ブラック・ブレット 転生者の花道   作:キラン

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さて、間隔が速いですが次話投稿です。今回は長らく(?)お待たせした、幼女達のほのぼの話です。色々とネタを仕掛けていますが、楽しんで頂ければ幸いです


第十四話 子供たちの休日

「朝か……」

 

 目覚ましを消しつつ、朝日に目を細めながら、ふと身体が重い事に気付く。

 

「にひひ~」

 

 見れば、そこにはパジャマ姿のレヴィが大の字で寝ていた。御丁寧に涎まで垂らしている。

 

「……またか」

 

 そう、レヴィが夜中に俺の部屋にやってくるのはよくあるのだ。恐らくは寝惚けているのだろう。しかも、何が気に入ったのか、最近やってくる事が多い気がする。

 

「きょうりゅう~、ちぇんじ~」

 

 寝言なのか、はたまた寝たフリなのか甚だ疑問だが、取り敢えず起こそう。そう思って、レヴィに手を伸ばせば彼女の特徴的な八重歯が朝日に反射してキラリと光る。

 

「ガブリンチョ♪」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【カモンッ】

 

 今日はこっちか、等と内心で感想を述べつつ、自動で開いた扉を通り、研究室に入る。

 

「プロフェッサーは……奥の様ですね」

 

 研究室は意外と広く。先ず最初に部屋に入って見えるのは応接間と呼ばれる場所。来客を迎えたり、談笑したりする場所であり、そとの様子や外への連絡手段などが此処に詰まっている。

 そしてその奥、今度は網膜センサーでブロックされている扉を抜ければそこには数十人の白衣を纏った科学者が量産型の戦極ドライバーとコウタさんが持ってきた数が多い【ヒマワリ】【クルミ】【マツボックリ】【ドングリ】のロックシードを研究している。以前、ロックシードに何故木の実があるのか質問したが、コウタさんは苦笑して分からないと言っていたのを思い出す。

 

「あら、夏世ちゃん。今日も早いわね」

 

「おはようございます、湊さん。プロフェッサーは今どこに?」

 

 その中で私に声を掛けたのは黒のスーツを着込んだ女性、湊耀子さん。プロフェッサーの秘書で、綺麗な人です。湊さんは私の問いに困った様に笑って、奥を指さす。

 

『ほらほら、将監君。もっと大きな声で言わないと。もう一回行くよ、変身ってほら!!』

 

『だから、やらねえって、言ってんだろ』

 

 奥にあるガラスによって仕切られた室内を中継するスピーカーから元気なプロフェッサーの声と呆れ、疲れたような将監さんの声が聞こえる。

 

「ふむ、面白い物だな」

 

 ふと、聞き慣れない女性の声が聞こえ、そこに視線を向ければ変身した蓮太郎さんを興味深そうに見ている女性がいた。

 

「おはようございます。蓮太郎さん」

 

「あぁ、おはよう。夏世」

 

「此方の方は?」

 

「あぁ、室戸菫さん。昔、俺を執刀してくれた人で」

 

「【機械化兵士計画】の四人いる最高責任者の一人ですね。プロフェッサーから教えて貰いました」

 

「ほほう、中々賢い子だね。うんうん、ぶっきらぼうな里見君よりか好きだよ」

 

「どうせ、俺は口が悪いよ」

 

 拗ねるのはいいですけど、変身していると随分とシュールですね。

 

「菫先生がいるという事は怪人の解剖ですか?」

 

「そうだね。中々面白そうな死体だったから一度、見てみたかったんだ」

 

 そういうと、職員の一人が菫さんを呼ぶ。

 

「どうやら許可が下りたらしい。私はこれで失礼するよ」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「あ、映司さん」

 

「やぁ、ユーリちゃん。おはよう」

 

 何時もの空き地に行くと、色々な人たちが入れ替わるように立ち去っていく。皆笑顔だ。その先には独特な民族衣装に身を包んだ青年、映司さんが封筒の中に残ったお金を計算している。

 

「今日もお裾わけですか?」

 

「そう。ゲン爺さんは家賃が足りなくて、ジン君は入院したお母さんのお見舞いの果物代。えっと、がんがんじいは鎧の修理代。今日はこんな所かな」

 

