鎮守府に提督が帰還しました   作:二クス

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日常が始まります。
と言っても今回のはちょっと思ってた感じとは違うんですけど。



艦娘と提督の日常
五月雨が着任します


「どうか私を再入隊させていただきたい!」

頭を地面にこすりつけ、全力で願う。

無音の中、机を隔てて座る@は困ったように息を吐く音が聞こえてくる。

「……。私は君の申請で君を退役させたはずだが」

「はい。その通りです」

「そんな奴が今更何の用だ」

机の向こう側から威圧感をひしひしと感じる。

だが怯むことはない。

私はもう退役するときとは違い、確固たる覚悟を持ってここにいるのだから

「私を再入隊させていただき、鎮守府に再着任させていただきたい!」

「貴様のような軟弱物に務まるかと言っているのだ!」

声を荒げ机を叩く元帥。

ごもっともかもしれない。だがそれでも譲る気はない。

「お言葉ですが元帥。私は軟弱物ではありません」

「では何だと言うのだ!」

「艦娘が死んだ程度で退役するような奴が、軟弱物でなければ何だと言うのだ!」

「ですが仲間が死んで落ち込まぬものがいるなら、そいつは狂気に身を預けた狂乱者ですよ元帥!」

「そうであろうとも。だが仲間の死を無駄にしないその者は、仲間の死を無駄にした貴様よりかは随分とましであろう!」

五月雨の死が無駄に終わったと笑われているような気がし、頭の血管が千切れる。

「だからこそ私は力をつけて、帰って来たのです!」

「何のためでもない! 五月雨の死を無駄にしないために!」

机に手を叩きつけ、目前にいる元帥を睨みつける。

元帥も私を睨み返してくるが、少し気圧されているように見える。

「……。それだけの気力があるというならもう心配はいらぬか」

「えぇ!」

後腐れが無いよう、覇気を込めて応える。

元帥はため息をついたかと思えば、倒れるように椅子に座る。

そして机の引き出しから、分厚い資料を出す。

「今から貴様の配属先の説明をする。とりあえずそこに座れ」

「はっ!」

大人しく、客用の椅子に座り元帥は目の前の長机に引き出しから出した分厚い資料を落とす。

「拝借します」

まとめられた資料を捲って、目を滑らせていく。

「配属先は○○。最近深海棲艦が出没するようになった場所だ」

「鎮守府は未完成。滞在する艦娘は存在しない」

「貴様の艦娘も多くが活躍しているためすぐに場所は動かせん。そう言ったこともあり貴様に、この前妖精が勝手に作った艦娘を一体やろう」

「はぁ?」

妖精が勝手に?

妖精さんは確かに気まぐれではある。

先の土下座している時も、後ろでなにやらカチャカチャと音を鳴らし遊んでいたぐらいにはかなり自由だ。

だが妖精さんは妖精さんなりでプロ意識を持っているのか、堂々と失敗はしたり変なものをつくったりするが勝手に資材を使うことは一度としてなかった。

なるほど、これは元帥の照れ隠しというやつですか。

「入って来なさい!」

元帥が外の扉に向けて声を出す。

「はい!」

すると忘れるはずのない声が、扉を腰て聞こえてくる。

資料に落としていた目を瞬時に、扉の方向へと向ける。

ゆっくりゆっくりと開かれる扉からは、とても、よく見覚えのある制服がゆっくりゆっくりと見えてくる。

 

 

