があんな風になるなんて。

 そうだな。流石に聞きたい事が多過ぎる。少し纏めて後で聞こう。

 

(うん。まず聞くべきはここが何処なのかだな。この部屋を見た感じ病院とは少し違う。

この静けさ、後輩しか居ないのか?それか後輩がここの主なのか...

そしてさっきも少し考えたが数年は少なくとも経過している。

後輩の変容っぷり、何よりこのドア。スライド式だったけど今は継ぎ目一つ見えない。

こんな技術数年ではできないな。後輩ならやりかねんが十数年はあるかも。)

 

 ドアがあった場所に触れてみるがそれでも分からない。

 軽くノックしてみると金属質の音が返ってくる。

 壁をぺたぺた調べてると、何かに反応し「ピッ」と鳴った。

 壁が音を立てて横にずれた。恐る恐る顔だけ出してみると無機質な廊下があった

 気分はSF系の謎の研究所にいる気分である。

 ちょっと怖くなって戻ろうかなと思った時。

 

「キャーーー!!!」

 

 突然女性…と言うか後輩の叫び声が少し奥のドアから聞こえて来た。

 俺はその方向へ走り出した。

 

「おい、どうした!?大丈夫か!なにがあった」

 

 力強くノックして呼び掛けた。すると中から慌てた様な後輩の声が。

 

「せ、先輩!?どうしてここに…じゃ無くて入ろうとしないで下さい!」

 

「本当に何も無いのか?」

 

「そうです。と、とにかく今だけは駄目です!」

 

 思わぬ気迫にお、おう。と曖昧に返事だけして壁に寄りかかった。

 こんな慌ててる後輩を見るのは何気に初めてかも。

 何があったのかは気になるが一旦さっきの続きをするか。

 

(一番の疑問は何故俺を助けたのか。確定した訳じゃないが全く関与していないとは思えない。

あの泣いてる姿は演技には見えなかった。ならば何故あいつはそこまでする?

確かにあいつには俺以外に関わりのある人間はいなかった筈だが長い時間をかけて

助ける事か?..........この辺りはあまり分からん。が、まだ目覚めて1時間も経っていない。

いずれ分かる事か。)

 

 今わかるのは事故で俺は気を失った。それで頭を打ち付けたからか意識が戻らなかった。

 そして俺が目覚めた事に後輩が関わっている。このくらいか。

 

「せ、先輩……」

 

「ん?何してんの…」

 

 何故か後輩がドアから覗き込む様に少しだけ顔を出している。

 

「いや、さっきの私とても酷かったじゃないですか。だから面と向かうの恥ずかしいな〜って」

 

 え?お前に恥ずかしいって感情あったん?俺相手に気にする事じゃないないだろ。

 

「その碌でも無いこと考えてる目やめてください。私にだって恥ずかしい感情はあります」

 

「なんでわかんだよ。はぁ、いいから出てこいよ。聞きたい事が多いんだが」

 

 後輩はムスッとした表情でゆっくりと扉を開けた。

 

本当に気にしてるんですから

 

「………うん?今なんか言った?」

 

 後輩の新鮮な姿見惚れていてその言葉は俺の耳に届かなかった。

 説明するならさっきまでボサボサだった髪はちゃんと櫛を通されていて

 目にかかっていた前髪も整えられている。

 肌こそ荒れているがやはり美形は美形なんだなぁと思わせられる。

 

「ふふっ♪...先輩、聞きたい事あるんですよね。リビング的なのも

 一応あるので向かいながら話しましょう」

 

 そう言いどこかへ歩き始めた後輩。俺は慌てて後をつけていく

 

「ここはなんなんだ?壁の材質とか見た事ないぞ。人も見ないし」

 

「まずそこからですよね。ここは私の研究所兼家です」

 

「研究所と家って何研究してんだよ」

 

「先輩を目覚めさせる方法に決まってるじゃないですか。

 因みにお金は前々からやってた投資とサクッと新技術作ってその売買をしてます。

 例えばこの壁とドアに自立型ロボットとか。自伝出せるくらいの事はやってます」

 

 どうでも良いんですけど。そう付け加えた後輩。

 こいつに世界中の研究者が泣かされたのではないか?

 頭の中で合唱だけしておく。

 

「そんな目で見ないで下さい。不本意ながら世界には貢献してます。

 それに私の本命はそんな生活を楽にする物じゃありません」

 

 不意に後輩の足が止まった。釣られて俺の足も止まった。

 

「話は後にしましょうか。着きましたよ」

 

 目の前には壁と右端に謎のパネル。そして後輩がポケットから取り出すは一枚のカード。

 俺はそれを受け取り、迷わずパネルにかざした。

 

 ピッと言う音と共に「認証しました」と言う機械音が流れる。

 壁に縦に線が入り、割れる様に開いた。

 

「それは居住区での出入りが可能になるカードです。

 いつも一緒にいる訳ではないので無くさない様にしてください」

 

 そうして見えて来たのはいたって普通の内装だった。

 さっきまでの近未来感のある廊下とは違い、現代でよく見る内装だった。

 

「先輩はそこの椅子に座って待っててください。…あ、飲み物は何がいいですか?

