ブラック・ブレット 転生者の花道   作:キラン

9 / 17
どうも、作者です。コンパチヒーローシリーズ最新作【スーパーヒーロージェネレーション】というのが出るようですね。実に楽しみです。詳細は後書きに書くので興味が出た方は公式ホームページをチェック!!なんか、小説関係ないなww


大ショッカー襲来編
第九話 お見舞いと増える居候


「此処か、レヴィがいるという店は」

 

「はい、松崎さんの言葉なので、間違いないでしょう」

 

「いい匂いですね」

 

 お店から漂う甘い香りに思わず声が出てしまう。こんなお店にお世話になっているレヴィが羨ましい。

 

「先ずは挨拶だな。菓子折りは……諸事情で持って来れなかったが、まぁ、良かろう」

 

「えぇ、誠意が大事だと松崎さんが言っていましたから、それにレヴィがいると用意しても直ぐに食べられてしまうでしょう」

 

 私の横でディアーチェとシュテルが話しあっているが、私はレヴィが普段どんな物を食べているか考えている最中です。

 

「よし、出陣だ!!ユーリ、行くぞ?」

 

「え?はい、行きましょう。一杯食べますよ!!」

 

「待て!?何故そうなる!?あぁ、こら!!勝手に入るな!!一番は我だと最初に言っただろうが!!!」

 

「まぁ、こうなりますよね」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「お見舞い~♪お・見・舞・い~♪」

 

「分かったからはしゃぐなっての。病院は静かにする所だ」

 

 病院の廊下で俺は前を上機嫌に歩くレヴィを注意する。何故病院に来たのか、理由は二つだ。一つはレヴィのガストレアウイルスによる体内侵食率を知る為、これについてはかなりアッサリと終わり、少し拍子抜けした。もう少し仰々しい機械や検査が待っていると密かに期待していたのだが、出て来たのは血圧を測る様な機械で、計測した後、体内侵食率を聞かされるという事だ。

 

「それにしても、お前って侵食率低いんだな」

 

「ん~、そういうの良く分からな~い♪」

 

 顎に指を当て、考える仕草をした後、また何時もの笑顔に戻る。彼女の侵食率は18.9%平均よりやや高めだが、そこまで危険視するほどでもないらしい。その言葉に俺は少しだけホッとした。

 

「此処だな」

 

「おぉ、此処だ~♪」

 

 二つ目はこの病院に入院している少女のお見舞い。正直、面識は殆ど無い。というより、暗闇での出会いだった為、顔も覚えていないだろう。だが、彼女達には会わなければいけない。

 

「失礼しま~す♪」

 

 数度ノックをしてからドアを開ければ病室に入るレヴィにため息が出る。この少女は見るモノ全てが新鮮なので、外に連れ出せば何時もこうだ。まぁ、慣れたが。

 

「あ、あの誰ですか?」

 

「ボク?ボクはレヴィ・ラッセル。君は?」

 

「わ、私はアミティエ・フローリアン……です。コッチは妹のキリエ・フローリアン」

 

「アミティエにキリエだね。宜しく~♪」

 

 挨拶と共に二人の少女の手を握って、ブンブンと振り回すレヴィに苦笑しつつ、病室に入る。

 

「あ、貴方は……」

 

「や、随分久しぶりだね。というより、覚えてる?」

 

 結構、時間が経っているし。特にあの事は彼女達にとってトラウマだから忘れてるモノだと思ったが。

 

「私達を助けてくれた人ですよね。覚えてます」

 

 嬉しそうなアミティエの言葉に同調するようにキリエが頷く。

 

「そうか。改めて、自己紹介だ。俺は葛葉コウタ。君達にはお見舞いとこれからの話をしにきたんだ」

 

 そういって、お見舞い用に持ってきた果物を乗せた籠を窓際のテーブルに置く。その際、レヴィが籠を見ていたが、手は出さないだろう……多分、きっと。

 

