ポケモン世界で知識チートしようと思ったのに、俺のポケモンが知らない技しか使わない 作:れもんぷりん
主人公視点は絶対入れたかったので書きました。
基本ギャグなので深く考察とかはしなくても大丈夫です。
頭空っぽで楽しんでください。
この世界に転生して一年が経ち、気がついたことが二つある。
一つ目、俺はポケモンの言葉が分かった。何となくニュアンスが分かるだとかそういうレベルじゃない。言語として聞こえてくるのだ。初めて気がついたのは家で飼われているワンパチの鳴き声だ。それから意識して聞いてみると食事の催促やトイレの報告、適当な呟きが全て理解できるようになったのだ。
最高じゃん!ポケモン達と会話できるなんて・・・それだけで幸せだ〜!
二つ目、残念ながらこの世界のポケモンバトルはゲーム準拠ではなく、アニメ準拠らしい。つまり、俺がゲームで磨いた対戦技術はほとんど役に立たないということだ。アニメではシザークロスでトリックルームを破壊するという不可能かつ誰も思い付かない奇想天外な戦法が成り立つのだ。
更にアニメ準拠のバトルということはターン制バトルが成り立たない。それに従って素早さが高い方が先に技を繰り出せるというわけでもないのだ。ここで不思議になってくるのが伝説ポケモンの扱いだった。
例えばディアルガさんの話をしよう。ディアルガの専用技、“ときのほうこう”を同レベルで育成もしていないジバコイルに放つとする。ジバコイルは結構な余裕を残して耐えきることができるだろう。
そんな訳なくない!?
ガチ伝説のディアルガが放つ渾身のときのほうこうがそこらの一般ポケモンに耐えられる訳ねーだろ!もし仮に耐えられるとしたら、それって本当に伝説と謳われるだけのポケモンなのか?
この様に考えていくとゲーム対戦の知識って全く役に立たないと思わないか?
ここまでくると“まもる”という技すら信用できなくなってくる。だって進化前ですらアルセウスの攻撃を無傷で耐え切る障壁を作り出せるって・・・んな訳ねえじゃん!
この世界で前世の知識をアテにポケモンバトルをしていたら痛い目を見ることになるだろう。この時点で俺は対戦に関する知識というアドバンテージがなくなったのを感じていた。
それでもポケモン育成の考え方が形成されているというだけで充分だろう。
「いつまで考え事してんのよ」
じっと考えこんでいるとミーナが話しかけてくる。俺の唯一の幼馴染であり、お隣さんでもある。
青髪長髪でくりっとした茶色の瞳が映える。将来美人になるのが約束された容姿だな。
「悪い、もう着いたのか」
揺れる車の中で時間潰しに色々と考えていたのだが、どうやらもう目的の場所に着いたらしい。
そう!ワイルドエリアに!!
俺が転生したのはどうやらガラルらしかった。ということで母親に駄々をこね、ワイルドエリアに行きたいと一年間言い続けた結果、遂にピクニックに連れてきてもらえたのだ。俺はここで相棒を探す旅に出るぜ!
・・・まずい、迷った
ワイルドエリアに着き、良い感じの場所を取れたのは良い。その後、カレーが出来るまで遊んでいて良いということだったから俺は旅に出た。
相棒を探す旅だ。きっと長く険しい道のりになるだろうとは思っていたが、まさか開始十分で帰り道が分からなくなるとは思わなかった。よくよく考えてみれば俺は前世含めて一人で出歩いた経験が皆無なんだった。
クッ、この歳(前世合計)になって迷子になるとは・・・一生の不覚!
