「千歳智くん、君、・・・男・・・なんだよね・・・」
すると、ズボン姿の生徒は大きな声でこう言ってきた。
「あぁ、僕の名は千歳智、できっとした男だ!!」
このズボン姿の生徒こと智は自分のことを男だと言い張っていた。
だが、花樹はその智に対して智の痛いところをついてきた。
「でも、体つきは女性そのものだけど、どうして?」
そう、智の体つきは女性そのものであった。シャツのところにはふくらみもあり体つきは女性そのものでだった。
ところが、それでも智は
「でも、自分は男なんだ!!僕が男といったら男なんだ!!」
と自分は男であると言い張っていた。
そんな智の姿を見て、花樹、
(智が男であると言い張っている。けど、体つきは女性そのもの・・・)
と考えていると突然、
(はっ、そういうことなのか・・・)
となにかわかったような気がしたのか智に対してあることを尋ねてみた。
「智、もしかして、LGBTの一つ、トランスジェンダーじゃないかな・・・」
トランスジェンダー、心の性と体の性が一致しない人のことを言う。これには、智、こう答える。
「あぁ、そうとも。僕は心の性が男で体の性が女のトランスジェンダー男子なんだ!!」
そう、智のはいわゆるトランスジェンダー男子であった。この男子の場合、心の性は男なのに体の性は女である。それを智は認めたのである。
と、ここにきて智は花樹に対しこんなことを言ってしまう。
「もしかして、花樹先生もほかの先生たちや僕の両親と同様に「女らしくしろ!!」って言ってくるんじゃないか?」
これには、花樹、
「それは言わないぞ!!」
と反論するも、智、そんな花樹に対し、
「いや、ほかの先生たちや僕の両親と同じように僕に対し女らしさを強要してくるはずだ!!」
と怒りを震わせながら叫んだ。
すると、花樹、そんな智に対し、
(う~ん、こうなったら仕方がない。ここは強硬手段をとることにしよう)
と思ったのか、智に対し、
「ちょっと荒々しいけど笑って許してくれ」
と言っては智に近づいていく。すると、智、
「よ、よるな!!」
と花樹から逃げようとするもすぐに、
ドカッ
と壁にぶつかってしまった。これでは智は花樹から逃げることができない。これには、智、
「ち、近寄るな・・・」
と手をバタバタ広げながら花樹を近づかせないようにする。
ところが、花樹、智と違い、大の大人、ということでそれすら、
バタバタ
と振り払ってしまう。しまいには、花樹、
ドカッ
と自分の手を壁に寄りかかるように置くとまるで壁ドンのような体勢に・・・。さらに・・・、
(う~、とても顔が近い・・・)
と智が思うくらい花樹は自分の顔を智の顔に近づけては智に対し、
「智、捕まえた!!」
とまるで智を威嚇するかのように言う。これには、智、なにか覚悟を決めたのか、
「僕も男だ!!煮るなり焼くなりどうにもしろ!!」
と言っては花樹に身をゆだねてしまった・・・。
すると、花樹、智に対しあんなことやこんなことを・・・せずに、ただ、
ぱちっ
と智の額にデコピンをするだけだった。これには、智、
「えっ、これってどういうことなのですか?」
と花樹に言うと花樹はそんな智に対しこう言い放った。
「別に智が悪いことをしたわけでもないし、むしろ、俺が怒る必要があるわけじゃない」
これには、智、
「ほっ」
と胸をなでおろすと花樹はこう話してくれた。
「言っておくけど、俺の一人称は「俺」だし、俺は他人に平気で男言葉を使ってしまうからな。そう考えると智が男言葉を使ってもおかしくない!!」
これには、智、
「たしかに、ほかの先生たちとは違って花樹先生は男言葉を使う変な先生ということでみんなから認めてもらっていますしね」
と言ってしまうと、花樹、またもや智の額に、
ぱちっ
とデコピンをぶちかます。これには、智、
「花樹先生、ちょっと痛いじゃないですか」
と怒りながら言うと、花樹、そんな智に対して、
「智、一言言い過ぎ!!」
と笑いながら答えてくれた。
そして、花樹はまたもや真剣な表情になって智にあることを尋ねてみた。
「智、どうしてほかの先生たちや智の両親に対して反抗的な行動をとるのか教えてくれないか?」
すると、智、花樹に対してこんな要求をしてきた。
「花樹先生、ちょっとこの体勢じゃ言いたいことも言えないじゃないですか」
