と、そうこうしているうちについに乃亜たち聖女スクールアイドル部のステージの時間となった。お祭りのスタッフに呼ばれたのか次々にお祭りのステージに上がる乃亜たち。だが、その乃亜たちの今の姿は今さっきのものとは違っていた。その姿を見て、鶴見、はっとする。
(えっ、なんで、相手3人とも、なんで、笑っているんだ!!)
そう、乃亜たち3人とも笑っていたのである。まぁ、智だけは少し顔が引きずっていたのだが、それでも乃亜たち3人とも笑っていた。でも、たしか、今さっきまで、特等席から部員の1人が逃げ出したときは、乃亜たち3人、乃亜を除いてとても幻滅的な表情をしていた。だが、今は違った。なにか一皮むけた、そんな感じだった。その乃亜たちの今の姿は鶴見たちにとってとても異質なものにみえてしまった。だって・・・、
(私たちの完璧なパフォーマンスを見て幻滅していたのに今になって笑っているなんて、あいつら、おかしすぎる!!)(鶴見)
(今までだったら私たちの完璧なパフォーマンスを見て幻滅した相手は笑うことなんてできずに自滅していった。なのに、あいつら、なんか違う。笑っている!!なんでだ!!)(かほ)
(完璧じゃない者、笑っている・・・。なんで・・・、なんで・・・。理解不能・・・、理解不能・・・)(美月)
そう、これまでだったら圧倒的で完璧な鶴見たちPWのパフォーマンスを見て相手方はあまりの実力差に幻滅し自滅するのがオチだった。だが、今の相手である乃亜たちは違った。乃亜たちは笑っているのである。これまでの相手とは違ったのである。そのため、鶴見たちは乃亜たちの今の姿を異質であると思ったのである。むろん、これにはさすがの悪鬼でさえも、
(鶴見たちPWのパフォーマンスは完璧だった。それなのに笑っているなんておかしすぎるだろ!!あいつらになにかあったに違いない!!でも、そうであったとしても笑っているなんて・・・。どうしてだ??)
と困惑していた。
だが、鶴見、悪鬼、ともにこの状況に対してすぐにこう考えるようにした。
(いや、これは単なる愛想笑いのはず!!本当はかなり傷ついているはず!!そうに違いない!!)(鶴見)
(俺にはわかっている、あれはたんなる愛想笑いだ!!そうでもしないと、あいつら、自我が保てないはず!!それくらい相手は傷ついているはずだ!!)(悪鬼)
そう、乃亜たちの笑い顔をたんなる愛想笑いだと思ったのである。そのためか、鶴見たちPWは相手である乃亜たちに対してヤジを飛ばす。
「さっさと無様な格好をみせろ!!」(鶴見)
「まぁ、負けてとぼとぼと変えるのがオチだね」(かほ)
「完璧じゃないもの、みせて、終わる。それって最悪な結末・・・」(美月)
ただ、それでも乃亜たちは動じなかった。これには、かほ、
(おいおい、これで動じないとはいったいどうして・・・)
と少し困惑するもすぐに、
(でも、私たちのパフォーマンスは完璧だったはず。これで勝てるはずだ!!「勝利こそすべて」、なんだ!!)
と自分を鼓舞していた。むろん、美月も、
(理解不能・・・。でも、私たちは完璧なはず。完璧だからこそ大丈夫。絶対・・・)
と自我を保とうとしていた。
こうして、少し困惑しながらも自分たちのパフォーマンスは完璧だからこそ勝てる、そう思っていた鶴見たちと悪鬼をよそについに乃亜たちのステージが始まった。
だが、鶴見たちPWと悪鬼のあては外れた。鶴見たちPWと悪鬼は、当初、乃亜たち3人の笑い顔はただの見せかけだと思っていた。でも、それはまったく違った。なのと、乃亜たち3人、曲が進むにつれてさらに笑顔に、満面のほほえみになっていったのである。それはまるで乃亜たち3人の思いが1つになったかのように・・・。そのためか、当初は楽観視していた鶴見たちも焦りを感じたのか、いや、
(うそだろ!!あいつらは私たちの完璧なパフォーマンスを見て絶望していたはず!!それなのに、なんで、楽しく、それもノーミスでパフォーマンスしているんだよ!!)(鶴見)
(えっ、なんでノーミスなんだ・・・。たしか、「勝利こそすべて」だったはず・・・。それなのに、なんで、楽しく、それでいてノーミスなんだ!!意味わからん!!)(かほ)
(たどたどしいけどノーミス・・・。完璧とは程遠いけど、それでいてノーミス・・・。理解不能、理解不能・・・)(美月)
鶴見たち3人はさらに困惑していた。乃亜たち3人とも笑っているだけではなかった。初めてなのか、それくらいたどたどしいパフォーマンスを乃亜たちはしていた。だが、それでもノーミスだった。今さっきまでいくら練習しても必ずぶつかっていた。それなのに、今の乃亜たちのステージ、ぶつかることなくノーミスであった。なので、鶴見たち、なんでそのようなことが起きるなんて不思議で仕方がなかったのである。それくらい、鶴見たちは困惑していたのである。
だが、それだけではなかった。乃亜たちのパフォーマンスを見てか、鶴見たちのまわりにいる観客たちから、
「聖女スクールアイドル部、頑張れ!!」
「もっと頑張って!!」
という乃亜たちに向けての応援が徐々に大きくなっていったのである。それはまるで乃亜たちへの応援の輪がどんどん広がっていく、そんな感じだった。これにはさすがの鶴見も、
(これっていったいどういうことなんだ!!この状況を誰か教えてくれ!!)
