ポケモン世界で知識チートしようと思ったのに、俺のポケモンが知らない技しか使わない 作:れもんぷりん
もう完結まで全部考えてます。
俺はポケモンが好きだ。
本筋の作品だけでなく、ポケパークや不思議のダンジョン、ポケスクにポッ拳、ポケモンレンジャーにポケカ。ポケモンが関わるゲームを小さな頃からずっと遊んできた。
俺は俗に言うポケモン廃人ではない。
個体値厳選も努力値調整も考えず、自分の好きなポケモン6体で戦う。技の構成や受けるダメージの感覚は掴んでいるが、逆に言えばそれだけ。
廃人犇めくネットワーク対戦で上位になれる程ではない。
それでも必死に考え抜かれた厨パや環境ポケモン達相手に好きなポケモンで戦うのがこれ以上なく楽しかった。画面の向こうで対戦相手が驚いているのを想像してニヤけた。
どうだ、俺の仲間は凄いだろう!
環境じゃなくたってここまでやれるんだこいつらは。
こうげきが高いポケモンにカッコいいからという理由で採用した特殊技が刺さった時など堪らない。
俺はこんな感じでポケモンを心の底から楽しんだ。
全世代で図鑑はコンプリートしたし、ストーリーも何周も回った。
ポケモンが魅せてくれる世界を楽しみ尽くしたのだ。
そうして遂に待ちに待った新作が発売されようとしている。興奮で胸がいっぱいだ。
「かひゅっ!こひゅーこひゅー」
残念なのはどうやら新作がプレイ出来そうにないことか・・・
「■■、大丈夫!?」
横で母さんが慌てているのを感じる。
産まれた頃から病弱だった俺は一度も外に出歩いたことがない。病院で処置をし続けないと生きられなかったのだ。
そんな俺を支えてくれたのが母さんと父さんの二人だった。本当に暖かい家族。そんな二人が俺を元気付ける為に買ってくれたのがポケモンだった。
俺が初めてポケモンに触れたのはダイヤモンドパール。その時からポケモンは俺をずっと元気づけてくれた。
体の感覚がなくなっていく。
今日はひどく冷える。
今まで迷惑をかけてきてごめん・・・
いや、それは違う。
本当にほんとうにありがとう。
もう動かない体に最後の力が灯る。冷え切って感覚のない指先で母さんの頬に触れた。
自然と笑みが浮かぶ。
声は出せないけれど、俺は幸せだった。
「──て、起きてってば!」
そんな声と共に目が覚めた。何だか変だ。体が動くなんておかしい。
俺は死んだはずじゃなかったのか?
「あんたいつまで寝てんのよ!」
叫び声と同時に顔に枕が叩きつけられた。
うーん新鮮な感覚。
「ぐべっ!」
俺にこんな騒がしい知り合いはいない筈だ。よくよく周りを見渡すとそこは全く知らない部屋だった。
しかも何だか視点がおかしいような・・・
ん?何これ、なんかおててが小っちゃいんだが。それに目の前にいる女の子も見るからに小学生に見える。
大体七歳位か?
俺はなんでそんな子と目線が一緒なんだ?
「なに?まだ寝ぼけてんの?」
目の前の女の子は誰なんだ?見た事も無いくらい気が強いが・・・
その時、頭にずきんと痛みが走り、様々な光景が、記憶が、走馬灯のように流れてくる。
そうして俺は全て思い出した。
自分がこの世界に転生したこと。
先ほど木から落ちて気絶して運ばれていたこと。
その衝撃で前世の記憶を思い出したこと。
全てを思い出し、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちてくる。
「あれ・・・何で・・・」
「ちょ、ちょっと大丈夫!?」
女の子、ではなくミーナが袖で涙を拭ってくれる。
しかしそうか。
もう俺は家族に会えないのか。その事実をしっかりと受け止め、前を向いた。
母さん、父さん、俺頑張ってくるよ。
いつか天国で誇りに思ってもらえるように・・・
◆
俺が落ち着き、ミーナも安心して俺の横に座り込んだ。すごく良い子だ。
さて、これからのことを考えようと思う。
家族に会えないのは辛いが、どうせ死んでいたんだ。この転生は喜ぶべきものだろう。
しかも先ほど思い出した記憶でもの凄く衝撃的な事実が明らかになったのだ。
この世界にはポケモンがいる!
俺はポケモン世界に転生したんだぁー!
「いやっふうううううう!」
俺のテンションはぶち上がった。
横に座るミーナの手を取り、謎のダンスを踊る。ミーナはあまりにも情緒不安定すぎる俺に困惑していた。
すまんミーナ。だがこれは仕方のない事なんだ。だってポケモン世界だぞ!?
俺が愛したポケモン達が実在する世界なんだ!
