ナザリックに愛された社会不適合者   作:社会不適合者

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思いつき


1話目

 

 

 

多分、今周りから見た俺はおかしく映っているだろう。

というより目の前にいる男の人からも奇異の視線を感じる。

 

とりあえずそんなことは知ったことじゃない。それ以上に俺は戸惑っているのだから。

 

「NPCが人間らしくなってる…」

 

誰か今の状況を説明して…、そんなことを"41人のギルメン"を思い浮かべながら思い、目尻に涙が浮かんできた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ユグドラシル】

 

──DMMO-RPG、体感型大規模オンラインRPG。

数多開発されたゲームの中でも一際輝くそのタイトル。

 

12年前に発売されたこのタイトルはキャラクター、住居、アイテムを思うままにデザイン出来る自由度の高さから爆発的な人気を博した。

 

そんなゲームをプレイする俺こと、プレイヤーネーム『ナナシ』はユグドラシルのサービス終了日もしっかりとログインしに来ていた。

 

「……見納めかぁ」

 

そんなことを呟きながら酒場にて席に腰かけ窓の外を眺める。

リアルの人間のような動きで街中を闊歩して歩くNPCを眺めながら思い返すのはこの12年間の思い出。

 

自分のギルドを朝から練り歩き、半日堪能した俺は街へ出てきて最後の風景を目に収めていた。

思えば空虚で、でも充実したゲーム生活だった。

 

初ログインは中学2年生の頃だったか。

学校に馴染めず不登校になり、引きこもり気味だった俺が出会ったゲーム。初めて熱中できたものだった。

 

「最後にギルメンに会いたかったなぁ…」

 

俺とは違って社会人のギルドメンバーたち。

ゲームにログインして新たな自分になるぞと意気込んだもののコミュ障の俺が何か出来るわけでもなく、そんな時に出会った全身骨の異形種のアバター。

こんな俺に声をかけてくれて見た目と違って優しい人だった。

 

「……モモさんはログインしてるかな」

 

"2代目"ギルド長ということもあってみんながログインしなくなった中ギルド維持のために何度かログインをしてるのを見たことがある。

最終日の今日も記念にログインしてるのかな。今から戻れば間に合うかな。そんなことを思うが、なんとなくさよならを言うのは寂しくて戻りたいとも思えない。

 

社会人、そして異形種のアバターのみが許されていたギルドに唯一入ることが許されていた"人間種の人間"である俺。今思えば場違いすぎて笑いがこぼれる。

 

どこにも馴染めずにいた俺をモモさんが誘って、そこから見た目で避けられがちだった異形種のアバターの人達と作った《ナウンズ・オウン・ゴール》。それを母体にして作った社会人プレイヤーで異形種のアバターのみが入ることが許された《アインズ・ウール・ゴウン》。

 

ちなみに、その時こんな条件のギルドの中、人間がギルド長だったら面白いよなと発言したたっちさんの言葉に悪ノリした大人たちにギルド長を押し付けられたのは余談だ。その後、ギルド運営が大変すぎてモモさんに泣きついたのは今ではいい思い出だ。あの時はまだ高校生でしたから。

リーダーシップをここで学んどけという言葉に確かにと思ったあの時の俺を殴りたい。

 

そうして周り社会人に囲まれた俺。

そんな俺に先人として社会で生きていくための諸々のアドバイスを貰ったことを今でも思い出す。

そんな俺も社会人になったが、やはり会社でも馴染めなくユグドラシルの攻略サイトを作って得た金で生活しながらみんながいなくなったこの世界で生きてく生活を続けて数年と。

 

「明日から何して生きてこう…」

 

攻略サイトもサービス終了なら要らなくなる。貯金はあるが収入源も、生きがいも無くなる。仕事を探す?考えただけで吐き気と手の震えが出てくるな。背中にも嫌な汗を感じるのはこのゲーム世界が嫌にリアルかを理解させられる。

 

ほんとになくなるのかこの世界は。

思い入れはいっぱいある。

社会人のみんながリアルが忙しい時、ログインしっぱなしの引きこもりの俺が色々やってたからな。

 

みんなが作ったNPCのレベル上げもほとんど俺がやったしそれを見てみんなが褒めてくれた。

人間ということもあって戦闘じゃ役に立たないからみんなが戦闘で使うアイテムやら武器やら防具やらを作ったりしたし、ゲーム世界中を歩き回って伝説級アイテムや神器級アイテム、はたまた世界級アイテム集めもしたりしてた。