 そういって、笑顔を見せる映司さんに私も笑う。この街にやってきて、最初のお休みの日に探検と称して街を歩いたのだが、見事に迷子になってしまったのだ。その時に助けてもらったのがこの人。

 

「映司さん。皆にお金を上げるのは良い事だと思いますけど、やっぱり変じゃありません?映司さんだけ損してるみたいで」

 

「でも、皆困ってるし」

 

「私この間、がんがんじいさんが映司さんから貰ったお金で『今夜は焼き肉や~』って言ってましたよ?」

 

「嬉しそうで何よりじゃない」

 

 この通り、映司さんはコウタさんに負けず劣らずのお人好しで、そして凄く優しい方なんです。何時もお金を稼いでは困っている人に分け与えています。

 

「映司さんて【幸福な王子】に出て来る王子様の銅像みたいです」

 

「あぁ、あのお話か~。そう見える?」

 

「はい、いつか映司さん。全部剥がされて何処かに捨てられそうです」

 

 そう思えてしまうのがこの人。何とかしたいと思っているけど、子供の私じゃ、どうにもできない。そう思っていると私の前にアイスが現れる。

 

「はいコレ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 そういって、昼下がりの午後の穏やかな日差しを浴びながらアイスを食べる私達。

 

「じゃなくて!!ダメじゃないですか。皆に渡して、お金少ないんじゃ」

 

「大丈夫だって。ほら、こんなにあるじゃない」

 

「小銭しかありませんよ?」

 

 そういうと、映司さんは笑って。

 

「いけるよ。少しの小銭と明日のパンツさえあれば何とかなるって」

 

「そういう物でしょうか?」

 

 映司さんだけじゃないでしょうか?

 

「それにさ。人助けって気持ちいいじゃない」

 

 そう爽やかに笑う姿がどうしてもコウタさんと被ってしまう。やっぱり、何処か似てるんですね。

 

「でも、それで映司さんが苦しいのは間違ってると思います」

 

「そうかな?」

 

「そうです」

 

 何故だか、ムキになって言えば、映司さんは苦笑してしまう。

 

「でも、皆とは長い付き合いだからさ。手差し伸べたいじゃない?」

 

「長いって、どれくらいですか?」

 

 そう聞くと、映司さんは顎に手を当てて、考える。

 

「ゲン爺さんは一週間前から、ジン君は四日前から、がんがんじいは二週間前からの長い付き合い」

 

「それ、短いと思います」

 

「そうかな?でも、ユーリちゃんとは五日前からの長い付き合いだし」

 

 そういって、映司さんは大きく身体を伸ばす。

 

「散歩がてら、何処か行かない?ほら、今日はこんなに天気が良いしさ」

 

「そうですね」

 

 本当は私から誘いたかったのに。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「おや、晴人さん」

 

「あれ?シュテルちゃん」

 

 お昼時、公園にやってきた私は公園にある丘の頂上でよく会う人に出会った。

 

「今日もプレーンシュガーですか?」

 

「好きだからね」

 

 そういって、美味しそうにプレーンシュガーを頬張る青年、晴人さん。此処は周囲一帯を見回せる私のお気に入りなのだが、ちょっと前に晴人さんが声を掛けて来てからは待ち合わせの場所になってしまった。

 

「今日はお店の方、いいの?」

 

「今日は定休日ですから」

 

 これは嘘。本当は昨日の夜にちょっと羽目を外して材料をダメにしてしまった為に急遽、今日はお休みとなったのだ。

 

「ふぅん、そっか」

 

「それよりも、晴人さん、バイトはいいんですか?」

 

「それがさ、テロのお陰で客足が遠のいちゃってさ。輪島のおっちゃんが困ってたよ」

 

 参ったよ、と苦笑する晴人さん。晴人さんは骨董屋【面影堂】で店員のバイトをしているのですが、どうにもお客さんが来なくて暇な様だ。

 

「では、ウチのお店に来ますか?店長は男性の職員が欲しいと常々言ってますし」

 

「うぅん、どうしようかな」

 

 といいつつ、保留になるのが何時ものパターンです。

 

