ブラック・ブレット 転生者の花道   作:キラン

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プロローグ
第一話 転生 花道


「君は死んだ」

 

 見知らぬ場所。見知らぬ男に言われた言葉は何故か、すんなりと受け入れる事が出来た。それが何故なのか俺には分からない。だが、思考を停止させるような事はしないようにしよう。

 

「何故?」

 

「私が殺したからだ。私の為にね」

 

 ニィッと愉悦に歪めた笑みを前に俺は確信した。コイツは危険だと。

 

「俺みたいな一般人を自分の為に殺すか。それにこの空間。アンタが何なのかはこの際どうでもいい。俺に何をさせたい?」

 

「話が早くて助かる。前の人間は質問が多くて困ってたからね。君のようにすんなり受け入れてくれれば良いんだが」

 

「俺だって出来れば満足いく説明を聞きたい。だが、アンタが悠長に説明してくれるとは思えない」

 

「あぁ、その通り。面倒だからね。さて、君にして貰いたいのは私の道楽。いわば暇潰しだ」

 

「成る程。随分と愉快な趣味だ」

 

「褒めるな。照れる」

 

 くつくつと笑いながら告げる男は右手に持つ二つの物を俺に渡す。

 

「君は転生というのを知っているかい?」

 

「詳しい事は知らないさ。とはいえ、ネット小説である程度は」

 

「その知識で充分さ。君には君が見たソレと同じ事をして貰う。特典はソレのみ。向かう世界は行ってからのお楽しみ」

 

「拒否権は……言うだけ無駄か。それで?どうすればアンタの暇は潰せるんだ?」

 

「好きに生きていいさ。あぁ、それとその特典は君の今後に於いて強くなる。上手く使いこなす事だね」

 

 勝手な事をとは思いつつも憧れはあった。

 

「一ついいか?俺以外にアンタの道楽に付き合っている人間はいるのか?」

 

「いる。正確には居たと言った方がいいかな」

 

 成る程、既に居ないという訳か。

 

「質問は以上かい?それなら直ぐに君を転生させるけど」

 

「あぁ、頼む」

 

 そう告げると同時に意識が遠のく。

 

「では、精々足掻いて私を楽しませてくれ人間」

 

 その言葉と共に俺の意識は光に呑まれて消える。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「流石にコレは無いな」

 

 意識が戻った俺が周囲を見回して呟く。俺の周りにはボロボロの廃墟に綺麗に舗装された道路という状況が広がっている。

 

「世紀末臭が凄いな。指先一つであの世行きの世界とか嫌だぞ、俺は」

 

 だが、俺のこの考えは否定される。とても嫌な形で。

 

「うわぁ……」

 

 視界が暗くなり、背後から生温かい風が吹いていると気付いた時、俺は後ろを見て、直ぐに前に跳んだ。そしてコンクリートが砕ける音の方向に目を向ければそんな声を上げていた。

 

「廃墟に巨大化した虫。大分絞られたけど、まだ分からないな」

 

 目の前には体長三メートルほどの蜘蛛がいる。八つの眼があり、その内四つが正面。更に二つがとても巨大な眼を持っている。

 

「……確か、ハエトリグモだったか?」

 

 かつて見た昆虫図鑑の知識を引っ張りだしながら小さく呟いた言葉と同時にハエトリグモが襲いかかる。

 

「うわぁっ!?」

 

 巨大な蜘蛛という生理的に嫌悪感を齎すソレが襲いかかる。その恐怖に悲鳴を上げながら横に跳んで避ければ蜘蛛は勢い余って廃墟に突っ込み、崩れた廃墟の下敷きになる。

 

「絶対、死んでないよな」

 

 元々昆虫はあの姿だからあのような生態を持っているのだ。だが、それが目の前で覆っている。人間サイズの昆虫なんて脅威どころの話ではない。ならば、あれだけ巨大な蜘蛛がコンクリートの下敷きになった位で死ぬなど有り得ない。

 

「此処は逃げるか?」

 

 選択肢は選べるほどある訳じゃない。逃げてもいいが、ハエトリグモは巣を張る一般的な蜘蛛と違い、獲物を探し求める徘徊性の蜘蛛だ。更に視力も良い為、俺の足では直ぐに捕捉されるだろう。

