部活プレゼンから1週間後・・・。
「やっぱり新入生がこないな・・・」
と花樹が言うとその隣にいた桜花(はな)も、
「たしかにそうかも・・・」
と相槌を打っていた。実は、スクールアイドル部、いまだに入部の新入生がいなかったのだ。プレゼンでは紅奈の完璧なパフォーマンスをみせてくれた。だが、それでも入部してくれる新入生がいなかったのだ。これは紅奈のパフォーマンスが完璧すぎてそれにおののいた・・・わけでもなく、ただ、前にも伝えた通り、エリート校である聖女においてスクールアイドルとして活躍したいという希望を持った生徒が少ない・・・というのが実情だったのである。それが新入生においては顕著にあらわれたのである。これには、花樹、
「ハハハ・・・」
と苦笑いするしかなかった。
だが、桜花はこうも考えていた。
(でも、あのスクールアイドルを希望して入学してくれた新入生がいたはず。なのに直前になってそれがなしになるなんて、どうしたのだろうか・・・)
そう、実はスクールアイドルを希望していた新入生がいたのだが、直前になってそれがなくなったのである。そのため、期待の新人がいなくなったことで桜花は少し残念そうにしていたのである。
とはいえ、紅奈の練習は続いていた。
「1,2,3,4、2,2,3,4」
花樹の掛け声とともに紅奈は、
「ハッ、ハッ、トゥ」
とダンスを練習する。今は隣に誰もいない。紅奈たった1人だけ。なので誰とも合わせる必要がなかった。そのためか、紅奈、ミス1つすることなくそつなくこなしていた。
そして・・・、
「ハイッ、決め!!」
という花樹の掛け声に紅奈は、
「ハッ!!」
という声をしてはきりりと決めポーズを決めた。これには、桜花、
「紅奈、いい調子!!」
と言うと紅奈は、
「桜花先生、ありがとうございます!!」
とお礼を言った。ただ、このときの花樹は紅奈の練習などを見てこう思っていた。
(たしかに紅奈は完璧・・・。でも、どちらかというと、機械的、にみえてしまう・・・)
そう、紅奈は練習のたびにうまくなっているのだがどちらかというと、向上心でやっている・・・というよりも機械的にこなしている、といっていた方が的を得ていたのである。
そんな花樹からの疑問の目を向けられている紅奈であるが、内心、こう思っていたのである。
(私は道具・・・。だけど、道具である以上、完璧でないといけない。そのためにももっとうまくならないと・・・)
花樹の紅奈に対する見方は、半分正解半分不正解、であった。紅奈としては向上心を持っている・・・ものの、その理由が完璧でないとだめ、というものだった。そのため、どちらかというと機械のごとく完璧さを追い求めようとしている、といえた。
とはいえ、練習は続く。花樹はすぐに紅奈に対し、
「それじゃ、次の曲の練習、いくぞ!!」
と言うと紅奈はその曲の振付を確認し始めた。
そんなとき、桜花はあることに気づいていた。それは・・・、
(うっ、誰かこちらをこっそりと見ている・・・)
そう、怪しい目線である。これは桜花だけでなく花樹も気づいていたみたいで・・・。
(このところ、ずっと誰かに見られている気がする、あのプレゼンの日から・・・)
となにか不安を感じているような気がしていた。そのため、花樹は少し不安を感じていたのである。
「(桜花、あの怪しい目線がちょっと気になる。その目線のもとにいってくれないか)」
すると、桜花、花樹に対しこっそりと、
「(でも、なんで私なの?なにかいたら、私、太刀打ちできないよ・・・)」
と口をこぼしてしまう。桜花としてはあまり乗り気ではないようだ。これがもし怪しい人だったらいくら桜花でも太刀打ちできないからだった。
ただ、花樹は桜花に対しこう告げる、こっそりと・・・。
「(俺の感が正しければきっと桜花のためになると思う。だから、行け!!)!!」
これには、桜花、
(う~ん、花樹の言う通りならそうなるのかな・・・)
と花樹の言葉に妙に納得してしまう。それは長年一緒にいたために起きた一種の感なのかもしれない。花樹と桜花は高校のときからずっと友として一緒にいた。なので、花樹が考えていることなんて桜花はわかる気がしていた。そして、今回はそんな花樹が自分のためになると言ってくれたのである。これはきっとなにかあるといってもいい、そう桜花は考えたのである。
