似非イタリア人に幽霊を付けてみた(仮)   作:アルストロメリア

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2話目投稿させていただきます、アルストロメリアです。
続きを期待してくださる方、ありがとうございます。
今後も頑張らせて頂く事にしました。
うろ覚えな部分が多いため、アニメを見直しつつの執筆で少々時間がかかるかも知れませんが、気長に続きをお待ちくださいoyz


ep2.階級

―――実技試験当日、観客席

 

 遅れて現れた、図研番号110番遊城十代とアカデミアの教師クロノス・デ・メディチのデュエルは、受験生のデュエルを観戦に来ていた一部の在学生達も目にすることとなった。

 

髪の長い長身の男性と、隣にいる金髪の女性。この二人も例に漏れず、片や上級生、片や中等部からのエスカレーター組みである。

 

 

「今のデュエルをどう思う?」

 

 長身の男性、丸藤亮が金髪の女性、天上院明日香に問いかける。

 

「そうね…110番の子はよく頑張ったと思うわ。あのクロノス先生のライフを1000以下まで削ることが出来る生徒なんて、なかなか居ないもの」

 

「あぁ、確かにそうだ。だが今のデュエル、殆どクロノス教諭の手のひらの上だったと、俺は見る。」

 

 目を見開き驚く明日香に、亮は続ける。

 

「決め手になった《ダブル・サイクロン》だが、あれで破壊したクロノス教諭のカード。一瞬しか見えなかったが、あれは《死者蘇生》だった。並のデュエリストであれば、恐らく手札に温存するかバトル前に使用し…そして負けていただろう。」

 

「まさか。じゃあ、最初から110番の子があそこで逆転のカードを引くって分かっていたというの?」

 

「分からない。だが、墓地には攻撃力3000の《古代の機械竜》がいた、これを蘇生しなかったと言う事は…少なくとも《ハネクリボー》を出された後には予想して居たのだろう。」

 

「…噂以上ね。110番の子に、クロノス先生…ふふっ、楽しくなりそうね。」

 

 明日香の言葉に、亮はつぶやくような声で一言、「あぁ」とだけ返しその場を去った。

 

 

……………

…………

………

……

 

 

「…なんでスート?何故シニョール十代がオシリスレッドなノーネ!?」

 

 入学試験も終わり、既に合格者も決定した。そこまでは例年通り特に問題も無く終えたのだが―――

 

「受験番号110ですか。彼、実技試験の当日に、受付時刻ギリギリになってようやく来たそうではないですか。本来ならば既に試験は終わっている時間ですし、事前に試験の予定時刻は通知していたにも関わらずに。受付時刻を受験番号1桁台に合わせて長めに取っていたからこそ間に合ったわけですが、本来ならば受験すら出来なかったのですよ。」

 

 佐藤教諭をはじめとした数名の教師陣が、遊城十代君を予定していたラーイエローではなく、オシリスレッドにするべきだと主張し…それが通ろうとしているのだ。

 

 デュエルアカデミアでは、生徒は成績によって3種類の寮にそれぞれ振り分けられる。中等部からのエスカレーター組の中から成績優秀な者はオベリスクブルー。高等部入学試験を受験し合格した中から成績優秀な者をラーイエロー。成績に難のある生徒はオシリスレッドとなっている。

 

本来この階級制度は、より待遇の良い上位の寮を生徒が目指し、勉学に励むようにと設けられたものなのだが…今のアカデミアでは一部ブルー生によるレッド生差別視や、自身を持てないレッド生の退学、不真面目な授業態度等が度々問題に上がる程だ。私もこの問題には頭を悩ませているが、学校の方針である以上あまり出すぎたまねも出来ずにいる。せめてレッド生が向上心を持ってくれればよいのだが…。

 

「佐藤センセ、確カーニシニョール十代にも問題はあったと思いまスーノ。シカーシ、彼のデュエルの実力はかなりのものダート感じたノーネ。」

 

 これに関しては間違いない。少なくとも、実際に手合わせした自分はそう感じた。まだまだ荒削りではあるが、ラーイエローの中で切磋琢磨していけば、いずれはオベリスクブルーへの昇格も夢では無いだろう。

 

「そうですね、確かにデュエルの実力は高いのでしょう。それに関しては試験を担当したクロノス先生の言うとおりだと思います。しかし他の受験生は誰一人試験に遅れてなどいないというのに、110番は遅れたのですよ。何より、受験番号が示す通り、彼の筆記試験の点数はあまりにも低い。引きやプレイングだけがデュエルに必要なものでは無いと、クロノス先生貴方ならお分かりになるのでは無いですか?」

 