「君達を調べさせてもらったけど、自営業の民警だったようだね。それで、社長兼プロモーターが以前の事件で……あんまり、気軽に話す話題じゃないな」

 

「いえ、その……私はあの人がいなくなって、良かったと思ってますから」

 

 そうアミティエが告げる。先日、彼女達の会社を訪れ、帰ってきた戒斗が不快感を隠そうとせず、珍しく荒れていたのを思い出す。それだけ酷かったのだろう。

 

「それでだ。君達はIISO預かりとなって次のプロモーターが見付かるまで施設に入る事になる」

 

「……やだ」

 

 今まで黙っていたキリエが呟いた。

 

「もうやだ……」

 

「キリエ……」

 

 ギュッと枕を抱く彼女を優しく抱きしめるアミティエを見て、俺はため息を吐く。

 

「それじゃ、もう一つ提案だ。イニシエーターを辞めないか?」

 

「え!?でも、私達イニシエーター辞めたら」

 

「その代わり、実はウチの店が住み込みのアルバイト募集してるんだ。年齢は関係なくて、熱意があれば大歓迎なんだけど」

 

 そういって、安心させるように笑う。

 

「もし、君達が良いなら歓迎するよ。それも嫌だって言うなら、そうだな。その時は俺の上司に頼ろう。一応、最終的な解決策は持ってるだろうし」

 

 別に独断ではない。見舞いに行く前に聖天子と凰蓮さん、京水さんに話をしたのだ。その時の答えは満場一致で保護だった。

 

『恐らく、彼女達は心身ともに疲れ切っています。そんな彼女達がまた戦いに赴くのは難しいでしょう』

 

『一度、恐怖を味わった兵士はね。そう簡単に戦場には戻れないの。大人でさえ全然ダメなのに。子供がそんな状態じゃ、兵隊としては期待できないわね』

 

『捨て駒か、下手すれば研究用としてモルモットが関の山ね。それだったらワテクシの店で雇おうかしら。レヴィだけだと大変だし。店も華やぐしね』

 

 三人の答えを思い出す。そして俺は二人に手を伸ばす。

 

「一緒に来ないか?」

 

「……ぶたない?」

 

「あぁ、叱る事はあっても絶対に手は上げない」

 

 しっかりと答えるとキリエは俺の事をジッと見た後、ゆっくりと俺の手を握る。その後、アミティエも握った手に自分の手を重ねる。

 

「あの、お兄さん」

 

「ん?」

 

「後ろ……」

 

 言われ、見ればシャリシャリとリンゴを咀嚼しているレヴィがいた。しかも、最後の一口を呑み込んだレヴィの膝の上には空になった籠がある。

 

「ん?どうかしたの?」

 

 小首を傾げる彼女の仕草はとても可愛いモノでこんな状況でなければ頭を撫でてやりたいが、取り敢えず今は置いておこう。

 

「なぁ、レヴィ。そのお見舞いの果物はこの二人の為に買った筈なんだけど?」

 

「うん、とね」

 

 そういって、レヴィは人差し指を顎に当てて少し考えた後。

 

「食べた時に果物とか腐ってたらダメだよね?だから味見♪」

 

「全部食べてるよな?」

 

 そう聞けば彼女は右手でコツンと頭を叩き、舌を出して、可愛くウィンクする。所謂【てへぺろ】だ。そしてその行動を取った彼女に対して俺は取り敢えず右手を振り上げる。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「そうか、学校からの連絡はそういうことだったのか」

 

 そういって、職場から帰ってきた兄さんは深々とソファーに座った。

 

「お前の言い分も分かる。お前は単に友達を助けたかっただけだろう?」

 

「うん、けど、僕は延珠さんを助けようとしたけど、無理だった」

 

「それは違う」

 

 遮る様に告げられた言葉に顔を上げる。そこには優しげな兄さんの笑みがあった。

 