「五月雨って言います! よろしくお願いします。提督!」

彼女がいた。

五月雨という名の彼女が見紛うことなく帰ってきた。

「本当に……五月雨なのか?」

「はい!」

「っ! すまなかったッ!」

彼女が何処かへ飛びだってしまわぬよう、強く抱きしめ謝罪する。

「あわわわわわわ!」

五月雨はびっくりしている時のような声を上げるが知ったことではない。

五月雨が帰ってきたことを確かめるようにさらに強く抱きしめる。

「おい貴様、離れんか」

「あぁすみません元帥。少し喜びに舞い上がってしまいました」

五月雨を離し、元帥に向き直る。

元帥は困ったように眉を狭めて、私を見てくる。

「念のために言っておくが、その五月雨は新造艦だ」

「はい?」

何を言っているのだろうか。

確かに艦娘は同名個体が建造されることはあるが、それでも名前や好物が一緒なだけだ。

同じ顔、性格の子が生まれてくるわけではない。

「だからその五月雨にはお前と過ごした記憶はない新造艦だと言っている」

「稀にあるのだ。轟沈した艦が、新造した時に出てくることは。本当に極稀ではあるが」

元帥は大真面目にそう言っていることをようやく理解した。

だがそんなことが本当にあり得るのだろうか。

「そうなのか……五月雨?」

「は、はひ……」

何故か顔を隠し、耳を赤くしているが確かに五月雨は肯定する。

本人がそう言うということは、確かなことなのだろう。

早とちりではあったが、愕然とする。

「……そうか……そうだな。すまなかった五月雨」

「い、いえ!」

「最後に聞かせてもらおう」

「仲間が死んでも、貴様はもうくじけることはないか?」

「私がくじけることはもうありません。皆のためにそして亡き五月雨のために」

「そうか、であれば早速五月雨と共に配属先へ行け。私からはそれで以上だ」

「はっ!」

 

 

「それで来たわけだが……」

「はい」

「何にもないよー!」

見渡すぐらいに何もない敷地。遠くを見れば砂浜に海。

せめてもの救いは、目の前に雨風を凌げそうな家が建っており、そのすぐ横に建築予定と書かれている看板がある程度。

「ここが鎮守府何ですか提督?」

五月雨も初めて見る鎮守府に困惑の様子を隠せない。

「一応そういうことではある」

前の鎮守府とは見る影もないほどみすぼらしいが、資料の場所は確かにここを示していた。

恐る恐る扉を開けて、少しだけ顔を覗かせ中を見る。

「おう……」

「凄く散らかってますね」

「そうだな」

中はどうしたらそうなるのか分からないほど、埃が地面を埋め尽くし、扉から入った風が止めどなく埃を舞わせていた。

カビの匂いも凄まじく、扉の前から中へ入ろうという気がまるで起きない。

そっと扉を閉める。

見なかったことにしよう。そうしよう。

「提督どうしたんですか?」

五月雨は今のを見ても何とも思わなかったのか、首を傾げ聞いてくる。

そう言ったところも変わらないんだな。

少し現実逃避するが、すぐに現実へ戻り真面目に考える。

「とりあえずこの家の掃除をするための買い出しからするか」

「買い出しですね! 提督どうか私に任せてください! 初めてですけど五月雨頑張ります!」

「そうだな、それじゃ――」

そこでふと思い出す。前の五月雨が行ってきた買い出しの数々を。

まるで違う品物を買ってきたり、買い出す物を書いた紙を紛失して半泣きで帰ってきたり、渡したお金を紛失して泣きながら帰ってきたり。

「提督?」

五月雨にお金を渡して買い出しに行かせるのは躊躇われる。

だが、それでいいのか。

今の五月雨は、前の五月雨とは別人。

どれだけ顔や性格、言動が似ていたとしても別人なのだ。

であるなら前の五月雨がしてきたことの数々は別ごと考え、今の五月雨に買い出しへ行かせるのが提督として、一人の人として正しいのではないか。

よし。

覚悟を決めて懐から長財布を取り出す。

「五月雨、私から五月雨に対して、初めての指令だ」

「はい!」

元気よく返事する五月雨。

返事はやはりすごく頼りになる。

「今から言うものを買ってきてくれ」

「はい、何でも言ってください!」

「よし。それでは行くぞ。ほうきを手帚を一つずつ、新聞紙を一日分、ぞうきんを二枚、バケツを一つ、最後に古着を二つ何でもいい、以上だ」

少し長くなったが、最低限でもこれぐらいは欲しい。

紙に書いてもいいが、それでは駄目だ。

最初はやはり前の五月雨と同じでなければ。

「えっとほうきに新聞紙、バケツにぞうきん後古着ですね。五月雨了解しました! それでは行ってきます!」

あっこれ、めっちゃ不安だ。

やっぱり俺も……。

いやいや駄目だ、これも五月雨の成長の一つ。邪魔をしてはならん。

五月雨の後姿を眺め、自分の不安を押し殺そうとする。が逆に不安が増し目立つ提督服から着替えこっそりとついていく。

「――♪」

鼻歌をしながら歩いている五月雨。

五月雨の横を歩く人もそんな五月雨を見て、和やかになり笑顔になって素通りする人、喋りかけては笑顔で見送ってくれる人。

様々ではあるが、皆五月雨に好感を持ってくれているようだ。

「ここの人とはいい付き合いを出来そうだ」

安心して見ていられるだろうと思いながら、五月雨を追跡する。

おっ、店頭にほうきを売っている場所があるじゃないか。

さぁ、五月雨、そのお店に入るんだ。

キョロキョロと周りを見ながら鼻歌を口ずさむ五月雨はものの見事に横を通り過ぎていく。

何してる五月雨!