「ぐぬぬ、そうでスーノ。カードへの理解、知識、そしてルールの細部の把握ーは一流のデュエリストになるために必要なノーネ。」

 

 困ったことに否定できない…。実際、予定時刻に遅れたのは十代君だけなのだ。既に特別扱いともとれる対応をしている手前、余り強引にラーイエローへ推す訳にもいかない。それに、彼の筆記の点数が目も当てられない数字だったのは事実なのだ。こうなっては、彼自身に頑張ってもらう他ないだろう…教師として、一人だけ特別扱いと言う訳にもいかないのだ。

 

「分かりましターノ。彼はオシリスレッドヘーノ配属に決定でスーノ。」

 

……………

…………

………

……

 

 

 

 ――入学式当日。

 

(早く終わるノーネ早く終わるノーネ…!)

 

 鮫島校長の話が終わらない。長い、長すぎる…!!どうして校長の話というのはどこも長いのだろうか。もしそういう取り決めでもあるのだとしたら、是非辞めて貰いたい。立ちっぱなしになっている生徒もそうだが、教師陣の中にも辛そうな顔の先生がちらほらと見える。流石に水をさすべきかと考えていると、ようやく話が終わったらしく、満足そうな校長の姿が画面に消えた。

 隣の教師と「辛かったノーネ」と苦笑いしながら愚痴をこぼしあっていると、ふといつも騒がしいアイツが居ない事に気付く。恐らく退屈だからといって、その辺を飛び回っているのだろうが。

 

 私の相棒であるあいつ、”トム”に関しては未だに分からない事が多い。それはトム本人からしてもそうであるらしい。曰く「気が付いたらここにいた。自分が誰なのか分からない」とのこと、つまりは記憶喪失だったと言う訳だ。分かっているのは、存在しないカードや召喚方法、現在のものと若干違うルールと禁止・制限カードでデュエルをしていた事と…本人のデュエルの腕が並では無かった事位だろうか。彼のデュエルの腕に関しては、引きが良いというわけではなく、使うカードの幅が広く、未知の戦略を駆使し、デッキの構成に無駄が無いが故だと思っている。

 

 噂をすれば影というやつだろうか。あいつの事を考えながらブルー寮へ歩いていると、当の本人がふよふよと寄ってきた。

 

『なー、クロノスー。面白い話聞いたんだけど、聞く?聞く?』

 

(校長の話から逃げた裏切り者が何の用なノーネ!相棒なら苦楽を共にするべきでスーノ!!)

 

『あははは、ごめんごめん。だってあの校長だよ?毎年毎年ながーい挨拶に定評のあるあの校長だよ…?そりゃぁ逃げるさ』

 

 先ほど一人で逃げた事に対し不満を漏らす。長い付き合いなのだから、少し位付き合ってくれてもいいだろうに…まぁ、自分が同じ立場だったら逃げていたと思うが。

 

(で、面白い話とは何でスーノ?)

 

『そうそう!クロノスと試験でデュエルしたあの生徒…遊城十代君だっけ?彼、いろいろな所から注目を集めているみたいだね。今日見てきただけでもお高くとまったブルー生やイエローの筆記トップの…三沢君だったかな、他にもあの試験場に居た人の多くは彼に興味を持っているようだよ』

 

(何でスート?あのデュエルは、そこまで目立った内容では無かったと思うノーネ…)

 

『そりゃ、俺らからすればねぇ…3100のダメージ程度なら、普段8000でやってるから問題ないさ。けど生徒はどうかな?普段が4000で、しかも実技の責任者相手に。付け加えると、生徒間でクロノスの実力は高く評価されてるからね。それを残り900まで追い詰めたとなれば…』

 

 なるほど、つまり彼のデュエルの実力の実力は早くも周囲から認められつつあるという事か。昇格試験はまだ先の話だが、ラーイエローまでは思ったより早く上がれるかも知れない。それに、生徒たちが自分を評価くれているとは…少し照れくさい。

 

しかし、トムの言っていた「お高くとまったブルー生」というのが若干気になる。問題にならないよう気をつけておかなければ。―――よし、こういう時にこそこの能天気幽霊を活用しよう。

 

(トム、お願いがあルーノでスーガ。)

 

『どしたのクロノス?急に改まったりして』

 

(2、3日シニョール十代の様子を見ていて欲しいノーネ。もし、何か問題になりそうでしターラ報告して欲しいノーネ。)

 

『あぁ、成程ね。まぁ、確かに見過ごせないか…よし分かった。ただし、今度休み取れたら本土につれていけよな!』

 

(ぐっ、本土行きの便は地味に高いでスーノ…。ぐぬぬ、今回は仕方ないノーネ、契約成立でスーノ!トホホ…)

