ブラック・ブレット 転生者の花道   作:キラン

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さぁ、皆さんお待たせしました!!今回からオリジナルを間に挟んで三巻へ突入します。そして新世代ライダーの登場と地味に気になっていたであろう菫さんとプロフェッサーとの関係。他にも前回の予告の真相など、楽しんで頂ければ幸いです。


幕間 異世界のライダーとの出会い
第十七話 プロフェッサーの研究


「さて、それじゃ今日も元気に実験しようか!!」

 

「なんで、三日も徹夜してんのに元気なんだよ」

 

「プロフェッサーはそういう人よ。もう諦めなさい」

 

 声を張り上げるプロフェッサーに呆れる将監さん。その横でもう既に達観した表情を作った湊さんがため息を吐いている。

 因みに現在時刻朝の6時を回っています。私と湊さんは仮眠をとった後、聖居近くに新しく出来た健康ランドで汗を流し、湊さんと共にエステというのに挑戦してみました。まぁ、なんというか、不思議な感じです。

 

「では、将監君。コレ付けて、変身して」

 

「相変わらず唐突だな、おい」

 

 そう言いながら、将監さんはプロフェッサーから完成した【ゲネシスドライバー】と既存のロックシードを発展、改良した【エナジーロックシード】を受け取る。

 

「……将監さんはチェリー」

 

「おい、夏世。ぶっ飛ばすぞ」

 

 ジト目で睨まれるも私はそっぽを向く。しかし、視界に収めたロックシードでそう呟いてしまったのは仕方ない。だって、チェリーだし。

 

「夏世君。私は君の優秀な頭脳は高く評価しているけど、もう少し年齢相応に振る舞ってくれない物かな?」

 

「おい、湊。何があった?あのキ○○イが正論言いやがったぞ?」

 

「私は何も知らないわ。きっと、ナニカあったのよ」

 

 皆さん、容赦ないですよね。そんな事を考えていると将監さんが実験ルームに入って、ベルトを装着する。

 

「あ、ちゃんと変身って言うんだよ?」

 

 念を押すような言葉に将監さんは疲れた様にため息を吐く。

 

「変身……」

 

【チェリーエナジー!!】

 

 音声と共に将監さんの頭上にサクランボが空間に開いたジッパーから降りて来る。毎回、思いますが、コレは一体どういう原理なんでしょうか?

 

【ロック・オン!!】

 

 ロックシードを嵌めたベルトは果物ジューサーの様にも見える。将監さんは左手でベルトを押さえ、右手で取っ手を握り押し込む。

 

【ソーダァ!!チェリーエナジーアームズ!!】

 

 軽快な音楽が鳴り響くと共に頭上のサクランボが将監さんの頭に回転しながら突き刺さり、鎧となって装着される。

 

『変身完了。計器異常無し、装着者のバイタル異常無し。エナジーロックシードの暴走ありません』

 

「よし、そのまま計測状態を続けてくれたまえ。さて、将監君。気分はどうかね?」

 

『悪くねえな。にしても、武器が今までとは違って少し妙だ』

 

 そういって、左手で弓を弄ぶ将監さん。私が変身したピーチのライダーとは違い、接近戦もこなせるように改良した【創生弓ソニックアロー】だ。

 

「プロフェッサー。ゲネシスドライバーは幾つロールアウトしたんですか?」

 

「将監君のを含めて五つだ。それと、夏世君。ゲネシスドライバーは戦極ドライバーとは色々と違ってね。量産には向かないんだ」

 

 どういうことだろうか。そう思うとプロフェッサーは腕を組んで、いいかな、と前置きして。

 

「簡単に言えば、訓練や戦極ドライバーによる戦闘データを基に装着者の癖や戦闘方法を存分に引き出す調整を施したのがあのゲネシスドライバー。逆に量産した戦極ドライバーは誰もが一定以上の力を手に入れる事が出来る物だ。その為、里見蓮太郎君が持つコピー品ではなく、君が使う量産品では使える機能が減っている」

 

「それがジンバー形態……ですか?」

 

「その通り、アレは戦極ドライバーにゲネシスコアを接続する事で可能となる物。その機能をオミットしたのが量産型なんだ」

 

「成る程」

 

「それに、もし、夏世君にゲネシスドライバーが支給されても、私は使う事をお勧めしないな」

 

 それは何故だろうか?