 

「なら、コレしかないか」

 

 そう呟き、俺はあの男から受け取った二つの内一つを取り出す。ソレはバックルだ。中央に何かを嵌め込む窪みがあり、右側には刀をイメージしたパーツがある。そのバックルを腰に当てるとベルト部が伸びて腰に巻きつく。

 

「全く、転生もそうだが。本当に憧れてたモノが叶うなんてな」

 

 顔には苦笑に近い笑み。そして取り出したのは受け取ったもう一つ。ロックシードと呼ばれる果物を模した錠前だ。オレンジを模した錠前の左側。解錠スイッチを押しこむ。

 

【オレンジ!!】

 

 合成音声と共に俺の頭上にクラックが円を作る様に出現する。そして空間が剥がれると巨大なオレンジが降りて来る。

 

「変身!!」

 

 左手に持つロックシードを上空に掲げて、バックルの窪みに嵌める。その後に掛金を閉じる。

 

【ロック・オン!】

 

 合戦の合図のような法螺貝の音が響く中、俺はブレード部分に軽く手を添えて、ロックシードを斬る様に動かす。すると、オレンジロックシードの果実を現す面、キャストパッドが展開される。

 

【ソイヤッ!!オレンジアームズ!!花道・オンステージ!!】

 

 頭上にある果実、アーマーパーツを頭に被り、身体を青いスーツが包み込む。視線の先、廃墟からハエトリグモが這い出て来る。そんな光景を尻目に被った果実が展開、武士の様な甲冑が出来あがる。

 

「さて、と」

 

 左腰には剣、無双セイバー。右手にはミカンの果実のような太刀、大橙丸を握っている。その姿は【仮面ライダー鎧武】そのもの。俺は大橙丸を肩に掛け、見得を切る。さぁ、あの神様にも聞こえるように高らかに告げようか。

 

「ここからは俺のステージだ!!!」

 

 俺の言葉が合図のようにハエトリグモが突撃してくる。

 

「ハッ!!」

 

 タイミングを合わせてジャンプ。ハエトリグモの尻に着地した俺は大橙丸を振るって、近くにある脚を斬る。悲鳴と共にその場に倒れる蜘蛛を跳んで離れ、着地と共に近づく。

 

「オラァッ!!」

 

 そう叫び、倒れている蜘蛛に近づき、今度は脚を二本斬り飛ばす。流石に素人である俺では上手く使いこなせない。だが、それでも斬れるのはこの大橙丸の切れ味が凄まじい所為だろう。

 

「もういっちょ!!」

 

 身体を回転させて残った脚を斬れば、蜘蛛の片方の脚を全て斬り飛ばす。

 

「とっとと、終わらせる!!」

 

 大橙丸を左手に持ち替え、ブレード部分を一回、斬る様に動かす。

 

【オレンジスカッシュ!!】

 

 音声と共に大橙丸にエネルギーが集まる。

 

「セイヤー!!!」

 

 刀身が輝いた大橙丸を振り下ろす。その一撃は蜘蛛の頭部どころか胴体を両断するほどの威力だった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「疲れた……」

 

 あの後、変身を解除してその場を離れた俺はコンクリートに腰を下ろして一息吐いていた。命の遣り取りなんてやった事ない素人の俺ではさっきの楽勝だった戦闘でも精神的に参る。

 

「それにしても……【ブラック・ブレット】か」

 

 呟き、見上げる先には巨大な黒い建造物【モノリス】がある。そして視線を巡らせばその【モノリス】は等間隔で円を描く様に設置されている。この建造物とあの化け物の赤い瞳から考えて此処は俺が知っている【ブラック・ブレット】の世界で間違いないだろう。

 

「確かにコレならガストレア相手でも大丈夫だろうな。とはいえ、これからどうするかな~」

 

 先程持ち物検査したが、身分証明書等、自分を証明する物が一切ない。更に財布もない。そして分かった事だが、変身しての戦闘はかなり体力を消費するようだ。先程から胃が空腹を訴えている。

 

「取り敢えず、此処が【ブラック・ブレット】の世界だとすれば近くに街がある筈だ」

 

