鎮守府に提督が帰還しました   作:二クス

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EMERGENCY
注意
極端な流血表現が一部含まれます。
苦手な方はブラウザバックもしくは大きめに取られている空白を目安にスクロールしてください。

















A案 提督が帰還します

「提督……あなたのせいで、あなたのせいで私、轟沈……しちゃいました」

頭から血を流し、体のいたるところの肉が削げて血まみれ状態の五月雨が、こちらを見たことのないほど不気味な笑みを見せてくる。

「違う、俺は、俺は!」

五月雨の言葉を否定し、目を背けるように五月雨から逃げる。

だが五月雨は俺の逃げ道を塞ぐように、暗闇から目の前に現れる。

「違わないですよ……あなたが私をこんな風にしたんです」

「こんな風に」

五月雨にオレンジ色の閃光が当たる。

咄嗟に目を瞑り、目を開くとそこに五月雨はいなくなっていた。

ドクンドクンと鼓動の音がする。

ただそこには、誰のかも分からない、血の海が広がっていた。

そしてその血は自分の手、腕、胴体、脚にべっとりと纏わりついていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

叫びと共に目が開く。

「はぁ、はぁ、はぁ……くそっ!」

ボロい小屋の窓から見える外は、まだ暗い。

うな垂れるようにちゃぶ台に肘をつき、飲みかけの水を飲み干す。

「ろうそく消えてやがる……」

傍にある箱からろうそくを取り出し、マッチで火をつける。

マッチの火を噴いて消し、ちゃぶ台の上へ無造作に置き、戦術書に手を掛ける。

 

朝が来ても外に出ず、夜になっても寝ず、ただただ戦術書を読み返しては書くを繰り返す。

ふと気を失うとボロボロの五月雨が、艦娘が出てきては起こされる。

そしてまた戦術書を読んでは、新たに戦術を書くを繰り返す。

そうしてただ死んでいるような毎日を過ごしていたとある日。

バシャンバシャンとボロ小屋の扉が何度も何度も数時間にわたり叩かれる。

子どものいたずらだと気にすることはせず、戦術を紙に書いていると鍵の開く音がする。

さすがにおかしいと感じ、扉を見ると扉は少し開けられ、小さなすき間からそれは中へ入ってくる。

「何でお前たちが……」

妖精さん達だ。

一人が入ってくると、残りの妖精さん達も中へと入って来て私に敬礼をする。

困惑する私に、妖精さんの中から一人が前に出てきて、三枚の折りたたまれた紙が手渡される。

手を震わせながら、その手紙を開ける。

そこには五月雨の字が隙間なくびっしりと書かれていた。

「提督がこれを読んでいるということはきっと、私はこの世にはもういないのでしょう。もしも私がまだいるのであれば、そっと閉じて元の位置に戻しておいてください。後できればこの手紙を読んだ記憶もなくして置いてください。」

間違いなく五月雨の文字で、五月雨の言葉。

胸が締め付けられ、息が苦しくなる。

手紙は続き、五月雨の当時の心境について書かれていた。

緊張しているということ、不安になっていること、だけどこの戦闘の先に待つ明るい未来のこと。

そして覚悟を決めたということ。

「本当はもっともっと話したいことはあるんですけど、全部書こうと思ったら紙が何枚あっても足りなさそうなので、この二枚で終わりたいと思います。

最後に

今までありがとうございました提督。

どうか皆に勝利を。」

何度も何度も消しては描かれた形跡のある手紙が濡れ、文字が滲んでいく。

濡らさぬよう、三枚目の紙を離して読もうとするが一文字すら読めない。

文章が小さくまばらに書かれているのは見えるがそれ以上は分からない。

仕方ないと、一度手紙を置く。

「妖精さん、ありがとう。五月雨の手紙を届けに来てくれて」

感謝を述べると、妖精さんたちは疲れているのか互いに背中を預けながら手を挙げて応えてくれる。

あの鎮守府からここまで来るのには相当大変だったのだろう。

心の中で妖精さんにもう一度感謝をして、五月雨の手紙を思い返す。

後悔する気持ちが強くなった気がする。

「だけど、ありがとう五月雨……」

心の中でずっと悩んでいた。

意識が薄れる中、私を憎んでいたのではと。

無謀な作戦を提案して、実行した無能な私を憎んでいたのではと。

だが手紙からはそんな思いなど一分もありはしなかった。

もちろん、轟沈時に書かれた手紙ではない。

それでも手紙からは、轟沈してもなお憎んではいないと思わせる強い五月雨の意思が感じ取れた。

「涙は止まったか……」

許されたような、晴れやかな気分のまま最後の紙を手に取る。

「あぁ、俺は本当に無能だ……」

手紙には数えきれないほどの文字。

詰め詰めで小さく、一言だけ書かれた文章の山。

表だけじゃない裏までびっしりと。

「こんなにも慕われていたのに俺は……俺は!」

疑ってしまった。

見捨ててしまった。

許せない。

こんなにも支えられていたのに逃げた自分が許せない。

少しの負い目しか感じていなかった、あの時の自分が許せない。

「戻らないと。あの場所へ」

「皆に許してもらう為じゃなく、慕ってもらっていた皆を生かし勝利を捧げるために!」

身だしなみを整え、大事な手紙を抱え、妖精さんたちを連れ、本部へと。

「どうか私を再入隊させて頂きたい!」




はい。
これで自分に対する戒めの文章(A案)、お話の土台部分は終わりとさせていただきます。
本当はもっと苦しめたかったのですが、あまりやり過ぎると日常どころの話ではなくなってしまうのでこれぐらいで許してください。まぁ、A案に興味のある人は少ないと思いますが。
さて次からはようやく、「提督が復帰して艦娘に出会い、再開、そして日常」のお話が始まります。
戦艦系や空母系の艦娘が登場するのはかなり後になると思われますが、長い目で見ていただければと思います。
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