 

「ロックシードのエネルギーがバラニウムの約二十倍の効力を発揮するのは君も知っているだろう?戦極ドライバーはそのエネルギーを【比較的】使いやすく鎧と武器として変化させているんだ。その為、仮面ライダーはガストレアに有効なダメージを与える事が出来る。まぁ、当然というべきか【呪われた子供たち】にもその効力は発揮されている。とはいえ、触れる程度では大したことは無いようだけどね。ふふ、この性能を他のエリアや諸外国に見せつけた時の顔が見ものだね。

まぁ、それはさておき。このゲネシスドライバーが使うエナジーロックシードはその能力が強力になっており、変身する際にはエナジーロックシードからエネルギーを絞って使うんだ。その分、消費も激しいけどね。聡明な君なら此処で気付くんじゃないかい?」

 

 試すような言葉とさぁ、答えてくれと言わんばかりの笑みに思わずイラッと来ましたが、此処は我慢です。それに答えも分かりました。

 

「つまり、ゲネシスドライバーの力は私達では耐えられないと言う事ですね」

 

「耐えられはするだろうね。計算では夏世君は三十分、延珠君は十分以上、エナジーロックシードの力を使うと身体機能に異常を来たし、更にそのまま使い続けた場合、延珠君は三分後、夏世君は五分後に力尽きる」

 

 ゾッとしない話だ。延珠さんが私より時間が少ないのは恐らく、体内侵食率の比率なのだろう。以前、彼女の【本当の】データを見せて貰った時は驚いて、暫く呆然としてしまった。

 

「だからまぁ、私としては君がゲネシスドライバーを使うのはお勧めしないな」

 

「そうですね。心遣い感謝します」

 

「いやいや、気にする事ないよ。私とて、君が私の作成した物で死ぬというのは考えるだけで、胸が張り裂けそうなんだ!!!!!!」

 

 何だろう、感謝した自分がとても恥ずかしくなった気がする。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ふむ、ナニカ忘れている様な……まぁ、忘れているのならどうでもいい事か」

 

「ほう?私との話し合いがどうでもいい事とは、随分と偉くなったな。えぇ?戦極君」

 

 女性の言葉に戦極が振り返る。そこには長い髪に隠れながらも分かる確かな美貌の女性が頬を引き攣らせて笑っていた。

 

「おぉ、そうでした。いや、忘れてました。そういえば、お久しぶりですね。室戸先輩」

 

「あぁ、久しぶりだ。一週間、君の研究所に居させてもらったが、まさか、今の今まで挨拶の一つもないとは……君もつくづく変わらないな」

 

 最後のため息と共に彼女は壁に背中を預ける。その顔には疲労が色濃く残っている。ソレを見て戦極はニヤリと笑い。

 

「それで、怪人の解剖の感想はどうでしたか?」

 

「そういう……自分に素直な所も変わってないな。まぁ、君も分かってるだろう。自分の才能が他のより劣っていると再確認させられたよ。全く、あそこまで高度に改造させられたのを見ると、自分が惨めに思えて来る」

 

「まぁまぁ、彼らの技術は我々とは次元が違う。それこそ、悪魔の研究を何十年、いえ下手すれば何百年と続けた事でああなったんでしょうし」

 

「初歩の初歩で突っかかっている私達に理解できないのも無理はないと?」

 

「その通り!!」

 

「……君に慰めの言葉を貰おうと思った私が馬鹿だったよ」

 

 なんというか、呆れを通り過ぎて苦笑を浮かべた女性、室戸菫は壁に設置された販売機からコーヒーを買う。

 

「しかしだ。彼らの技術力には驚いたが、どういう訳か私達が扱うものの延長線上にあるようだ」

 

「恐らくは発想が似通っていたんだろうね。ただ、貴方達はヒトと機械を、彼等はヒトと動植物を組み合わせるという違いだけなのでしょう」

 

「あぁ、生物学という点では【大ショッカー】には敵わない。恐らく彼等は我々の数世代先を行っているね」

 

「それくらいなら対処できるんだけど、問題は彼等がガストレアを兵器利用した事で更に技術が発展した事なんだよね」

 

「あぁ、報告にあった物か。驚いたよ、頭蓋がまるごとバラニウムで出来ていた。アレには思わず興奮してしまった」

 

 クツクツと笑いながらコーヒーを一口飲む。

 