「お前は自分が信じる正しい事をしたんだ。例え、それが無駄だった事でも卑下する様な事はするな。ソレはお前が助けたかった人までも裏切る事になる」

 

 そういって、兄さんは僕の頭を撫でる。

 

「お前は正しい事をした。ソレはその延珠という子が感謝の言葉を述べたのが証拠だ。だから、お前は何も恥じる事はない。胸を張っていろ」

 

「うん」

 

 兄さんのその言葉がとても嬉しかった。

 

「だが、これからどうするか。学校を変えても、噂は広まるからな」

 

 そういって、兄さんは顎に手を当てて、何かを考えた後。

 

「あまり行かせたくなかったが、仕方ないか」

 

 そういって、兄さんは一枚のパンフレットを持ってきた。東京エリアでも有数の進学校のパンフレットだった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「うぅ~、殴るなんて酷いよ~」

 

「お見舞いの果物を勝手に食べる奴があるか」

 

 前を歩く、レヴィが頭を擦りながら呟くので、即座に返してやる。拳骨一発で済ませたのだからそれでいいだろう。

 

「にしても、今日は一段と繁盛してるな。どうしたんだ?」

 

「ボクがいないからてんちょー達大丈夫かな?」

 

 行列が出来ている店の前で俺とレヴィが呟きつつ、裏口から入ると、凰蓮さんの声が聞こえる。

 

「シュテルちゃん、二番テーブル出来たわ!!」

 

「分かりました」

 

「オーダー入りました!!五番テーブル、風都スペシャルパフェとアイスコーヒーのセットです!!」

 

「有難う、ユーリちゃん。接客も大分慣れたわね」

 

「有難うございます、京水さん」

 

「ユーリ!!一番テーブルが出来あがったぞ!!」

 

「はい、これですね。あ、いらっしゃいませ~♪」

 

 何やらかなり騒がしい、というより知らない声が三つも聞こえる。

 

「え?この声って、もしかして!!」

 

 驚き、厨房へと向かうレヴィを置いて、俺は背中で寝息を立てているキリエが落ちないように注意しながらアミティエの手を引く。

 

「今は忙しいから先に部屋に行くか」

 

「え?私たちなら外で待ってますけど」

 

「それはダメだ」

 

 裏口から出ようとするアミティエをそういって、止める。

 

「これから一緒に住むんだから外に出て待つ必要なんて無いよ。一段落するまで部屋で待ってるだけだから」

 

「王さま~!!!」

 

「む?レヴィ!?お前、今まで何処ほっつき歩いておったか!!!早く着替えろ!!えぇい、離さんかこの愚か者!!!」

 

「うわぁ、王さま~♪本物の王さまだ~!!!」

 

「こ、こら!!何を泣いておるか!!これでは我がお前を心配させたように見えるではないか!!心配したのは我の方なのだぞ!!分かっておるのか!!」

 

 厨房の方が更に騒がしくなる。すると入り口から顔だけだした京水さんが笑う。

 

「お帰り、コウタ君。早速だけどお願い出来る?」

 

「それじゃ、京水さん。この子たちお願いできます?」

 

「今は無理だから奥の個室に居て貰って。そこなら今日は予約入ってないし」

 

 言われ、二人を奥の間にある個室に迎え入れる。此処はほぼ、聖天子用の部屋であり、普段は此処でレヴィが仕事休みにパフェを食べている場所である。

 

「それじゃ、悪いけど、二人とも此処で待っててくれ。トイレはこっちにあるから」

 

「わ、分かりました」

 

 返事を聞いた俺はドライバーを装着する。

 

【オレンジ!!】

 

「変身」

 

【ロック・オン!!】

 

 頭上にクラックが開き、巨大なオレンジが降りて来る。

 

【ソイヤッ!!オレンジアームズ!!花道・オンステージ!!】

 

 変身を終えて、振り向けばアミティエが驚き、キリエが起きた。あぁ、店で変身するの慣れたけど、普通はこんな反応だよな。

 

「コウタくぅ~ん?」

 

