ナザリックに愛された社会不適合者 作:社会不適合者
「……もう少し数を増やすか」
「くっ…!」
逃げ惑うシャルティアに向ける武器の射出を1度止め、波紋を1度全て閉じ、その後数を増やしながら再度展開。
間髪入れず先程同様に武器を射出していく。
「……っ、芸がないですね。同じことの繰り返しですか?」
「実際これで俺の方が押せてるし」
「〜〜!」
実際馬鹿の一つ覚えだが、これで優位に立ってるのはこっちだ。
"俺自身"が使ってる魔法は今のところ
それより気をつけるべきはシャルティアの持つあの武器……ではなくとある
それが【清浄投擲槍】。
MPを消費することで"必中"になる攻撃だ。
ぶっちゃけ耐久力が紙レベルの"人間"の俺からしたらこの必中攻撃が1番の敵になる。
対処法としてはこのスキルを用意する"溜め"の時間を作らせないために常に攻撃を続けるという脳筋戦法とかだ。これがいっちゃん楽。脳死で出来るからね。
と言っても、
「……っ」
シャルティア的には別の狙いがあるんだろうけど。
ぶっちゃけ言うと攻撃食らう覚悟で無理やりスキル使ってこっちに攻撃しかけてくるのが最適解なわけだけど、あいつの鎧の耐久力はなかなか高いからね。伝説級の武器をいくらか食らっても余裕なんよ。
俺は基本的にNPCの前じゃあまり自分で戦うことは無かった。だから多分知らないんだろうな。
その狙いは悪手じゃろ、シャルティア。
「……
コキュートスが映像を見ながら呻くように呟いた。
「そうそう弾切れが起こるとは思えませんが……あなたはどう思われますか」
コキュートスの言葉に顎に手を当てデミウルゴスは隣のアルベドへと声をかける。
彼らの言葉に彼女はその口元に笑みを浮かべ、首を横に振った。
「弾切れなど起こるわけがありません。所詮あなた方は初代様のお力の一端しか知りえてないのです。初代様が射出した武器の数々がそのまま放置されると思っているのかしら」
「……っ、まさか」
「……ソウイエバ地面ニ刺サッテイタ武器ガイツノ間ニカ消エテイル…」
映像に映るのはシャルティアとナナシ。そしてナナシから射出される武器と、その武器が地面に突き刺さる……そして、"光の粒子となって消える"一連の流れ。
「どういうことです?」
「初代様の持つ職業をあなた達は知っておりますか?」
「……全テハ知ラナイ。アノ方ハ自身ノコトヲアマリ語ラヌカラナ。タダ鍛冶師ノ職業ヲ持ッテイルノデハ無イノカ?」
そんな言葉にアルベドはクスリと笑みがこぼれた。
「そこです。そこが1番の間違いなのです。1度私は初代様に連れられ初代様の作業室に入らせていただいたことがあります。その時初めて知ったのです。あの方の持つ職業の1つが【神匠】だと」
「……聞いたことがないですね」
「当然でしょう。その職業になるためには世界級アイテムが必要になるんですから」
世界級アイテム。ユグドラシル内で200という限られた数しか存在しないアイテム。生産も量産も出来ない、唯一無二のアイテム。ナナシはその1つを使っていた。
「効果は職業の進化。初代様は鍛冶師という職業を進化させ、上級鍛冶師に、そして最上級、特級鍛冶師の段階を経て神匠という職業を手にしました」
「……それで効果のほどは?」
「効果は大まかに3つほど。世界級アイテムの加工を可能にすること。自身で作り出した武具の全てを職業のペナルティ無しに扱えること。そして、武器にアイテムを利用したスキルと魔法、さらにステータスの付与を可能にすることです」
「……なるほど、理解しました」
アルベドの説明に納得するように頷くデミウルゴス。
そこへ横からコキュートスが声を上げた。
「シカシ、ソノ職業ノ件ト弾切レシナイコトニツイテ関ワリガアルノカ?」
「えぇ、初代様はすべての武器にとあるスキルを組み込んでいます。そのスキルが【
「……確かにそのスキルがあるのであれば弾切れなど絶対に起こりえないですね」
ここまでの説明でデミウルゴスはナナシという男の戦い方、そして、強さに結論をつけていた。
「つまり、初代様が制作した、数千、数万ほどの数の武具らにはすべてスキルや魔法が組み込まれていて、それらをノーリスクで扱えるということですね」
「ナッ…!?」