そう、今の花樹と智の体勢は花樹が智を壁ドンしているような体勢なのだ。なので、智からすればちょっと言いにくいものであった。そのため、花樹、
「あっ、すまない」
と言っては壁ドンを解除する。これには、智、
「ほっ」
とまたもや胸をなでおろした。
そして、智は花樹の前に立つと、
(花樹先生なら話しても大丈夫だろうな)
と花樹のことを信頼しているのか、花樹に対し、
「それじゃ、その理由をお話します」
と言っては花樹の前で自分のことを・・・、自分の生い立ちについて語り始めた。
(智)
僕は千歳智、聖女で高2をしている。女性の体つきをしているが僕は小さいときから自分は男であると認識していた。ところが、自分の親はそれを許さなかった。自分は男であるということをいくら行っても自分の親からは、
「お前は女なんだ。女らしくしろ!!」
と言われ続けていた。だから、ズボンをはきたいのにスカートをはかせ続けていた。これには、僕、苦痛でしかなかった・・・。
「でも、なんで、智の両親は「女らしくしろ!!」って言っているわけ?」(花樹)
「僕の父親は自衛官であり昔気質なところがあるんだ。だから、僕の父親は典型的な亭主関白であり、すべてにおいて「自分はこうあるべきだ」と自分の考えを強引に押し付けてくるんだ。それに、「男はこうあるべき、女はこうあるべき」と、男らしさ、女らしさ、を強要してくるんだ。だから、僕がいくら男であると言ってもそれをとりあわずにただ僕の体つきが女だからといった理由で「女らしさ」を強要してくるんだ」(智)
「たしかに男であると認識している智からすればそれを苦痛に感じるのも無理じゃないな・・・」(花樹)
この花樹の言葉は花樹にとってみても意味のあるものだった。というのも・・・、
(自分も高3のときに自分の父親から「男言葉を使うな」と言われていたからな・・・)(花樹)
そう、花樹は智と同じように小さいときから自分の父親から「男言葉を使うな」「「俺」なんて言うな」と強要されていたのだ。ただ、このときは花樹のおばあちゃんなどがとがめてくれたからよかった。だが、花樹が高校進学のときに花樹のおばあちゃんが亡くなってからは自分の父親から「男言葉を使うな」「「俺」なんて言うな」などと花樹の人格そのものを否定するようなことを強要され、花樹が高1になったときには花樹はそれに対してかなり苦痛・・・というか自分そのものを押し殺さざるをえなかったのである。ただ、それは高1の冬のときに起きた函館を揺るがす騒動の結果、花樹の父親は逮捕されることとなり、花樹はその苦痛から解放されたのである。なので、花樹からしても智の苦痛は共感できるものだったのである。
そんな花樹を見たのか、智、話の続きを語った。
(智)
そんな親に対して僕はいつも反抗していました。たとえスカートをはいたとしても下にはいつもジャージをはいていた具合にです。ですが、そんな反抗を面白く思わなかった僕の父親は暴挙にでます。僕の父親は僕を強引に小中高を女子校に通わせたのです。いつも制服はスカートでした。それに、先生たちからは僕に対し「女らしくしろ!!」と言い続けたのです。女子校ですから少しでも僕が男っぽいことをすれば先生たちからは、
「そんなことをせずに女らしいことをしろ!!」
と女らしさを強要してくる始末。そんなのされたら、僕、とても苦鬱でしかありません。だから、僕はそんな先生たちに対して反抗的な態度を捕ることにしたのです。
これには、花樹、
「もしかして、智が言っていた小中高って「女らしさ」を強要していたわけ?」
と智に尋ねると智も、
「はい、まわりのみんなは僕のことを男としてみてくれていたのですが、その学校は「女らしさ」をかなり強要していたので先生たちもその考えにのっとり、僕に対して「女らしさ」をかなり強要していたのです」
と答えた。これには、花樹、
「でも、ここ(聖女)は違うはずじゃ・・・」
と言うと智はきっぱりとこう答えた。
「今はLGBTの考えが浸透しているおかげで小中のときほど厳しくありませんがそれでも僕に対して「女らしさ」を強要してくる先生はいます。なので、僕はそんな先生に対して反抗的な態度をとることにしています」
これには、花樹、
(それぐらい智からすればここ(聖女)にいるだけで苦痛を感じているのか)