「あぁ、はい。分かりました」

 

 京水さんの声に俺は厨房へ向かう。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ぐっ!?俺達が何したってんだよ……」

 

 腹を押さえ、俺の服を掴んでいる男を払いのけて、俺は大きく息を吐いた。

 

「糞……」

 

 腹の底に溜まった黒い感情がまた昂りだす。全く、最悪な日だ。

 

「おい……」

 

「ひっ!?」

 

 声を掛ければそこには先程まで俺の周りに倒れ伏していた男達によってリンチに遭っていた少女が怯えた声を上げる。どうやら余計怖がられてしまったようだ。

 

「あ、あの……えと……」

 

 助けてくれたお礼を言おうか、それとも殺さないでと命乞いしようか悩んでいるようだ。いや、単にパニックになっているだけか。俺はため息を吐き、ポケットから財布を取り出して数枚の札を投げる。

 

「これで、暫くは大丈夫だろう。それと、暫くは都市部に近づかないようにしろ」

 

「え……?あ、ありがとうございます!!!」

 

 丁寧にお辞儀して地面に落ちた金を拾った後、もう一度お辞儀した少女は路地裏の先へと走っていく。

 

「八つ当たりとは……情けないな」

 

 壁に拳を叩きつける。強く打ちつけた所為か手の皮が破れて、血が流れる。だが、それも気にしない。寧ろ頭に昇った血が少しでも抜けるなら流した方が良い。

 

「あのプロモーター。せめて生きていたらな」

 

 迷わず殴って、この苛々を発散できただろうに。そう思いながら思い出すのはあのミミズの近くにいた双子の少女だ。先日、彼女達の会社の調査を思い出す。

場所はビルの一室でそれなりの広さがある事務所だった。室内も綺麗に掃除されていて、第一印象は良かった。そしてこんな場所で過ごしていた双子がこの後、どう生きるのか心配になったが、それは違う意味で深刻になった。

 

「……の~?」

 

 部屋の奥に向かうにつれて饐えた臭いが増したのだ。不審に思ってその先に向かった場所には動物園にあるような大きな檻があり、その中には二人分の毛布と食器。檻の端には用を足す為に置かれた簡易トイレが置いてあった。それだけで気分が悪くなったというのに随伴した捜査班の報告によれば檻はバラニウムで出来ているという。

 

「はぁ……」

 

「あ、あの~……?」

 

 ソレを聞いた瞬間、衝動的に変身して檻を壊した。流石にやり過ぎという事で隊長から謹慎を貰ってしまった。隊長には悪い事をした。だが、それでも俺が許容できる範囲を超えていた。なまじ俺が接触した民警のプロモーターとイニシエーターの仲が非常に良かった所為もある。だが、それでもペット同然の扱いなど許せる筈もない。更に言えば、俺が檻を破壊した原因を捜査班の誰一人として分かっていなかった事が更にイラつかせた。

 

(この世界にとってアイツ等は人ですらない……!!)

 

 なら、何のためにアイツは……ペコは死ななければならなかったんだ。アイツが必死に助けた命は今でも毎日を笑顔で過ごしている。だが、その裏側ではもっと多くの子供たちが理不尽の渦にいる。たった一人救った所でなんの慰めにもならない。

 

「あの!!!」

 

 ふと、隣からそんな声が響く。驚き、振り向けばそこには金髪の少女が立っていた。

 

「あ、えと。いきなり大声で済みません。先程から声を掛けても返事してくれなかったから」

 

「あ、あぁ。済まん」

 

 謝罪を述べながら心の内でため息を吐く。そんな事にも気付かなかったとは。

 

「それで、俺に何の用だ?」

 

「いえ、その……手怪我してますよね?」

 

 指差す手は先程壁を殴った手だ。

 

「これくらいは大丈夫だ。直ぐに治る」

 

「で、でも直ぐに治療しないと化膿しちゃいます」

 

