その後、乃亜たちのステージが終わった。その瞬間、観客たちは、
「とても感動した~」「うぅ、嬉しいなぁ」
「なんか青春だね~、アオハルだね~」
とか、
「これが初めてなんて・・・」「よくやったな!!」
と感動に満ちた声援を乃亜たちに送っていた。いや、それどころか、ノーミスで最後まで合わせることができた、そんなパフォーマンスすることができた、やり切ることができた、そのことに対して感動していた乃亜たちの喜びの声に観客たちは感動を覚え大きな拍手をしたのである。それはまるで会場中が乃亜たちの味方であるかのようなものだった。
だが、対バンの勝敗の行方は非情に残酷なものとなった。プロの審査員がジャッジをした、ということもあり、情に流されることなく、かほの予想通り、
「今回の勝者は・・・、国立勝どき学園PW!!」
と鶴見たちPWの勝利となった。
ただ、それでも観客たちは対バンの結果に納得していなかった。鶴見たち、PWの勝利に納得していないのか、対バンのジャッジをした審査員に対して、
「ブーブー」「そんなのおかしいだろうが!!」
と文句が出てしまった。観客たちからみたら会場を沸かせたのは鶴見たちPWではなく乃亜たち聖女スクールアイドル部だと誰もが思っていた。それなのに勝者が鶴見たちPWである、というのは誰もが納得してなかったのである。
そんな観客たちの姿に鶴見は絶句してはこう言ってしまった。
「私たちは勝ったんだ!!勝った・・・はずなのに、なんだ、この状況は!!」
このとき、鶴見はこう思っていた。
(私たちは勝った、なのに勝った気持ちがしない・・・。どうして・・・。どうしてこうなったんだ!!)
たしかに鶴見たちPWは乃亜たちに勝った、それはこれまで行われた鶴見たちPWがやってきたすべての対決と同じ結果であった。今回も鶴見たちPWはこれまでのすべての対決と同じように圧倒的な実力差で勝利した。それまではこれまでと一緒だった。だが、それ以降はまったく違っていた。いつもなら鶴見たちPWの圧倒的な勝利によって相手のスクールアイドルグループのメンバー、いや、数多くのスクールアイドルたちが幻滅しスクールアイドルを辞めてしまった。だが、今回は違った。今回は観客の多くが乃亜たちの味方になった。いや、それどころか、乃亜たちはたどたどしくもノーミスでパフォーマンスをしただけでなく笑顔でこの対決、いや、戦いを乗り切ったのである。そう考えると乃亜たちは鶴見たちPWとの圧倒的な実力差を前に幻滅するどころか、今回、ノーミスでやり切ったことで自信を高めたのかもしれない。なので、いつもとは違う光景、それを見てしまった鶴見は逆にそれに困惑し、結果、絶句するしかなかったのである。
むろん、それはかほでもいえることだった。かほは、このとき、こう思っていた。
(私たちは完璧に勝ったはず・・・。私たちは勝ったはず・・・。でも、どうして、相手は幻滅していないんだ・・・。「勝利こそすべて」、のはず・・・。なのに、この虚しさはなんなんだ・・・)
かほはいつも「勝利こそすべて」だと考えていた。そして、今回もその考えのもとで勝利した。だが、それでも対バン相手である乃亜たちは倒れなかった、幻滅しなかった。圧倒的な勝利、なのに、会場中、自分たちの勝利に喜ぶ者、その結果に唖然になる者がいなかった。逆に会場にいる観客たちの多くが対バン相手である乃亜たち聖女スクールアイドル部の味方をした、これだと、「勝利こそすべて」、という考えに則することにならない、そんなジレンマによってかほは困惑していたのである。また、美月も、
(完璧なパフォーマンスをした、対して、相手はつたないパフォーマンス。それなのに、観客たち、相手の味方をした。誰も、私たちのパフォーマンス、口に、話題に、しなかった・・・。理解不能・・・、理解不能・・・)
といまだに理解不能に陥っていた。そんとため、かほ、美月、ともに、
「勝ったはずだ!!私たちは勝ったんだ!!そのどこが悪いんだ!!」(かほ)
「今回も完璧・・・。でも、なんで・・・、誰も・・・、そのことを・・・、口にしない・・・」(美月)
と困惑するどころかかなりのショックを受けていた。
そして、悪鬼もこんな鶴見たちの状況をみてこう思ってしまった。
(くそ~、俺の復讐計画は完璧だったはず!!鶴見たちPWのパフォーマンスは圧倒的かつ完璧だった!!そして、それをその勝利を揺るがないものにするためにあの映像をみせる作戦を行った。でも、今回は俺の予想に反するものだった。(乃亜たち)聖女スクールアイドル部は幻滅するどころか復活してしまい会場中を沸かせるようなパフォーマンスをしてしまった。それにつられて観客たちも聖女スクールアイドル部の味方になってしまった。これじゃ「試合に勝って勝負に負けた」ことになってしまう・・・)