「バラニウムの頭蓋に取りつけられた小さなチップが前頭葉に刺さっていた。恐らくアレが、怪人のガストレア因子を抑制している物だな」

 

「成る程ね。彼等を怪人として利用する為にはある程度の理性と知性が必要になる。ふむ、新しい技術を即実戦投入するほどの資金と技術力。技術に関しては彼らの自前があるから不要だけど、問題は……」

 

「あぁ、資金面だな。奴等に協力している組織又は国がいるんだろう」

 

「しかし、先日の暗殺事件の一件で【大ショッカー】について知っているのは大阪エリアのみ。なら、大阪の国家元首が怪しいが……恐らくは正解ではないだろうね」

 

「正解に限りなく近いがそうではないと……?」

 

 菫の言葉に戦極が頷く。

 

「もっと、深い所にいるんじゃないかと私は踏んでいる。まぁ、既に目星は付いているんだけどね♪」

 

「お前は……いや、昔からそうだったな。文句を言った教授のPCに潜り込んで、秘密を公開したり。大学のメインデータにハッキングして、大騒ぎを起こしたり。君のやる事にはもう、驚かなくなってきたよ」

 

「先輩の驚く顔を見れないのは酷く残念だ」

 

「なんだ?私に気があったのか?」

 

 試すような言葉と表情に戦極は肩を竦める。

 

「さぁて、どうでしょうね。少なくとも三十路過ぎてそろそろ危なくなってきた人には熱っ!?」

 

 余計な事を言った戦極は熱めのコーヒーを頭から被る事になった。その際、実行した菫の表情は晴れ晴れとしたイイ笑顔だった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「~~♪」

 

 薄暗い廊下を一人歩く。暗闇は好きだ。時折、奥の方からヒトと獣を出鱈目に繋ぎ合せたモノが出て来る。ハカセとタイシから斬っていいって言われてるから何時でも斬れるし。それにガストレアなんかよりもずっと斬り応えがあるから。私はこの場所が一番好きだ。

 

「アァアアァァアァッッ」

 

 ほら来た。目の前、暗闇から覗く三つの瞳を持ったソレは……何だろう、犬かな?それともジャッカル?

 

「どっちでもいっか♪」

 

 取り出すのは髑髏の小太刀を二本。あの【ろっくしーど】を手に入れて変身した後に出て来た物だ。何でも斬れるし、凄く軽いし、とても丈夫。

 

「アァッ!!」

 

「あはっ」

 

 ヒュン、という風切り音が耳を掠める。こういうヒトなのにヒトには出来そうにない闘いが凄く楽しい。小太刀を連続で振るえば、振るうだけ血が飛び散るし、傷の回復も早い。ガストレアよりも遅いけど、コイツ等はそれで十分らしい。

 

「ガァッ!!!」

 

 拳を避ける。その時、背後の壁が殴り壊される。壁の向こうにガストレアでもいたのだろうか。雪崩れ込むようにガストレアが溢れる。

 

「もう、もっと遊びたかったのに」

 

【フィフティーン!!】

 

 こういうのを【空気が読めない】っていうのかな?まぁ、どうでもいっか。

 

「変身♪」

 

【ロック・オン!!】

 

 ギターの激しい音が響き、一瞬だけ視界が暗くなった後、鮮明になる。

 

「やっぱり、頭が重い」

 

 あの【十五】はいらない。そう思いながらも小太刀を振るって、ガストレアを殺していく。

 

「あは♪見付けた」

 

 切り裂いた先にあのヒトがガストレアを食べていた。

 

「美味しいの?」

 

 聞いてみたけど、答えてくれない。そのヒトは最後のガストレアを食べ終えると身体が歪に大きくなる。

 

「おぉ~」

 

「おやおや、騒がしいと思えば、面白い事になっているね」

 

 後ろを見れば、パパが立っていた。何時もはハカセやタイシと話してるのに珍しい。

 

「パパ、ねぇ、斬っていいよね?」

 

「勿論だとも。とはいえ、小比奈だけでは少し大変かな?」

 

【ブラッドオレンジ!!】

 

「えぇ~、私だけでも大丈夫だよ」

 

【ロック・オン!!】

 

「ふふ、けれどこういった相手は初めてだろう?今回は我慢しなさい」

 

【ブラッドオレンジアームズ!!邪ノ道・オンステージ!!】

 

「変身……」

 

 帽子を押さえたパパの頭に赤いオレンジが降りて来た。鎧武と似ているけど、こっちはもっと血のように紅い。

 

