鎮守府に提督が帰還しました   作:二クス

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注意
轟沈描写あり



A案 五月雨が轟沈しました

作戦決行当日早朝 運動場にて

張り詰めた緊張感の艦娘によって埋め尽くされている運動場。

その中、一人小さな台への階段を上っていく。

そしてその台の上に立つ。

「……、今回の作戦。非常に厳しい戦いになるであろう。敵の規模、強さ、これまでと比べても尋常ではない。その上、私の人望の無さから援軍もない。

……はっきりと述べさせてもらうが、これは君たちを死地に送るようなものだ。最善は尽くすがそれに変わりはない。それでも君たちは行くのか? 嫌であれば今すぐ述べてくれ」

最後の確認。

だが誰一人として声を上げるものはいない。

「……誰かが述べてくれれば、この無茶な作戦を中止できたのだがな……。

君たちの覚悟しかと受け取った! 

必ずや君たちに勝利を捧げ生還させることを、ここに誓おう!

故に皆よ、暁の水平線に勝利を刻め!」

そういうと艦娘たちは同調するように、声を高らかに上げて士気を高める。

「総員 出撃!」

皆が走っていく。

艤装を装備し、海の上へと、水平線の彼方へと行ってしまう。

「……もう後戻りはできないな……」

「はい。ですが私たちは後悔してませんよ?」

そう言って後ろから隣へと移動してきたのは、混戦した戦場の情報を処理するために残ってもらった大淀だった。

横目で大淀の顔を見ると、清々しいほどまでに覚悟を決めた顔をしていた。

彼女たちにもそんな顔をさせていたと思うと、自分がとても情けない。

「そうか……」

「はい。ですから今は少しでもお休みください」

「ありがとう」

水平線の彼方に祈り、大淀と共に鎮守府の中へと歩いていく。

 