そう、今回の悪鬼たちの戦いは「試合に勝って勝負に負けた」ようなものだった。たしかに鶴見たちPWのパフォーマンスは圧倒的かつ完璧であった。そのため、乃亜たち聖女スクールアイドル部との対決は勝つことができた。だが、一度は鶴見たちPWの圧倒的かつ完璧なパフォーマンスを見て乃亜たちは幻滅したもののなぜかすぐに復活、それどころか、その復活した乃亜たちはたどたどしくもノーミスで笑顔でもってパフォーマンスをした。さらに、その乃亜たちのパフォーマンスを見た観客たちの多くがそれに感動し乃亜たちの味方になったである。いや、この対決の結果に観客たちは文句をいってきたのである。それはまるで鶴見たちPWが勝負に負けたともいえた。そう考えると、今回の悪鬼の復讐計画は頓挫したといっても過言ではなかった。
だが、それ以上に深刻な状況に陥った者たちがいた。それは鶴見たちPWであった。今回の結果にかなりのショックを鶴見たちPWは受けてしまったのである。そのためか、鶴見たち3人とも憔悴しきっていたのである。これには、悪鬼、
(とはいえ、このままじゃ、逆に鶴見たちPWがダメになってしまいます。ここは仕方がありません。ならば・・・)
と思ったのか、乃亜たち聖女スクールアイドル部に対して、
「このままじゃ鶴見たちが危ないですね・・・。ここは早く引き上げることにしましょう・・・」
と言っては鶴見たちPWを回収、そのまま撤収してしまった。
こうして、悪鬼の復讐計画は失敗に終わることになっただけでなく肝心の鶴見たちPWの心に大きな衝撃を与えることになったのである。
それから数日後・・・、
「勝利したはず・・・。なのに、なぜ、こんなに虚しいんだ・・・」
と部室にいたかほは虚無感に襲われていた。たしかに聖女スクールアイドル部の対決に勝利した、勝利したはずだった。だが、実際には勝利したという実感がなかったのだ。これまではいつも、完全勝利、圧勝、だった。でも、今回はそれすら感じられなかった。それは「勝利こそすべて」の名のもと、これまでやってきたかほにとっては虚しいものになってしまった。それくらい、かほにとって今回の対決はショックのほうが大きかったのである。まぁ、今回の対決はかほたちPWにとって「試合に勝って勝負に負けた」といえるのであるが、これまで圧勝続きであったかほにとってそれ自体初めての経験であることもかほがこうなってしまった理由の一つであることは、このとき、かほにとって知る由もなかった・・・。
そんななか、部室にある男が入ってきた、こう言いながら・・・。
「かほ、そこまで悲しくなるな!!今回の戦いは最終的に勝ったのだからそこまで気にすることはない!!」
これには、かほ、
「悪鬼様・・・、気にしてくれてありがとうございます・・・」
と、その男こと悪鬼にお礼を言う。そう、部室に入ってきたのは悪鬼だった。このとき、悪鬼はこう考えていた。
(たしかに憎き相手である聖女スクールアイドル部に絶望を味合わせることはできなかった。俺の復讐は失敗した。だが、聖女スクールアイドル部との戦いには勝った。だからこそ胸を張ればいい。あのときはまぐれだったんだ!!今度こそ圧勝してあいつらに、聖女スクールアイドル部に絶望を味合わせてやる!!)
そう、悪鬼は次に向けて進もうとしていた。たしかに復讐の相手である聖女スクールアイドル部に絶望を味合わせることはできなかった、だが、それはたんなるまぐれである、実際、戦いには勝った、だからこそ、次回、聖女スクールアイドル部に圧勝して復讐すればいい、そう悪鬼は考えたのである。
だが、かほは違った。かほは悪鬼に対してこう反論する。
「悪鬼様、私は納得できません。私たちは「勝利こそすべて」の信条のもと、これまでの戦いすべてにおいて圧勝してきました。ですが、今回は戦いそのものには勝利しましたがそれすら実感できていないのです。いくら圧倒的な力をみせつけても相手が、幻滅、絶望、しなかった、そう考えると虚しくなってしまいます。そんなの、嫌です!!」
ところが、悪鬼、そんなかほに対してこう言ってしまう。
「いいか、最終的に勝てばいいのだ!!今回の戦いに勝った、ただそれだけでいいんだ!!「勝利こそすべて」、どんな手を使ってでも勝利すればそれでいいんだ!!」
たしかに悪鬼の論理からすればそうかもしれない。「勝利こそすべて」、それは悪鬼に言わせればどんな手でも使ってでも最終的に勝利すればいいのである。つまり、結果的に勝利すればそれでいいのである、悪鬼から言わせれば・・・。
ただ、それでもかほは悪鬼に食い下がった。
「でも、「勝利こそすべて」の信条でやった結果、たしかに戦いには勝利したかもしれませんがあまりにもその実感が・・・」
と、ここで、鶴見、こう言いながらかほと悪鬼のあいだに入ってきた。
「かほ、悪鬼様が言う通り、戦いに勝利したのだからあまり追及しないで。かほがそう感じたのはたんなる気の迷い。だからこそ、かほ、そう考えなくても大丈夫!!」
で、このときの鶴見はこう考えていた。
(たしかに今回は勝った気がしなかった。だけど、悪鬼様の言う通り、この感じはたんなる気の迷いなんだ!!それに、悪鬼様の言う通り、最後に勝てばいいんだ!!)