「えぇ、その通りよ。さらには全く同じ魔法やスキルは存在しておらず……、つまりは数万通りの状況に対応できる柔軟性も兼ね備えているのよ」
「……流石初代様……ト言ウ他ナイナ」
驚くコキュートスのそんな言葉に、2人は笑みを深めるばかりだった。
「……チッ」
シャルティアの心に焦りが生まれていた。
相対する男の攻撃が一向に止む気配がない。
目の前の男、ナナシの強みは圧倒的物量によるゴリ押しの戦い方にある。
逆にいえばそのゴリ押しするための武器のそれらを全て消費させてしまえば裸同然になると思っていた。
ここまで一撃とて受けないように立ち回り、弾切れを狙い無防備のところを強襲する。シャルティアの狙いはそれだった。しかし、
「弾切れは無いから、安心してね」
「……っ、クソ」
"弾切れは無い"。その言葉を聞いて思わずシャルティアは悪態が口に出た。
気がつけば地面に刺さっていたはずの武器たちは消え去っている。
種は分からないが何らかの力で射出した武器を回収することが出来ているのだろう。
それならばと、シャルティア。攻撃をいくらか貰うのを覚悟でその場でスキルを発動。MPを消費し使ったのは、
「清浄投擲槍ッ!」
「……」
必中スキル。ナナシ自身も気をつけていたスキル。
種族が人間の彼ならばこの一撃のみで瀕死になるほどの威力だが。
「……あぶねー」
波紋から飛び出した鎖の数々がそのスキルを拘束。
そのまま、鎖は引き締まり清浄投擲槍を破壊した。
しかしシャルティアの狙いはこの一連の流れにより攻撃の手を緩めさせることにある。
清浄投擲槍の対処により意識が外れているその隙にナナシへと接近。近距離戦を持ちかけることが狙いだった。
耐久力を含めあらゆるステータスが人間ということもありかなり低いナナシ。近距離での戦いは分が悪い。
それに目の前のシャルティアに武器を射出するとなると自分自身すら巻き込まれる可能性がある。ここが彼の弱点でもあった。
さらにここでシャルティアのダメ押し、彼女は自身の切り札を切った。
【
効果は能力値がシャルティアと全く同等の分身を作り出すもの。一部魔法やスキルが使えなくなるが今この瞬間において魔法やスキルなどは必要ない。使ったところで対処されておしまいだ。
ならば2対1の近接戦という脳筋の攻めで決める。
2本の剣がまさにナナシを貫こうと──
「……!?」
「近接は苦手だよ。けど、自分の不得意をそのままにしておくと思う?」
──避けられてしまった。
動きは決して早くない。一撃でも、それこそ掠りさえすれば致命傷になるのに一撃たりとて当たらない。
さらに、波紋から剣を取り出したナナシの振られた一撃によってシャルティアの剣が弾かれた。
「なっ…!?」
「近接で攻めてくるよねそりゃ。俺の致命的な弱点……"だと思われてるんだから"」
「……っ」
シャルティアは内心どういうことなのか、疑問が浮かんでいた。
ステータスが低いはず。それなのに今の一瞬、シャルティアのパワーをナナシが上回った。
「クッ……うあぁぁぁぁあッ!」
意味不明な不気味を押し殺すように彼女は雄叫びを上げながらナナシへと突貫した。
「……相変らずの強さで安心するよ、ナナシ君」
森から2人の戦いを眺めるモモンガはそう呟いた。
臆病で引っ込み思案、さらにコミュ障ということで誤解されがちだがナナシという人物はナザリック地下大墳墓、ギルド、アインズ・ウール・ゴウンにおいて誰もが認める最強のプレイヤーだったのだ。
「相変わらず【心眼】と【直観】の精度がおかしいでしょう…」
呆れた声でこぼれた言葉。
ナナシには心眼と直観というパッシブスキルを持っている。
これは本人が最低限身を守るために身につけたスキルで、心眼の効果は相手の考えてることを読み取ること。そして直観の効果は自身の身の危険を瞬間的に感じ取るものである。
つまりこの2つを用いることでシャルティアの動きを完璧に先読みしている。端的に言えば擬似的な未来視を実現させたのである。
さらにそこに武器に付与されたステータスを自身に一時的に反映させる力もある。そのステータスは全てギルドメンバーのステータスのダウングレード版。それでもシャルティアに並び立てる程のステータスにはなる。
「……近中遠、どこにもスキはない」
シャルティアに万に一つも勝ちの目はない。
疲れた
誰かモチベちょうだいな