「それにしても最近は慌ただしいね。ちょっと前にはステージⅤの襲来。その次はテロリストの破壊活動。噂じゃ、そのテロリストも怪物だって聞いたし」

 

 そういって、ため息と共に晴人さんが告げる。

 

「まぁ、大丈夫ですよ」

 

「どうして?」

 

 私は晴人さんに笑みを見せて。

 

「不味い飯屋と悪の栄えた試しは無いそうですから」

 

「成る程ね。確かにそうだ」

 

 そう笑って晴人さんはドーナツを食べきる。

 

「さて、それじゃ、今日はどうしようか?」

 

「そうですね。では、図書館に行こうと思っていたので」

 

「図書館か……俺も偶には本読むかな」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「あ、真司さぁん!!」

 

「あれ?アミタちゃん。どうしたの?」

 

 今日はお店が休みなので、外へ出て散歩していると見知った人がメモ帳片手にため息を吐いていました。

 

「今日はお休みなので、散歩です。真司さんこそ、何してるんですか?」

 

「休み?あぁ、そっか。アミタちゃん達、民警止めたんだっけ。俺は編集長に特ダネ掴んで来いって言われてさ~」

 

 真司さんはとある事情で民警時代の私達と知り合ったのです。その際、元私達のプロモーターに本気で怒ってたのをよく覚えている。

 

「特ダネですか。何か見付かりました?」

 

「うぅん、そう簡単に見付からないからな~」

 

 真司さんはモバイルニュース配信会社【OREジャーナル】の見習いさんだそうで、出会った当初も民警に関してのインタビューでした。

 

「因みにどんな特ダネを探してたんですか?」

 

「【仮面ライダー】って知ってる?」

 

「ハイ!!凄く強くて優しい正義の味方です!!」

 

 そういってポーズを取れば真司さんも嬉しそうに笑う。

 

「そうそう、それそれ。その記事を書こうと思ったんだけどさ。ネットで漁ってもちょっと記事には書けない内容が多くてさ。だからこうやって脚で探してる訳」

 

 【OREジャーナル】は今のご時世では珍しく【呪われた子供たち】に関して肯定的な意見を書く会社として悪い意味で注目を浴びています。最近では無くなりましたが、会社が出来た当時は会社の前に人が集まって騒いだり、石を投げられたり、会社の名前を出したら取材を断られたりと大変だったみたいです。

 

「大変ですね」

 

「そうなんだよ~。それにこのネタで挽回しないと俺、給料カットされちゃうし」

 

 がっくりと肩を落とした真司さん。私でも出来る事があるだろうか。でも、コウタさん達が【仮面ライダー】だというのは内緒ですし。

 

「まぁ、頑張るしかないか」

 

「それじゃ、今日は一緒に特ダネを探しましょう!!」

 

「おぉ!!って、いいの?」

 

 相変わらずノリが良いですね。真司さんの言葉に私は笑顔で頷く。

 

「真司さんには以前の取材の時にキリエを守ってくれた恩がありますし。私も何か手伝いたいんです」

 

「アミタちゃん……」

 

 涙もろい真司さんは目元を潤わせて感動している。

 

「ようし!!そうと決まれば早速聞き込みだ!!」

 

「はい!!頑張りましょう!!」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「……じ~」

 

「…………」

 

 目の前で男性、巧さんがアイロンを掛けている。ちょっと暑いけど、我慢できる。

 

「……じ~」

 

「……なんだよ?」

 

 面倒くさそうな声と共に振り返った巧さんの言葉に気にしないでと首を横に振る。

 

「あのな、そうやって見つめられると気になってしょうがないんだよ」

 

「でも、お仕事終わるまで此処にいろって言ったの。巧さんです」

 

「他に見るモンあるだろ?」

 

「飽きました。巧さんは見てて飽きないので面白いです」

 

「……そうかよ」

 

 ぶっきらぼうに告げて巧さんが仕事を再開する。巧さんは不器用でちょっと怒りやすいけど、仕事はとても丁寧で評判が良いらしい。

 

「たっくん、お疲れ様」

 

「おぉ、他に仕事は?」

 

 仕事を終えた丁度その時、奥からこの店の店長であるケイタロウさんがやってきた。ケイタロウさんは私を横目で見た後。

 