と、いうわけで、桜花、花樹の言葉を受けてこっそりとその目線のする方へと向かった。そして、その目線の主の背後にまわり、
「ちょっと、なにかしているの?」
とその主に声をかける。すると・・・、
「えっ!」
とびっくりしたような声がひろがった。これには、桜花、
「あっ、ごめん!!」
と謝るとすぐに驚きの声がした方を見る。すると・・・、
「えっ、車椅子の生徒・・・」
そう、そこにいたのは・・・、プレゼンのときから桜花をこっそり見ていた・・・、車椅子の生徒だったのである。
OP 1番のみ
第2話 車椅子の少女
その車椅子の少女を見て桜花は、
(あっ、この子・・・)
とはっとするとその子に声をかけた。
「あなたって乃亜さんじゃ・・・」
すると車椅子の生徒はすぐに、
「私は乃亜ではありません!!」
と言ってはその場から逃げてしまった・・・。これには、桜花、
「ハハハ・・・」
とこれまた苦笑いするしかなかった・・・。
ただ、そんな車椅子の生徒からの目線はその日を境にぱっと消えて・・・なくなったわけではなかった、次の日もその次の日も、
「あっ、また来ている・・・」
と桜花が感じるくらいずっとあった。その都度、桜花がこっそりと動いてはその車椅子の生徒のところに行っては、
「乃亜さん!!」
と背後から言うとその車椅子の生徒はすぐに、
「私は乃亜じゃありません!!」
と言ってはどこかに行ってしまう、そんなことが繰り返されていた。これには、花樹、
「まったくこりないな、桜花は・・・」
と呆れながら言うもとうの桜花は、
「そんなこと、関係ないよ。だって彼女は・・・」
と言ってはその子のことを思っていた・・・。
だが、それもプレゼンの日から2週間後をもって変わろうとしていた。それはいつものように怪しい目線を、桜花、花樹、紅奈に向けられていたときのことだった。この日もいつものように紅奈が練習している最中、花樹が桜花に対しこっそりとこう話したのである。
「(桜花、今日も来ているぞ。またあれをやるのか?)」
これには、桜花、こっそりと、
「(あぁ、そうとも!!なんか気になるからね)」
と言ってはその目線のもとにこっそりと近づくとともに、
「乃亜さん!!」
と言うとその目線の主、もとい、車椅子の生徒は思わず、
「キャー!!」
という叫び声とともにその場から逃げようと・・・、
「私は乃亜じゃありません!!」
という声とともに・・・、
ガタッ
という大賀したかとおもうと、
「えっ!!」
という声をあげながら、
グアンッ
と車椅子のバランスが崩れては車椅子は前方に倒れこんでしまった。その拍子にその車椅子の生徒は、
「キャー!!」
という叫び声とともに車椅子から放り出されてしまった、宙を飛びながら・・・。
そして、その車椅子の少女はそのまま地上にバタンと・・・、いや、
「よし、キャッチ!!」
と、桜花、うまく車椅子の生徒を体全体を使ってうまくキャッチした。これには、車椅子の生徒、
「あっ、ごめんなさい、ごめんなさい」
と何度も謝ってしまっていた。
その後、桜花はその車椅子の生徒を車椅子に座らせると、
(このままじゃいけない!!なんとかしないと・・・)
と思ってか、意を決してその車椅子の生徒に対して、
「あなた、乃亜さん、野木乃亜、ですよね」
と尋ねる。すると、その車椅子の生徒はすぐに、
「わ、私は乃亜じゃありません・・・」
といつものように答えるも桜花はすぐに、
「でも、生徒手帳には野木乃亜って書いているよ」
と言ってはその生徒手帳をその車椅子の生徒に見せた。どうやら、車椅子の生徒、転倒した際に自分の生徒手帳を落としたのを桜花が拾ったようだ。なので、その車椅子の生徒は、
(うぅ、なんという不覚・・・)
と悲しそうになるも、
(もうごまかすことができない・・・)
と思ったのか、桜花に対しこう告げた。
「はい、私が乃亜、野木乃亜です・・・」
どうやら、車椅子の生徒は名を野木乃亜というらしい。その乃亜に対し、桜花、
(でも、なんで乃亜さんはなぜずっとスクールアイドル部の練習を陰からこっそり覗いていたのだろうか?)