 コーヒーかココアがありますけど」

 

「まぁ、目覚めの一杯ってことでコーヒーで」

 

「はい、腕によりをかけて入れますね。~~♪」

 

 後輩は鼻歌を歌いながら上機嫌で近くのキッチンへと向かった。

 十数分して後輩が戻って来た。

 机に置かれたそれは温かい湯気と芳醇な香りを放っていた。

 

「いただきます」

 

 舌に確かな苦味と雑なまろやかさが伝わってくる。

 おそらく市販のものだろう。毎日飲んでたコーヒーがこんなに生を実感できるとは。

 目覚めの一杯としてはアレだが現実的な今を教えてくれてる。

 後輩はただ嬉しそうにこちらを見ていた。

 

 

 

「先輩」

 

 妙に真剣な声だった。真っ直ぐこちらを見つめる目は相当な覚悟がこもってるように見えた。

 

「今から言う事はかなり信じずらいことです。ですが私は先輩が強い人だと知っています。

 勿論、困惑はするでしょう。吐き気すら覚えるでしょう。でもあなたなら大丈夫です」

 

 それは自分に言い聞かせる様だった。

 あの後輩にここまでさせるとは一体どれ程の事なのだろうか。

 後輩は少し息を吸った。

 

 

「まず、先輩が事故に遭ってから数十年近くは経過しています。

 私もこんな見てくれですが百歳は超えてるんですよ?」

 

 そう言って悲しそうに笑う後輩。冗談としか思えない。

 でもこいつは空気は読めるやつだ。ここでそんな事言わない。

 でも

 

「おかしいですよね。何故自分達の見た目は変化していないのか。

 何故生きているのか。そもそも何故そこまで時間がかかったのか」

 

 俺の心を読んだかに様に言った。俺はそれに肯定する。

 

「ああ、でもそれこそサイボーグになるとか若返りとか…………嘘だろ?」

 

「いいえ、そのまさかですよ。そうですね、先輩が事故に遭った後から説明しましょうか」

 

 

「妹ちゃんから電話が来たときは驚きました。最初は嘘だと思って切っちゃいました。

 でも次の日、会社には先輩はいなくて、家族から連絡が来てたって。......

 それで病院に行って、妹ちゃんに聞いたら...原因不明の昏睡状態だって。

 医者もこのまま目覚めの予兆が無いなら、脳死と見なす、と」

 

 後輩は自らの身を抱き寄せて絞り出すように言った。

 『脳死』

 医療に詳しくない俺でもドラマとかで聞いたことがあるやつだ。

 確か体の活動はあっても脳の活動が一切無く、周りからはただ寝てるように見えるんだとか。

 でも絶対治らなくてその後静かに息を引き取るんだったか。

 

「でも俺が今生きてるってことはお前が治療法を見つけたってこと...なんだよな?」

 

「あのままただ日数が経てば先輩は死亡とみなされ生命維持装置が外されるところでした。

 その時は私の多額の貯金を崩して入院費を払っていたのですが

 病院側から死が決まっている人に病床は与えられないと。ホントはもっと遠回しでしたが

 実質的には変わりません。でも私はまだ諦め切れませんでした」

 

 

「だから私は決めました。私の手で先輩を救おうと人の脳に関する研究について始めました。

 ですが当時は倫理的な問題で禁忌扱いでした。だから論文とかも全然なくて1から全てやりました。

 そこで問題になるのが時間です。現代になって誰も触れられなかった事、人の精神、脳、意識について

 それを一人でこなすには人の一生は短すぎます。だから私はまず時間を作ることにしました」

 

 当たり前のことだ。人の脳に関する研究、試料はどこから調達してくる?

 それを許してくれる国がどこにある?

 人の一生なんて健康に生きても百年行けば褒めらるほどだ。さらに六十歳も過ぎれば衰え始める。

 まるで世界がそれを拒んでるようである。

 

「結果的に言えば、二十年もかかりませんでした。最初に行ったのは生活に必要な動作の効率化です。

 文字どうりの一本満足バーとか家事をすべてこなしてくれるアンドロイドとか。

 睡眠時間を2時間まで短縮出来ました。残りの22時間はすべて研究です。私の全てを捧げました

 それでも、これだけかかりました」

 

「そうか、じゃあ俺の家族とかは……」

 

「ごめんなさい。研究が始まってからは碌に連絡をとってなくて……」

 

 後輩は百歳を優に超えていると言う事は妹もだいぶ歳をとっているか。

 両親に関してはもう生きていないだろう。

 

「…………悲しいけど俺も当時は悲しませただろうし、おあいこだな」

 

 あとで後輩に墓の場所でも聞いとくか。花でも買って備えよう。

 雰囲気を変えようとしたのか後輩がパンッと手をたたいた。

 

「この施設についての話をしましょうか。ここは実は太平洋の中央辺りの海底に存在しています。

 主に外からの来客を相手する応接区とその下にある研究区、その下にこの壁とかば居住区があります。

 応接区から研究区には警備ロボットを置いていて侵入者がいればすぐにお陀仏です。

 他にもミサイルと「ミサイル!?」かは………」

 