 流石に日本がどうかは分からない。コレで外国だったら泣く自信はある。そう考えながら足を動かす。目指すは視線の先、我先にと競うように乱立するビル群。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 歩き始めて十分くらいだろうか。目の前の方で人だかりが出来ている。どいつもコイツもギラギラと危ない目つきだ。

 

「ん~?あ、そうか。ここって【ブラック・ブレット】だったな」

 

 思い出すと同時に彼等が今行っている事にも気付く。さて、どうしたものか。確かに子供をリンチするのは見てて気持ちのいい物ではない。それに結局は赤の他人なのだが。

 

「見ちゃった以上は放っとけないよな」

 

 昔からの癖だから仕方ない。俺は走り出す。

 

「……には」

 

 走りながら俺は男達に誰かが必死に訴えている声を聞いた。

 

「ですから、この子に罪は無いんです!!!」

 

 必死に訴えているのは白い服にフードを目深に被った少女だ。誰か分からないが、やっぱり勇気がある人はいるようだ。

 

「お嬢さん。俺達はそっちの化け物を退治するだけなんだ。退いてくれないか」

 

「いいえ、退きません。それにこの子は人間です。化け物などではありません」

 

 大勢に、それも自分よりも年が上の男達に囲まれているにも関わらず、彼女はとても気高い。その言葉を聞いて、周囲の男たちの雰囲気が変わる。

 

(これは……拙いか?)

 

 そう思った瞬間、誰か分からないが、ため息が聞こえた。

 

「じゃあ、仕方ないな」

 

「分かってくれましたか?」

 

 いや、アレは違う諦めだろうな。そう思いつつ、俺は人垣の中へ入る。

 

「あぁ、その化け物を庇うアンタも化け物だってのがなァッ!!!!」

 

 その叫びと共に振り下ろされる瓶とフードの少女の間に入った俺は額に衝撃と鋭い痛みが奔る。同時にブレる視界にキラキラと破片が舞う。恐らく正常であろう耳が瓶が砕ける音を拾っている。

 

(砕けやすい瓶で良かった。これがビール瓶だったら今頃砕けているの俺の頭だろうな)

 

 そんな事を考えながらも俺は視線を上げて、男を見る。男はいきなり割って入った俺に驚いている。

 

「貴方は……?」

 

「通りすがりの……ヒーローって事で」

 

 上手い言葉が見付からなかったのでそう告げると少女がフード越しに驚いている。まぁ、そりゃそうだろうな。

 

「おい、ガキ。何の用だ?」

 

「いや別に?いい年こいたおっさん共が寄ってたかって女子供をリンチしてるから止めようとしてるんだけど?」

 

 何言ってるんだ、と云う風な顔で告げるが、さて、痛みの所為で上手く表情を作れたかは微妙だ。

 

「コイツはガストレアだぞ?」

 

「ん?人型のガストレアなんて凄いな。てっきり俺は【呪われし子供たち】だと思ったが」

 

 とぼけた様に告げればおっさん達からの圧力が増す。俺はため息を吐いて額に手を置く。ジクジクと痛むものの、裂けてはいないようだ。代わりにこぶができている。とはいえ、頭に攻撃されたのだ。病院で検査は受けた方がいいだろう。

 

「ていうかさ、アンタ達って何がしたくてこの子苛めんの?」

 

「っ!?コイツはガストレアだ!!人類の敵なんだよ!!!」

 

 周りからそうだ、そうだと声が上がる。

 

「んじゃ、アンタ達はガストレアに対する恨みをこの子で発散させようとしている訳だ。馬鹿じゃねえの?」

 

「なっ!?」

 

 つくづく思う。作品世界の事だからとか考えていたがやっぱりコイツ等の行動原理はよく分からない。

 

「そんなにガストレアが憎いなら武器貰って外行けばいいだろ?外にはアンタ等が嫌うガストレアがわんさかいるし。そいつ等を相手に戦えばいいじゃん。そうやってガストレアが減れば文句ないだろ?それとも、そんな度胸もないのか?」

 

 そういって、即座にあぁ、とわざとらしく声を上げる。

 