と思うと乃亜に対しついにあの質問をしてしまった。
「でも、なぜ、乃亜さん、いつもこっそりスクールアイドル部の練習を覗いていたわけ?」
これには、乃亜、
「えっ、それは・・・」
と言葉を詰まらせつつもこう言ってしまう。
「それは教えられません!!」
ぜんと理由を言うのを拒む乃亜。すると、桜花、乃亜に対しこんなことを告げた。
「もしかして、アイドルになれないことに未練を感じているんじゃないかな?」
この桜花の言葉に、乃亜、
(えっ!!)
と驚くと、突然、
(それって・・・、それって・・・)
という思いとともに自分の本音を口にした。
「だって、この車椅子じゃアイドルになんてなれないじゃない!!私はもうアイドルになんてなれないんだよ!!そんな悲しいことなんてないじゃない!!」
そう、乃亜は車椅子じゃもうアイドルなんてなれないと思っていたのである。車椅子になった以上、アイドルになれない、そう思っていたのである。これには、桜花、
「それじゃ、乃亜さん、あなたは今でもアイドルになりたいと思っているわけ?」
と再度尋ねると、乃亜、啖呵を切ったように、
「たしかにそう思っているよ!!今でもアイドルになりたいと思っているよ!!でも、今の私じゃ、今の車椅子姿の私じゃ、アイドルなんてできないじゃない!!」
と桜花に向かって自分の思いを口に出して言ってしまったのである。そう乃亜は今でもアイドルになりたい、そう思っていたのである。だが、車椅子である以上どうすることもできない、その苦しさを口にしたのである。
そんな乃亜に対し桜花はあることを考えていた。それは、
(今でもアイドルになりたいと思っている乃亜さん、その思いを無下にしないためにも、ここは私が・・・)
そう、乃亜の思いをなんとかしようと桜花は考えたのである。
そこで桜花はあることを乃亜に尋ねてみた。
「でも、なんで、アイドルになれないと諦めているわけ?」
あまりにド直球の質問。これには、乃亜、
「そ、それは・・・」
とまたもや言葉を詰まらせると、桜花、
「でも、今のままじゃ自分のその思いに潰されてしまうと思うよ」
と乃亜に迫るように言うと、乃亜、
「うぅ・・・」
と困惑したような気がしてきた。だって・・・、
(このままじゃ自分の思いによって私が潰される。でも、今の自分じゃどうすることもできない・・・)
と、乃亜にとってその思いは、その苦しみは自分を潰そうとしている、でも、自分にはどうすることもできない、そんな諦めでいっぱいだったのである。
そんな苦しみに満ちた乃亜に対し桜花はついにあることを決めた。それは・・・、
(乃亜さんが苦しんでいる。ならば、この私ならきっとその苦しみを受け止めてやれるはず!!)
そう、桜花は乃亜の苦しみを全身で受け止めようとしていたである。そのため、桜花は乃亜に対しこう告げたのである。
「乃亜さん、いや、乃亜、この私に自分の思いをぶつけてみなさい!!」
これには、乃亜、
「でも、なんで・・・」
と桜花に尋ねると桜花は乃亜に対しこう告げた。
「この私なら、あなたの苦しみ、受け止めることがでkると思うから・・・」
この桜花の言葉に、乃亜、
(もしかするとこの人なら、私の苦しみ、和らげてくれるのでは・・・)
と安心したのか、桜花に対してなにかを悟らせるかのように自分の言葉を口にした。
「なら、私の思いを、今の苦しみを、あなたにぶつけたいと思います。実は・・・」
この言葉のあとに乃亜が言ったのは、アイドルになりたい、だけど、なれない、そんな苦しみだった・・・。