「おおおおおい!ミサイルってなんだよ!めっちゃ武力じゃん。え、お前国に狙われてる?」

 

「あながち間違いじゃないですね。簡単に言うと私が作った技術が悪用されまして。

 見事にww3が実現しました。核汚染やら生物兵器やらで一部は地獄ですよ」

 

 そこから聞かされたのはひどい話だった。

 取引先に売った家庭用ロボットを改造して銃を持たせたり

 テレビに使っているホログラムを利用してデコイを作ったり。

 裏社会や仕舞いには国同士の戦争でも使われたらしい。

 

「先輩を助ける為だったのにこんな事になるとは………まぁ、そんな理由です。

 あ、そうだ。後でパワードスーツ着てみます?ビル一つは跳べる様なのもありますよ。

 他にも先輩が眠ってる間に色んなゲームの新作沢山出てます。それをしたら

 アニメと映画も見て、沢山、たくさん遊びましょう!時間はあります。

 だから、だから、今までの分............」

 

 今更だが後輩は百年も一人で生きていたのだ。関わりはあっても事務的なもので結局は一人。

 その上、人としての生活を削ぎ落としてただ俺の為に研究して来た。

 「今までの分」というのは眠っていた俺だけの事では無いのだろう。

 どうして俺なんかにそこまで出来る?たった二十年ちょっと一緒に生きていただけだぞ?

 それだけの関係にどうして百年も自分の人生を捨て切れる?

 

「なあ、どうしてそこまでして俺を目覚めさせたんだ?

 そんな事しなければお前は普通に生きて結婚でもしてたのし「っ!それじゃ!!」」

 

「それじゃあ、ダメなんです!私には先輩しか居ないんです。先輩じゃなきゃダメなんです。

 先輩が良いんです。それ以外じゃ意味がないんです。私の時間もこの頭脳も金も体も命さえ、

 先輩の為に使われなかったら意味が無いんです。そんな私に生きてる意味はありません」

 

 矢継ぎ早に語られたものは余りにも重く、暗い物だった。

 俺は無性に苛立った。理由は分からない。でもここで言わないといけない気がした。

 

「巫山戯んな!!お前が、たかが俺がいないだけで生きていけないだと!?

 何もかも俺より上回っているのにか?俺が欲しい物全部掻っ攫って俺がどんだけやっても何もしていないお前に届かなくて!そうやっていつも馬鹿にしてくる!!そんなお前のどこに俺が必要だぁ!?どうせ今回も気まぐれだとかそんなとこだろ?そうやって馬鹿にすんのもいい加減にしろ!!」

 

 溢れ出る今までずっと、ずっと溜め込んでいた想いをありのままにぶつけていく。

 

「そういう所がっ…………

 


 

「大っ嫌いなんだよ!!」

 

「ッ!」

 

「よかったなァ!お前だって俺の事がどうせ嫌いなんだろ?

 じゃなきゃあんな事できないもんなぁ!!」

 

 長年愛し続けてやっとの思いで再会できた人。

 そんな彼からの脳に突き刺さる様な「嫌い」

 なんで、どうして、ここまでやってきたのに。............なんてのは無い。

 全部知っていた。解っていた。先輩が私を嫌いな事、その上で一緒にいてくれた事。

 唯、それを本人の口から聞かされる事が堪えるだけだ。

 それだけなのにこんなにも胸が苦しいとは。ここまで動揺する物だったとは。知りたく無かった。

 

「せんぱ、ぃや、わた、しは.........」

 

 言いたい先輩に私の気持ちを、言いたい「好き」だって「愛してる」って。

 でもここでこの想いを伝えても一蹴されるかもしれない。

 でも伝えなかったらこのまま誤解されたままだ。

 でも………先輩と一緒にいるなら同意の下がいい。向こうから一緒に居たいと言って欲しい。

 ()()()()はさせないで欲しい。

 

 だから、だから!

 

 思いっ切り自分の頬を叩く。そのまま目を瞑り息を整えた。

 そして真っ直ぐに相手の目を見る。

 後は唯、私の気持ちを伝えるだけ。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方が好きです」

 

 目の前の憎き女からの突然の告白に目を見開く。

 

「好きだから、約二十年貴方を追いかけ続けました。貴方と会う時には何度も鏡で

 自分の姿を確認してました。愛しているからここまでやって来れました。

 この人の身には長すぎる年月、心が折れるなんて事はありませんでした。ましては諦めようだなんて事も。

 全ては私の大切な人を取り戻すために。貴方にもう一度逢うために」

 

 目の前で語るその姿は嘘をついている様には見えなかった。

 先程までの激情は今やすっかり消火されて、ただその言葉に耳を傾けていた。

 

「貴方が私の事をどう思おうと変わりません。何度だって言います」

 

「貴方を愛してます」

 

 




評価、お気に入り、感想等くれると嬉しいです。
次話で終わる予定。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。