このシリーズ、遂に百話という大台に乗ってしまいました。
まさかここまで来るとは思いませんでした。皆さんありがとうございます。
失踪すると思ったんですけどねぇ。
お礼はこのあたりにして、本編どうぞ!
「きゅうけいでーす。」
「どんだけ引きずってるんですか。」
あれから1時間、トレーニングは見てくれてるけどやる気のやの字も感じない。無気力もいい所だよ。
とおるるるるるるるるるる
「もしもしぃ?どしたの相葉君。」
『お前落ち込みすぎだろ。そんな事だろうと思ってな、オレのおごりで残念回を開いてやる。お前も来るか?』
「うーん…パスで。トレノちゃん怒らせちゃってさ。これ以上怒らせるわけには行かないよ。」
『そうか…カナタも来るんだがな。』
「行く行く!何時にどこ集合?」
『スゴい食い付きだな…。6時に小田原駅東口に集合な。待ってるぜ。』
「オッケー。じゃあまた後で。…と、トレノさーん、ちょっとよろしいですかねぇ。」
急に畏まってきた。確かにあの時はイラっと来ましたけど…。
「良いんじゃないんですか?話は大体聞いてましたし、別にそれくらいじゃ怒りませんよ。」
「ありがとうね、それじゃ今日はこれでー!」
…足速いな渋川さん。そんなに行きたかったのか。さて、もう少し走り込んでから上がろうかな。夏向さんの走り、参考になる部分が多かったし。
なるはやで来たけどかなり時間が掛かってしまった。相葉君からお店で待ってるって連絡が来たから近場に車を止めて急ぐ。
「ごめん、待った!?」
「いや、今始めたとこだ。ちょうどあの話も終わったしよ。」
「えー、何の話してたのさー。」
「秘密だ。っとそうだ、紹介するぜ。オレのカワイイ後輩のカナタと、メカニックの緒方だ。」
「どもども、渋川榛名です。以後よろしくねー緒方さんに…夏向君でいいかな?」
19歳ってのは聞いてたけど、見た目のせいでもう少し若く感じる。この若さであの完成度、名門を出てるっていうのは伊達じゃないね。
「WAO、インプレッサのシブカワ!イギリスでは今でも人気なんです。夏向です、よろしくお願いします。」
うそ、イギリスでも有名なんだ、私。…えへへーなんだか照れるなー。
「緒方だ。よろしくな。」
「さて、今日は残念会だからな。たくさん食ってたくさん飲んで悔しさを晴らすぞー!」
「それで、今頃は小田原の方でメシ食ってるって訳か。」
「そうですね。でも渋川さん、この所かなり根を詰めてたみたいなので。いくら宝塚が近いからってトレーニング漬けだと持ちませんから。」
「…思ったんだけどよ、渋川よりお前がしっかりしてるとよ、どっちが面倒見てるのか分かんねえな。」
「いやぁ、流石にそこまでじゃないんじゃないですか?渋川さんだって大人ですし、節度は持ってるはずですよ?」
「クリスマス会。」
「あれは…お酒癖が悪いだけ……なはずです。」
そのはず。だってそれ以外は意外とまともだったはず。トレーニングメニューだってしっかり組んでくれるし、お茶だって…
(トレノちゃーん、お茶飲みたーい。)
(トレノちゃーん!書類が終わらないよ~!)