 

 よし、これでひとまず最悪の事態は回避できるだろう。対価として本土行きの約束をさせられたが、痛むのは私のサイフだけだ。決して、ただでさえ少ないお小遣いが更に減って悲しい訳では無い…。

 

 そのままトムと別れ、私が管理を任されているオベリスクブルーの男子寮へ戻る事にする。新入生歓迎会の準備がある上、寮監として一言挨拶もしなければならない。急ぎ支度をしなくては。

 

……………

…………

………

……

 

 

―――オベリスクブルー男子寮、歓迎会会場

 

「新入生諸君、オベリスクブルーへようこそなノーネ。ワターシは、男子寮の寮監を勤めるクロノス・デ・メディチでスーノ。」

 

歓迎会が始まる直前、寮監としてクロノスの話が始まった。オベリスクブルーともなれば、皆生え抜きのエリートである。歓迎会という場に浮き足立ち、騒ぐ生徒は居ないためクロノスの特徴的な声がよく通る。奇抜な見た目と口調のせいもあってか、生徒の視線はほぼ全て彼に注がれていた。

 

「みなさンーハ、若きデュエリストの中のエリートでスーノ。その自覚と、自信を持ってこれかラーノ学園生活をすごして欲しいノーネ。」

 

 それはブルー生にとっては当たり前だと思っている事でしかなかった。当たり前だ、自分達は他のイエローやレッドとは違うのだと。それが自信ではなく驕りでしか無いことには気付かないまま。

 

「オベリスクブルーの寮は、他の寮に比べて破格の待遇と言えるノーネ。そのカワーリ、皆さンーニ発生する責任がありまスーノ。それは、他の生徒の模範である事なノーネ。」

 

 ここで新入生達は疑問を覚えた。この先生は何を言いたいのだろうかと。クロノスはあくまで高等部の受け持ちであり、名前こそ中等部にも知られていたがその人物像や教育方針、具体的なデュエルの腕などは殆ど伝わっていない。それ故に、彼のいう言葉に皆戸惑いを覚えた。

 

「この中ニーハ、イエロー・レッド寮を見下している生徒も少なからず居ると思いまスーノ。それは仕方ない事だと思うノーネ。シカーシ、これからはその生徒たチーニ追われる立場になるノーネ。今までのように驕ったままデーハ、いずれ追い抜かれてしまウーノ。そうならない為ニーモ、今まで以上に勉学に励み、互いに切磋琢磨し合い健全なデュエリストを目指して欲しいノーネ。学園の生徒―ハ、皆友であり、ライバルなのですカーラ。」

 

 これで挨拶は終わったのか、一礼して下がるクロノスを無言で見送る生徒達。確かに、一部の生徒は他の寮を見下す傾向にある。だがそれは、今まで普通とされていた事であり、自信の表れ故でもあったのだ。それを「仕方ない」と認め、その上で学園の生徒全員が互いにライバルだと、平等であると言い切るクロノスの言葉は受け入れ難いものだった。

 

 もし、これを上級生が聞いていれば、納得する生徒も多かったであろう。何故なら学園には昇格試験というものがあり、実力さえ伴えばオシリスレッドからラーイエロー。ラーイエローからオベリスクブルーへの昇格が可能なのである。狭き門ではあるが、努力を怠らず、才があれば不可能では無いのだ。決して、今自分より実力が低いからと侮っていていいものでは無いのだ。

 

 だが、これに新入生が気付くのはまだ先の事であろう。気付くとすれば、誰かが昇格試験に合格した頃だろうか…。

 

 

―――クロノスの部屋

 

 ふぅ、疲れた…あのアウェー感は何度やっても慣れない。毎年同じような内容の挨拶をしているが、大抵「何を言っているんだコイツ」という顔をされるのだ。だが言わずには居られない。もし見下していた相手に追いつかれてしまったら、プライドの高い彼らはどう思うだろうか…恐らく、焦るだろう。こんなハズでは無いのだと。その焦りは彼ら自身を傷つけかねない。そうならない為に何か出来るのであればと、歓迎会にも関わらずあのような内容を話しているのだ。

 

 片付けを終え、部屋に戻れば時間はもう23時近かった。今日はもうお風呂に入って寝ようと思い、着替えの準備をしていると、廊下からだろうか…聞き慣れた声が私を呼ぶのが聞こえてきた。

 

『クロノス!クロノス!早速動きあったぞー!十代君に、「0時にアンティデュエルだー!」って果たし状染みた連絡が来た!!』

 

 ドアを蹴破る様な勢いで(幸い透け通るため音は出ない)部屋に飛び込んで来た相棒が、早口に捲くし立てる。

 