「敵艦を発見!」

通信機から聞こえる赤城の声から作戦は始まった。

詳細な敵艦の情報を皆に共有し、夜から戦闘は始まった。

敵の規模を鑑みて、挟み撃ち作戦を決行する。

作戦は上手くいき端にいた、雑魚を蹴散らすことに成功する。

同時にこちらも少しの被害を受けるが、順次後方にいる明石へ向かわせ被害を最小限にしながら戦闘を進める。

雑魚を蹴散らすと、徐々に敵艦は本格的に牙を向けてくる。

重巡級、戦艦級の登用が始まり、戦闘はさらに激しくなる。

敵空母を少しでも引きずりだし、朝には制空権を必ず取りたいこちらは挟み撃ち作戦を止め、合流させ、大淀を鎮守府から出撃させる。

合流からの一点突破を警戒した相手はつられるように動く。

それと同時に層が薄くなったその場所へ隠れさせていた潜水艦隊を投入する。

潜水艦隊の魚雷により、敵軽空母を撃沈、エリート空母を中破に成功し潜水艦隊をすぐに下げる。

激しい抗争が続く中、朝がやって来る。

同時に空母型同士の激しい制空権の取り合いが起こる。

潜水艦隊の功績はあれど、簡単に取ることは出来ない。

その下で行われる、戦闘もさらに激しさを増し、こちらにも中破、大破した艦が出始める。

大淀が到着しその艦たちの間を埋める。

優勢のまま作戦は進み、エリート級の艦が少なくなりフラグシップ級が徐々に見えてくる。

同時に温存しておいた、大和、武蔵を投入し、戦況を加速させる。

だが戦況は思うようには加速しなかった。

原因は弾薬不足。

予測して、対策案として補給艦を後ろに待機させていたが、それでも足りない。

事前に交渉しておいた鎮守府に神威を向かわせるがそれでも、時間はまだかかるらしい。

戦況は徐々に押し返される。

燃料は十全に足りているようで弾薬を少しずつ消費しながら保ててはいるが、厳しい状況。

何か打開策を考えていると、大和が改フラグシップ級のヲ級を撃沈させたの報せが入る。

それを聞いてすぐに軽空母組二艦と明石に武器の変装を指示する。

軽空母二艦が、攻勢に加わり、少しずつ押し返される戦況を維持することが出来るようになる。

だがその間の被害は大きく艦隊の半分が中破、大破に追い込まれている。

しかし相手もフラグシップ級と改フラグシップ級、姫級を残すのみとなった。

ここでようやく補給艦の神威が帰ってくる。

戦艦型を中心に補給させる。

それから戦艦型の活躍により、フラグシップ級を改フラグシップ級を轟沈させる。

だが同時に大和、武蔵の弾薬が底をつく。

 

「くそっ!」

「申し訳ありません提督。弾薬全てを消費しました……」

「いやよくやってくれた」

短く大和、武蔵にねぎらいの言葉をかけ、大淀にチャンネルを変える。

「大淀、周囲の弾薬状況は」

「申し訳ありません。提督。私たちの弾薬も姫級二艦どころか一隻も倒せるほど残っていません」 

「そうか」

チャンネルを赤城に変える。

「赤城、隊の残りの艦載機は」

「申し訳ありません、打ち尽くしました」

「そうか……」

チャンネルを大鯨へと

「大鯨全員の魚雷は」

「少しありますが姫級相手には致命傷は難しいかと」

「そうか……」

補給艦が再度来るのは二時間程度先、現状の弾数では仕留めるのは厳しい。

だからといって今、無理をしても倒せる見込みは薄い。

あと一歩だというのに。

拳を強く握りしめ、全軍へとチャンネルを変える。

「全軍――」

「まだです!」

撤退を口にしようとすると、通信機から五月雨の強い声が聞こえてくる。

「五月雨さん何を!」

同時に大淀の慌てた声が聞こえ、五月雨が何をしようとしているのか察し、背中が悪寒で震え上がる。

「大淀どうした!」

自分の勘が外れていることを願い、慌てて大淀に確認する。

「五月雨さんが、姫級に突撃して――」

「五月雨止まれ! 金剛! 長門!」

急いで近くの動ける艦娘に声を掛ける。

「shit!」

「五月雨! 止まれ!」

「止まりません!」

「いいから止まれ五月雨!」

必死に声を掛けるが、五月雨は無視を続ける。

「このままじゃお前が! ――」

「提督、私に言いましたよね。この作戦には大きな意味があるって

私に提督の考えが分からないですけど、私は提督を信じてますからだからがッ!」

通信機越しに砲弾が水に落ちる音ががすぐそばに聞こえてくる。

激しく、通信機が壊れてしまったのではないかと勘違いするほどのつんざく音が続く。

それでも五月雨の強い声は聞こえてくる。

「安心してください。一隻は道連れにしてでも連れて行きますからッ!」

「止めるんだ五月雨! そんなことをしても!」

「お願いッ! 皆に――」

五月雨の願うような鬼気迫る声の途中で、大きな破裂音がする。そしてジジジジとだけが通信機から漏れてくる。

「あっ…………」

涙がぽろりと落ちる。

そしてつなぎ目はなく、ずるずると落ちる。

「おお、よど。さみだれは……」

「……轟沈を確認しました……」

大淀から届く通信機の音にも、同様にぐぐぐぐと噛みしめる音が入る。

「ですが、提督! 五月雨さんの魚雷で姫級一隻の撃沈を確認! 提督今なら――」

「全艦、残り全ての弾を使い、敵姫級を討伐せよ!」

今残る全ての気力を使い、吐き捨てるように叫んだ。

通信機から聞こえる艦娘たちの声に音がいやになるほど響き、自分の力の無さを恨み戦闘は終わる。

 




はい
私事ではありますが、五月雨を一度轟沈させました。
それも単純な不注意から来る轟沈でした。
A案はこうであれば、救いがあったのにという当時の私の理想のお話です。
もう轟沈ボイスは聞きたくないですね……
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