とさらにさらに困惑していた。
むろん、この今の状況にさすがの悪鬼も困惑していた。
(なぜだ!!絶望するはずの聖女スクールアイドル部が生き生きとパフォーマンスをしている。それにつれて会場中が盛り上がっている!!このままだと俺の復讐が・・・)
本当なら鶴見たちPWの圧倒的で完璧なパフォーマンスでもって乃亜たち聖女スクールアイドル部を幻滅させるとともに今さっきの作戦と合わせることで鶴見たちPWと乃亜たちとの実力差を観客たちにみせつけては聖女スクールアイドル部はダメになったというイメージを植え付けさせることで悪鬼の復讐計画は完遂されるはずだった。ところが、実際にはそれとはまったく逆の状況になってしまった。乃亜たちはPWのパフォーマンスを見て幻滅するどころかたどたどしいもの笑顔で生き生きとノーミスでパフォーマンスをしている、それを受けてか観客たちも次第に乃亜たちを応援するようになっていたたのである。これでは自分の復讐がおじゃんになってしまう、そのために悪鬼は困惑してしまったのである。
だが、かほだけは違った。冷静にこの状況になった理由を分析していた。その理由とは・・・。
(くそっ!!この状況は悪鬼様が起こしたものだ!!悪鬼様があの映像を流したことであいつら(聖女スクールアイドル部)を応援するような流れを作り出してしまったんだ!!)(かほ)
そう、これは悪鬼の作戦が裏目に出てしまったのが原因だった。というのも、たしかに鶴見たちPWは圧倒的かつ完璧なパフォーマンスをしてくれた。これにより当初は乃亜たちは絶望して逃げてしまっただけでなく観客たちもその鶴見たちのパフォーマンスに圧倒されていた。このままだったら鶴見たちPWの圧倒的な勝利は間違いなかったかもしれない。ところが、乃亜たちは違った。ステージに戻ってきた乃亜たちは絶望していたとは思えないくらいの笑顔でパフォーマンスをした。それくらい乃亜たちの立ち直りがすごく早かったのである。それに加えて、悪鬼は乃亜たちの失態をみせるために先ほどの映像を、いくら練習しても一度も合わせることができない、そんな乃亜たちのだらしない姿を観客たちにみせたのである。これにより観客たちは乃亜たちがスクールアイドルとしてはまだまだひよっこであることを知ることとなった。いや、車椅子の乃亜という少しイレギュラーな存在が聖女スクールアイドル部にいる、そればかりか、そんなイレギュラーな存在がいるなかであっても一生懸命頑張って練習している(ようにみえた)乃亜たちの姿を見て観客たちは乃亜たちに同情するようになったのである。むろん、それはその映像を見て唖然となった観客たちにもいえた。唖然となったとはいえ、その観客たち自体、こころのなかでは乃亜たちに同情していたのである。ただ、それが顔の表情に現れなかった・・・ただそれだけだったのである。そんな乃亜たちに同情的な多くの観客たちがいるなか、その場から逃げてしまった乃亜たちは笑顔でステージに帰ってきてはその笑顔のまま、いや、満面のほほえみでもってたどたどしくもノーミスでパフォーマンスをしている姿に観客たちは感動し声援を送るようになったのである。これこそ俗にいう、判官贔屓、なのかもしれない。そのことが、今、ここで、起きていたのである。
だが、かほはこう思った。
(でも、この対バンを採点してくれるのはプロの審査員のはず。ならば、今回の勝利は私たちPWのはず・・・)
そう、今回の対決をジャッジしてくれるのはプロの審査員である。なので、観客たちみたいに情に流されることはない。だって、鶴見たちPWは完璧なパフォーマンスをしている、対して、乃亜たち聖女スクールアイドル部はたどたどしいパフォーマンスをしている、ならば勝つのは鶴見たちPWのはず、そうかほは考えたのである。なので、かほは今回も自分たちの圧勝であるとふんでいた。
こうして、かほは少しばかりの強がりをもって自分を保とうとしていた・・・。