「少し落ち着くノーネ。場所は何処でスーノ?」

 

 興奮気味のトムを落ち着かせ、ようやく場所と首謀者を聞きだせた。十代君を呼び出したのはオベリスクブルーの1年で、万丈目準という生徒らしい。確か、中等部担当の同僚から聞いた覚えがある。万丈目財閥の三男らしく、その環境のせいかプライドが高く他者を見下す傾向にあると記憶している。

 

 話を聞き終えた後、教員用の端末を立ち上げる。深夜になると、警備員が校内を巡回しているのだが、その巡回ルートは教員用の端末からも確認することが出来るのだ。幸い、どこのデュエルリングを使用するのか分かっているため、さほど時間をかけずに大よその巡回時間を調べることが出来た。後は現地へ向かうだけだ、他の教師や警備員に見つかる前に止めなければ。

 

 

……………

…………

………

……

 

 

―――オベリスクブルー用デュエルリング

 

 

 デュエルリングに付いた頃には、もうデュエルは佳境に入っていた。その場に居たのは万丈目君と十代君。そして万丈目君の取り巻き2名と、丸藤翔君。…そして何故かオベリスクブルーの女子生徒、確か天上院明日香君だったはずだ。組み合わせに疑問を抱くも、巡回の時間までもう間もない。急ぎ割って入り中断を求めた。

 

「そこまでなノーネ!このデュエル、クロノス・デ・メディチが預かルーノ!」

 

 教師に目撃されたせいか、皆一様に驚き動けないで居る。

 

「もうすぐ警備員が巡回に来まスーノ!早く寮に帰るノーネ!!」

 

警備の巡回と聞いて、ようやく皆が動き出す。万丈目君は十代君に一言二言告げると、そのまま取り巻きと共に帰っていった。だが問題は残された十代君である。

 

「やだやだー!まだ終わってないー!!」

 

 どうも中断した事が不満らしく、意地でも動こうとしない。仕方が無いので丸藤君の力を借りて、なんとか施設の外まで引きずり出すことが出来た。元々運動の得意ではない私だけでは、恐らくこう上手く行かなかっただろう…筋肉を付けるべきだろうか?

 

 校内から出た後、落ち着いた十代君から話を聞く。どうやら最後のターンに逆転のカード《死者蘇生》を引いたらしい。《フレイム・ウィングマン》を蘇生していれば逆転できたとの事だが―――

 

「シニョール十代、それは出来なイーノ。カードのテキストを良く読んでみるノーネ」

 

「えっ?どれどれ………あっ―――」

 

ここに来てようやく気付いたらしい。そう、《死者蘇生》では逆転は出来なかったのだ。《フレイム・ウィングマン》のテキストには「融合召喚でしか特殊召喚出来ない」と書かれているためである。

 

『これは流石に不味いよねー、クロノス?』

 

 いかにも楽しそうに、トムが問いかけてくる。あぁ、勿論だ分かっているとも。

 

「シニョール十代には、良い物を上げるノーネ。」

 

「おっ、何だ先生?」

 

 「良い物」と聞いて、何も疑わずにキラキラとした笑顔を向けてくる十代君。この笑顔が絶望の表情に変わるであろう言葉を言う。

 

「自分のデッキのカード、それも切り札の効果を把握して無いとは何事でスーノ!罰としてデッキの効果モンスター・魔法・罠カードのテキストをノートに写して、明日の放課後までに提出するノーネ!!」

 

 一瞬の静寂、そして響き渡る絶叫。クスクスと笑う残りの二人にも、しっかり注意しておかなければ。

 

「二人も他人事じゃないノーネ!深夜に無断で出歩いた上、施設の無断利用。本来なら反省文を提出して貰う所でスーノ!!本日ーハ初日でスーシ?大目にみてあげまスーガ、次は無いノーネ!どうしても必要な時ーハ、先生に相談するノーネ。」

 

 しっかりと3人に釘を刺し、それぞれの寮にまで送り届けた頃には深夜の2時をまわっていた。あぁ、早く部屋に戻って寝よう―――

 

―――翌日、時間ギリギリまで起きられずに朝から大慌てする羽目になったのは内緒である。

 




お読みいただき、ありがとうございますoyz

今回は早くもデュエル無し回という事で。そもそも先生は十代君に比べればそこまで多く戦っている訳では無いですので…尚主人公(?)のトム君が空気なのは仕様です。他に見れる人の居ない現状、目立ちようが無いですよね(白目

2話目を書くに当たって、PCが不調のため何度かデータが消え…きちんと誤字脱字等のチェックができてない可能性があります。もしお気づきになられましたら、教えていただけると幸いです。

それでは、また次回で。
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