と智に同情してしまう。両親のせいで嫌々ながら、女子校、それも、「女らしさ」、を強要してくるところに押し込まれること自体トランスジェンダー男子である智からすればかなりの苦痛だと思えたのである。それもこれも同じような父親をもっていた花樹だからこそいえた(ただし、花樹としては、高校のときは、聖女の学生でいたときは理亜など自分のことをよく知っている人たちがいたため、そんなに苦痛ではなかったが、それでも「男言葉を使うな」とかよく先生たちから言われていたこともあり、花樹としてもそれは苦痛だったのかもしれなかった・・・)
そして、智はこんなことを言い出して自分の話を終えた。
(智)
でも、そんな僕に対してまわりの友達は、
「そんなこと気にしなくてもいいよ」
とか言ってくれたりしてくれて、ありのままの僕を受け入れてくれました。それが僕にとって癒しになっております。それどころか、制服のスカートが嫌な僕に対して聖女の制服に似たようなズボンを買ってきてプレゼントしてくれたときは、僕、とても嬉しかったです。それくらい、僕は友達に恵まれております。それでも僕のことなんて考えもせずに「女らしさ」を今日してくる僕の両親と先生たちにはうんざりしています。だからこそ、僕はそんな大人たちに対して反抗しているのです。
その言葉を聞いた瞬間、花樹はそんな智に対してこんな感情を抱いていた。
(智は友達には恵まれているけど親のせいで先生たちから「女らしさ」を強要されるくらい苦痛を浴びせられている。それって俺からみても悲しいと思える。なら、この俺が智のことを・・・)
その感情のままに花樹は智に対して、
よしよし
と頭を撫でた。これには、智、
「花樹先生、いったいなにを・・・」
と唖然となると花樹に対してこう告げた。
「智、そんな苦痛のなか、頑張ってきてえらい!!俺はそんな智のことを認めてやる!!」
これには、智、
「そ、それって・・・」
と花樹に聞き返すと花樹は智に対してこう熱く言った。
「それは簡単に言えば俺は智のことを男として認めているってことだぞ!!」
そう、花樹は智のことを1人の男として認めてくれたのである。これまで智が会っていた聖女の先生たちは智のことを男として認めていなかった。そんな先生たちのなかで花樹だけが違っていた。花樹は智のことを男として認めてくれたのである。それは花樹は智の見方であることを示していたのである。
そのためか、智、花樹に対して、
「女らしさを強要してくる先生たち、だけど、ようやく、僕のことをわかってくれる先生が見つかった・・・。僕としてはとても嬉しいことだよ・・・」
と泣きながらそう答えてくれた。智からすれば大きな一歩だった。これまで、智からすれば先生たちは敵といっても差し支えなかった。だが、そんななかで花樹という仲間を得たのである。それは智からすればとても嬉しいことだったのである。
こうして、智は花樹という嬉しい仲間を得たのである。一方、花樹はこんなことを考えていた。
(でも、智はやっぱり友達に恵まれている。だって、智の友達から「そんな智のことを男として認めてください」なんて言われているのだからな・・・)
そう、花樹は最初から智のことを男として認めていたのである。というのも、花樹を見て智が智の友達のところから去ったあと、花樹は智の友達に対して、
「ところで、君たち、あの子(智)のことで聞きたいことがあるのだけど・・・」
と智のことを尋ねていたのである。そこで智の友達から智は自分のことを男だと認識していること、それでも大人たちから「女らしさ」を強要されていることを聞かされていたのである。そして、最後に智の友達からこんなことを言われたのである。
「花樹先生、智のことを男だと思って接してください。かっこいい先生である花樹先生ならきっと智の立派な理解者になってくれるはずです!!」
その智の友達の言葉には、花樹、
(それだけ智は友達のみんなから慕われているんだな。そんなことを言われたら、俺、そう思うしかないだろうが・・・)
と智のことを男として認めざるを得なかったのである。それくらい智のことをその友達たちは、人として、そして、男として認めていただけでなく、「女らしさ」を強要してくる先生たちのなかでも智を男として認めてくれ先生がいてほしい、と願っていたのである。それに花樹はその願いを成就させた、というわけである。
とはいえ、智は花樹にとって男として認められたのであった・・・。