似非イタリア人に幽霊を付けてみた(仮) 作:アルストロメリア
迸るパトスと深夜テンションに任せて書き上げたものなので、生暖かく見守って頂けると幸いです。
がやがやと騒がしい周囲を見回す。周りに居るのは同僚の教師達、そして今年デュエルアカデミアへの入学を希望する若きデュエリスト達だ。既にほぼ全ての受験生が試験官との実技試験(デュエル)を終え、試験場よりやや高い位置にある観客席で観戦している。私もまた、試験官として、そして実技担当の教師として受験生達のデュエルを観戦しながら、他の試験官達と評価を出し合っている。
「三沢君は審議の必要も無い、決まりだな」
同僚の試験官のその言葉で。今の試験が最後の受験生『三沢大地』のものだったと思い出し、同僚達と共に肩の力を抜く。
(ふぅ、これで一段落なノーネ。さて、一体どれだけの受験生が合格するでスーノ…。)
この後は教師陣全員で会場の後片付けと…そして恒例と化している飲み会だ。ただ、残念ながら今年は先約があるから不参加になるのだが。先約と言っても、相棒とも言えるヤツと一晩中デュエルするだけなのだが。試験が近かったこともあり、最近殆ど相手が出来なかったため、その埋め合わせにと半ば無理やり約束させられたのだ。もし約束を破れば、今後デュエルをする度に、今まで見た事の無いワンターンキルを披露してくれる事だろう―――正直精神衛生上大変よろしくないので、破るわけにはいかない。
『お疲れ様クロノス。…おや、気を抜くのは少し早いかも知れないよ?』
「なんでスート?」
相棒の、『トム』からの労いの言葉と不穏な台詞に、つい声を出してしまう。不審に思われて無いかと周囲を見回すが、どうやら聞かれていなかったようで胸を撫で下ろす。毎度毎度心臓に悪いことこの上ない。いきなり独り言を喋りだせば、それはもう不審がられるだろう…そして頻度によっては変人、または気がふれていると言われる事もあるかもしれない。
「すみません、もう一人受付時刻ぎりぎりにやってきた受験生が居るのですが―――」
私が一人変人扱いされる事の恐怖に内心震えていると、隣で仰向けに寝ながら浮いているトムをすり抜け、会場の入り口で受付をしていた教師が受験生の対応を尋ねに来た。どうやらその受験生の乗った電車が遅れたらしく、試験デュエルの順番までに到着出来なかったらしい。遅刻には正当な理由があるため不合格とするわけにはいかないし、そもそも我々の勝手な都合で若者の可能性の芽を摘むわけにはいかない。勿論試験は行うとして…片付けムードになっていた他の教師陣はあまりやりたくはなさそうである。
『どうせならクロノスが試験やってあげたら?受験生は殆ど残っている訳だし、実技担当教師の実力を見せてあげなよ。』
(おい馬鹿やめるノーネ!そんな事をしたら試験になりませンーノ!ヒソヒーソ!)
周囲に聞こえまいと声を潜めて、相棒の暴論を嗜める。実力を見せるも何も、文字通り「試す」のが試験官であり、受験生を意図して落とそうとする行為は教師としても認められない。
『大丈夫大丈夫。ようは実力を見られれば良いんでしょ?だったらある程度加減さえしてればいいって。後は勝敗に関係無く、プレイングを見て判断すればいいんだからさ。』
(まぁ、確かにそうでスーガ…わかったノーネ。ただしシンクロとエクシーズ召喚は使わないノーネ。)
何かいいように言い包められた気がしないでも無いが、余り受験生を待たせる訳にもいかないし、何より同僚達を早く解放するためにも立候補するべきだろうと考え、自分が試験を担当する事と告げて試験場へと向かった。
……………
…………
………
……
…
「ボンジョールノ。ワタシがシニョールの試験を担当するクロノス・デ・メディチ。学園では実技担当の最高責任者やってルーノデス。」
「遊城十代です!よろしくお願いします!光栄だなぁ、実技の責任者が対戦してくれるなんて。」
先に試験場へ入った私にやや遅れて、例の受験生が入場したのを確認しすぐに挨拶をする。それに対し一瞬焦りを見せたものの、茶髪の受験生―――遊城十代もしっかりと挨拶を返して来た。元気があってよろしい。だが遊城君よ、受験生なんだから口調には気をつけよう………面接では無いので採点には含まれないが。
「この試験は実技担当の責任者として受験生諸君へのデモンストレーションも兼ねるノーネ。デッキは試験用のデッキではなく、ワタシのデッキの中から使用するノーネ。勿論、その強さは試験用のものとは比べ物になりませンーノ。その代わりに、この試験では勝敗にかかわらずシニョール十代のプレイングを見て採点するノーネ!」
予め考えておいた言い訳を一息に言い切る。これならば多少無茶をしても誤魔化せるだろう………と、思いたい。そもそも私は負けず嫌いなのだ。例え試験でも、自分から負けるようなデッキで対戦などしたいとは思えない、やるならば勝ちに行きたいと思ってしまうのだ。
『まぁ、それでもまだ俺には滅多に勝てないんだけどねー』
(勝手に心を読むんじゃありませンーノ!)