「やっぱり、偽物だ~」

 

「ふふ、けれど、実力は本物だよ?」

 

 言葉と共にヒトが襲ってくる。けれど、問題ない。私が動きながら斬って、パパが撃って、穿って、削って。あっという間にヒトが崩れ落ちる。

 

「さぁ、小比奈。仕上げだ」

 

【ブラッドオレンジスカッシュ!!】

 

「はい、パパ」

 

【フィフティーンスカッシュ!!】

 

 小太刀に紫色の炎が灯る。瞬間、パパが赤い斬撃を放つ。

 

「あは♪」

 

 その斬撃によってヒトの両腕が面白いように飛ぶ。その腕を切り裂きながらヒトの目の前に降り立つ。

 

「死ネ♪」

 

 ×状にヒトを切り裂けば爆発して、消え失せる。変身を解くと後ろから拍手が聞こえる。

 

「お見事。ふむ、失敗作と決めつけていたが、中々に好い実験になったな」

 

「ハカセ♪」

 

 白と黒のハカセが立っていた。思わず抱きつく。

 

「おやおや、小比奈嬢。この老骨に無理をさせないでくれたまえ」

 

 頭を優しく撫でられ、地面に下ろされる。

 

「今回の【玩具】はどうだったかな?」

 

「うん!!今日のも面白かったよ。けど、もっと頑丈で強いのが欲しいな」

 

「小比奈、あまり我が侭は言う物ではないよ」

 

「でも、パパぁ~」

 

「構わんよ。今度は君の満足する相手を用意しよう」

 

「ホント?」

 

「勿論だ」

 

 笑いながら頷いたハカセに私はもう一度抱きつく。

 

「しかし、今回は前回とは趣が違いますね」

 

「あぁ、今回は新しく入った素材を使ったのだよ。まぁ、人間には変わらないが、組み合わせたモノが中々に面白くてね」

 

「ほう?アレは確か護衛官の一人だったと記憶していたが。まぁ、それはどうだっていいか」

 

 難しい話だろうか。そう考えているとハカセが私を見て笑う。

 

「小比奈嬢には難しかったかな?まぁ、積もる話は後で良いだろう。今回、君達にはとある物を見せてあげよう」

 

「ほう?それは楽しみですな」

 

「なになに?」

 

 ハカセの後に着いて行く。ハカセは廊下の奥にあるドアの前で止まる。ここから先は私も知らない所だ。

 

「驚くだろうが、気に入るだろう」

 

 そういって、扉を開けるとなんか、生臭い臭いが漂ってきた。

 

「暗いね」

 

「なら、少し明るくしようか」

 

 そういって指を鳴らせば、部屋に明りが灯る。

 

「ほう」

 

「おぉ~、何コレ~」

 

「これはね、この世界の科学者の脳髄を修めた生体コンピューターだ。先日、新たにこの世界の権威を加えたのだよ」

 

「……ふむ、もしかして四賢人と呼ばれる方々かな?」

 

 パパの言葉にハカセは笑って頷く。

 

「あぁ、その通りだ。彼等三人は快く我々【大ショッカー】の礎になって貰った。とはいえ、コンピューターの演算を二割ほど引き上げた程度だったがな。まぁ、そんな事はどうでもいいのだ。君達に見せたい物はこの先だ」

 

 そういって、ハカセが歩き出し、パパも続く。私も歩き出そうとしてふと、壁から風が吹いてきた。不思議に思って壁に手を当てる。

 

「ひゃ!?」

 

 瞬間、ヌメッとした感触に驚く。見れば、壁の一部からベロが出ていた。その上には目玉もある。

 

「アガガガ……コ、コロシテェクレェ……」

 

「あぁ、済まないね。何分、オリジナルとは少し違う為に、こうやって変なバグが出てしまう」

 

「小比奈、早く来なさい」

 

「はぁい。パパぁ、手がべとべとする」

 

 そういって、近付けばパパがハンカチをくれた。手を拭いて、歩くとまた扉が現れる。

 

「此処だ」

 

 扉が開き、明りが部屋を照らす。

 

「これはまた……」

 

「わぁ~」

 

「どうかね?中々上手く行ったと自負しているよ」

 

 そこには緑色の水と裸の人が入ったガラスケースが一杯あった。

 

「これは……ヒトではないね」

 