こんなに嬉しいことがあるか?
今いるのがどの地方かは分からないが、そんなの何処だって良い。
よし、チャンピオンになろう。
前世で見ていたアニメやゲームを見る限り、この世界の人々にポケモンの個体値や努力値といった概念は無いように思える。
そりゃ同じポケモンでも多少強さに違いがあることは感じているだろうが、その程度だ。
つまり、そこまでバトルに関して詳しくないということだ。
その点、俺はバトルのシステムから技の優先度まで全て理解しているし、技マシンが落ちている場所やポケモンの進化条件、ポケモンの特性まで完璧に把握している。
これはあまりに大きなアドバンテージだとは思わないか?
ジムリーダーと戦う時、相手が使ってくるポケモンに四つの技まで全て知っているというのはもはやチートの域だ。
ポケモン世界に転生したのならやはり目指すはチャンピオン一択!
俺の冒険が始まるぜ!
「何言ってんのあんた、ポケモンは十歳からじゃない」
へ?
◆
『はあ、はあ』
森の中を駆ける、駆ける。
呼吸は途切れ途切れで体力は限界が近い。
それでも逃げる。必死に走る。
「こっちじゃねえのか」
「さっさと捕まえろよ」
二人の男が駆け足で通り過ぎるのをやり過ごす。
捕まったらまた地獄を見ることになる。下手したら二度と外には出られないかもしれない。
僕はもう限界だった。
「おいおい、こりゃやべえんじゃねえか?」
「ああ、どうやら相当特別なポケモンらしいからな」
「っクソ!見つけたらタダじゃおかねえぞあの野郎!」
周りに人の気配がなくなった。
途切れそうになる意識を何とか繋ぎ止めながら軋む体を動かす。
これで一安心だろう。
そう油断したのが悪かったのだろうか?背後から音もなくマッスグマが現れた。凄まじいとっしんで木々をすり抜け、そのまま僕に激突してきた。
今日の獲物に定めたのだろう、こちらを向いて威嚇してくるじゃないか。
弾き飛ばされ、壁に叩きつけられて僕は死を覚悟した。思い返せばひどい一生だった。
ポケモンバトルに使えないと判断されてからはずっとボックスの中。やっと出してもらえたかと思えばそこは預け屋という名の地獄だったのだ。
ああ、死にたくない。
まだやりたいことが沢山あるんだ・・・
「おい!何してんだお前!」
その時、僕に狙いを定めるマッスグマへと叫ぶ者がいた。八歳ほどの子供だろうか?無謀なことをするものだ。早く逃げろと言いたいが疲れで声が出ない。
マッスグマは少年を鋭く睨みつける。大人が来たのなら逃げたかもしれないが、所詮は小さな子供。
獲物を逃す理由にはならないらしい。
もう一度僕の方へと向き直り、噛みつこうとするマッスグマを見て今度こそ生を諦める。思わず強く目を瞑り、体を縮こめた。
衝撃が来ない。
恐る恐る目を開けると目の前には少年の背中。
「ぐうぅぅぅ」
彼はマッスグマのかみつくを人間の身でありながら真正面から受け止めたのだ。その代償として右腕からは血が滴っている。
『逃げて!お願い!』
先ほどは動かなかった口が今なら動く。こんな少年を巻き込む必要はない。僕のことなど気にせず逃げてほしい。
「いやだ!見捨てない!」
それでも少年は首を横に振った。
何とかマッスグマを押し返し、僕を抱えて走り出した。森というのは危険だ。余程走り慣れていないと短い子供の足ではすぐに転んでしまう。
少年も何度も転び、その度に僕には衝撃がこないように強く抱きしめた。もう彼はボロボロ、足にも疲労が蓄積して走るのすら覚束ない。
それでも構わず僕を抱きしめて逃げた。
後ろからは僕を追ってくるマッスグマ。
木々を足場にし、巧みな動きで少年を追い詰めていく。
『もういいよ!君だけでも逃げてくれたら・・・』
僕は必死に彼にそう訴えかけた。ここまで僕を想って行動してくれた人など今までいなかった。
もう充分だ、彼に傷ついて欲しくない。
「いいや、俺は決めたんだ」
僕の言葉に頑固な少年はそう返した。
この子は死ぬのが怖くないのか!?
『何を?』
不思議に思って問い返す。
何がこの少年をここまで突き動かすのだろう?
何が彼をここまで熱くさせるのだろう?
「お前を俺の相棒にする!」
『ええ!?』
それはずっと欲しかった言葉。
バトルで使われることはなく、ひたすらタマゴを産ませられるだけだった嫌な一生に光が差し込んだ気がした。
きっとこの時、僕の運命はこの少年と交わったんだ。
「だから今は逃げるんだぜ、相棒!」
傷ついた体からは想像できないほど明るい笑顔で笑う少年に見惚れた。
この人の相棒になるのか・・・うん。
嬉しいなぁ・・・!