と、ふざけるのはこの辺にしておこう。現実逃避は楽だが何も生み出さない。
どうやら今いるのは森のようだ。周りにも沢山のポケモンがいて、そのあまりの美しさに目移りしてしまう。
バタフリーが羽を虹色に煌めかせながら羽ばたく。何故だか分からないがそれを追いかけたくなった。何か考えて動いたわけではなく、ただ誘われるように着いて行ってしまったのだ。
美しいバタフリーを追って森を進む。何だか冒険をしているみたいですごくワクワクする。光を照り返す泉や風に揺れる木々の青さ。大地を踏み締め、雄々しく立つペルシアン。
全てが美しく、俺を魅了した。
突然、バタフリーがこちらを振り向き、一声鳴いた。
──たすけてあげて
「え?」
そうとだけ鳴くとバタフリーは空高くまで舞い上がり、美しい軌跡だけを残して消えた。まるで今までが幻だったように感じ、不思議な感触に浸っていると、ポケモンの鳴き声がした。俺は一気に現実へと引き戻される。
それは意味のある言葉ではなく、苦しみから出てしまった悲鳴のような響きを持っていた。思わずその方向へと走り出す。危ないかもしれない、行かない方が良いのかもしれない。
それでもきっとあのバタフリーはこの事を俺に知らせる為に飛んできてくれたんだ。なら俺は、俺のしたいようにそいつを助けることにした。
走りながら辺りを見回すと・・・いた!
「おい!何してんだお前!」
どうやらメタモンがマッスグマに襲われているようだ。勢いで叫んでしまったが、正直手を出さない方がいいのかもしれない。きっとマッスグマだって生きる為にメタモンを襲っているのだろうから。
でもメタモンは俺が一番好きなポケモンなんだ!これは運命に違いない。絶対にあいつを俺の相棒にする!
そう決めて今にも飛び掛からんとするマッスグマの前へと躍り出た。
咄嗟に体が動いてしまったが、なんて無謀な事をしているんだ・・・俺はスーパーマサラ人じゃ無いんだぞ!
噛み付こうとしてくるマッスグマを見て一瞬、逃げてしまおうかと考えた。噛みつかれたらきっと痛いじゃ済まない。犬や猫が噛みついてくるのとは訳が違う。相手はポケモンだ。
それでも俺は踏み留まった。俺が避けたらメタモンが、俺の相棒候補が死んでしまうかもしれない。
そんなの嫌だ!
「ぐううぅぅぉぉおおお!」
痛い痛い痛い痛い痛い!噛みつかれたところが焼けるように痛い。必死に声を出して踏ん張り、痛みに堪える。ポケモンだって気合いやら“こらえる”やらで必死に踏ん張れるんだ・・・俺にできない道理はねえ!
『逃げて!お願い!』
背後からメタモンの声がする。うーん流石俺の相棒になるポケモンだ、声優顔負けの素晴らしい声質をしている。
何とか冗談で気を紛らわせながら叫ぶ。
「いやだ!見捨てない!」
我が儘は子供の特権だ。駄々っ子は子供の得意技だ。
そして今の俺は子供!
どりゃあああああああああ!
腕にはもう力が入らないので、体全体を使って必死に押し返す。
何とかマッスグマを投げ飛ばし、メタモンを抱き上げて後ろに全力ダッシュ!逃げるんだよぉぉぉお!
木の枝に引っかかって服が破れるわ何度も転んで傷だらけになるわで最悪尽くしだが、マッスグマが諦めていない今、止まるわけにはいかない。
『もういいよ!君だけでも逃げてくれたら・・・』
おいおい相棒(仮)お前なんて良い奴なんだ。けど見縊るなよ、俺はお前を諦めん!
「いいや、俺は決めたんだ」
『何を?』
そう、俺はもうお前以外には考えらんねえ・・・
「お前を俺の相棒にする!」
『ええ!?』
ふっふっふ、驚いているようだがこれは決定事項。お前こそ、お前だけが、俺の相棒にふさわしいんだ!
「だから今は逃げるんだぜ、相棒!」
その言葉に何かを感じてくれたのだろうか?腕の中のメタモンが嬉しそうに微笑んでいる。なんて愛らしいんだぁ!・・・ん?なんか君熱くない?
『ねえ、倒しちゃおうよ』
「へ?体は大丈夫なのかよ」
俺はお前に無理に戦わせる為に相棒にした訳じゃ無いんだけど・・・
『大丈夫だから、降ろして』
腕の中でもぞもぞと動くメタモンを仕方なく降ろす。本人が戦うというなら仕方ない。初陣と行こうか!
『うん!僕たちなら!』
「ああ、俺たちなら!」
『「誰にも負けない!」』
決まったああああ!俺が病室で暖めていた人生で言いたいかっこいいセリフ百選の一つ!