悪ノリで数少ない世界級アイテムめちゃめちゃ集めてそれを使ってバグレベルの武器をみんなで作ったっけか。強すぎてほんとに運営からBAN喰らいそうってことで封印したけど。

 

「楽しかったな」

 

思い出すと口元が綻ぶ。

こんな生活がもう終わるのか。ユグドラシル2とか新作出たらまた集まれるのかな。

明日は何しよう。久しぶりに外にでも出ようかな。

何時に起きようかな。

社会は息苦しいよ。ここにずっといたいな。

 

そう思いながら、時間だけがすぎ、そして、

 

 

 

 

 

──別れの時間は来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──と思っていた。

 

「…………………………ん?」

 

サーバーダウンされてない?

延期にでもなったのか?

 

「……あれ?」

 

コンソールが表示されない。どうなってる?

GMコール効かないし…。

 

周りの風景はいつものように人々が忙しなく動いてるもの。

 

「それで俺言ってやったわけよ──」

「3番テーブルにビールふたつー」

「お、ネーチャン色っぽいね。どう?今夜俺と?」

 

いや、待て。

客が店員をナンパしてる?

いや待て待て待て?

 

NPCは特定の行動以外は自律的にしないはずでしょ?

喧騒を表現するためにも多少の雑談はある。けど、NPCがナンパなんて自己目的の行動なんて本来しないはずだ。

 

「ちょ、ちょ、ちょ!」

「うぇ!?な、なんやあんちゃん?」

「え……あ、そ、その酒。その酒はなんて言う酒かなって…」

「何って……ただのビールだけど。あんちゃんの手に持ってるやつと一緒だぜ?」

 

会話が成り立ってる…?

 

「NPCが人間らしくなってる…」

「えぬぴぃしぃ?どないしたんや、あんちゃん」

 

え、どういうこと。何が起きたの。俺は今俺なんだよな?……じゃあここはどこ?ユグドラシル?

 

話しかけた男の声が耳にも入らないほどに考え込んでしまう。

額から汗が落ちてきて目に入ることすら今はどうでもいい。

 

とりあえず外に出てみないと、そうして俺は真っ先に出入口へと──

 

「お、お客さん!お代!」

「……あ、すんません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ゲーム内に異世界転移した?」

 

あれから歩き回り俺はひとつの答えにたどり着いた。

異世界転移ってやつだこれ。

 

ペロさんからよく聞かせられた。異世界転生、異世界転移というロマン話を。まさか自分がそれに巻き込まれるとは。

 

ぶっちゃけまだ実感は無い。でもそうとしか思えない状況だ。

周りのNPCは全て人間味溢れ、会話は成り立ち、五感はリアルと変わらない。

 

「まさかまさかだ」

 

思わず頭を手で覆う。

魔法はどうだろうか。アバターはユグドラシルのままだが能力は?

 

「……放出(リリース)

 

その一言をつぶやくと、すぐそばに浮かび上がる金色の波紋。そこから覗くは光を反射した鋭利な刃。

 

なるほど魔法は使える。これでとりあえず金銭的な部分は解決した。"いつでも取り出せる"。

 

「……てか帰ればいいのか」

 

指輪持ってるし、それ使っていったんギルドの方に…。

 

「…………」

 

いや待てよ。

もしナザリック内のNPCも人間味を得て自我を持った場合、俺不味くね?

 

だってあいつらの種族って基本的に人間嫌いじゃん。好みの問題っていうか種族による魂レベルの嫌悪でしょ?

俺人間じゃん?

 

「……殺される」

 

まずいまずいまずい。これまずい。

汗が滝のように出てくる。

 

あんな化け物たちに囲まれたら一巻の終わりだ。

あいつらのステータスは育てた俺はよぉ………く知ってる。嫌という程に。

無理やん。勝てんよ。死ぬわ。

 

「よし、とりあえず宿探そ」

 

そうだよ。まずは安全に。そう安全に。

ギルドに戻ってもギルメンいるかなんて確証はないんだから。誰もいなかったら死ぬんだから。いや、もしかしたらギルメンということで見逃してくれるかも?

 

「いやいやいや、命懸けるには確証が薄すぎだよね」

 

ひとまずお金には困らないんだ。ゆっくり行こう。ゆっくりね。




モチベがあれば続くよ。
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