鶴見は悪鬼のイエスマンである。いや、鶴見は悪鬼に心酔していた。なので、悪鬼の言う通り、最後に勝てばいいのである、結果こそすべてである、なので、今回のこの感じはたんなる気の迷いである、そう鶴見は考えたのである。
ただ、それでもかほは納得してなかった。いや、むしろ・・・、
(でも、なんでこんなに虚しいんだ。たしかに戦いには勝った。でも、相手は絶望しなかった。なぜか、あっ、もしかすると、観客たちが相手を応援するようになったからかもしれない。だからこそ、私たちが圧勝しても相手は絶望しなかったんだ。それがこの虚しさの原因では・・・)
と考えるようになってしまった。かほは思うに自分たちが勝利したのに相手は絶望しなかった、それは観客たちが対バン相ちを応援したからだ、だからこそ、相手(乃亜たち)は絶望しなかった、それこそ自分のなかにある虚しい思いの原因ではないかと・・・。
そして、かほはその相手が絶望しなかった原因を考えた。するとあることを思い出した。
(そうなると、やっぱり悪鬼様の作戦によってそうなってしまったのが原因かも。だって、悪鬼様、私たちPWのステージのあとに相手の現状を示す映像を流したことで観客たちは相手に同情するようになってしまった。それによって観客たちは相手を応援するようになってしまったのだから・・・)
かほが思うに、あのとき、かほが思っていた通り、悪鬼のあの作戦、悪鬼が流したあの映像、それこそが観客たちが相手である乃亜たちを応援するようになったそもそもの原因になったのではと・・・。
そして、その考えのもと、かほは悪鬼に抗議した。
「悪鬼様、あなたが私たちPWのステージのあとであの映像を流したことが私を虚しくした直接の原因ではないのでしょうか」
すると、悪鬼、かほに対して激しく怒った。
「そんなの関係ない!!お前たちは勝った、今回はそれでいいはずだ!!」
むろん、尊敬している悪鬼に反抗した、ということで、悪鬼のイエスマンである鶴見からもかほに猛抗議した。
「かほ、いい加減にしなさい!!悪鬼様の言う通り、今回は私たちが勝利した、それこそが重要なの!!今ある気の迷いなんていつかは消えてなくなるはず!!「修理こそすべて」の名のもと、これまで通りに私たちはやっていけばいいわけ!!そのことをしっかりと自分の身に刻み込みなさい!!」
これにはさすがのかほも、
「・・・」
と黙るしかなかった・・・。
だが、かほとしてはあまりに納得していない様子。だって・・・、
(結果的に勝利したけどそれによって虚しすぎるのは嫌だ!!なんで鶴見は悪鬼様の肩を持つわけ?う~、納得できないよ~)
そうかほは思っていたから。それくらい今回のことはかほにとって遺恨を残すことになった。
一方、美月はというと・・・、
(・・・)
とずっと黙ったままだった。いや、それどころか、
(完璧・・・、完璧・・・じゃなかった相手・・・。でも・・・、完璧な・・・、私たちより・・・、観客からは・・・、そちらを・・・、選んだ・・・。なぜ・・・、なぜ・・・)
と自問自答を繰り返していた。それくらい、美月にとっても今回の戦いは困惑めいたものだったのである。
こうして、鶴見たちPWの今回の戦いは「試合に勝って勝負に負けた」ことになってしまったばかりか悪鬼も憎き敵である聖女スクールアイドル部に絶望を味合わせるという復讐計画が失敗に終わる結果になってしまった。果たして悪鬼と鶴見たちPWはこのあとどうなるのだろうか。そして、美月とかほは立ち直ることができるのだろうか。それについては次回のお楽しみである・・・。
おまけ
(勝利したんだ、そのはずだ。だからこそ、次回も絶対に完全勝利して相手を絶望させてやる!!)
と悪鬼は乃亜たち聖女スクールアイドル部の戦いに勝利したことを自分に言い聞かせていた。
その悪鬼であるが次のことも考えていた。
(さて、次の対戦相手だが、少しでも強敵を潰していきたい。ならば・・・)
すると、悪鬼は日本地図を出してはある地域のところを見てこう考えてしまった。
(たしか、この地域はアイドルが多い地域・・・。それに、レベルも高い。ならば、その地域のアイドルを重点的に潰していかけば鶴見たちPWの敵も減る!!)
そして、ついに悪鬼はあることを決めた。
(よし、この地域に遠征してそこにいるスクールアイドルグループを次々と潰していくことにしよう。その地域の名は・・・、福岡、だ!!)
つづく・・・