「その通り、コレは【モデル・ヒューマン】のガストレアだ」

 

「もでる・ひゅーまん?人間って事?」

 

「小比奈嬢は中々理解力がある。将来が楽しみだ」

 

「えへへ♪」

 

 頭を撫でられ、褒められて凄くうれしい。

 

「驚いた。ここまで肉体が安定しているなんて。自我や理性は?」

 

「勿論、抜かりない。そしてこれだけでも我々が使っている戦闘員よりも遥かに能力が高い。そして注目すべきはこの新しき戦闘服だ」

 

 そういって、見せてくれたのは一杯いるヒトが着ている服に似ている服だ。

 

「これにはバラニウムの磁場をある程度遮断する能力があってね。小比奈嬢の服にもコレと同じ素材を混ぜ込んでいる。故に彼女はモノリス間近で戦闘を行っても、影響は無い」

 

「素晴らしい。しかし、肝心の怪人はどうするのです?」

 

「ソレを解決するのが、この【モデル・ヒューマン】だ」

 

 そういって、パパとハカセが話始める。私は部屋を探索しよう。何かハッケンがあるかも。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「菫さん、頼まれた物持って来たぞ」

 

「あぁ、里見君。助かったよ」

 

「ていうか、エロゲーとか18禁のDVDとか俺に運ばせんなよ。持ってくる間、生きた心地しなかったんだけど?」

 

「いいじゃないか、若い男がそういった物を持って往来を歩く。良くある光景だ」

 

「それは昔の事だろうが、今じゃ、殆ど見ねえよ」

 

 そう告げながら紙袋を渡す。

 

「延珠さんも来たんですね」

 

「うむ、妾がいないと蓮太郎はなにもできないからな」

 

「幼女に養ってもらうなんてダメ人間の極ですね」

 

「全くだ、恥を知りたまえ」

 

「おいこら、そのダメ人間に面倒事を押しつけなきゃいけないアンタは何なんだよ」

 

「研究者だが?」

 

 ダメだ、この人。

 

「そうだ。延珠さん、プロフェッサーが新しい実験をしたいので、協力してほしいと」

 

「む?面白そうだな。良いぞ」

 

 そういって、延珠と夏世が部屋を出て行く。

 

「って!?大丈夫なのか?」

 

「さぁ?戦極君の事だからそこまで変な事はないだろう。とはいえ、気になるのなら行ってみるといい」

 

「……そうだな」

 

 大丈夫だと思うが、あの野郎は信用できないからな。そう考え、部屋を出て廊下を歩く。

 

「ん?おいこら、そっから先は関係者以外立ち入り禁止だ」

 

 後ろから声を掛けられ後ろを振り向く。

 

「なんだ、誰かと思えばブドウ野郎か」

 

「里見蓮太郎だ」

 

「知ってるよ」

 

 そういって奴、将監はため息を吐いて。

 

「悪いが、これから大事な実験なんだ。邪魔しないでくれよ」

 

「断る。あの変態野郎は信用できねえ」

 

「あのキ○○イ。本当に人間としての信用がねえな」

 

 そう小さく呟いた将監は白いベルトを取り出す。

 

「お前……!?」

 

「悪いな、今の俺は此処の護衛だからな。実験の邪魔するってんなら実力で排除するぜ?」

 

【チェリーエナジー!!】

 

 ベルトを装着し、頭上にサクランボが現れた将監の殺気に俺は一歩後ずさる。

 

「実験はそんなに時間は掛からねえ。それにお前のパートナーにも危害はねえんだが?」

 

「もう一度言ってやる。信用できっかよ!!」

 

【ブドウ!!】

 

「ったく、これだからガキは」

 

【ロック・オン!!】

 

 お互いにロックシードをベルトに装着する。

 

「「変身!!」」

 

【ハイ~!!ブドウアームズ!!龍・砲・ハッハッハッ!!】

 

【ソーダァ!!チェリーエナジーアームズ!!】

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「さて、延珠君。気分はどうかね?」

 

「うむ、問題ないぞ?」

 

 妾は今、ベッドの上に腰かけている。隣には夏世が座っており、目の前にはプロフェッサーが書類を見ていた。

 

「嘘は言わなくていいよ。こっちも戦極ドライバーを使用したイニシエーターのデータが欲しいんだ。正直に言って欲しい」

 

「む……確かに疲れはしているが、問題は無いぞ」

 