……
「?」
「まあそんなに難しく考えるなよ。渋川があんなのだっていうのはもう分かり切った事実じゃねえか。」
「ですね。」
他愛のない会話をしているとスマホが鳴る。誰かから着信かな…渋川さんか。画面を見るとビデオ通話で掛かっていた。
「もしもし?」
『トレノちゃ~んw飲んじゃった~w近くの焼肉屋さんにいるから迎えに来』
ピッ
「くそが。」
「お前の口からストレートな悪口が聞けるとは思わなかったよ。」
「切られたー!なんでさー!」
「未成年にこんな時間に迎えに来いなんて言ってもそんな反応されるだろ。」
「まあ多分来てくれるって。それより夏向君!決勝に出られるよ!意気込みは!?」
「ボクの目的はチャレンジすることですから、精一杯、エイトシックスの限界を引き出せるように頑張ります。」
「その意気だ!俺も応援してるからなー夏向君!」
「カナタぁ、頑張れよー!」
「貰うぞー!10億ー!!ハハハ、たくッ大した奴だ、お前はよぉ!」
「夏向君が決勝~めでたいねぇ~。」
「随分とご機嫌ですね、渋川さん。」
ご飯を食べた後、あの状態の渋川さんを放っておくほうが危ないだろうと思い、結局電車で神奈川まで来てしまった。
「来てくれたんだー俺は信じてたよー。電車だと遠かったでしょー。さて、帰ろうかー。」
「帰るってどうやってですか。」
「クルマで。ここに置いてくわけには行かないからさー。はいこれカギ。」
そう言ってカギを渡してくる。いや待って、それはおかしい。
「まさかですけど、私が運転するんですか?」
「大丈夫~やり方は教えるしぃ、来年には免許取るんだから覚えといて損はないよ~?」
完全に酔ってる…。やっぱり来ない方が良かったかな。というか、この人は何て言って帰って来たんだ?迎え呼んでるとか言ってないと相葉さんとかが止めるはずだし。
「サー出発しよー。良いから回してくれや、ねーちゃん♪」
「もう助手席座ってるし…でもなぁ…もう少しごねる」
「トレノちゃ~ん、運転は楽しいよ~こっちの世界においでよ~。」
「いつの間に後ろに!?ちょっ…離して……このパワー、やっぱり人間じゃあない!」
そのままあれよあれよと運転席に座らされてしまった…。いやホントにこの人人間なのか?……しょうがない。
「どうか警察の方々には見つかりませんように!」
「真夜中なんだからバレないってぇ~。まずはエンジン掛けてローに入れてクラッチ繋いでレッツラゴ~。」
「……」
「……ねえトレノちゃん。」
「なんですか?今集中してるので出来れば手短にお願いします。」
「やってた?」
「何をです?」
「いや…運転してた?したことあるよね?」
ギアを変える。クラッチを繋ぐ。この一連の動作で小さなショックすら出なかった。運転し始めてから1時間の間で一度も。丁寧な運転だし、その中に熟練の技が隠れている。
それをトレノちゃんがやっている。一度も運転したことのないトレノちゃんが。
酔いなんか吹っ飛んでしまった。今俺を支配しているのは目の前で起きている異常事態に対する驚きだ。
「ある訳ないじゃないんですか。今だって誰かに見つからないかビクビクしてるんですから。」
「とか言いつつあともうちょっとで着くじゃん。いやホントに運転上手いよ。…ていうか、俺より上手くねぇ?」
「あ~良かったぁ。誰にも見つからなくて。」
「ありがとうね。酔ってたとはいえこんなイカれたお願い聞いてくれて。」
「良いんですよ。半年禁酒して頂けるならですけど。」
「わ、分かりましたぁ…。」
「それとは別に、思いついた事があるんです。上手くいけば宝塚記念でロータリーさんに勝てるかもしれないんです。」
「ロータリーちゃんに勝てるかもしれない…。実は私も思いついた事があるんだ。明日、ミーティングで話し合おうか。」
状況は2対1。それに作者君の攻撃が頭に入ったようで、奴はまだ動けないでいる。
「く…くそがっ!あと少しで妹に出来たのに!」
「強制的に妹にしても、ただ虚しいだけですよ。」
「てめぇだけでも道連れにしてやるよッ!」
悪あがきのように作者君に襲い掛かる。だが所詮悪あがき、隙だらけだ。
奴の手首にカミソリを作り、その拳を切断する。奴はその場でうずくまり、作者君は分かっていたように微動だにしなかった。
すると、奴の体が崩れ始める。
「や、やめろ…。お前たちを支えてやれるのは、俺だけなんだ。考え直すんだ…!」
「ハヤヒデさん達は、僕たちがいなくても十分にやっています。今更、僕たち第三者が介入する余地は無いんですよ。」
「道で干からびてるミミズがぁぁぁぁぁッ!俺に向かって講釈を垂れてんじゃあないぞぉぉぉぉぉぉッ!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ! オラァ!」
「はぐあぁあ!」
そのラッシュで空中に吹き飛ばされた奴は、そのまま炸裂した。
「ブライアンさんのDISCも無事に回収できました。すいませんでした、僕の不手際です。いまキズを治しますね…あーあ、小指も吹っ飛んでるじゃあないですか。」
作者君が何やら不思議な力でもってキズを治す。見た目がブライアンだからか、いつもと立場が逆で少し恥ずかしい感じがするな。
「私にとってはそれすら気にする余裕もない位切羽詰まっていてね。それで、メタリカなんだが、ホワイトスネイクが無い以上、どう取り出したものか…。」
「うーん…差し上げます。ハヤヒデさんだったら悪用はしないでしょうし。忘年会の一発芸にでもお使いください。」
「そう気軽に使える能力でも無いだろうに。」
「ですね。さて、キズも治ったのでそろそろブライアンさんを復活させましょうか。多分DISCを強引に差し込めば反動で僕のDISCが飛び出してくると思うので、後はお願いしますね。」
「ああ、次回の前書きくらいには君も復活しているだろう。」
「待ってますね。それでは、また次回。」