相棒の軽口に小声で返す。今から試験だというのに気軽なヤツだ。…まぁ、確かにトムからしたら試験は全然関係無いのだが。
「では、試験を始めまスーノ!」
「「デュエル決闘!」」
――――――――――――――――――――
ターン1
十代(TP)
LP:4000
手札:6
クロノス
LP:4000
手札:5
――――――――――――――――――――
「俺のターン!」
先行は受験生である十代。試験においては受験生が希望しない限り、受験生側が先行となる。
「俺は手札からフィールド魔法《摩天楼-スカイスクレイパー-》を発動!《E・HERO キャプテン・ゴールド》を攻撃表示で召喚してターンエンドだ!」
まだ初手だからか、大きな動きは無くターン終了。そのまま私のターンが回ってくる。
「ワタシのターン、ドローなノーネ!」
――――――――――――――――――――
ターン2
十代
LP:4000
手札:4
モンスター
《E・HERO キャプテン・ゴールド》(攻2100)
魔・罠
F魔法《摩天楼―スカイスクレイパー―》
クロノス(TP)
LP:4000
手札:6
――――――――――――――――――――
「ワタシは《マシンナーズ・ギアフレーム》を攻撃表示で召喚、効果発動なノーネ!デッキからマシンナーズと名の付くモンスターを手札に加えルーノ。《マシンナーズ・フォートレス》を手札に加えるノーネ!」
まずはサーチから。このデッキの主力モンスターを早々に呼び込めたのは大きい。勿論、このままターンエンドなどというわけは無い。
「手札の《マシンナーズ・フォートレス》の効果発動!手札の機械族モンスターをレベルの合計が8以上になるよう捨てて、手札・墓地から特殊召喚するノーネ!手札のレベル7《マシンナーズ・フォートレス》とレベル4《イエロー・ガジェット》を捨て、出てくるノーネ!《マシンナーズ・フォートレス》!!」
「なっ、自分自身を捨てても召喚出来るのか!?」
十代君が、捨てたフォートレスが召喚された事に驚いている。私も初めて使われた時は驚いたものだ。「手札と墓地から特殊召喚」というテキストのせいで、随分と出しやすい上級モンスターになっている気がする。
「バトル!《フォートレス》で《キャプテン・ゴールド》を攻撃、レール・カノン!続けて《ギアフレーム》でダイレクトアタック、ギア・ナックル!!」
十代LP:4000-2200=1800
「くっ。やるなぁ!先生!」
「このままターンエンドなノーネ!」
マシンナーズの安定した火力で、一気にライフを半分以下へ削り取り、ターンを終了する。今回はあくまで試験、あまりやりすぎる訳にもいかない…既にやりすぎな気がしないでもないが。
「流石実技の最高責任者だぜ、先生。いきなり攻撃力2500のモンスターが出てくるなんて、わくわくするぜ。俺のターン、ドロー!」
――――――――――――――――――――
ターン3
十代(TP)
LP:1800
手札:5
魔・罠
F魔法《摩天楼―スカイスクレイパー―》
クロノス
LP:4000
手札:4
モンスター
《マシンナーズ・フォートレス》(攻2500)
《マシンナーズ・ギアフレーム》(攻1800)
――――――――――――――――――――
「手札から、魔法カード《融合》を発動!手札の《E・HERO フェザーマン》と《E・HERO バーストレディ》を融合!!融合召喚!マイフェイバリットカード、《E・HERO フレイム・ウィングマン》!!」
なるほど、手札にちゃんと次の手を残していたようだ。たまに何も考えずに手札を消費した挙句、次のターンあっさり逆転される人もいる。無論時と場合にもよるだろうが…これは加点しなくては。
「バトル!《フレイム・ウィングマン》で《マシンナーズ・フォートレス》を攻撃!そしてこの瞬間《摩天楼―スカイスクレイパー―》の効果発動!E・HEROの攻撃時、攻撃対象の相手モンスターより攻撃力が低い場合攻撃力を1000アップする!スカイスクレイパー・シュート!!」
クロノスLP:4000-3100=900
「―――っ!?見事なノーネ。シカーシ、フォートレスはただでは破壊されなイーノ!《マシンナーズ・フォートレス》の効果を発動なノーネ!このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時、相手フィールド上のカードを1枚破壊すルーノ!《フレイム・ウィングマン》を道連れにするノーネ!」