「ふむ、ある程度の疲労が溜まっているが、生活に支障なしか。まぁ、想定内だね」

 

 そういって、プロフェッサーは書類を机に置き、奥のジューサーに向かう。

 

「あぁ、そうだ。延珠君、ジュースはどうだい?」

 

「いいのか?」

 

「勿論だとも。メロンとチェリー、ピーチにレモンとあるけど、何が好いかな?」

 

「メロンだ!!」

 

「夏世君は?」

 

「私はピーチをお願いします」

 

 取り敢えず、普通に美味しい物を頼む。すると、変な音声と共にコップに注がれる綺麗なメロンソーダを視界に収める。なんというか、不思議な色だ。

 

「プロフェッサー、実験とは一体何ですか?」

 

「簡単に言えば、コレを飲んで感想が欲しいんだ」

 

 そういって、手渡されたジュースを見て、妾と夏世が顔を見合わせる。

 

「実はソレ、イニシエーター専用のジュースとして開発してね。彼女達の疲労回復を促進させる新薬なんだ。あぁ、薬といってもそこまで危ない物じゃない」

 

 そういって、ジュースを勧めるプロフェッサーに勧められ、妾達はジュースを飲む。程よく甘く、そして炭酸の独特な味わいが口の中に広がる。

 

『プロフェッサー。ゲネシスドライバー装着者と戦極ドライバー装着者が交戦を開始、現在トレーニングルームで戦闘中です』

 

「ふむ、想定内とはいえ、ここまで上手く事が運ぶとはね。引き続き、観測を頼むよ」

 

『分かりました』

 

「蓮太郎さんと将監さんが戦っているのですか?」

 

「うむ、どうやら君達を実験に突き合わせた事が彼には許容できない事だったようだ。今、彼は将監と模擬戦をしているよ」

 

「詳しい説明した方が良かったのでは?」

 

「それだと尚更、断られると思うのだが?」

 

 何やら二人で話し合っている。

 

「つまり、蓮太郎は妾を心配しているのか?」

 

 すると、プロフェッサーは笑みを浮かべて頷く。

 

「その通りだ。どうやら里見蓮太郎君は私が君に実験と称してエッチな事をしていると考えたんだろう。しかし!!君を愛する彼はソレを許す筈もなく【延珠の身体を好きに出来るのは俺だけだ】と叫んで実験室に突入しようとしたんだろうね」

 

 成る程。蓮太郎が妾をそこまで大事にしているとは。分かってはいたが、やっぱり嬉しい物だ。

 

「そしてこの実験はそんな事ではないと伝えようとした将監君を実力で排除しようとして彼等はお互いに戦い始めている、という感じだね」

 

「よくもまぁ、ペラペラと嘘を吐けますね」

 

 小声で聞きとれないが、夏世は呆れたように告げる。恐らくだが、蓮太郎の愛に感動しているのだろう。

 

「まぁ、取り敢えずトレーニングルームなら、此処からすぐだけど、見に行くかい?」

 

「無論だ。妾を想うツンデレ蓮太郎に真実を教えなければな」

 

「はぁ、もういいです」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「おら!!」

 

「ぐぁ!?」

 

 火花が散り、身体が吹き飛ぶ。転がりつつも受け身を取って、銃口を奴に向けながら連射。

 

「おいおい、馬鹿にしてんのか?」

 

 そんな言葉と共に銃弾を避けた奴が弓を引き絞る。咄嗟に横に跳べば、俺が居た地点に矢がぶつかり、爆発する。

 

【キウイ!!】

 

「糞っ!!」

 

【ロック・オン!!】

 

「あぁ?ある程度、データは必要だぁ?ったく、しょうがねえな」

 

【ハイ~!!キウイアームズ!!撃・輪・セイヤッハッ!!】

 

「オラァッ!!」

 

 叫びと共にキウイ撃輪を投げつける。変則的な機動を描きながら飛んでいく撃輪を奴の弓が弾くが、その間に距離を詰めた俺は自身の間合いに踏み込む。

 

【ハイ~!!キウイスカッシュ!!】

 

 天童式戦闘術二の型十六番。

 

「隠禅・黒天風・天嵐!!」

 

 翠色のエネルギーを纏った回し蹴りは狙い違わず奴の即頭部に向かい。

 

「分かり易いんだよ!!」

 