「そんな度胸もないからこんな子供を襲ってるのか。成る程ね……最低だな」

 

 そう吐き捨てる。自分よりも弱い者がいれば、それに当たるのは当然だ。それに大勢の同じ思いの人間がいれば、罪悪感も薄れる。何も痛い思いをして、死ぬような眼に遭う必要なんてないのだから。楽が出来るのならばそれでいい。

 

「お前等が本当にガストレアを憎んでいるなら民警にでもなればいい。それが出来ないって事はアンタ達が抱えている憎しみはその程度って事だ。結局のところ、アンタ達は世の中の不満やストレスを解消する為に弱いこの子たちを甚振る事でストレス解消してるだけのクズって事だ」

 

 一息にそう告げる俺の内心はかなりビビっている。だって、おっさん達から怒り通り越して殺気が飛んでくるし。これからマジでどうしよう。そう思った時だ。

 

「■■■■■■ッ!!!!!!!」

 

 上空からそんな形容できない叫び声が聞こえたと同時に目の前のおっさんが潰れた。

 

「またかよ!!!」

 

 潰れた後、血を噴き出す前に俺は悪態を吐いて、少女の手を引いてそこから逃げる。少女は襲われていた女の子を抱えていた為、一緒に逃げられた。そして背後から悲鳴が上がる。

 

「ま、待って下さい!!あの人たちを助けないと」

 

「アンタ、阿呆だろ!!人間の手ってのは頑張っても一人か二人しか救えないんだ!!!俺はアンタ達だけで定員オーバーだよ!!!」

 

「では、私が救います!!」

 

「ハイ!?」

 

 振り向けば少女は抱えていた女の子を俺に抱かせると踵を返した。

 

「あの子、もしかして俺よりお人好しなんじゃ……」

 

 そう呟きつつも、視線の先には蝙蝠のガストレアがおっさん達を貪っている。

 

「蜘蛛の次は蝙蝠。セオリー通りだな」

 

 最近のライダー物では見かけないが、それでも運命を感じてしまう。

 

「はぁ、仕方ないな。君は物陰に隠れてろよ」

 

 下ろした女の子にそういって、俺は走り出す。バックル、戦極ドライバーを装着し、オレンジロックシードを掲げる。

 

【オレンジ!!】

 

「早く逃げてください!!」

 

 腰が抜けて失禁している男の手を引っ張る少女の背後にコウモリがゆっくりと近づく。間に合うかどうかは賭けだな。

 

「変身!!」

 

【ロック・オン!!】

 

 音声と共に俺の視界が一瞬、暗くなるが構わず走る。

 

【ソイヤッ!!オレンジアームズ!!花道・オンステージ!!】

 

 走る勢いのまま、跳び。口を開けた蝙蝠に跳び蹴りを叩きこむ。

 

「え?」

 

「早く逃げろ!!」

 

「その声、もしかして」

 

「あぁ、ったくもう!!」

 

「え?きゃあ!?」

 

 一刻も早く彼女を退かす為に小脇に抱える。野郎は抱える気ないので、蹴り飛ばす。既に気絶していたので罪悪感とか欠片もありません。

 

「無茶し過ぎだ。死んだらどうする気だ!!」

 

「で、でも見捨てられません!!」

 

「俺よりお人好しな人間なんているもんだ、な!!」

 

「きゃあ!?」

 

 後ろから迫る蝙蝠に対して俺が行ったのは凄く簡単。先ず最初にその場で止まり、抱えていた少女を出来るだけ優しく放り投げ、振り向きながら引き抜いた大橙丸で迫っていた蝙蝠の顔を斬りつける。悲鳴と血飛沫を上げて、仰け反る蝙蝠に対して俺は走る。

 

「時間は掛けねえ。直ぐに終わらせる!!」

 

【オレンジスカッシュ!!】

 

 仰け反った蝙蝠の身体を掛け上がり、大橙丸を大上段に構える。

 

「セイヤー!!!!」

 

 全力で叫びながら大橙丸でガストレアを両断する。

 

「これで終わり……なわけないか」

 

 そう呟く視線の先。先程腕を喰いちぎられた筈の男性が立ち上がり、痙攣している。

 

「他にはいないな」

 