 そういって、少女は強引に俺の手を取って、迷わず水筒の中身を懸ける。唯の水だろうか、冷えた水の感触と共にチクリと傷に染みる。

 

「え、と包帯は……」

 

「自分でやれる」

 

 そういって、俺はポケットからハンカチを取り出して傷口を縛る。

 

「これで、大丈夫ですよね?」

 

「あぁ、助かった」

 

 そういうと、彼女は何処か嬉しそうにはにかむ。普段ならコレで終わり。直ぐに立ち去るだろう。だが、俺の不注意で彼女の事を無視し続けていたのだとするならば。その謝罪が残っている。周囲を見れば、近くにドーナツの屋台がある。

 

「少し待ってろ」

 

「え?あの……?」

 

 少女をベンチに座らせて俺はドーナツの屋台に向かう。夜とはいえ、こんな時間まで営業しているのは珍しい。

 

「プレーンシュガーとフレンチクルーラー」

 

「はぁい、ありがとうございま~す♡」

 

 注文と共に出て来たのは化粧の濃い男。葛葉の店よりかはキャラが薄いからそこまでは驚かんが、それでも予想の斜め上を行ったな。代金を支払い、受け取った袋を片手にベンチに座ってこちらを興味深そうに眺めている少女を見る。まるで借りて来た猫だ。

 

「ほら」

 

「え?」

 

 俺はフレンチクルーラーを少女に手渡し、隣に座る。

 

「あ、あの……私、別にご飯が欲しくてそんなことしたんじゃ」

 

「そんな事は分かっている。コレはお前を無視した事の謝罪だ」

 

「で、でも―――」

 

 すると、少女の腹から可愛らしい音が鳴る。少女は顔を真っ赤にして俯いた。

 

「少ないかも知れんが、今は手持ちがない。それで我慢しろ」

 

「い、いえ。ありがとうございます」

 

 そういって、一口食べた彼女は眼を見開き、一心不乱に食べる。そしてものの数秒で食べ終えた彼女は次の標的として俺の持つプレーンシュガーを睨む。それはもう、獲物を狙う猛禽類のような凄味がある。

 

「……ほら」

 

「ありがとうございまふ」

 

 最後まで言わずにドーナツを食べる。よほど腹が減っていたのか、それともドーナツを食べたのが初めてなのか。彼女の服はパジャマのようだが、それでも汚れが無い。だとするなら前者だろう。

 

「んく……御馳走様でした」

 

 口の周りに食べかすが付いているが、それを気にせず彼女は笑って俺に礼を告げる。

 

「あぁ、気にするな。それと、あまり子供が夜道をうろつくな。親が心配する」

 

「え?あ、あぁ。そうですね。御免なさい」

 

 何処か驚いた少女が頭を下げる。そして彼女はベンチから降りる。

 

「それじゃ、お兄さんに言われたので私は帰ります。えと、ドーナツ美味しかったです」

 

「待て」

 

 歩き出そうとした彼女を呼び止める。

 

「子供一人で夜道を歩かせるつもりはない。送って行ってやる。家は何処だ?」

 

「い、いえ。大丈夫です!!家も近いですし、一人で帰れますから!!」

 

 必死な声に先程浮かんだ予想が当たった。恐らくはちょっとした冒険感覚で夜道を歩いていたのだろう。俺はベンチに深く座る。

 

「そうか、なら早く帰って親を安心させて来い」

 

「は、はい。あのありがとうございました」

 

 こう執拗に礼を言われたのは初めてだ。俺は立ち上がって彼女に背を向ける。

 

「あ、あの!!」

 

 背中から掛かる声に振り向く。彼女は小さく笑って。

 

「私、ティナって言います!!」

 

「……戒斗だ」

 

「かいとさん……戒斗さん、覚えました!!あの、また会えますか?」

 

「どうだろうな。此処に来たのは偶然だ」

 

 そういって、歩き出す。

 

「だが、お前が腹を空かしていたら分からんがな」

 