どんどん力が湧いてくる。
僕の中で何かが変わったんだ。
それが何なのかなんて分からないし、どうでもいい。
今はただ彼の力に!
『ねえ、倒しちゃおうよ』
「へ?体は大丈夫なのかよ」
それ君が言う?そう思って笑ってしまった。
確かに体力は限界に近いかもしれない。
それでも今の僕なら・・・
君と一緒なら・・・!
これぐらい、乗り越えて見せるさ。
『大丈夫だから、降ろして』
「わ、分かったよ。じゃあ初陣といくか!」
『うん!僕たちなら!』
「ああ、俺たちなら!」
『「誰にも負けない!」』
そう叫ぶと体の底から無限に力が湧いてくる気がしたんだ。考える前に体が動く。
僕はその衝動に身を任せるようにして技を繰り出した。
「よし、じゃあへんしn『
僕の元のトレーナーは有り得ないくらい強い人だった。伝説のポケモンを何体も所持していたし、特別な特性を持つエースバーンや謎に武道を使いこなす熊みたいなポケモンも沢山持っていた。
僕にポケモンを産ませては孵化し、その能力の高さが低いと見ると野生へと捨てて処分する。産まれたばかりのポケモンが生きていける訳がない。
きっと皆どこかで野垂れ死んでいるだろう。
運良く能力に恵まれたポケモンも悲惨な末路を送った。"王冠"と呼ばれる物で限界まで能力を引き出され、何処から入手したのかも分からない薬で更に能力を引き上げる。その後、追い打ちの様に怪しげな草で性格を捻じ曲げられるのだ。
相手のポケモンの技を受けるためのクッションとして造られたようなポケモンも何体も見た。
幾ら嫌だと叫んでも、ポケモンの言葉がトレーナーに伝わる事はない。
でも彼の手持ちのポケモンは皆強かった。
誰も彼もが一体でこのガラルの頂点を取れるような奴らばかり。だから僕はあの子達の勇姿を強さを、この目にしかと焼き付けた。
少なくとも僕だけは、絶対にあの子達の事を忘れないように。
体が熱い。
自分の体を変質させるのは慣れたものだが、それでも真似をする対象が目の前に居ないのは初めての経験。
へんしんは使えるが、今更体力のない僕がマッスグマにへんしんしたところで負けるのは自明。
なら思い出せ!
あの勇姿を!
あの輝きを!
あの強さをおおぉぉっ!
──
僕の体が変質していく。
逞しい四肢で地面を踏み締め、鋼鉄よりなお硬い鎧を纏う。口元には彼が何時も携えていた剣を咥えた。
「え?ちょ、ちょ・・・え?」
後ろで相棒が困惑しているのを感じ取ったが、無理もない。この年ならメタモンがへんしんポケモンだということを知らなくても可笑しくないからね。
じゃあ見せてあげるよ相棒!
君に救われて覚醒した、僕の強さをね!
噛み付いてくるマッスグマの攻撃など痛くも痒くもない。容易く受け止め、前足で軽く小突いた。
それを腹に受けたマッスグマは演劇の様に吹き飛ばされる。
そりゃあそうだ。彼は精々レベル二十程度だろう。
今の僕は極限まで育て上げられたザシアン、それもレベルは百だ。
それでも最大限の手加減はしたのだ。これはじゃれつくを打ち切らず、一発で留めた形である。じゃないと死んじゃうかもしれないからね。
ポケモンが死ぬところを見せるのは相棒に嫌な記憶を植え付けてしまうかもしれないので、出来るだけ控えようと思ったのだ。
「いや・・・えー、うん。すっげえぜメタモン!」
相棒も喜んでくれているようで何よりだ。
相棒と一緒なら、どんなことも乗り越えていけるような気がするんだ!
『これからよろしくね、相棒』
「ああ、よろしくな」
なんて心地良い会話なんだろう。今でも夢なんじゃないかと疑ってしまう位だ。
どうやら相棒はなにか悩んでるみたいだけど・・・
「うん、決めたぜ」
また何かを思いついたみたいだ。
嬉しそうに顔を綻ばせている。
「お前の名前は・・・」
これが僕と相棒との出会い。
きっとここから僕の物語は始まるんだ・・・
そういえば何で僕の言葉が分かるんだろう?
この時期にSVではなく敢えてソードシールドで書くなんて馬鹿だなぁ。
ということで、主人公パーティーの初めの一体はメタモンです!
夢特性を持たない6Vメタモンはバトルで使えないとされて預け屋に縛り付けられた。嫌気が差した彼は保管された自分のモンスターボールを破壊し、外の世界へと逃げ出した!