「後は僕だけで出来るからたっくんはキリエちゃんとお昼行ってきなよ」

 

「でも、今日は結構な量あるんじゃなかったのか?」

 

「いいからいいから」

 

 そういって、ケイタロウさんは巧さんを押して店の外へと誘導する。

 

「じゃ、キリエちゃん、また後で」

 

「はい、ケイタロウさん。ありがとうございます」

 

 そういって、私は巧さんに近づく。巧さんは無言でヘルメットを渡してくるので、被る。そしてバイクに跨った巧さんの後ろに私も乗って、抱きつく。

 

「ラーメンでも食うか」

 

「猫舌なのに?」

 

「食いたいんだよ」

 

 私の言葉に巧さんがぶっきらぼうに答える。お姉ちゃんは少しぶっきらぼうな巧さんが苦手って言ってた。でも、私はそんな巧さんが好きだから別に構わない。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「男の冷たさと優しさを隠すのが帽子の仕事……」

 

「事務所の前で独り言をブツブツと。仕事はどうしたのだ、このハーフボイルド」

 

「誰が、ハーフボイルドだ!!」

 

 黒と緑という特徴的なバイクのバックミラーで帽子の調子を確かめていた男に何時もの挨拶をする。

 

「って、なんだ。ディアーチェか」

 

「なんだとはなんだ。折角我が暇潰しに会いに来てやったのだぞ?そこは地に頭を擦りつけて感謝するのが配下の役目であろうが?」

 

「誰が!!何時!!お前の部下になったんだよ!!」

 

「何を言うか、我はお前の為に仕事を手伝ってやったのだぞ?ならば我の臣下になるのは当然であろう?」

 

「いや、全然分からないから」

 

 そういって、ため息を吐く男、翔太郎は我の頭に手を置く。

 

「まぁいい。俺は今大きなヤマを抱えてんだ。子守りしてる時間なんてねえんだよ」

 

「何が大きなヤマか。荘吉殿がお前の様な半熟物にそんな大事を託す訳なかろう。どうせ、何時もの迷子犬探しであろう?」

 

「ふん、何時までも俺を半熟と思ってると痛い目見るぜ?いいか?俺の今回の仕事は本当にビッグなんだ」

 

「ぬ……?よもや、本当に認められたのか?いや、有り得ぬ!!」

 

 そう叫ぶが、奴は余裕の笑みで懐から手帳を取り出し、ページを開く。

 

「俺の今回の依頼は……迷子猫に迷子カメだ」

 

「……何処がビッグなのだ?」

 

「コイツを見ろ」

 

 そう言って取り出したのは二枚の写真。一枚目には大きな陸ガメ。カメの上に子供が乗っている事からかなり大きいのだと判断できる。もう一枚は見事なまでに太ったデブネコである。正直、ダイエットを真剣に考えさせるほどの大きさだ。

 

「ビッグだろ?」

 

「下らん!!!」

 

 つまりコイツの言うビッグとは大きさの事だ。少しだけ期待して見直した我がバカみたいではないか。

 

「全く……それで、目星は付いておるのか?」

 

「あぁ、カメックは知り合いが知ってるから直ぐに見付かる。ネコミはあの巨体だし、そう遠くまで行ってないだろ」

 

「名前に着いてはまぁよい。取り敢えず我はネコミとやらを受け持つぞ」

 

「って、お前もやるのかよ!?」

 

「何を言うか、臣下の為に身を粉にするのも王の務めだ」

 

「だ・か・ら!!俺はお前の部下じゃねえつってんだろ!!」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「「博物館……キタァーーーーッッ!!!!!!!」」

 

 今日はお店がお休み。だから、僕の一番の友達と博物館に来た。けど……。

 

「人、いないね」

 

「何時もはもっと賑やかなんだけどな。やっぱりこの前の騒ぎが原因かもな」

 

 学ランに格好いいリーゼントの弦太朗がそういうのだから多分そうなのだろう。

 

「じゃあ、今日は僕達だけの貸し切り~」

 

「おぉ、そうだな。よし!!早速、見学するか!!」

 

「こらこら、幾ら常連の君達でも静かに見れないなら追い出しますよ?」

 

 そう廊下の影からやってきたのはこの博物館の館長さん。ちょっと、目が赤かったのは気の所為だよね?