 何故、この様な事を言ったのかは今でも分からない。だが、その時は何故か口走っていた。

 

「……はい、お休みなさい」

 

 少女、ティナの声は風に乗って、俺の耳に届いた。気付けば、腹の底に溜まった黒い感情が消えていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「という訳で、自己紹介からするか。俺は葛葉コウタ。凰蓮さんの店【シャルモン】の居候でレヴィの保護者だ」

 

「ワテクシはこの【シャルモン】の店主。凰蓮・ピエール・アルフォンゾ。宜しくね♪」

 

「私は泉京水。この店のパティシエよ。気軽にキョウちゃんでいいわ♡」

 

「はいは~い!!ボクはレヴィ・ラッセル!!モデル・チーターでパティシエ見習いだよ♪」

 

 俺と凰蓮さん、京水さん、レヴィの順で紹介した後、対面に座る少女の一人、蒼い瞳の少女が手を上げる。

 

「私はシュテル・スタークス。モデル・ホークです。レヴィとは友人というより家族でしょうか。まぁ、取り敢えずウチのレヴィが迷惑をおかけしたようで」

 

「気にしなくていいわ。子供は大人に迷惑を懸けるのが仕事なのよ」

 

「そうだな。別にレヴィ位腕白な方がこっちも楽しいから」

 

「えへへ~、シュテルん、ボク褒められてる~」

 

「はいはい、分かりました。では、次は」

 

「はい!!」

 

 勇ましく手を上げたのはウェーブがかった金髪が特徴の少女だ。

 

「ユーリ・エーベルヴァインです。モデルは……えっと……なんでしたっけ?」

 

「ベアーであろうが、忘れてどうするか?」

 

「あぅ……」

 

 コツンと頭にチョップされるユーリは朗らかに笑う。そしてチョップした少女は立ち上がり、腕を組んで胸を張る。

 

「我はディアーチェ・K・クローディア!!モデル・ライオンだ!!レヴィが世話になったな」

 

「ライオン?あぁ、だから王さまなのか。俺はてっきり相手にしてもらいたくてキャラ作ってんのかと」

 

「いえ、それで合っています。夜な夜なディアーチェは演技練習をしているので」

 

「こらぁ!!お前は何を言っているのだ!!」

 

 なにやら愉快な事になっている。

 

「それじゃ、次は二人だな」

 

「はい!!」

 

 そういって、アミティエが楽しそうに立ち上がる。店にやってきてから数時間で彼女は最初会った時よりもかなり明るくなった。恐らく、コレが彼女の素なのだろう。

 

「アミティエ・フローリアンです!!アミタって呼んで下さい!!モデル・ウルフなので、追跡はお手の物です!!」

 

「おう、宜しくなアミティエ……冗談だ、だから泣くな。俺が悪かったから」

 

 ちょっとしたジョークのつもりだったのだが、告げた瞬間、涙目になったので慌てて謝る。

 

「私はキリエ・フローリアン。モデル・コヨーテ……」

 

 元気一杯のアミタとは逆に妹のキリエは眠そうに眼を擦っている。そしてどうやら俺は懐かれたらしく、彼女は俺の膝の上から動こうとしない。これはこれで、ちょっと大変だ。

 

「うむ。では、レヴィの元気な姿も見れた事だし、我等は退散するとしようか」

 

 そういって、立ち上がるディアーチェは扉へ向かう。

 

「王さま……」

 

「そんな顔をするな。我等にこの街は危険すぎる。たまに顔を見に行くから楽しみにしていろ」

 

 そういって、彼女は見送った三人に笑顔を向けて、店の外に出て行く。

 

「って、ちょっと待てぇぇ!!!」

 

 だが、直ぐに怒鳴りながら店に戻ってくる。

 

「シュテル!!ユーリ!!何故お前達は共に来ぬのだ!?」

 

「え?帰るんですか?」

 

「あぁ、そういえば」

 