これは幸先いいぜ、このままの勢いでいく!
メタモンといえばへんしんポケモンとして有名だ。対戦では夢特性の“かわりもの”で相手に変身していた。これがまた強いんだ。禁止伝説級が蔓延ったランク戦では結構人気があった。
だが見たところ相棒は夢特性では無い様子・・・じゃあまずはへんしんからだなぁ!いっけえメタモン!
「よし、じゃあへんしn『追憶』・・・ん?」
今なんか変な技使わなかった?明らかにへんしんじゃなかったよね・・・いや何その技聞いた事ないんだが。もしかして新しく発売されるポケットモンスターSVで新登場する技なのか?
困惑している間にも事態は加速していく。
メタモンの姿が少しずつ変わっていき、やがて見覚えのある姿へとへんしんした。
煌めく王冠に一対の翼。深い蒼を纏い、金色の瞳が全てを射抜く。何より特徴的なのはその口元、そこには一本の剣が咥えられていた。
マッスグマってこんなに派手だったっけ?俺の記憶ではこれはザシアンとかいう伝説の中でも屈指のチートポケモンだった気が・・・
「え?ちょ、ちょ・・・え?」
いや何これ?なんかバグった?もしかして運営さんがマッスグマにへんしんを使ったらいい感じに変色してザシアンに見えちゃうっていうサイレント修正を・・・んな訳ないよね。
え?これ改造ポケモンじゃないよね?野生の改造ポケモンが現れた!って気分なんだけど・・・
マッスグマが先ほどの俺より百倍無謀な行動に出た。なんとメタモン(ザシアンの姿)に噛み付いたのだ。
それはもう遠回しの自殺だぞマッスグマよ・・・
案の定マッスグマは蹴鞠のように殴り飛ばされ、こっちが可哀想に思えてくるくらい悲壮感漂う悲鳴をあげて消えて行った。
いや、凄いよ?凄いんだけどね?
なんかバトルが始まる前は二人の力を合わせて倒すって感じだったじゃん?実際始まってみたら俺突っ立ってただけだしさ?ってかその技何?チートか?
色々な考えが頭を巡り、全てがどうでも良くなった。俺の相棒が強かった、それでいいじゃないか。いいじゃないか!
「いや・・・えー、うん。すっげえぜメタモン!」
褒めるしかねえよなあ!なんかもうこの子だけでチャンピオンになれちゃいそうな勢いなんだけど・・・
いや、この世界はそんなに甘く無い筈だ。きっとそうに違いない。
『これからよろしくね、相棒!』
「ああ、よろしくな」
まあ可愛いからいいや。現実逃避は素晴らしい行為だとは思わないか?いや思え。
それよりもポケモンをゲットしたらまずはニックネームを考えないとな。
目がくりっとして可愛いし、反応がいちいち可愛いから性格は女の子よりなのかな?メタモンに決まった性別は存在しないが、相棒の精神は女の子よりな気がする。
じゃあ可愛い感じの名前がいいか。
「うん、決めたぜ、お前の名前はメモリアだ!」
これが俺の初めてのポケモン、そして一生の相棒。
「よっしゃあメモリア!目指すはチャンピオンだぜ!」
『うん!』
俺たちの誓いが森に木霊した。
ちなみにメモリアがウォーグルになって探索してくれたおかげで何とかお母さんのところまで戻ると、思い出したく無いくらい叱られました。これは俺が悪いからしっかり反省しよう。
それに傷だらけの俺を見て泣き崩れる母さんを見て、どこか一枚壁を作っていた自分に気がついたのだ。前世の母さんこそが俺の母さんだと無意識に思い込んでしまっていたのかもしれない。でも、今の母さんだって俺の母さんなんだ。
ちゃんと謝って、今では前よりずっと仲良くなれた気がする。
さて、問題はメモリアが見せた謎の技だ。今のところ三つの説が挙げられると思う。
一つ目、実は俺が知らないだけでアニメや映画で登場する特別枠のメタモンである。
二つ目、この世界でタイプ・ヌル、ミュウツーのように造られた兵器的なメタモンである。
三つ目、ゲームでは描写されていなかっただけで元々メタモンはこれくらい出来る。
この中だと三つ目が一番可能性が高いだろう。俺が覚えている図鑑説明によるとメタモンは記憶頼りに変身することも可能だという。ただ、細部までへんしんすることができないのでどこかおかしなへんしんになってしまうらしい。だがメモリアのへんしんは正しく完璧だった。おかしなところなど一つも無いというのがおかしなところだ。
ってことは俺の相棒は天才だった・・・?やだ!うちの子って天才!