「なんだって!?」
戦闘破壊はスカイスクレイパーがある時点で予測は出来ていたのだが、まさか《フレイム・ウィングマン》がピンポイントで出てくるとは思わなかった。おかげでライフを大幅に削られてしまったわけだが…もし初手に揃っていて、召喚を控えていたのならよく考えていると思う。残念ながらカードの知識が不足していたようだが、そこはまた今後覚えていけばいいだろう。まぁ、《マシンナーズ》がこの他に存在するカードなのか分からないが。
「俺のフェイバリットカードが…。俺は、《ハネクリボー》を守備表示で召喚!ターンエンド!」
「カード効果の把握は今後の課題でスーノ、合否に関係無くしっかりと勉学に励むといいノーネ。ワタシのターン、ドローなノーネ!」
十代君の出した《ハネクリボー》は、確か破壊されたターンの戦闘ダメージを0にする効果を持っていた筈。となると今の手札では、このターン中に勝つ事は不可能だろう。まずは戦線を整えておくべきか。
「墓地の《マシンナーズ・フォートレス》の効果を発動するノーネ!手札からレベル8《
――――――――――――――――――――
ターン4
十代
LP:1800
手札:1
モンスター:《ハネクリボー》(守200)
魔・罠
F魔法《摩天楼―スカイスクレイパー―》
クロノス(TP)
LP:900
手札:4
モンスター
《マシンナーズ・ギアフレーム》(攻1800)
《マシンナーズ・フォートレス》(攻2500)
――――――――――――――――――――
「バトール!《マシンナーズ・ギアフレーム》で《ハネクリボー》を攻撃なノーネ!」
ギアフレームに殴られ、「クリクリー!」と特徴的な鳴き声を上げながら消滅するハネクリボー。此方はまだ一体、攻撃可能なモンスターが残っているが―――
「《ハネクリボー》の効果発動!このターンの戦闘ダメージを0にするぜ!」
「やはりダメージ無効効果でしターノ。ワタシは《マシンナーズ・ギアフレーム》の効果を発動。《マシンナーズ・フォートレス》に装備するノーネ。カードを2枚伏せてターンエンドなノーネ!」
「へへっ、まさに絶体絶命ってやつだな。このドローに賭けるぜ…ドローッ!!」
勢い良くカードをドローする十代君。引いたカードを見た瞬間ニヤリと笑ったのが、此方からでも見えた。
「まだチャンスは残っているぜ!魔法カード発動《強欲な壷》!!カードを2枚ドローッ!」
「なっ、ナンデスート!?」
一瞬「禁止カードなノーネ!?」と続けて言ってしまいそうになる。トムに合わせた禁止・制限を使用しているとたまにあることだ。代わりに、私の知らないカードや召喚方法を教えて貰ったり、カードを借りたりしている訳だし文句は無いのだが。
「いくぜ先生!魔法カード、《融合》を発動!手札の《E・HERO クレイマン》と《E・HERO スパークマン》を融合!!融合召喚《E・HERO サンダー・ジャイアント》!!」
――――――――――――――――――――
ターン5
十代(TP)
LP:1800
手札:0
モンスター:《E・HERO サンダー・ジャイアント》(攻2400)
魔・罠
F魔法《摩天楼―スカイスクレイパー―》
クロノス
LP:900
手札:2
モンスター
《マシンナーズ・フォートレス》(攻2500)
魔・罠
《マシンナーズ・ギアフレーム》(《マシンナーズ・フォートレス》に装備)
伏せ2
――――――――――――――――――――
「ここに来て融合でスート!?」
黄色い鎧を上半身に纏った新たなヒーローが、雷を伴い現れた。彼は一体どんな引きをしているのか、《強欲な壷》1枚で一気に融合素材を揃えたらしい。元の手札は1枚、ドローフェイズの分を含めても2枚しか無かったのに手札融合してくるとは、正直予想できなかった。
「バトルだ!いけっ、《サンダー・ジャイアント》で《マシンナーズ・フォートレス》に攻撃!ボルティック・サンダー!!」
《スカイスクレイパー》の効果で攻撃力を3400まで高めた、《サンダー・ジャイアント》が迫る。もしこのまま攻撃を受けてしまえば攻撃力の差900のダメージを受けて敗北するだろう。だが、まだ私にも手はある!