 首を傾げるユーリにシュテルはポン、と手を叩き。

 

「先程、此処に住む事を凰蓮オーナーに勧められました」

 

「それを早く言わんか!!」

 

「ま、まぁ、ディアーチェ。その事を言われたのは忙しかったし、シュテルも忘れてたんですよ」

 

 掴みかかろうとするディアーチェを諌めるように告げた言葉にディアーチェは腕を組む。

 

「ま、まぁそれなら別にいいが。本当に忘れておったのか?」

 

「えぇ、我が王に伝えるのを忘れていました」

 

「……ん?しかし、我と話す機会はコウタとレヴィが帰って来てからあった気がするが」

 

 そういうと、お約束の【てへぺろ】である。ただ、無表情なのが少々変だが。

 

「シュテル~!!!」

 

 今度こそ、掴みかかったディアーチェの叫びと嬉しそうに笑うレヴィ。あたふたするユーリととうとう寝始めたキリエをどうしようか考えているアミタ。そしてその光景を何処か嬉しそうに眺める凰蓮さんと京水さん。

 

「はは、凄いなコレ」

 

 俺は苦笑するしかない。でも、恐らくこれから楽しくなるだろう。

 




投稿完了です!!今回は日常部分ですね。紫天一家の残りメンバーとフローリアン姉妹(ロリ)の登場。そして皆さんお待ちかねのはんぐり~の店長です!!え?違う?いやいや、でも皆さんこの人来たら面白そうだなって思いましたよね?え?ティナの方がいい?まぁ、今回はちょっとした挨拶な感じですので次回以降、戒斗とティナのほのぼの日常編をお楽しみに

そして前書きでも紹介した【スーパーヒーロージェネレーション】の参戦作品をご紹介!!……大丈夫だよね?

先ずはガンダム勢

νガンダム:定番ですね。古谷さんのボイスもグッドです
ガンダムF91:何と言うか、凄く久しぶりな感じです「ゲームオーバーだド外道ーー!!」
ガンダムSEED:そろそろ違うのを呼ぼうよ……好きだけどさ
ガンダムOO:ダブルオー格好いいな~
ガンダムAGE MOE:スーパーガンダムAGE2の活躍に期待しよう。そして赤い奴は出てくるのか?
ガンダムUC:スパロボではちょっと物足りなかったので期待

続いてウルトラマン勢

ウルトラマン:シュワ!!
ウルトラセブン:デュア!!
ウルトラマンティガ:TV版の声だぁ~(泣)
ウルトラマンメビウス:未来君引退して代役悲しいです
ウルトラマンゼロ:やっぱり喋るな~ww
ウルトラマンギンガ:やった、ギンガだぁ~

そして期待の仮面ライダー勢

仮面ライダーBLACK RX:まさかのてつをご本人登場!!
仮面ライダー電王:まぁ、クロスさせやすいよね~
仮面ライダーW:やっぱりフィリップ君は出ないようです(泣)
仮面ライダーOOO:本人のセイヤーはやっぱり格好いい
仮面ライダーフォーゼ:まさかの代役!!でも、結構似てる
仮面ライダーウィザード:変身時の声エコー再現とはすばらしい

以上!!幾つか追加されるけど、おわかり頂けただろうか?この中に鎧武の名前が無い事を
えぇ、作者は参戦作品を見たときにリアルで( ゚д゚) ・・・(つд⊂)ゴシゴシ (;゚Д゚) …!?
な感じでした。
もしや、このまま出ないのか?いやいや、流石の財団Bも出してくれるでしょう。出さなかったら絶対許さないけど(極を握りしめながら)
ではでは次回もお楽しみに



次回の転生者の花道は……



「し、知らないよ!?昨日、コウタが寝てる隙にコウタの真似しようとして間違って洗剤の中に落としたなんて無いからね!!!」



「「「スイーツは別腹!!!」」」



「イケメンで強いのね!!嫌いじゃないわ!!!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。