 俺は周りを確認する。人の原形を留めない死体があるだけで他にはなし。周囲の確認を終えて向き直れば男性は身体の半分を膨張させて既に人の姿を捨てている。

 

「因果応報ってのは少し可哀想か。ま、直ぐに終わらせてやるのが慈悲って奴なのかな」

 

【オレンジスカッシュ!!】

 

 大橙丸を仕舞い、跳び上がる。同時に俺と男性の間にオレンジの断面が現れる。

 

「セイヤー!!!」

 

 そのオレンジを蹴り抜きながら加速した俺は蝙蝠になりかけた男性を蹴り飛ばす。男性は遠くに吹き飛び、地面に激突すると同時に爆発を起こした。

 

「終わったな」

 

 変身を解除して少女の方へ向かう。どうやら怪我は無い様だ。

 

「さっきは投げて悪かった。怪我とかは?」

 

「あ、大丈夫です。あの子は?」

 

「あぁ、あの子ならっ!?」

 

 いきなり後ろから抱きつかれる。

 

「お兄ちゃん、凄いね!!」

 

 先程の女の子だ。キラキラした目で俺を見ている。

 

「アナタは一体?」

 

「それは俺も知りたいよ」

 

 反射的にそう告げると、彼女はハッと自分の口元に手を当てる。

 

「すみません、デリカシーの無い事を聞いてしまって」

 

「え?あ、あぁ、いや気にするな。誰だって気になるモノはあるし。俺は気にしてないから」

 

 慌ててそうフォローする。どうやら彼女は俺の事を勘違いしている様だ。

 

(とはいえ、どう説明しようか。転生しましただの。貴女達は創作物なのですとか正気を疑われるからな)

 

 う~ん、と内心首を捻っていると何処からかローター音が聞こえた。

 

「ん?」

 

「あ……」

 

 見上げればヘリコプターが降りてきている。そして目の前に降りたヘリコプターから数人の武装した男がガタガタとやってくる。

 

「御無事ですか、聖天子様!!」

 

 その中の一人が少女に向かってそう叫ぶ。うん?今、聖天子って言った?少女に声を掛けようとした瞬間、地面に抑えつけられる。同時に右腕も捻られる。一応、ロックシードは左手に持っているので、落としてはいないが。

 

「痛ってえな!!」

 

「黙ってろ。隊長、この男はどうします?」

 

「大方、ガストレア襲撃から生き残ったのだろう。だが、何故こんな外周区にいたのか気になる。拘束しろ」

 

 これはヤバいのでは?

 

「お止めなさい!!」

 

 凛とした声が響く。その声はヘリのローター音が響いていても聞こえるほどによく通る声だった。

 

「その人は私をガストレアから救った命の恩人です。直ぐに彼を解放しなさい!!」

 

「は、はい!!」

 

 俺を抑えつけていた男はすぐさま、俺から離れる。俺は立ち上がって服に付いた埃を祓う。

 

「済みません、恩人の貴方にこんな仕打ちを……」

 

「いや、見ず知らずの男が近くにいたら誰だって怪しいだろう?少し強引過ぎるけど、まぁ、コイツ等は間違ってないさ」

 

 これで、その見下した眼が無けりゃ及第点なんだがな~。

 

「あの、助けてくれたお礼をしたいのですが」

 

「お礼……?いや、別に……」

 

 グラ、と視線がブレる。二回の変身と戦闘でコレか、前途多難だ。そう思った時にはもう俺は地面に向かって倒れていた。

 




読んで頂き、ありがとうございます。投稿者のキランです。この小説はブラック・ブレットで仮面ライダーとのクロスが見当たらず、無ければ書けばいいじゃないかという殆どノリで書き始めた作品です。しかし、途中で投げ出す気はありませんので、暖かい目で見ていただければ幸いです。

次回の転生者の花道は……

「貴様が変わったあの姿。そして貴様が現れてから都合よく現れたガストレア。偶然とは考えにくい」

「貴方のあの力を借りたいのです」

「さぁ!!此処がワテクシの城!!その名も【シャルモン】!!さぁ、遠慮せずお入りなさい!!」

 転生した少年は何を考え、そして何を想うのか

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