それと皆さんが望む登場してほしい艦娘がいるのであれば、教えていただければ幸いです。
五月雨には少し悪いことをしたが、自分との違いに色々と気づいて多くを学べるだろう。
出来ることなら最後までやらせてやりたかったが、それをすると次から演習が出来なくなってしまうからな、仕方ない。
「……第一艦隊帰還しました」
「お疲れ様。どうした五月雨?」
暗い顔をしていて、いつもの五月雨の元気さとはまるで違う。
明らかな異変であることは間違いない。思い当たる節としては指揮権の変更だが……。
「いえ何でもないです……」
本当にどうしたのだろうか?
「ちょっと体調が悪いみたいだから、寝かせてきてあげていい提督?」
「あぁいいが……」
明石につられて、五月雨は鎮守府(家)へと帰っていく。
「うーん、俺が悪いのか?」
「そうですよ! 糞提督!」
突如として後ろから蹴飛ばされる。
誰だと後ろを振り向くと、そこには軽蔑するような目で見てくる大井の姿があった。
「いくら演習の相手がいなくなるからと言ってああいうことしますかね!」
「いやしかしだな――」
「しかしじゃありません!」
弁明をしようとするが本気で怒っている大井は聞く耳を持ってくれない。
それほどまでのことをしてしまったのだなと、大井とは逆に冷静になる。
「まぁまぁ、落ち着きなって」
「そうですけど……」
あいだに入ってくれた隼鷹の助けもあり、大井は不服そうな顔ながらも下がる。
謝るべきなのは間違いないが、何について謝るべきなのだろうか。
指揮権を変更して、五月雨のプライドを傷つけたことだろうか。それとも自信を失わせてしまうよう采配をしてしまったことだろうか。
悩めば悩むほど、何について謝るべきなのか分からなくなってしまう。
「あーもうじれったいなー、提督さそんなに迷うんだったら直接聞いたら。五月雨ちゃんもそれぐらいは教えてくれるでしょ」
「……そうだな。少しとりあえず謝りに行ってくるよ」
立ち上がり、とぼとぼと鎮守府(家)に向かって歩いていく。
気が重いな。
鎮守府(家)の扉の前にやって来て、コンコンとノックをする。
すると中から明石が出てくる。
「提督、後は頼みますからね」
頷いて入れ替わるようにして、中へと入っていく。
「提督……」
両手でお茶を持ちながら体育座りをしている五月雨。
大分病んでいるのか、瞳は少し虚ろでうっすらと黒い気配を漂わせていた。
「五月雨、大丈夫か?」
「……はい、五月雨は大丈夫です……」
五月雨はそういうが、全然大丈夫そうには見えない。
「もし差し支えなければだが。どうして落ち込んでいるのか聞いていいか?」
「…………」
沈黙。
やはり、駄目だろうか。
落ち込む原因を作った自分が、何故落ち込んでいるのかと聞いてくる行為は神経を逆撫でする行為と同じ。
いくら温厚な五月雨と言えど、幻滅するだろう。
「……私期待してたんです」
五月雨の口から紡がれるであろう凄惨な言葉に体を硬め、身構える。
「提督が私を旗艦に指名してくれた時、私も明石さんが教えてくれた五月雨さんのようになれるのかなって」
「でも私駄目駄目で、五月雨さんみたいに上手くできなくて、その上提督の期待まで裏切っちゃって」
「……提督、私って本当に必要ですか?」
思っていたような言葉は紡がれることは無かった。
だが提示された問題は、回答するにはかなりの精神力が必要とされることは分かり切っているため気を緩めることは出来ない。
「……必要だ」
「……それは私が五月雨さんに似ているからですか? 私が五月雨さんに似ているから――優しくしてくれるんですか」
五月雨の虚ろだった目から涙が流れる。
それはとても悲しそうで、悔しそうで。
胸がキリキリと締めあげられる。
「確かにそういった節はある」
「ただそれだけじゃない」
「生きて欲しいから」
「生きて欲しい……?」
胸の内を気持ちをどうにかこうにか言葉に変換して喋る。
「そうだ。生きて欲しいと思ったから優しくなったんだ。いや優しくなるんだ」
「それは何も五月雨に限定されたことじゃない。北上や大井、明石、レーベ、隼鷹そして全国の艦娘に生きて欲しいと思っている」
必死過ぎて、何を言っているのか分からなくなる。
しかしそれでも伝えなければと、詰まりそうになる口を必死に開いては頭で考える。
「でも私駄目な子です。提督の期待に応えられない、駄目な艦娘なんです。そんな私が提督に優しくしてもらう権利なんて――」
「権利があるとかないとかいう話じゃない。俺が優しくしたいからしてるだけなんだ。ただの自己満足なんだ」
「……それでも受け入れてくれないか?」
「いえ……ぐすっ、いえ!」
何とか納得してくれたようだ。
安堵から硬くなっていた体が一気に緩んで、どっと疲れが襲ってくる。
靴を脱いで、中に入り、いまだ泣いている五月雨を、励ましながら背中を撫でてあげた。
その後、五月雨が落ち着くのを待っていると、泣き疲れてしまったのか、落ち着くよりも先に夢の中へと飛びだっていってしまった。
鎮守府(家)の玄関前にて
「ったく、本当に手のかかる人ですよねー」
「全くです」
「まぁでもいいんじゃない、提督らしくてさ」
「かぁっー! 今日もお酒が上手い!」
「皆さん提督のことを凄く信頼してるんだね」
「まぁ、今の聞いての通りの人だからねー」
「愚直といいますか、子供っぽいと言いますか、手のかかる提督はかわいらしいと言いますか。はぁー……」
「あんなんでも覚悟を決めて帰って来たんだから子供よりかは幾分か成長したんじゃない?」
「言えてるねぇ。めでたいから皆で一杯とかどうよ?」
「ぼ、僕飲めないんですが」
「大丈夫、大丈夫、ちゃんとジュースもあるからさ」
「それじゃ皆で一杯いきますかぁー」
「さんせい」
その後皆でお酒やジュースを飲みながら楽しくお話しましたとさ。