「甘いノーネ、シニョール十代!リバースカード発動なノーネ、《ダブル・サイクロン》!!効果でワタシの伏せカードとシニョール十代の《スカイスクレイパー》を破壊しまスーノ!!」
「何ぃ!?ちょっ―――」
十代LP:1800-100=1700
既に攻撃宣言を受けた《サンダー・ジャイアント》は急に止まれず、迎え撃つ《フォートレス》に轢かれ破壊された。
前のターン、ダメージを与えられないと分かった時点で伏せておいたカード《ダブル・サイクロン》。もしこの状況で逆転されるとすれば《スカイスクレイパー》が鍵だろうと考え、カウンターを仕掛ける事にしたのだ。《ギアフレーム》を装備化したのも、万が一攻撃力2600以上のモンスターを出された時のためだ。そして策は見事に嵌り、十代君のフィールドはがら空き、墓地にもこの状況を変えられるカードは残っていない。
「悔しいなぁ、ターンエンドだ!」
「ワタシのターン、ドローなノーネ!」
――――――――――――――――――――
ターン6
十代
LP:1700
手札:0
魔・罠
F魔法《摩天楼―スカイスクレイパー―》
クロノス(TP)
LP:900
手札:3
モンスター
《マシンナーズ・フォートレス》(攻2500)
魔・罠
《マシンナーズ・ギアフレーム》(《マシンナーズ・フォートレス》に装備)
伏せ2
――――――――――――――――――――
「バトール!《フォートレス》でダイレクトアタックなノーネ!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!?―――あだっ!?」
十代LP:1700-2500=-800
迫り来る《フォートレス》の巨躯に、ソリッドビジョンにも関わらず悲鳴を上げる十代君。そのまま轢くのかと思いきや、横を通り抜けざまに十代君の頭を手で軽く小突いて走り抜けていく。何だろう、機械なのに心優しい性格なのだろうか?
「これにて試験デュエルは終了なノーネ!合否はおって通知しまスーノ!解散するノーネ!」
声を張り上げ、観戦していた在校生と受験生に解散を促す。人が散り始めるのを確認し、十代君の方へと歩を進めた。
「負けちまったのは悔しいけど…ガッチャ!楽しいデュエルだったぜ!先生は強いなぁ!」
負けた直後だと言うのに、実に楽しそうに話しかけて来た。本人の言うように悔しいのだろうが、それ以上にデュエルが好きなのだろう。言葉遣いがなっていないのはあるが、性格は嫌いではない。
「シニョール十代、良いデュエルだったノーネ。ワタシ相手に臆さず攻めて来た姿勢、そして最後に見せた引きは素晴らしかったノーネ。ただし、まだ伏せカードへの警戒やカードの知識が足りていないデスーノ。今後はアカデミアでしっかりと学ぶノーネ。」
実質的な合格を言い渡し、そのまま去ろうとして足を止める。
「それと、その言葉遣いには気をつけるノーネ。反感をかう前に直すといいでスーノ。」
「あっ、いけねっ。すみません!ありがとうございました!」
今になって、自分の言葉遣いに気付いたのだろう。急に姿勢を正すと、ぺこりと頭を下げてきた。しかしこの様子では先ほどの”合格通知”は気付いていないかも知れない。
『ふふっ。あの子の事、えらく気に入ったようだねクロノス。』
今まで沈黙を守ってきたトムが、急に声をかけてきた。馬鹿な事を言う、私にとって生徒は皆平等であり、守るべき相手なのだ。それに上下は無いというのに。
『あははは!初めて会った頃は”あんな”だったのに、言うようになったね!』
そう口にすると、カラカラと笑いながら昔の事を掘り返された。あの頃の私はどうかしていたのだ。上を目指すことを諦めたレッド寮生を見限り、実力のある者ばかりを優遇していたあの頃の私は。
(いい加減にするノーネ!あんまりしつこいと今夜のデュエルは抜きでスーノ!!)
『あっ!?それは横暴だろ!こっちは娯楽が少なくて辛いんだぞ!?』
いい加減うるさい相棒を、デュエルを餌にして黙らせる。なんだかんだでこの友人には世話になっているし、自分が更生できたのも相棒のおかげだ。口にこそ出さないが感謝しているのだ、デュエル抜きというのも冗談でしかない。それに、彼とのデュエルはまだまだ学ぶ事が多い、此方としてもより多くの戦略を覚えたいのだ。
だがまぁ、まずは会場の片付けから始めよう。終わらなければ帰れないのだから。
読んでいただきありがとうございます。
今回初投稿と言う事で、まだ試行錯誤…というより、自分で文才なんて無いと自覚はあるので、お気づきの点があれば指摘して頂けると幸いです^^;
また、フィールドの表記についてですが、他の投稿者様の記述を真似させて頂いたのですが…やはりご本人に一度伺ってからほ方がいいのでしょうか。内心ガクブルしています…
一応は連載としていますが、需要があればと言う事で。正直「こんなクロノス先生認めない!」的な方も多いのでは無いかと予想してますので--;
もしこんな拙い文章でも続きを読みたいと言って頂けるのであれば、頑張ってみようと思います。
追伸:8/2 感想のご指摘にありました件を考え、使用ルールをマスタールール2のみに変更しました。
それに伴い若干変更を加えております。