そこにほうきが売ってあるぞ!

「ほうき屋さんはどっこかな~♪」

なん……だと……。

介入をするべきか、それとも見守るべきか。

重大な二択を迫られている、そんな気がした。

落ち着け。何のために三か月、ボロ小屋でシュミレーションしてきたと思っているんだ。

こういう時に、頼るための頭脳にするためであろう。

さぁ、集中しろ。

脳内に無数の可能性を加味した、シミュレーションが開始される。

そして行き着いた答えは……。

何が起きようとも、損失は起こらない。

「故に介入するほどのことではない。最後まで見守るべし」

そう結論付け、ほうきを自分で買うような無粋なことはせず五月雨を追跡する。

「あっ、バケツだ!」

そう言っているうちに、五月雨は店の前の地面に一つ置かれているバケツを見つけ走っていく。

どう見てもただの店が使っているバケツです。はい。

売り物ではないということは一見にして分かるが、五月雨はニコニコして店内に入っていく。

「すみません。このバケツを一つ貰えませんかー!」

「あん、家は日用品店じゃねぇぞ! 冷やかしなら帰ってくれ!」

「す、すみません!」

やはり店内の人に怒られているようだ。

焼き物店にバケツはねぇのかと押しかけて来たのだ。

ふざけてるのかと思われても仕方ない。

「なら、さっさと帰ってくれ!」

「は、はい……」

店から出てくるのかと思い、店前に展示されている焼き物を食い入るように眺めやり過ごそうとする。が、五月雨の脚は店から出てくる前に止まった。

「わぁこれ凄いですね!」

「あん? お前そいつに興味があるのか?」

どうやら店内に置いてある焼き物が五月雨の目に留まったようだ。

何故か黒い眼帯をしており、もう一つの目には三本の切り傷が斜めに入っており、顔だけ見れば大分やってた人よりの風貌。

首から下は何処にでもいるような腹巻とTシャツを着たおじさん。声もかなりどすの利いた声をしていた、

いやー結構怖いなー。

覗き込みながらそう思い、二人のやり取りに耳を澄ませる。

「はい! 何だか、こうぶわっとしているというか、くすぶられるようなそんな気迫が伝わってくるというか。とにかく凄いです!」

「子どもならではの直感ってやつか。だが悪くねぇ感性を持ってやがるなおめぇ」

「あっ、すみません。すぐに出て行きますね」

思い出したように出てきそうになる五月雨に驚き、慌てて先ほどと同じ様に焼き物を食い入る人の姿を取る。

「いや待て、嬢ちゃん。金はなんぼぐらい持ってんだ」

また五月雨は足を止める。

さすがにこれ以上覗くのはリスキーだと思い、声だけを聴きとる。

「えっと、これぐらいです」

「それで、買い物の内容は」

「ほうきが一つにバケツが一つ古着が一つと、後はえーと。あっ新聞紙が一つです」

すでに忘れてたり、間違えてたりするがまだ許容範囲内。まだ大丈夫だ。

「何だ掃除でもすんのか?」

「はい!」

「それじゃあぞうきんも必要だろ」

ナイスアシストおっちゃん!

もうそれだけあれば、掃除道具には困らない。そのままおっちゃん頼むよ!

「確かに提督がぞうきんも言っていたような気がします!」

「子ども、案外、いや見た目通りおっちょこちょいだな」

「えー!」

五月雨の声が余裕で店の外まで聞こえてくる。

他人におっちょこちょいと言われたのが、そんなに衝撃的だったのだろうか。

そう言えば前の五月雨も私と出会う前からそれを気にしている部分はあったな。

「よし、この値段ならよしこいつはどうだ! 俺の自信作の湯のみだ!」

「わぁ、この湯飲みも凄いですね!」

「そうだろ、そうだろ」

おっちゃんの上機嫌な声が聞こえてくる。

うん、うん、さすがは五月雨。誰とでもいい関係を築けるのは才能だな。

「でも、せっかくなら提督と二人分が良いんですけど……駄目ですか?」

頭に電流走るッ!

あ、あざとい! あざといぞ五月雨!

私が見えていないその先で、おっちゃんに上目遣いをして篭絡しようとしているのか五月雨!