 

「おぉ、我望館長。今日も見周りか」

 

「えぇ、今日もですよ。綺麗な方が皆さんも良いですからね」

 

 この人はこの博物館【天の川博物館】の館長さん。会うのはこれで三回目だけど会う度にお菓子くれるから大好き。

 

「レヴィ君、メロンとラムネ味、どちらがいいかな?」

 

「ん~、じゃあ、ラムネ♪」

 

 そういうと、館長の手には何時の間にか飴玉が握られていて、ソレをくれた。

 

「う~ん、美味しい♪」

 

 飴は小さくなったら噛み砕いて食べるけど、この飴はずっと舐めたいと思う程に美味しい。

 

「そういえば、君達は何時もこの博物館に来ているけど、そんなに珍しいのかね?」

 

「珍しいって言うよりも楽しいぜ。だって、宇宙なんてワクワクするじゃねえか!!」

 

「うんうん、僕もね。何時もは本よりも漫画とか読むんだけど、宇宙の本とかは凄く面白いよ」

 

 二人してそういうと、館長さんは嬉しそうに笑う。

 

「ありがとう。でも、残念ですね。ガストレアが現れてから人類は宇宙への道から大きく遠ざかってしまった」

 

 展示してある小型のシャトルをガラスケースから取り出した館長さんが寂しそうに呟く。

 

「人類はいつか、この狭い母星を離れ、大いなる宇宙へと旅立ち。そして、何処か遠い場所で我々とは違う者達と出会う。そんな夢や希望が消えてしまったかと思うと少し哀しいです」

 

「もう宇宙へは行けないの?」

 

 僕が聞くと館長さんは難しそうな顔をして。

 

「無理ではないでしょう。一応はかつての宇宙開発データが残っていますし。今は兵器関連ですが、科学も進んでいる。恐らくは遠くない未来。人類はこの星を捨てて、月や他の惑星へと移住する事になるでしょうね」

 

「此処にはもういられないの?」

 

「旅立ちとはそういう物です。けれど、返る場所があるから旅立てるのですよ。弦太朗君は宇宙へ行く夢を持っていますが、レヴィ君は違うのでしょう?」

 

「うん、僕は世界一のパティシエになるんだ!!」

 

 僕の夢を言ったら館長さんは僕の頭を撫でてくれる。コウタよりも優しくて暖かい手だ。

 

「素晴らしい夢ですね。けれど、その夢を叶えるためには様々な場所へ行かなければなりません」

 

「そっか……でも、一人前になったら帰ってこれるよね?」

 

「それはレヴィ君次第ですよ」

 

 そういって、館長さんは立ち上がる。

 

「此処を見学した後は何処へ?」

 

「うん、この後は【ミュージアム】に行くんだ~」

 

「ほう、園崎君の所ですか。あそこはこの星の神秘を学べる場所ですからね。楽しむだけでなく、ちゃんと勉強するんですよ?」

 

「はぁい♪」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「光実。今日は何処まで行くのだ?」

 

「すぐそこですよ。もう舞さんも来てますから」

 

 その言葉に少しだけ怖くなる。この前、妾が【呪われた子供たち】と知られた時の事がフラッシュバックする。その時はあまり覚えてなかったけど、舞ちゃんは妾から逃げるように視線を合わせてくれなった筈だ。けれど、今日光実から言われた言葉を思い出す。

 

『舞さんが延珠さんと仲直りしたいって言ってましたから行きましょう』

 

 何時もより、少しだけ強引な光実に驚きつつも一緒に歩いている。やっぱり、心の何処かであの時みたいに皆で楽しく遊べると期待しているのだろうか。

 

「舞さん!!」

 

 光実の言葉に前を見れば、舞ちゃんがこっちに手を振っていた。少しだけ顔が強張っていた。

 

「じゃあ、僕は飲み物買ってきますね」

 

「え?あ、光実!?」

 

 そういって、光実が妾の手を離した瞬間、急に心細くなる。

 

「あ、舞ちゃん……」

 

「えっと、延珠ちゃん」

 

 お互いに名前を呼んで黙ってしまう。

 