なるほどな、原理は全くもって分からないがメモリアは天才だったのだ。
だがザシアンにへんしん出来るということはどこかで一度ザシアンを見たことがあるということか。むちゃくちゃ気になるけど、今はそれどころじゃ無い。
「お願い母さん!ちゃんと世話するからぁ!」
「でもポケモンは十歳からの約束でしょう?」
メモリアを家に受け入れることの説得だ。自分のポケモンを持つのは成人と認められる十歳からだという最高に無駄な約束をかました俺はその時のことを人生で一番後悔しているかもしれない。
「でも俺を助けてくれたんだ!」
そう言うと母さんは深くため息を吐いた。本当に助けたのは俺だが、実際メモリアじゃなければ切り抜けられなかった。旅に出る時もこんなに強いポケモンなら安心できる、と説得に説得を重ねる。
「はあ、分かったわ。世話は自分でするのよ」
俺の一時間以上にも及ぶ我が儘が遂に実を結んだ。これが未来のチャンピオンの実力だぜ!
『ありがとうノア!』
「おうよ相棒!」
メモリアが嬉しそうに抱きついてくる。ああ、言い忘れていたが今世の俺の名前はノアという。アニメで密かな人気があるアローラライチュウが印象的な女の子と同じ名前だな。ガラル地方では結構多い名前らしいから彼女はガラル出身なのかもしれない。
よし、相棒ができたとなれば次は特訓だ。何か特別な特訓方法は無いものか・・・
ポケモンのゲーム内で明確に特訓だと感じるものは本当に少ない。有名なところで行くとポケモンXYで登場した“スパトレ”だろうか。
サッカーを元に考えられたと推測されるが、でかいバルーンに向けて思いっきりシュートを打ち込み続けるという今日日イナズマイレブンでもやらないような雑すぎる修行だ。百歩譲ってそれで攻撃や素早さが鍛えられるのは分かるが、なんかもうちょっと無かったのだろうか?
まあめっちゃ楽しかったけどね・・・
それはさておき、メモリアが何にどれくらいへんしん出来るのかは確かめておきたい事項だ。
「よしメモリア、修行しようぜ」
『うん!』
俺の相棒がやばすぎる件について。
今のところへんしん出来ないポケモンが見当たらない。しかも全体的にクソ強いポケモンばっかりだ。冗談でアルセウスにへんしんしてくれ!って言おうとしたけどやめておいた。何が起きるのか分からないから怖いわ。いきなり過去に飛ばされてそのまま放置プレイされるかもしれない。
とりあえず確認したいポケモンは大体確認できたし、特訓といこう!
ということで何でも試してみた。
家の周りをめっちゃ走ったり、水に顔を突っ込んで息止め練習もやったぜ。どうせならということで俺も一緒にやったが、一体俺は何を目指してるんだろう。いくら努力しても辿り着けない高み(マサラ人)を目指しているのだろうか?
そうして日暮れまで特訓に明け暮れた俺たちは家の庭で倒れ伏した。
「ぜぇ、ぜぇ、すげえガッツだぜメモリア」
『はぁ、はぁ、ノアの方こそ凄かったよ』
そして気づく。
メタモンってHP以外の努力値いらねえじゃん・・・
だが嬉しそうに笑うメモリアにそんな野暮なことは言えん!
結局俺が一歩マサラ人へと近付いただけで、特訓は無意味だったのかもしれない。
それでも確かに絆は深まっていった。
次回から遂に主人公が旅に出る!
普通に十歳で成人ってやばいと思いません?
ロリコンがロリコンじゃなくなる世界ってコト!?