少し、少しだけ……。

ほんの少しだけ、店内の中を覗き見ようとする。

「くっ! 特価セールだ、持ってけ泥ボー!」

「えぇ! 私泥棒じゃないですよ!」

覗き見た中には、上目遣いでおっちゃんを篭絡しようとする五月雨はおらず、おっちゃんの突発な物言いに驚く五月雨しかいなかった。

くそっ! 見れなかったじゃないか!

俺の脳め判断が遅いぞ! 何のために寝る暇も惜しんで三か月シュミレーションをしてきたんだ!

「言葉の綾だぜ、嬢ちゃん……」

「あっそうなんですね」

その後もおっちゃんは五月雨に親切にしてくれて、道案内用の紙と買い物リストを手書きしてくれた。

外見によらず、やはりいい人のようだ。

「もう迷うなよ」

「はい! ありがとうございました!」

外まで出てきて五月雨を見送ってくれる。

いやー、この人とはいい関係が築けそうだ。

それからはとんとん拍子で進んだ。

「えーと、ここがこうで。あっ、あった!」

五月雨はおっちゃんが書いてくれた道案内の紙を頼りに、日用品店に到着して中へ入っていく。

「お願いします!」

そして買い物リスト通りに買い物をして、お店の奥のおばあちゃんに見せる。

「偉いね、お嬢ちゃん」

おばあちゃんは慣れた手つきでそろばんを打ち、そろばんを五月雨に見せる。

「いえ!」

五月雨は残ったお金を出し、それらを買う。

「ふんふーん、提督喜んでくれるかな~♪」

五月雨は上機嫌でスキップをして帰っていく。

その姿を見ていると、目から熱いものが流れる。

「あれ、涙が……」

もうこの世に五月雨はいないと感じた涙なのか、それとも五月雨はまだ生きているという安心から来た涙なのかは分からない。

ただまだ未練があるのか、と思い情けない自分に少し落胆する。

「とか考えてる場合じぁない、急いで帰らないと!」

少しだけ自分の心から目をそらし、鎮守府という名の家に急いで帰る。

 

「提督ー、五月雨ただ今帰還しました! あれ提督そんなに息を上げてどうしたんですか」

急いで帰り、何とか提督服に着替え五月雨を迎えることに成功する。

だが少し服が乱れているので、少し手直しして何もない様相を保つ。

「いや何でもないぞ それよりさぁ掃除を始めるぞ! 五月雨!」

「はい!」

五月雨が持ち帰って来たものを降ろす。

自然を装いバケツの中に目を通し、布袋を開け中身を見て確認して手帚が入ってないことを確認する。

「ん! 五月雨、手帚はどうした! それにこの湯飲みは?」

「あ、あれ? また私ドジしちゃいました!?」

オロオロとする五月雨に可愛いと苦笑いがこぼれる。

「仕方ない、もう一度買いに行くか」

「うぅすみません。私のせいで」

五月雨は顔を俯かせ、落ち込んでしまう。

想定していたことではあるが、やはり少し困ってしまう。

どうした物かと悩んだ末に、焼き物を一つ拾ってみる。ゆっくり見てみると素人目ながらとてもきれいに作られているように見えた。

「そう落ち込むな。この湯飲みはいい焼き物じゃないか」

「ですよね!」

手始めに焼き物を褒めてみると五月雨はまるで自分が作ったかのように喜ぶ。

他人を思う、五月雨らしい木の持ち直し方だな。

「あぁ、せっかくだ。飲み物も買ってくるか。例えばオレンジジュースとか」

「良いんですか!?」

「あぁせっかくの湯のみだ。使わないと勿体ないだろ?」

「はい!」

そうして今度は二人で街へ繰り出し、買い物をして鎮守府を二人して掃除しました。

そして掃除の後にはオレンジジュースを二つの焼き物に入れて、ゆっくり談笑しましたとさ。

 




はーい
実質ストーカーですね。やばいですね、この提督(誉め言葉)
まぁこういう過保護は五月雨限定で終わると思いますが。
取りあえず、次からは提督と五月雨を中心にした、他艦娘との絡みをやっていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

次に独自設定の説明です。
艦娘は同型艦でも性格や口調、容姿が違うという設定を追加しました。
例 艦名   性質   性格  口調  容姿
  五月雨1 ドジっ子 活発  元気  清楚
  五月雨2 ドジっ子 努力家 弱気  根暗
などです。
稀にイレギュラーが発生しますが、大抵は上記のとおりです。
これについて大きくフィーチャーすることはありませんが、たまに出てくるかもです。
この設定の意味は単純に全艦娘を登場させるためなので、どうかご理解お願いします。
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