「……延珠ちゃん。ごめん!!」

 

 いきなり舞ちゃんが謝り出した。

 

「な、何を謝るのだ舞ちゃん。舞ちゃんは何も悪いことしてないのだぞ?」

 

「うぅん、したよ。私、延珠ちゃんが【呪われた子供たち】って知った時、凄く驚いちゃって。一番辛かった延珠ちゃんを助けられなかったんだもん」

 

 そういって、何度も謝る舞ちゃんの手を握る。

 

「アレは……妾が黙っていた所為だ。一番の友達って言ったのに光実にも舞ちゃんにも言えなかった臆病な妾が悪かったのだ」

 

「そんな事ないよ。だって、友達だからって全部話せる訳ないもん」

 

 それを言われると何も言えなくなる。

 

「あの時、延珠ちゃんの味方になれなかった事凄く後悔してる。私に比べたらミッチは凄いよ。クラスの皆から延珠ちゃんを守って」

 

 確かに凄かった。何時も優しい光実が怒鳴ったり、汚い言葉使ったり、そうやって妾を守ってくれた姿は今でも色褪せない。それに……後で思いだしたら少しだけドキッ、とした。

 

「だから私、謝ろうと思ったの。ミッチみたいに勇気出して。それでミッチに相談したの」

 

「そうだったのか。舞ちゃんが凄く悩んで後悔してたのは分かった。だからもう謝らないで欲しい。何時も見たいに笑ってる舞ちゃんの方が妾は好きだからな」

 

「で、でも。私前みたいに友達として一緒にいる資格ないよ」

 

「そんな事ありませんよ」

 

 そういって、光実がやってきた。両手にはジュースの缶を持っている。

 

「延珠さんや僕は舞さんの事、今でも友達だって思ってます」

 

「でも、私は友達失格だって思ってる」

 

 それでも一緒にいたい。友達でいたい、そんな思いが嫌でも分かる。

 

「じゃあ、やり直しましょう」

 

「「え?」」

 

 思わず二人して声が上がった。

 

「先ずは一回、僕たちは友達を辞めます」

 

「え?ど、どういう事だ、光実?」

 

 意味が分からないのだが、そう思っていると光実は私と舞ちゃんの手を取って。

 

「そして改めて、三人で友達になりましょう」

 

 そう嬉しそうに笑う光実を見て、私と舞ちゃんが顔を合わせる。

 

「これなら舞さんも文句はありませんよね?」

 

 その言葉に思わず笑ってしまう。

 

「光実、それは屁理屈だぞ?」

 

「いいじゃないですか。子供は屁理屈な物ですよ?」

 

「ミッチは大人っぽいよ?」

 

「僕も偶には屁理屈を使いますよ」

 

 何だか、今まで悩んでいた妾達がバカみたいだ。けど、凄く簡単なことだった。

 

「僕たちは別に喧嘩してる訳じゃなかったんですから。仲直りという訳でもないですけど」

 

「ふふ、そうだな」

 

 そういって、皆で笑う。

 

「それじゃ、友達の記念にミッチが買ってきたジュース飲もっか」

 

 舞ちゃんの言葉と共に三人で乾杯する。瞬間、背後のビルが爆発した。

 

「な、なんだ!?」

 

 驚きつつも、視線を向ければ入り口から煙を吐き出すビルがある。あそこは確か、コンピューター関連の会社だった筈だ。そして煙の中からスーツ姿の男が這い出て来る。

 

「た、助げぇ!?」

 

 咄嗟に舞ちゃんの前へ盾になるように跳び出す。スーツ姿の男は胸から巨大な蟹の爪が飛び出し、男を両断した。その光景にやっと住民たちが悲鳴を上げた。

 

「我等は【大ショッカー】!!さぁ、怯えろ!!叫べ!!仮面ライダーを呼ぶがいい!!!」

 

 その雄叫びと共に煙から姿を現したのは蟹の怪人、ヒトデの怪人、よく分からないトカゲの様な怪人、蛾の怪人と黒尽くめの男達が現れる。

 

「な、何アレ?」

 

 先ずは逃げなくては。そう思った時、ヒトデの怪人が妾達を見る。

 