 弓を持っていない腕で防がれる。そして奴は弓を上空へ放り投げて、空いた手で取っ手を握り、押し込む。

 

【チェリーエナジースカッシュ!!】

 

 音声と共に落ちて来た弓を拾った瞬間、弓の刃に光が灯る。

 

「くっ!?」

 

 咄嗟に手元に戻った撃輪を盾にした瞬間、凄まじい衝撃が全身を襲った。

 

「ぐあ!?」

 

 床を二、三度跳ね、壁にぶつかって漸く止まる。

 

「ふぃ~、それでぇ。気は済んだか?これ以上はお前のイニシエーターとか社長に変な恨み持たれるからやりたくないんだけど?」

 

「ふ……ざけんな……!!」

 

 壁に手を掛けて、立ち上がる。

 

「アイツは信用できねえんだよ。平気で人の一番聞いて欲しくない所にズカズカと土足で上がり込んで、引っ掻き回して。アイツの所為で木更さんがどんな思いしたか」

 

「どんな思いね……そういうお前は理解してんのか?」

 

 その言葉に思わず固まる。奴はハッ、と笑う。

 

「正論並べるのはご立派だがな。お前にゃ、自分の言葉ってのが何処にもねえんだよ。そんなガキの戯言、一々聞いていられっか」

 

【ロック・オン!!】

 

 ロックシードを弓に嵌める。矢にエネルギーが溜まっていく。

 

「一応言っておくぜ。相打ち狙いならやめときな」

 

【ハイ~!!キウイスパーキング!!】

 

 忠告を無視して、撃輪にエネルギーを貯める。

 

「そうかい」

 

【チェリーエナジー!!】

 

「ハァッ!!」

 

 放たれた矢に撃輪を放つ。同時にではなく、間隔を開けて連続で投擲。矢が爆発し、余波で転がるが、なんとか防いだ。

 

【チェリーエナジー】

 

「がぁっ!?」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「おぉ、起きたか、蓮太郎」

 

 目が覚めると同時に延珠の嬉しそうな笑顔が視界一杯に映る。

 

「延珠、痛!?」

 

 跳び起きた瞬間、全身に痛みが奔り、そのままベッドに倒れ込む。

 

「驚いたぞ、妾達が来た時には気絶した蓮太郎と欠伸していた将監がいたからな。全く、伴侶である妾を心配するのは良いが、もう少し冷静になるのだぞ?」

 

「誰が伴侶だよ」

 

「ふふん、蓮太郎は不器用でツンデレだからな。そう冷たく言うのも想定内だぞ」

 

「誰がツンデレだ!!」

 

 叫ぶと、身体が痛む。

 

「……何も無かったのか?」

 

「うん?何も無かったぞ。実験といってもジュース飲んだだけだしな」

 

「ジュース?」

 

「えぇ、そうです」

 

 そういって、やってきたのは夏世だ。

 

「ジュースが実験?どういう事だ?」

 

「その説明はプロフェッサーの役目ですが、まぁ、いいでしょう」

 

 そういって、夏世は新しく椅子を取り出して座る。

 

「なんで、そんなに離れてるんだ?」

 

「私なりにお二人に配慮しているんです。あぁ、気にせずどうぞ。私の事は喋る空気と思って構いません。私が喋っている最中に如何わしい事をしても気にしないので」

 

「そう言いながらなんでビデオ回してるんだよ!!撮るの止めろ!!」

 

「チッ」

 

「おい、今何で舌打ちした?」

 

「まぁまぁ、怒ると痛みますよ」

 

「一体誰の所為だと――――」

 

「勘違いした蓮太郎の所為だろう?」

 

 確かにその通りなので、反論できない。

 

「まぁ、そろそろ本題に戻りましょうか。私達が飲んだジュース。それはロックシードのエネルギーを液状にした新薬です」

 

「……大丈夫なのか?」

 

「まぁ、副作用として飲んだ後、三時間ほど身体能力が同年齢の子供と同じになる程度ですからそこまで危険視するほどでもありませんね」

 

「どういった効力なんだ?」

 

「簡単に言えば、体内のガストレアウイルスを相殺し、侵食率を【減らす】薬です」

 

 その言葉に俺は痛みを忘れて、跳び起きる。

 

「今、減らすって言ったのか?抑えるんじゃなくて?」

 