「仮面ライダーを呼ぶならば人質くらいは欲しい物だ。お前達!!その子供を捕まえろ!!」

 

 その言葉に近くの大人たちが妾達を見て、逃げて行く。そんな姿に少しだけ怒りが湧いた。だが、今はコイツ等が先だ。

 

(だが、ここで力を使っては……)

 

 友達を守る為にはこれしか方法が無い。そう覚悟を決めて、身を低くする。

 

「おりゃ!!」

 

 だが、近付いてきた戦闘員を横から蹴り飛ばした一人の青年に驚く。

 

「大丈夫?早く逃げて!!」

 

「え?あ、えっと」

 

「いいから速く!!」

 

「真司さん、後ろ!!」

 

 突然現れた青年の後ろから戦闘員が襲いかかる。

 

「ハァッ!!」

 

 だが、その戦闘員も新たに出て来た青年に殴り飛ばされる。

 

「おい、速くそいつ等連れてけ」

 

「あ、あぁ、サンキュ!!!」

 

「巧さん」

 

「お前はさっさと逃げろって」

 

 そういって、手首を振る青年の他にも四人の青年が戦闘員と戦っていた。

 

「この街を泣かせる奴はどんな奴だって許さねえ!!」

 

「ユーリちゃん、今の内に街の皆を避難させて!!」

 

「タイマン張らせて貰うぜ!!」

 

「さぁ、ショータイムだ」

 

 何と言うか、凄い光景だ。帽子を被った男は拳や蹴りで市民に襲いかかる奴を優先的に狙い、変わった服装の男は妾と同い年くらいの子に怪我した人を預けながら近づいてくる奴を倒し、リーゼントの男はまるで喧嘩の如く薙ぎ払って、特徴的な指輪を付けた男はアクロバティックな動きで相手を翻弄する。

 

「えぇい!!何をしておるか!!!」

 

「うお!?怪人キター!!」

 

 怪人の登場にリーゼントの男は何故かテンションを上げる。すると、怪人達に向かって三台のバイクが突撃する。

 

「おぉ、なんか凄いな」

 

「民間人が戦っているのか」

 

「ともかく、奴等を倒すぞ!!」

 

 バイクから降りた三人が口々に言いながらもベルトを装着して、錠前を取り出す。

 

【フレッシュ!!オレンジ!!】

 

【メロン!!】

 

【バナナ!!】

 

「延珠!!」

 

「延珠ちゃん!!」

 

「木更、蓮太郎!?」

 

 蓮太郎が銃を構えつつ、木更が刀を携えてやってきた。

 

「大丈夫か、怪我とかないか?」

 

「うむ、妾は何ともないぞ」

 

「良かったぁ」

 

 心底安心した様な木更は直ぐに真剣な目をして。

 

「里見くん、やってしまいなさい!!」

 

「なんか木更さん、キャラ違くない?まぁ、いいか」

 

 そういって、蓮太郎がベルトを装着して、錠前を取り出して走り出す。

 

「木更さんと延珠は市民の避難を頼む!!」

 

【ブドウ!!】

 

 蓮太郎の頭上にはブドウの果実が浮かんでおり、同じようにフルーツを頭上に浮かばせている三人の横に辿りつく。

 

「「「「変身!!!」」」」

 




投稿完了~。はい、今回はこんな感じです。因みにシュテル達が向かった図書館には本を読んではホワイトボードに書き込む不思議な少年がいたり、もう一つの博物館の恐竜コーナーにはブレイブなキングがいたりと、割とカオスだったりします。因みにこの世界ではおやっさんは健在です。えぇ、後々出す予定ですのでお楽しみに。
今回はこんな感じでしょうか、というより、二、三日で一気にお気に入りが増えてかなり驚いています。そんなに好かれている作品なんでしょうかね(汗)嬉しい半面、プレッシャーが(苦笑)じ、次回もお楽しみに!!



次回の転生者の花道は……



「変身を邪魔すんじゃねえ!!!」



「私の名は鳴滝。全てのライダーの味方だ」



「一々、ムカツク奴だ。葛葉コウタ!!君は僕にとって邪魔な存在だ!!!此処で君を殺し、聖天子を僕の物にする!!変身!!」

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