「えぇ、その通りです。今までは私達が持つウイルスを抑える物しかありませんでしたが、今回プロフェッサーが作った物は体内のガストレアウイルスを減らす効力があります。とはいえ、そこまで強い物でもありませんし、ガストレアウイルスが減少した細胞を取り戻す為に増殖するので、そこまで効果はありません。その為、先程計測しましたが私達の体内侵食率も1~2%程しか減っていませんので」

 

「けど、それでも凄いじゃないか」

 

 大発明だ。まさか、そんな発明をするなんて。そう感動していると夏世はため息を吐く。

 

「しかし、この新薬ですが、エネルギーを抽出し、液体に混ぜ込み、そしてイニシエーターが飲めるほどに調整したりと時間と人手とコストが掛かるので、実用化まではそれなりに時間は掛かります」

 

「そうなのか……」

 

「まぁしかし、延珠さんが引き続き、新薬の実験に付き合って頂けるのならば、という条件が出ています」

 

「……つまり、延珠をモルモットにしろって事か?」

 

 隣にいるにも関わらず、俺は低く唸るように告げる。俺の言葉と怒気に当てられたのか、夏世が顔を青くする。

 

「心外だな。私は君に選択肢を与えているだけだよ?」

 

 そういってやってきたのは白衣姿の戦極凌馬。

 

「お前……」

 

「おやおや、先程までの喜びぶりは何処に行ったんだい?君だって、延珠君の侵食率が減るなら万々歳だろう?何せ、彼女は―――」

 

「言うんじゃねえ!!!」

 

 ベッドから飛び出し、凌馬の襟首を掴んで、壁に叩きつける。

 

「それ以上、言うんじゃねえ……!!」

 

「怖い怖い、しかしいいのかい?君がそんな態度を取れば彼女はどんな反応をすると思う?」

 

 その言葉にハッとして振り向けば延珠はおろおろと俺と凌馬を交互に見ている。

 

「さっきも言ったが、私は選択肢を提示しているだけだ。選ぶのは君と延珠君だ」

 

 ギリッ、と奥歯を噛みしめる。

 

「……もし、延珠に危害を加えてみろ。考える限りの苦痛を与えて殺してやる」

 

「怖いな~、私がそんな酷い事をする鬼畜外道に見えるかい?」

 

「鬼畜ではなく、キ○○イには見えますね」

 

「夏世君。君は一体何を見ているんだい?ここまで人畜無害な研究者は他にいないよ?」

 

「鏡見ますか?」

 

「必要ないよ。毎朝チェックしているからね。それがどうかしたのかい?」

 

 二人の会話を聞き流しながら俺はベッドに戻る。

 

「蓮太郎、大丈夫か?」

 

「あぁ、悪いな。驚かせた」

 

「うむ、気にするな。それに妾はこの実験、付き合ってもいいと思うぞ」

 

「延珠……」

 

 俺が驚いていると延珠は笑い。

 

「あのジュース美味しいし。それに妾が関わる事で完成が近付くならそれだけ妾以外のイニシエーターも助かるのだろう?」

 

「……あぁ、そうだな」

 

 天使の様な笑顔で告げられた言葉に俺はただ頷くしか出来なかった。

 




投稿完了!!今回はこんな感じです。はい、ご都合主義と罵るならば罵るがいい(興奮しながら)
まぁ、個人的に考えたこの世界の子供たちの救い方って感じですね。政治的な意味ではもう少し後になりますが、イニシエーターの子供たちの為にそして一番救いたい延珠の為に付け加えた設定です。反対意見もあるかもしれませんが、どうかご容赦を
後、小比奈が随分と死神博士に懐いていましたが、まぁ、そこは話的に有効な感じを書こうとしたらどういう訳か、孫と祖父的な感じに……まぁ、内容はそんな和やかなモノじゃないんですけどねww
そして今回出てきた生体コンピューター。何に使うの?とか疑問に思うでしょうけど、彼らの拠点にはレールガンに加えて、怪人の製造プラントがあります。当然これらには作業を円滑に進める為のスーパーコンピューターが必要なわけで。えぇ、後はご想像の通りです。次回もお楽しみに


研究者A「小比奈たん、prpr」



次回の転生者の花道は……



「えっと【黒影部隊】初瀬亮二。【グリドン部隊】城乃内秀保。【ナックル部隊】ザック……成る程」



「その時は……俺も木更さんの復讐を手伝う」



「簡単に言えば、レヴィちゃん達に正義の味方をやって貰いたいのです」

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